Wed 170614 東大生の就職/昭和のまんま/キューバの通貨(キューバ&メキシコ探険記22) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 170614 東大生の就職/昭和のまんま/キューバの通貨(キューバ&メキシコ探険記22)

 九州北部の状況がだんだん明らかになってくるにつれて、「とても暢気にブログなんか更新している場合ではないな」と、6年前の3月を思い出して粛然とせざるをえない。7月7日、今度は小倉を中心とする地域でも、激烈な豪雨になってしまった。

 今井は今日から厳しい出張の連続だ。8月10日頃まで、お休みの日はほとんどない。今日はこれから神奈川県の藤沢へ。明日が大阪、明後日が大分、その翌日が熊本だ。豪雨の激甚災害が拡大する中、小倉を足がかりに大分と熊本にお邪魔する。

「この状況で、ホントに公開授業をやってていいんだろうか」という思いは、6年前の大震災時と同じである。しかしひたすら姿勢を低く保って、考えられるかぎり最高の公開授業を実現して回らなければならない。交通機関が混乱するような事態にならないことを祈っている。
表
(キューバの紙幣。さらに小額の「3ペソ」「1ペソ」もある。1ペソ=100円程度)

 さて、昨日の記事5枚目の写真であるが、「東京大学新聞」7月4日号のトップ記事に掲げられた、東大生の就職2016年のデータである。いやはや、東大生の志向があんまり古色蒼然としていて、ふと「これで大丈夫なのか?」と、日本の未来が心配になったりもする。

 だって諸君、「3大銀行が上位を独占」であり、「電通がトップ10入り」である。ワタクシは驚きのあまり、ヒコボシ君よろしく天の川をピョンと飛び越え、1年ぶり再会のオリヒメちゃんを相手に、自分の驚きを語り尽くすうち、大事な大事な1年に一晩だけの至福の夜を、うっかり明かしてしまいそうだ。

 上位に並んだ企業名をここに示せば、文系の学生の就職状況は上位から ① 三菱UFJ銀行 ② みずほ銀行 ③ 三井住友銀行。確かに3メガバンクが独占だ。

 そこから先は、NHK・東京海上・三井物産・三菱商事・丸紅・伊藤忠・野村証券・日本生命・住友生命・新日鉄・三井住友信託銀行などが並び、「電通」を選んだ東大生も10人いる。間違いなく人気10傑に入っている。

 いやはや、こりゃ何なんだ? 昭和のまんま、20世紀のまんま、東大生の志向は、ほぼ半世紀にわたってビクともしていない。完全に固定化しちゃって、ひたすら大企業志向、ひたすら安定志向、ひたすら福利厚生志向なんじゃないかい?
裏
(キューバ紙幣、裏のデザイン。モロッコもそうだったが、「裏面」にはあんまり熱心でないような気がする)

 むしろ学生より、企業のほうが先に進んでいる。30年前の新日鉄は「新日鉄住金」に、40年前の東京海上は「東京海上日動火災」に、とっくに長々と会社名が変わっている。

 13行あった大銀行は、三井銀行と太陽神戸と住友が合併。三菱と三和と東海と東京銀行が、手当り次第にくっついて三菱UFJに社名変更。半世紀前とは状況を一変させている。

 どうしてこんなに学生は、異様に大っきな会社が好きなの? こんなに図体のデカい会社じゃ、若い諸君が団結して「よっこらしょ!!」と前に進めようとしたって、ビクとも動きやしない。

「自分で動かせない会社に一生を託すのって、大丈夫かい?」「それじゃ江戸時代さながら、まさしく『滅私奉公』もいいところじゃないか」。今井君にはそりゃ無理だ。「滅私奉公」なんて冗談じゃない。

 だって諸君「滅私」であるよ。「私を滅ぼす」であるよ。小学生どころか幼稚園児の頃から「アイデンティティを大切に」「個性を重視」「コドモの数だけ答えがある」とキレイゴトを詰め込まれてきた若者たちが、何故か20歳を境に「滅私」を志向することに、今井君は疑問を感じざるを得ない。

 テレビ局も新聞社も、全く姿が見えない。東大文系のトップ20の中で、マスコミ系はNHKと電通だけだ。フジもTBSも日テレも、テレ朝も朝日新聞も読売新聞も、遥か下位に沈んでいる。

 東大文系と言えば、「個性を大切に」「アイデンティティこそ宝物」という学校の先生の指導を、最もよく心身に染み込ませてきた諸君である。先生の言う通りに個性を研ぎすませてきた諸君のはずだ。

 就職という人生のヤマ場にあたり、先生方のそういう指導をいきなり路傍にかなぐり捨てて、ひたすら「滅私」と「奉公」に向かい、安定と福利厚生と寄らば大樹の方向に一斉に回れ右するのは、いったいどうしてなんだ?
硬貨
(美しいキューバの貨幣)

 東大理系も、状況は同じである。昭和のまんま、20世紀のまんま、今井君の大学生時代とそっくりの会社名が並ぶ。トヨタ・日立・ソニー・三菱電機・日産・JR東日本・石川島播磨。こんなぐあいだ。

 他にも、三菱重工・富士フィルム・パナソニック・新日鉄・JFE。おお、日本鋼管が出てきた。これじゃ、昭和の日本サッカー天皇杯か、1964年東京オリンピック時代の日本バレーボールリーグみたいじゃないか。

 日本で一番の最先端を行っている(はずの)東京大学がこうなんだから、早稲田も慶応も旧7帝国大学も、同じような状況であるに違いない。日本のリーダーとなるべき若い諸君の意識は、旧態依然としたままなんじゃないか。

 予備校として塾として、我々のスタッフは高2や高3の生徒諸君に向かい、「多様な将来を展望したまえ」と説きつづけている。面談やら討論会やら、セミナーやら講演会やら、ありとあらゆる機会を作って、安定と「寄らば大樹」以外の生き方を模索する素晴らしさを説くのである。

 しかしその4年後、大学の学部を終えて社会に出る頃になると、彼ら彼女らの志向は、やっぱり寄らば大樹。もちろん東大新聞の記事1つでそんなにカンタンに無力感に苛まれるのもどうかと思うが、「これじゃオレたちの時代と同じじゃないか」という人気一覧表には、やっぱり愕然とするのである。
バー1
(ヘミングウェイの定宿「アンボス・ムンドス」のバー。今井君はハバナ2日目からここに入り浸った)

 ところで諸君、ここまで書いてワタクシは、今日のブログに「キューバ&メキシコ探険記22」というサブタイトルをつけていたことに気がついた。申し訳程度にでも、キューバの話を付け加えておかなければならない。

 そこでまず、「掲載する写真をキューバのものにすればいいじゃん」という抜け道を思いついたのだ。しかも写真をキューバの紙幣や貨幣にすれば、「3大メガバンクが上位3位を独占」という東大新聞のタイトルとも旨く整合性が取れるじゃないか。

 21世紀もまた、オカネ・オカネ・オカネの世の中であることは変わらない。高校生のとき、「困っている人を救いたい」「国際貢献に尽くしたい」「地域の福祉に人生をかけたい」「コドモの数だけ答えがある」と、あんなに眼を輝かせていた諸君も、学部の4年が経過すれば、自身の幸福と個人の安定に軸足を移してしまう。

 かく言う今井君だって、結局おんなじだ。モロッコやメキシコ、シチリアにキューバ、トルコにアルゼンチン、そういう土地にヒコーキが着陸した途端、やっぱり気になるのは「治安」であり、治安が気になればなるほど、「まずとにかくオカネ!!」とばかり、両替所に走って現地の通過を手に入れる。
バー2
(宿泊中のホテル「イベロスター」のバー。ヘミングウェイの定番カクテル「フローズンダイキュリー」は、さすがにワタクシには甘過ぎた)

 紙幣の感触ほど、現代人の心を落ち着かせるものはないのである。ワタクシの場合は、何しろクレジットカードに頼り切って、安定したオトナの生活を四半世紀も営んできたから、紙幣や貨幣よりプラスティックのカードのほうが頼りになるけれども、やっぱり紙幣の感触は格別だ。

 キューバには、外国からの観光客がつかう兌換ペソ(CUC)と、キューバ国民がつかう人民ペソ(CUP)の2種類の通貨がある。「クック」と発音するCUCは、1CUC=100円程度だから、USドルやユーロとほぼ同じ交換率である。

 一方の「人民ペソ=CUP」はグググッと安いオカネであって、1CUC=約25CUP。銀行でCUCからCUPに両替すると、たいへんな札束が返ってきてビックリ仰天することになる。その辺の顛末については、ハバナ2日目の冒険の中で、クッキー売りのオジーチャンの思い出とともに詳述しようと思う。

 ま、今日もまた長く書きすぎた。写真4枚目は、ヘミングウェイの定宿「アンボスムンドス」のバー。5枚目は、今井君が宿泊中のホテル「イベロスター・パルケ・セントラル」のバー。年齢的にバーなんか行けない諸君も、是非ハバナのバーの写真でも眺めながら、将来ハバナを旅するオトナの日々を夢見てくれたまえ。

1E(Rc) Collegium Aureum:MOZART/EINE KLEINE NACHTMUSIK & SYMPHONY No.40
2E(Rc) Rubinstein:THE CHOPIN I LOVE
3E(Rc) Solti & Chicago:DEBUSSY/LA MER・PRÉLUDE A L’APRE MIDI D’UN FAUNE & RAVEL/BOLERO
4E(Rc) Bernstein & New York:/SHOSTAKOVITCH SYMPHONY No.5
5E(Rc) Rozhdestvensky & Moscow Radio:BARTOK/DER WUNDERBARE MANDARIN & TWO RHAPSODIES FOR VIOLIN & ORCHESTRA
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