Tue 170613 九州が心配/日立での懇親会/石川達三「金環蝕」のこと/東京大学新聞 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 170613 九州が心配/日立での懇親会/石川達三「金環蝕」のこと/東京大学新聞

 九州地方の豪雨のことが心配だ。福岡・大分・熊本、昨日の夕暮れの激しい濁流の映像を見ていると、こんなに暢気に懇親会のことなんか書いていていいのか、我ながら何も出来ずにいる自分が情けなくなってくる。

 今井は今週末から大阪 ☞ 大分 ☞ 熊本 ☞ 静岡と回る。テレビで見る福岡・大分・熊本は、「これでホントにお邪魔していいんだろうか」というほどの悲しい光景が広がっている。

 今井は今日が吉祥寺スタジオで収録2時間半、明日が神奈川県藤沢、明後日が大阪・河内山本でお仕事であって、大分訪問は3日後だ。激烈な梅雨末期の豪雨が、一刻も早く止んでくれることを祈るばかりだ。まさに今こそ「八大竜王、雨やめたまえ」。みんなで祈る時は、まさに今なのだ。
太平洋
(7月4日、台風一過の茨城県日立から見た太平洋。しかし今度の豆台風は、九州に梅雨前線の豪雨を引き込んでしまった)

 さて、ここはあくまで冷静に、7月4日の話に戻ろう。大盛況と大成功の後は、懇親会も楽しさ倍増だ。ホンの2〜3年前までワタクシは、懇親会を「祝勝会」と表現していたが、やっぱりこれは祝勝会と言い続けた方がいいんじゃあるまいか。

 7月4日、日立での祝勝会は、上品なイタリア料理店で。店の名前はあえてここには書かないことにするが、JR日立駅から徒歩5分、「じぇんとる麺」という凝った名前のラーメン屋があって、イタメシ屋はその2階にあった。

 3年前の7月にも、この店で祝勝会を実施した。参加者も3年前とほぼ同じであるが、何しろ今回は公開授業の出席者が前回の1.5倍にもなっている。祝勝会に集まった8人の盛り上がりも、今井が感じたところでは、1.5倍どころか2倍にも3倍にもなっていた。

 店の人たちも、ワタクシを記憶してくれている。
「確か、肉がお好きでしたよね」
「ムール貝、ありますよ」
「野菜はあまり召し上がりませんでしたよね」
と、3年の歳月を経てキチンと覚えていてもらえれば、そりゃ感受性の強い中年男子 ☞ イマイだ。熱い涙もこみあげる。

 スタッフのみんなで話が盛り上がれば、出てくる料理&出てくる料理、どれもこれもみんな旨い。「ムール貝のビール蒸し」、ホントにおいしゅーございました。ピザもパスタも、満喫いたしました。サクランボにメロン、絶品でございました。
幕の内弁当
(日立の翌日、異様に腹の減った今井は、何故かセブンイレブン「和風 幕の内」を貪った。これで500円。日本はいい国である)

 マコトに上品なマダムは、誰か有名人に似ていらっしゃる。「誰かな」「誰かな」「誰とソックリなのかな?」と約2時間、脳細胞と記憶力の限りを尽くして考え込んでいたのだが、23時半、とうとう会が終了してホテルに戻る段になって、「スポン!!」と紙玉テッポーみたいに答えが飛びだしてきた。

「大原千鶴さん」という京都の料理研究家が、お昼前のNHKテレビで、京都の奥深い料理をマコトに京都風に紹介していらっしゃる。日立の上品なマダムは、あの大原さんに激似なのである。

「そうだ、あの大原さんだ!!」と快哉を叫び、赤ワイン2本をほとんど1人で飲み干した後のちょっとロレツの回らなくなった口で、日立のスタッフに縷々説明に努めてみたが、スタッフもみんなロレツが回らない。

 結局スタッフも店の人もマダムご本人も、いったい誰にどのぐらい似てるのか、だーれも理解しないうちに祝勝会はオヒラキになった。「どうしても食べたい」と女子スタッフの1人が頑張った「牛ホホ肉の煮込み」も出してもらって、完全に納得の一夜になった。

 お昼前の時間帯にNHKの料理番組なんかを見ているんじゃ、「今井もヒマだな」と悪態をつかれても致し方ない。しかし諸君、4日前の静岡での講演会の帰り、新幹線の中で古色蒼然とした「幕の内弁当」を貪って以来、どうもワタクシは強烈な食欲に憑かれている。

 どうしてもまた幕の内弁当が食べたい。それも古色蒼然としていればいるほど好ましい。7月5日、日立から午前9時の特急で帰京した今井君は、幡ケ谷の床屋に立ち寄って「頭6mm、ヒゲ4mm」の定番丸刈りにしてもらった後、セブンイレブンに闖入して禁断の「和風幕の内」を購入してしまった。

「あれれ、ダイエットはどうしたの?」であるが、500円の和風幕の内だけでは足りずに、激辛マーボも追加。「どうした&どうした、その食欲は?」。自分でも首をかしげながら、丸刈りの昼飯を満喫したのである。
麻婆豆腐
(幕の内弁当のついでに、「激辛マーボ」も購入)

 諸君、どの局もみんな同じニュースショーとバラエティを垂れ流している地上波に比較して、BSとCSは工夫を凝らした放送を続けている。弁当を貪りながらチャンネルを「WOWOW」に合わせてみたら、40年も昔の日本映画を目撃することになった。

 だって朝からNHKをボンヤリ眺めていても、「スイカのガスパチョ」とか、そんな料理の紹介ばかりである。出演者がみんなでギョロ目を剥いて「爽やかですね!!」とか、あまりに当たり前の絶叫を繰り返すだけだ。それなら映画のほうがずっとマシじゃないか。

 1975年作品、タイトルは「金環蝕」。昭和の名優たちの怪演に、思わず画面に引き込まれ、固唾を飲んで見守るうちに、この映画の選択が、マコトに見事な現代政治批判につながっていることを理解した。

 さすがWOWOWの人々、映画のことも政治のことも、すげーよく分かっているじゃないか。諸君、WOWOWで放送された40年前の映画では、「首相夫人の政治への私的介入」がもたらす政治の危機を、まるで未来への予告のように、オドロオドロしく描いているのである。

 一方の地上波では、昨日も今日も同じ顔ぶれの雛壇批評家が「自民党一強アベ政治の崩壊」について、まるで自分たちの勝利であるかのように、同じ発言を繰り返すばかり。余りにも退屈で、見ているのが苦痛に感じられるほどだ。

 1975年の映画の原作は、石川達三。21世紀の若者諸君は、「石川達三」という名前を聞いても「それって誰っすか?」「怪しいレポーターかなんかですか?」とニヤニヤするだけかもしれない。

 石川達三は、昭和の大作家である。1935年、「蒼氓」で第1回芥川賞を受賞。太宰治を押しのけちゃった。秋田県横手市出身の英語教師であったが、戦後から昭和の終焉まで、社会派として問題小説を書き続け、昭和日本の文学界をリードした。

 今日の写真4枚目に示したのは、昭和末期の新潮文庫「出版案内」である。石原慎太郎・安部公房・大江健三郎・三島由紀夫・有吉佐和子。当時の人気作家がズラリと並ぶ中で、石川達三の本が最も多い。
石川達三
(石川達三は、昭和を代表するウルトラ人気作家だった)

 あれからホンの30年、2017年の段階で、石川達三「金環蝕」を手に入れようとすると、アマゾンでさえ「岩波現代文庫」が5680円もする。こりゃいくら何でも高すぎるから、むしろ仲代達矢主演の映画版をDVDで1854円でどうだ? まあ諸君、図書館を味方につけるほうがいいですな。

 というわけで今井君は、朝の時間帯をWOWOWを眺めて過ごすことになった。問題の首相夫人を演じるのは、京マチ子。名刺に「今度のダム建設受注には、どうぞ○○建設をよろしくお願いいたします」と書き添えて、官界の有力者に手渡した。当然のように「忖度」の嵐が始まり、業界の腐敗に拍車をかけることになる。

 半世紀後の日本を予告したこのストーリー、さすが石川達三じゃないか。ないし、半年も前から相似形の忖度を続けてきた構図、いかにも日本らしいじゃないか。

 都議選の激烈な結果を眺めた直後にこの映画を目にすれば、感慨もまたヒトシオである。よくぞこの作品を選んでくれた。WOWOWに感謝&感謝である。
東京大学新聞
(7月4日発行の東京大学新聞。詳細は明日)

 昭和の名優たちの怪演も、21世紀の若者たちに見てもらいたい。山本薩夫監督のモト、「これでもか!?」と怪演を戦わせるのは、宇野重吉・仲代達矢・三国連太郎・西村晃・高橋悦史・京マチ子・峰岸徹・神山繁・大滝秀治・北村和夫・山本学・加藤嘉・鈴木瑞穂・内藤武敏・安田道代・久米明・福田豊土ほかの面々である。

 これだけズラリと並ぶと、「やりすぎなんじゃん?」という気もするけれども、怪演は怪演を呼び、そのおどろおどろしさはトテツもないものになる。1850円出してDVDを購入する価値は十分にあるんじゃないか。セブンの「和風幕の内」を4回ガマンすればいいだけじゃないか。

 そんなことを考えているところへ、「東京大学新聞」が届いた。それが今日の写真の5枚目、トップ記事は「2016年度 就職状況」。大見出しに「3大銀行が上位独占」「電通が倍増で10位」とある。

 うーん、東京大学のこの状況が何となく残念な気がするが、今日もまた長く書きすぎた。そのことについては、また明日の記事で書くことにする。

1E(Rc) Corboz & Lausanne:VIVALDI/GLOLIA・ KYRIE・CREDO
2E(Rc) Elly Ameling & Collegium Aureum:BACH/HOCHZEITS KANTATE & KAFFEE KANTATE
3E(Rc) Backhaus:BACH/ENGLISH SUITE・FRENCH SUITE
4E(Rc) Ewerhardt & Collegium Aureum:HÄNDEL/オルガン協奏曲
5E(Rc) チューリッヒ・リチェルカーレ:中世・ルネサンスの舞曲集
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