Tue 170530 広島の不思議な夜/まだ牡蠣を貪る/新幹線ストップの危機を乗り切る | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 170530 広島の不思議な夜/まだ牡蠣を貪る/新幹線ストップの危機を乗り切る

 6月20日夜、大興奮の公開授業を終えたワタクシは、頭から湯気が噴き出すほどの満足感を押さえきれずに、広島の街に飛びだした。梅雨前線がググッと北上して、翌21日の新幹線を大混乱に陥れることになる豪雨が、いよいよ本格的に降り出していた。

 広島のスタッフが懇親会に選んでくれた店の名は「Tres」。平和大通りから、暗い路地を2回だったか3回だったか左折したあたりに店はあった。「Tres」とは、スペイン語の「3」であって、オープンキッチンに2人 + ウェイター役が1人、30歳代の仲間3人で仕切る鉄板焼きの店である。

 3人のうちで、特に「ウェイター役」の男子がワタクシの興味を引いた。視線が異様にキツいのである。注文を聞いて、メモを取って、何だか納得が行かないらしい渋面を作り、立ち去りながら我々のテーブルをギュッと睨みつける。

 おお、面白い。何を注文しても、意地でも文句がありそうだ。何しろ今井君は90分授業でしゃべりつづけてノドが渇いているから、「何が何でもまず生ビール!!」なのであるが、彼はその「まずビール!!」が気に障ったらしい。

 ワインにすげーコダワリがあって、「とりあえず生ビール!!」などというオヤジ反応を嫌悪するタイプの人は少なくない。我々は、オジサマ4人に若いスタッフ女子1人、そんな大集団でドヤドヤやってきて「まずビール!!」だなんて、きっと相当ムカついたに違いない。

「だからと言って、そんなにギュッとキツく睨みつけなくてもいいんじゃないか」。我々5人は最初、「困りましたね」「店の選択を間違ったかもしれませんね」と、お互い顔を見合わせて苦笑したものだった。
牡蠣づくし
(翌6月21日、「かなわ」広島駅ビル店で珍しくセットメニュー「かきづくし」を貪ってみた)

 しかし諸君、その判断は早計だ。だんだん深く付きあってみればみるほど、ウェイター男子の興味深い性格が理解できて、「この広島の夜は思い出に残るぞ」と、うるうる感激するほどになった。

 注文したのは、ソーセージの盛り合わせ3種、熟成肉ステーキ3種、ゴルゴンゾーラのパスタ5人前。それにウェイター男子オススメの赤ワイン。何を頼んでも、意地でも何か一言あって、ムカついたマナコで睨みつけ、不承不承に立ち去りながら、もう一度ギュッとテーブルを睨む。その繰り返しだ。

 しかし諸君、「短気は損気」だ。どんな人とでも気長に付きあってみなきゃいかん。やがて「バローロですが、正確にはバローロではありません」という超コダワリのワインが運ばれてきた。「このレベルのワインを5000円で提供できるのは、日本で私たちだけです」と、酔ったような視線を今井君に飛ばしてくる。

「バローロだが、バローロではない」。マコトに理解困難な発言を耳にし、おそらく自らにデロッと酔っているその両眼に見つめられて、ワタクシはオロオロするばかり。テイスティングしても、何だかちっとも分からないが、とりあえず「こりゃ旨い!!」と絶叫してみた。

 すると、彼の態度が一変した。「心から愛するものの価値を理解してもらった」という歓喜に、こわばっていた彼のマナコは緩み、心も表情も口も緩んで、語るは&語るは、止めどなく語る彼のワイン話に、客5名は呆気に取られるばかりである。

 それでも我々は「バローロだがバローロではない」という不思議な赤ワインをボトル2本カラッポにしたのである。「パスタはどんなふうに調理したらよいでしょう?」。そんな不思議な問いにも、何とかかんとかゴマカシてお答えし、みんなでジュルジュル激しい音を立てながら麺をすすりこんだ。
広島シェラトン
(広島シェラトンホテル。キレイだが、シャワーの水圧が低いのが難点)

 雨の中、タクシーを呼んでもらってホテルに帰還。「タクシーが来るまで30分ほどかかります」。ウェイター男子に丁寧に頭を下げてもらったが、梅雨前線の雨はもうそのレベルの豪雨となっていたのである。

 翌日はちょっとゆっくりして、9時に起床。11時半にチェックアウトして、ワタクシはまたまた生牡蠣を貪りに出かけた。広島駅ビルASSE6階の「かなわ」。昨日の空港店と同様、太田川に浮かぶ牡蠣舟「かなわ」の系列店である。

 ならば牡蠣舟を訪ねた方がよさそうだが、今日のワタクシは午後6時までに奈良県奈良市にたどり着いていなければならないカラダ。新幹線に少しでも近い店が望ましかったのである。

 駅ビル、あまり繁盛していないようだ。レストランフロアも閑散としている。中でも「かなわ」は価格帯がグッと高くなるから、お客はワタクシを入れて3組。1組はド派手なオネーサマ2名、もう1組はサラリーマン2名、カンタンな定食ものでランチを済ませ、そそくさと店を出て行った。

 すると諸君、残った今井君1名の独壇場だ。4人掛けの小上がりテーブルをダラしなく独占し、「生牡蠣」「また生牡蠣」「生牡蠣もう1セット」と、ひらすら生牡蠣を貪りつづけた。お店のオバサマたちが、みんな驚いてオロオロする勢いである。

 ただし、さすがにたった1人のランチ。ちょっと気が引けて、ガラにもなく「定食もの」も注文してしまった。それが今日の写真の1枚目「かきづくし」である。かきフライ、焼きがき、かきグラタン、かきのお吸い物、かきサラダ、かき飯。この定食ものだけで、牡蠣15個になる。

 これに諸君、生牡蠣12個を追加して、今日もまた27個、昨日の空港店と合わせ、2日で50個以上の牡蠣が今井君の胃袋に消えた。おお、マコトにすげー牡蠣マニアなのである。
牡蠣
(今日のランチも生牡蠣ざんまい。これを何度もオカワリする)

 言わば肉体の10数%が、牡蠣でできている状況。まさに「今井カキ蔵」であるが、カキ蔵を思わぬ危機が襲うのは、この直後のことである。静岡県内と愛知県内の豪雨の影響で、東海道&山陽新幹線がストップしてしまった。

 東京行きが新大阪行きに変更になったり、運転見合わせや運休が相次いだ。まさに大混乱であって、夕暮れには「京都 ⇔ 新大阪間で架線が断裂」。数珠つなぎで立ち往生となり、数千の人々が車内に閉じ込められたまま日付が変わる事態になった。

 こういうことがあるから、今井君は昔から新幹線をちっとも信用していない。NHKなんかで、爆笑問題まで出演させて、大威張りで「ドクターイエロー」の大宣伝をやったばかりだ。「架線の状態を常にチェックしています」じゃなかったのかい?
豪雨
(午後5時、大阪梅田のインターコンチネンタルホテルから六甲山方面の豪雨を望む。確かにこれじゃ新幹線も止まるわな)

 さて、広島の今井君は、こういう場合の危機管理には長けている。年間の公開授業が100回 + 海外滞在60日という生活を15年近くも続けていれば、混乱の広島駅の真っただ中で、以下のような選択肢がたちまちワラワラ導き出される。

 上り新幹線が豪雨ストップ、運転再開の見通しが立たない状況で、広島から奈良に6時間で移動するには、選択肢は5つである。

① 下り新幹線で博多へ、福岡空港から伊丹空港に飛ぶ。伊丹から奈良はルーティンであって、電車でもバスでもOKだ。

② 下り新幹線で博多へ、福岡空港から中部国際空港に飛ぶ。名古屋から奈良は近鉄で1時間半ほどである。

③ 在来線を乗り継ぐ。何とか広島から姫路までたどり着けば、姫路からは新快速で大阪、大阪からは何とでもなる。

④ 広島港から高速船に乗り、瀬戸内海を横断して松山港へ。松山空港から伊丹空港までヒコーキ。あとはルーティンである。

⑤ 広島空港から一気に羽田、羽田から伊丹。梅雨のお空に、豪快な「J」の文字を描く。

⑥ とりあえず運転見合わせ中の新幹線に乗り込み、運転再開をひたすら天に祈り続ける。

 最もお気楽なのが、⑥。しかし奈良ではたくさんの生徒たちが今井の公開授業を待ってくれている。「新幹線が止まっちゃったからしかたありませんよね」で終わっちゃうのは、「一流の準備」をCMで紹介してもらっている今井の沽券に関わる。「準備」の中には、こういう場合の危機管理も含まれるはずだ。
苺マカロン
(たどり着いた奈良で、マカロンたっぷりのケーキをいただく)

 ①と②も、決してオススメできない。新幹線というものは、上りがストップすれば下りも連鎖的にストップする。構造的にこの欠陥は必然だ。賢い選択のつもりで博多行きなんかに乗れば、新山口か小倉あたりで「影響で下りも運転見合わせ」のアナウンスが入るに決まっている。

 今この危機に立って、確実に奈良までたどり着く選択肢は、③と④と⑤である。③は広島から姫路までがキツい。④は、何だか楽しそう。瀬戸内海横断だなんて、仕事の旅に思いがけない小旅行の味わいが加わるじゃないか。⑤は、たくさんオカネがかかっちゃいますな。

 最終的に今井君がどうやって奈良に移動したか、今日は長く書きすぎたから、また明日の記事に譲ることにしたい。無事に奈良にたどり着けたことは、今日4枚目と5枚目の写真で確認してくれたまえ。5枚目、JR奈良駅前の校舎で出していただいた、マカロンのケーキである。

1E(Cd) Elgar & London:ELGAR/SYMPHONY No.2
2E(Cd) Barbirolli & Hallé:THE DREAM OF GERONTIUS 1/2
3E(Cd) Barbirolli & Hallé:THE DREAM OF GERONTIUS 2/2
4E(Cd) Ashkenazy & Philharmonia:SIBERIUS/SYMPHONIES 1/4
5E(Cd) Ashkenazy & Philharmonia:SIBERIUS/SYMPHONIES 2/4
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