Mon 170515 腹15分目/ボーン!!/阿賀野川に沿って/越後湯沢(喜多方ラーメン旅4) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 170515 腹15分目/ボーン!!/阿賀野川に沿って/越後湯沢(喜多方ラーメン旅4)

 こういうふうで諸君(スミマセン、昨日の続きです)、1杯目の「なまえ食堂ラーメン」で腹6分目、2杯目の「あべ食堂ラーメン」で、腹12分目を遥かに超えて腹15分目。おやおや、適度なところで止めておきたかったのに、腹はもうハチ切れんばかりである。

「満腹」か「腹12分目」ぐらいでヤメておけばよさそうなものであるが、そこはそれ、お正月のスゴロクとおんなじだ。「あと1コマ♡」と思っていても、サイコロの目は5や6が出てしまう。それを「食べきれません」「食べ残していいですか?」なんてのは、今井クマ蔵としてプライドが許さない。

 しかしこういう場合、ハチ切れんばかりなのは一般に腹の内側であって、「もうハチ切れそうだ」と本人が泣きそうな顔をしても、外側からは分かりにくいものである。真っ青なその表情から、「もしかして吐きそう?」と推測してあげられるぐらいだ。

 しかし諸君、この1ヶ月の今井君みたいに、ラーメンに焼肉に特ヒレカツ定食の連続、下北沢や西麻布で胃袋を酷使してきた人間のポンポンは、外側から見ても明らかにハチ切れそうだ。外から分かる「ハチ切れそう」の風景は、決して美しいものではない。
キハ
(喜多方から磐越西線・新津ゆきに乗り込む。なつかしい昭和な気動車に乗れた)

 いや、もっと歴史を溯るなら、現在のこの「ハチ切れそう」は、4月のメキシコやキューバでの暴飲暴食に、その源流を探り当てることができる。フルーツ満載の朝食。大盛りのパパイヤにマンゴーにメロンを、毎朝3皿も4皿もオカワリした報いである。

 ついでに告白しておけば、キューバではロブスターも暴飲暴食の対象になっていた。夢のようにデカいロブスターが、2匹も豪華に盛りつけられて約4000円。ハバナの夜は毎晩ロブスターとともに暮れていったのである。

 いやはや、実際にはもっともっと溯ることができる。2月も3月も、連日の仕事の後の懇親会が余りに楽しくて、やっぱり暴飲暴食の毎日だった。

 その前の10月・11月・12月も、やっぱり懇親会関連の暴飲暴食の連続。12月のシドニーは、チキンとハムを詰め込んで、腹が破裂寸前の毎日だった。

 いやいや、その前の9月、シチリアの日々も暴飲暴食には変わりがなかったし、そんなことを言ったらさらに溯って、昨年の6月7月もやっぱり懇親会由来の暴飲暴食を重ねている。

 結局、今井の肉体は暴飲暴食の年輪で出来ている。もしもノコギリでギコギコやれば、マコトに健康に育ちつづけた大木よろしく、キレイな木目を鑑賞できるに違いない。スギやヒノキやヒバの大木も、今井みたいな暴飲暴食の連続は経験していないはずだ。もはや諸君、「バウムクーヘン」と呼んでくれたまえ。

 しかしどんな年輪でも、栄養の不足する真冬の時期を経験するじゃないか。「今井の場合、それをどこに発見できるんだ?」であるが、近年の歴史にその跡をたどるなら、2017年1月、モロッコでの2週間がそれに当たる。

 激しい口内炎に苦しみ、上口蓋の皮が分厚く3〜4枚ベロンと剥がれたあの日々こそ、我が肉体に硬い年輪を刻む貴重な日々だった。熱帯のラワン材みたいにいつもいつも同じペースで成長するばかりじゃ、人間としての厚みも妙味もないはずだ。苦しむ日々もまた大切なのである。
駅舎
(喜多方の駅舎。さすが「蔵の町」である)

 そういうマコトにふざけた暢気なことを呟きつつ、「ボーン!!」と突き出た腹をもっともっと前に突き出しつつ、喜多方のサトイモ君は「あべ食堂」を後にした。これこそ「ボーン!! アイデンティティ」。遠慮なしに腹の突き出た今井のアイデンティティである。

「あべ食堂」の真向かいに、もう1軒「入ってみようかな」の衝動を感じる店がある。屋号は「やまぐち」、お菓子屋さんも兼ねていて、「まずいパン あります」とか「毒りんごサブレー」とか、看板には店の人たちのユーモアがテンコ盛りになっている。

「おいしいラーメン店」として、NHKで紹介されたことあるんだそうな。中でも「蔵の町銘菓 毒りんごサブレー」に関しては、店主のコダワリを遠慮なく看板に書き出している。「おみやげは 贈って笑われる毒りんごサブレー」と大書されているのである。

 ちょっと「ネタバレ」っぽいけれども、少しだけ看板から抜粋させていただけば、「頭の悪い人は、頭に当ててから食べると、頭がよくなります」「口の悪い人は、口に当ててから食べると、コトバが優しくなります」とのことである。

 こりゃボクなんかは「どうしても買って帰らなきゃ」なのかもしれないが、もともと頭の働きは驚異的に優れているし♡、コトバの端々に至るまで思いやりに満ちたサトイモであるし♡、看板にはさらに「それなりの顔の人は、顔にあてて食べても直りません」とある。買うのは、やっぱりヤメにした。
座席
(磐越西線の車内。徹底的に昭和である)

 こうして諸君、腹15分目でボーン!!と突き出たアイデンティティを持てあましながら、喜多方の今井君は駅を目指してゆるゆると歩き出した。途中、鼻緒の調整のできた下駄を「靴 コバヤシ」で受け取り、店主のママであるバーチャンの冗談がサッパリ分からず、しかしフシギに温かい気持ちになれた。

「大和川」という日本酒を造りつづけている古い酒蔵もあって、地元のオネーサマによるたいへん丁寧なGuided Tourにも参加。ホンの10分に過ぎなかったが、酒蔵の中には200名収容できるライブ会場もあって、「もし喜多方で公開授業をするならココ」と、ホクホクしながら駅に向かった。

 さて、ここからいよいよ日本列島の横断である。昨年は酒田から仙台まで、陸羽西線 ☞ 陸羽東線ルートで西から東への横断を敢行。一昨年は大阪から松江まで特急「やくも」での横断。こういう暢気な列車旅が大好きなんだから、まあ許してくれたまえ。

 磐越西線・新津行きの各駅停車は、今日の写真の通り懐かしい昭和の塗装のままでやってくる。乗り鉄なり、撮り鉄なり、いわゆるテツなオジサンやオニーサン満載で来ることを、覚悟の上で待ち受けた。

 新潟県小出から会津若松まで、真夏の只見線の旅に興じた時には、ホントに恐ろしくなるほど、テツの皆様で満員。カメラをカッコ良く構える皆様の強烈なポーズに、ただただ尊敬と称賛の念でいっぱいになったものである。

 しかし磐越西線のほうは、どういうわけかあんまり「人気沸騰♡」という状況にはないようである。14時50分、せっかく昭和のキハが2両編成でやってきたのに、喜多方駅のホームは閑散。地元のオジサマが合計4名、いかにも地元のオジサマらしい落ち着いた様子で乗り込んだだけである。
阿賀野川1
(磐越西線の車窓。どこまでも阿賀野川がついてくる 1)

 ここから新潟までは、ひたすら阿賀野川に沿っていく。「右と左、どっちの車窓がオススメですか?」であるが、当の阿賀野川は「こちらと思えばまたあちら」であって、カンタンに言えば右も左もどちらもオススメ。逆に嫉妬深い人には、右も左もどちらもムカつく、そういうラインである。

 日が傾くにつれて、列車は夕陽に向かって吸い込まれるように走る。間違いなく日本の背骨を横断しているのだが、阿賀野川の優しい水の風景のせいか、その種の切迫感はほとんど感じない。悪く言えば「感動がない」であるが、それは優しさに感動しない人間の側の問題なのである。

「新潟県五泉市」という町で、電車は深い山を抜けて新潟平野に入る。2時間余り、ずっと列車と一緒だった阿賀野川は、いつの間にかどこかに離れてしまい、その代わりに地元の高校生が大挙して乗車してきた。

 時計は17時。ほおそうか、今井君がラーメン2杯でボーン!!と腹を突き出し、河口湖合宿用の下駄なんかを買い込んで暢気に過ごしていた最中も、彼ら彼女らは熱心に勉学に励んでいたわけである。
阿賀野川2
(磐越西線の車窓。どこまでも阿賀野川がついてくる 2)

 新津で信越線の電車に乗り換え、新潟には17時半すぎに到着。あとは、新幹線で一気に東京に戻るだけである。もっとも、これもまた日本列島大横断。たった2時間弱の旅であるが、本来はもっともっと感動すべき大冒険の一種なのである。

 かつて川端康成どんは、このルートを上野からたどって「国境の長いトンネル」を抜け、「夜の底が白くなった」などと感動的にのたまった。なんとこりゃ「国境」ござんすよ。ホンの70年昔なら、「パスポートでも必要なんじゃないか」というぐらい、遠い遠い遥かな道のりだったのだ。

 昭和38年の大豪雪の時には、国鉄の急行「越後」や「佐渡」が夜の雪の中をさまよい、「100時間かけてついに上野に到着」「5日遅れで新潟に到着」という事件だってあった。あんまり気楽に「新幹線でビューン」とか言ってちゃいけないのだ。

 18時半、懐かしい越後湯沢駅に到着。かつては金沢・富山方面への乗換駅として、「ほくほく線」とともに大いに賑わったが、北陸新幹線の開業以降は、かつての賑わいは夢か幻のようである。

 というか、穏やかに静まり返った夕暮れは、「元の越後湯沢に戻ったね」という安心感に満ちている。「雪国」の悲しい駒子どんには、やっぱりこういう静寂のほうが嬉しいはずだ。

1E(Cd) Barenboim:BEETHOVEN/PIANO SONATAS 10/10
2E(Cd) Carmina Quartet:HAYDN/THE SEVEN LAST WORDS OF OUR SAVIOUR ON THE CROSS
3E(Cd) Alban Berg Quartett:HAYDN/STREICHQUARTETTE Op. 76, Nr. 2-4
4E(Cd) Bernstein:HAYDN/PAUKENMESSE
5E(Cd) Fischer & Budapest:MENDELSSOHN/A MIDSUMMER NIGHT’S DREAM
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