Sun 170514 喜多方で下駄を買う/ラーメンもう1杯/あべ食堂(喜多方ラーメン旅3) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 170514 喜多方で下駄を買う/ラーメンもう1杯/あべ食堂(喜多方ラーメン旅3)

 1杯目のラーメンでとりあえず「腹6分目」。6月1日、福島・喜多方の今井君は、「もう1杯、どうやら行けそうだれども…」と、初夏の冷たい小雨に濡れながら、なかなか判断がつかずに困り果てた。

 体質なのか、年齢のせいなのか、ラーメンは大好きでも、ラーメンをすすった翌日は体重計の数字がビュンと上昇する。平均して1kg。アブラでゴトギトのラーメンなんかに遭遇すれば、1.5kgだの2kgだの、ラーメンそのものの重量を遥かに上回る体重の増加を記録する。

 マコトにマコトにアブラ控えめな喜多方ラーメンだから、まさかそんなことはないだろうけれども、今のワタクシには授業収録その他、いろいろな仕事上の晴れ舞台が待ち受けていて、ダイエットは必須。あんまり人前にブックブクで登場するわけにはいかないじゃないか。
下駄
(喜多方で、河口湖合宿用の下駄を買う)

 自分としてのベスト体重は、75kg。身長172cmに対して75kgでは、お医者さんやテレビの健康番組ディレクターは、きっと「太り過ぎですね」「いろんな病気の危険水域ですよ」とおっしゃるだろうけれども、75kgを下回った場合、英語の発音にどうも迫力がなくなるような気がするのだ。

 英語の講師にとって、英語の発音の迫力は命綱。情けない発音じゃ、人前に出るのは気が進まない。ワタクシが発音の理想とするのは、映画の予告編。デッカいハンバーガーを3つも4つもワシワシやった後のオジサマみたいな、スーパー重低音の歯切れいい発音で、できれば授業を進めたいのである。

 ところがワタクシの経験だと、体重を落としすぎて74kg台になると、急激に腹筋に力が入りにくくなる。不吉な森の上空で、怯えた小鳥がピーピー呻いているような哀れな発音を、生徒諸君にはあまり聞かせたくない。

 それは日本語も同じことで、やっぱり理想は映画の予告編。だから体重は75kg以上に保ちたい。もちろんそんな話は科学的な根拠なんか何にもナシに言っているので、あくまで今井君本人の経験則だけれども、やっぱりベテランの経験則だ。それなりに大事にした方がいいと思う。

 しかし今、6月の喜多方で中心になっているのは、「減らすか、減らさないか。それが問題だ」ではない。問題の方向性は全く正反対であって、「増やしていいか、増やしてはいけないか、それが問題だ」のほうである。

 6月1日現在、82kg。うーん、重すぎる。厳しいお医者さんなら、「トンデモナイ!!」と激怒の表情を浮かべるんじゃないか。それなのに喜多方でラーメンを軽く1杯、スープまで全部飲み干して、お腹の中はタプン&タプンだ。デカい腹は6分目までいっぱいになって、それでも「まだ入りますよ」とワタクシを誘惑する。
下駄屋
(喜多方で、「靴屋」を名乗る下駄屋を見つける)

 小雨の中、とりあえず蔵の町ブラブラ、あっちからこっちへと何の当てもなくブラつくことにした。あっちにも蔵、こっちにも蔵。中には「酒蔵」などというイケナイものもあって、ダメな今井君は真っ昼間からその方面のお誘いにも決して躊躇なんかしない。

 むかし懐かしい「昭和の駄菓子屋」もある。いろんな店をのぞきながら町をゆくと、おお、嬉しいじゃないか、雨はとうとう止んで、雲間からカアーッと初夏の日差しが降り注いだ。

 ワタクシが店先に「下駄」を発見したのは、まさにその瞬間である。店の看板には「靴屋 コバヤシ」とあるが、店頭に並んでいるのは、ほとんど全て下駄と草履であって、これは明らかに「看板に偽りあり」、どう見ても「下駄屋」である。

 一般に「羊頭狗肉」と言えば、ホントにもってのほかの経営方針であって、看板にヒツジ、売りつける肉はイヌ、そんなのは封建時代でも現代社会でも同様に、決して許されるべきものではない。

 しかし喜多方の「コバヤシ」は、靴の看板をかかげて、実際には下駄を売る。素晴らしいじゃないか。サイコーじゃないか。今井君は去年の今ごろから下駄がほしくてほしくてたまらないのだ。

 物欲なんかちっともないのがこのサトイモの特徴だ。地味な服装を見てくれればわかることだし、異様なほどの物持ちのよさは、このブログでも繰り返し&繰り返し紹介している通りだ。

 しかし昨年の今ごろから、ほしくてほしくてブルブル震えているものが3つある。① 下駄 ② 鰐皮の長財布 ③ 小型のダレスバッグである。②も③も極端にピンポイントなので、ある特定の職人が丹精込めて作ってくれたものでなければイヤ。しかし①の下駄には、そんなコダワリはない。
あべ食堂
(喜多方の名店「あべ食堂」。2杯目のラーメンにここを選んだ)

 そこで今井君は、もう一切の迷いを振り捨てた。喜多方「靴 コバヤシ」にズンズン、物凄い勢いで闖入。40歳代前半と思われる店主と、ギュッと視線を合わせたのである。人目で「これだ!!」と絶叫したくなる下駄を発見。5000円+α、値は張るけれども、材質は桐。会津は桐の名産地でもある。

 こういう場合のワタクシには「躊躇」「逡巡」あるいは「熟慮」ということは一切ない。店に入って1分で、店主とすっかり打ち解け、直ちに商談がまとまった。手に取ると諸君、「は?」とひっくり返るほどに、選んだ下駄は軽い。

 あんまり軽いと、擦り減るのも早そうだが、別にコンクリートの地面をカランコロン引きずって歩こうとは思っていない。「下駄を鳴らしてヤツがくる」は故 かまやつひろしの大ヒット曲「我が良き友よ」であるが、ボクはなかなか高尚な人間であって、「ヤツ」などと呼び捨てにされたくないのだ。
ラーメン
(あべ食堂、一番普通の「ラーメン」670円)

 だから、友人知人との飲み会に「下駄でカランコロン」はありえない。今井君が下駄で登場しようと企んでいるのは、7月下旬の「河口湖合宿」。気がつけば、東進移籍以来13年目の合宿まで、たった50日を残すばかりだ。

 昨年までの河口湖合宿には、もう7年も同じサンダルで登場している。自分でも「そろそろ別のスタイルで」と考え、その度に「下駄」「げた」「ゲタ」とうなされるほど夢にみた。しかし下駄もゲタもGETAも、東京ではなかなか手に入らない。

 ま、浅草まで行くしかないかね。オウチの近くの三軒茶屋に1軒の下駄屋さんが存在するが、他にはもう京都あたりに行って、外国人観光客のお土産用の下駄でも買うしかないと考えていた。だから喜多方での出会いは、これは一期一会、千載一遇のチャンスだったのである。

「鼻緒を調整するのに30分ほどかかります」とおっしゃるので、ホクホクしながらとりあえずオカネを払い、「ではその辺でラーメンでも食べてきます」ということになった。2kg増加することを覚悟の上で、人口5万人の町に100軒も乱立するラーメン店街の只中に闖入することになった。

 大通りから右折して暗い細道に入ると、まずホントにホントに昭和からそのまま、小さなスナックが立ち並ぶ一角がある。お寿司屋もカラオケ屋もあるが、窓ガラスが割れていたりして、うーん、あまり絶好調とは言えないようだ。

 その一角を抜けて、細かく右折や左折を続けた先が、ラーメン屋街である。「日本3大ラーメン」の1つとは言っても、博多長浜や札幌ススキノとは比較のしようもない。「鄙びた」も何も、「びた」という語尾が不要、21世紀の日本でこれ以上貴重なものは考えられない「鄙」そのものがそこにあるのである。
小上がり
(あべ食堂。小上がりもある穏やかな店である)

 今日の2軒目に選んだのは「あべ食堂」。偶然出てきた店のオバサマが、しっかり優しく挨拶してくれたので、躊躇なくこの店に決めた。1杯目から1時間半、そろそろ胃袋にスキマも出来た。小上がりなんかもあって、暖かい雰囲気の暢気で穏やかな店である。

 ビールや酒の類いはナシ。あくまでラーメンを楽しむ店である。ギョーザもない。1杯目の「なまえ食堂」にもギョーザはなかったから、「ギョーザはやってません」というのが喜多方のスタンダードなのかもしれない。

 確かに、ギョーザも出すということになれば、厨房はテンテコ舞い。ジュージューはねるアブラで、掃除だって洗い物だって、店の人たちの仕事は一気に増えることになる。こんなに穏やかな小さい店が細々と経営を続けていくのに、ギョーザは思いがけず大きな負担になるのである。

 4枚目の写真に示した通り、あべ食堂のラーメンは、チャーシューもたっぷり、ネギもシナチクもたっぷり、味もダシもさっきの「なまえ」よりグッと濃厚である。スープを全て胃袋に収めるのはかなり厳しい。

 しかし、2杯目は味が濃厚な方がいい。1杯目はさっぱり薄味な「なまえ」。2杯目はギュッと濃厚な「あべ」。このコンビネーションは最高であって、もし1杯目と2杯目を逆にしていたら、どちらにも「うーん」と首をかしげていたかもしれない。

 つまり諸君、グルメ番組風に言えば、「喜多方ラーメン最高のマリアージュ」。「何だ、そりゃ?」もいいところだが、1杯目も2杯目も、もちろん桐の下駄も、「喜多方に来てホントによかった」と溜息をつくほど、楽しい午後のオモヒデになってくれた。

1E(Cd) Barenboim:BEETHOVEN/PIANO SONATAS 5/10
2E(Cd) Barenboim:BEETHOVEN/PIANO SONATAS 6/10
3E(Cd) Barenboim:BEETHOVEN/PIANO SONATAS 7/10
4E(Cd) Barenboim:BEETHOVEN/PIANO SONATAS 8/10
5E(Cd) Barenboim:BEETHOVEN/PIANO SONATAS 9/10
total m73 y933 d20891