Mon 170508 5月の記憶は悲しい/貴公子グザヴィエ/6歳女子も夢中/ウニ2個で〆る | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 170508 5月の記憶は悲しい/貴公子グザヴィエ/6歳女子も夢中/ウニ2個で〆る

 5月30日、東京は朝から5月とは思えない猛暑になった。「30℃」なんてのは、雪国♡秋田で育ったサトイモ君には、ほとんど信じがたい気温である。

 夏休みの真っ最中でも、昭和の秋田では最高気温28℃ぐらいだった記憶がある。記憶が少し大袈裟すぎるのかもしれないが、8月でも30℃を上回るのは数回。「朝の涼しいうちに勉強しましょう」と言う場合、その気温は24℃から25℃の範囲に留まっていた。

 まだ世の中は、5月の中間テスト期間である。ワタクシが高2の5月、中間テストの範囲は数列と漸化式。数研出版のマコトに素っ気ない教科書傍用問題集を解きながら、月末の日曜日は空しく過ぎていった。外は冷たい雨。雨に濡れたお隣のイヌが、寂しそうにクンクン鳴いていた。

 20世紀の秋田の5月は、下手をすれば「まだ寒い」「セーターがしまえない」「石油ストーブもしまえない」という気温だったのである。その後の地球温暖化、やっぱりタダゴトとは思えない。

 翌年、高校3年の中間テストは、何しろ「文系なのに理系クラス」「友だちのほとんどが医学部志望」というクラスにいたから、数学と物理と化学のニワカ勉強で死にそうな思いだった。数Ⅲの微分積分も、有機化学も薄膜干渉の計算も、文系アタマの人間にとってはハンパな話ではない。

 しかも、目指すのは東大文Ⅰだ。いや、今井本人としては「出来れば文Ⅲ」なのだが、文学部進学について、両親との決着は全くついていない。「文Ⅲなんかじゃ、就職はないぞ」と、父親は血相を変えているけれども、そもそもこちらはその「シューショク」なるものに全く興味がないのである。

 そういう5月の薄ら寒い日曜日、おそらく学部入試とは全くカンケーネー数Ⅲと物理と有機化学の中間テスト準備に励んでいた。隣のイヌは1年経過して、ますます寂しそうにクンクン鳴きつづけていた。

 こういうふうで、ワタクシにとって5月下旬というのは、寂しい水たまりの記憶しかないのである。たらの芽の天ぷらはビックリするほど旨かったが、驚異的な連戦連勝を続けていた名馬♡ハイセイコーが、日本ダービーで「タケホープ」という伏兵に敗れたりもした。

 どんなテストでもずっとバツグンの一番を取りつづけていたワタクシが、初めて敗れたのも同時期のことである。そんな「ちっちぇーこと」でションボリしてちゃ、人間の小ささを暴露するようなもんであるが、「負けたことがない」という誇りを初めて踏みにじられるのは、マコトに悲しいものである。
ハープ
(ステージ上のハープ。久しぶりに音楽を聴きに出かけた)

 5月30日、久しぶりにクラシックのコンサートに出かけることにした。いやはや、ずいぶん長い間、この方面とはご無沙汰していた。だって諸君、言い訳をするようだが、大好きなサントリーホールが改修工事で休業中なのだ。

 サントリーホールの休業は、2月上旬から始まって8月末日まで続く。ま、敏感なヒトは分かってくれると思う。クラシックと言ふものは、作曲家や演奏者にもこだわらなくちゃいけないが、「会場の雰囲気」にもこだわりがあるものだ。

「サントリーホールが休業なら、東京文化会館でも新国立劇場でもいいじゃないか」。そういう発言を聞いた瞬間、ワタクシなんかは「おやおや、ずいぶん大雑把なことを言いますな」と、唖然&ボーゼンとしてしまう。マコトに難しいヤツなのだ。

 その気難しいヤツが、3月末にコンサート情報をネットでポチポチしながら、何故かふと「これを聴きに行ってみようかな」と思ったのが、「ハープ独奏」というカテゴリーである。
ポスター
(ハープを演奏するのは、Xavier De Maistre。あまりにカッケー男子である。会場は女子だらけだった)

 5月30日「よみうり大手町ホール」、演奏はXavier De Maistre。「おやま、ザビエルどん?」であるが、日本語表記では「グザビエ・ド・メストレ」とあって、Xで始まるオシャレなファーストネームは「グザビエ」と発音する。超イケメンな彼は、ハープ界のみならずクラシック界の貴公子とも王子とも呼ばれているらしい。

 いやはや、「大手町」というところで実際に地下鉄を降りたのは、マコトに久しぶりである。もしかして、数百年前のシューカツ以来かもしれない。

 ワタクシのシューカツは「学部最終学年の10月1日から」というたいへん暢気なものであったが、あのころ住んでいたのが千葉の松戸市だったから、千代田線で1本の大手町にとりあえず行ってみた。

 仲間たちは、7月か8月の段階でもうとっくに「内定がとれた」「内々定に漕ぎつけた」とホッと安堵の胸を撫で下ろしている状況。「10月からシューカツ」なんてのは、「何をフザケてるんだ?」という痛罵の対象だった。
星のや
(エリートの巣窟・大手町には、何故か「星のや 東京」なんてもある。いったい誰が泊まるんじゃ?)

 そういう歴史があるから、ワタクシはあんまり大手町が好きではない。付近は、大新聞社やら大証券会社やら大保険会社の超エリートビジネスマンが闊歩している。人生の勝者みたいな自信タップリの表情で、「そこのけ&そこのけ」な勢い。おー、何だか感じが悪い。

 界隈に並ぶのは、読売新聞に産經新聞に日経新聞の本社。いわゆる「大マスコミ」というヤツである。エリートの集結地らしいので、飲食店もたいへんハイソな雰囲気だ。

 もちろん今井君も、その後の人生ではちっとも彼ら彼女らに負けている気はしないのだが、やっぱり雰囲気は「AWAY」。コンサートが始まる前の1時間を過ごしたベルギービールの店にも、「ちょっと値段が高すぎませんか?」と反感が高まるばかりである。

 18時半、ホンの少し酒臭くなってから「よみうり大手町ホール」に闖入。600人収容、パープのソリストなら、まさにピッタリの規模である。お隣の席には、30歳代後半から40歳代と思われるママとその娘がいて、ふとしたハズミで会話が始まった。

 娘は、6歳なんだそうである。ママは昔からフルートとピアノをやっていて、娘にも音楽をたくさんやらせたい。実際、ハープも習わせている。熱心でマジメなママであって、「周囲の人に迷惑をかけるようなら、Intermissionの時間で帰りますよ」と、キツい口調で娘に忠告している。
ビア
(コンサート会場に入る前に、ベルギービールを1杯いただく)

 6歳の娘のほうは、今日の演奏者のグザヴィエ氏がエラく気に入っているようである。確かに、ポスターの写真は異様にカッケー。「貴公子」「王子様」という評判も、あながち大袈裟ではない。「王子さま♡」「王子さま♡」と、6歳の目がハートの形になっている。

「お名前は?」と、彼女のお名前も尋ねたのだが、おやおや、残念なことに失念してしまった。「おじさんのお名前は?」と質問されたので、「ボクは王子様じゃなくて、王様なんだ」と、これ以上つまらん回答は考えられない答えを口走った。

「おうじさま」から「じ」を省略すれば「おうさま」。「う」を省略すれば「おじさま」。同じ1文字の省略で、王様はオジサマに変わっちゃう。日本語とはマコトに変幻自在な言語なのである。

 で、グザヴィエどんの演奏であるが、その超絶技巧と音楽の美しさについては「帰りにCDを1枚買っちゃいました」という今井君の行動1つだけで理解してくれたまえ。アルハンブラ宮殿にもまた行きたくなっちゃったし、プラハのモルダウ川ももう一度見たくなった。

 観客の男女比は1:9。ほとんどが老若の女子であって、確かにあんなにカッケーんじゃ、客席が女子だらけなのも致し方ない。お隣の6歳女子も、グザヴィエどんに合わせてハープを演奏する手真似を繰り返し、2時間で完全にグザヴィエの虜になった様子。何と諸君、6歳女子なのに「ブラボー」を絶叫してしまった。

 かく言う今井君は、王子なり貴公子なりのステージでの振る舞い方も大いにベンキョーになったのである。1曲演奏が終了するたびに、椅子から立ち上がって軽く左足をキック。右足もそれに続いて微妙にキック。おお悪くない。「こんど公開授業でやってみよう」とヒソカに決意するサトイモなのである。
うに
(〆には、生ウニ2個を割ってもらった。スプーンですくって食べるスタイル。大好物である)

 終演、21時。限られた時間ではあるが、15分の「サイン会」に臨むグザヴィエどんの笑顔もまた「いかにも王子様」。上半身の鍛え方も見事であって、少しくつろいだTシャツ姿の逞しさに、並んだオバサマ連から深い溜息が上がるのであった。

 晩飯は、地下鉄大手町駅構内の「Toscana」にて。スパークリングワイン1本、豚とウシと鹿の肉の盛り合わせ1皿。ウニをまるまる2個。いやはや、マコトにおいしゅーございました。

 〆として、スパゲティミートソース。お店の人のオススメで「のっけ盛」にしてもらった。普通のミートソースとは逆に、皿の底にミートソースを敷き、その上から麺をのっけて盛るのである。ま、いいか、ホントは普通のミートソースがよかったが、これはこれで、グザヴィエ君の思い出を深めると信じるのである。

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