Wed 170426 ドスエキスに訂正/美しすぎると腹が減る(キューバ&メキシコ探険記6) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 170426 ドスエキスに訂正/美しすぎると腹が減る(キューバ&メキシコ探険記6)

 とりあえず「おわびして訂正」をやっておく。昨日の記事の最終盤、メキシコビール「XX」の名称を「ダブルエキス」と書いたけれども、とんだ記憶違いだった。「X」が2つで、2X。メキシコはスペイン語だから、2は「ドス」と発音し、「ドスエキス」が正しい名称だった。

 実際、ビールの缶にも大っきく「DOS EQUIS」の文字がある。諸君の中には「あれれ、じゃ、『ドス エクウィス』じゃないの?」という人もいらっしゃるだろうが、スペイン語のQUIはハッキリ「キ」。「クウィ」ではない。何でもかんでも英語式に発音すればカッケーというわけではないのだ。

 Xが「エキス」とは、こりゃまたさすがにメキシコだ。ボクらにとって中1の時からずっとXは「エックス」であって、たまに数学の先生の中に「エッキス」と発音する人がいると、「ダセー」「ダセー」と笑ったものだった。

 中1の時からではない。小学校5年とか6年とか、そのぐらいの年齢になると、教室の隅っこで自慢げに「X」というものについて語り始めるヤツがいた。エックスの影に怯える者が大半だったが、エックス登場を待ちわびるイヤなヤツも存在した。

 中学校に入れば「エックス」という変な化け物が登場する。「ホーテーシキ」という難しいものも出現する。「算数」ではなく「数学」という名前に変わって、今は算数が得意で鼻高々な今井なんか、きっとXやホーテーシキの餌食になる。「今に見てろ、今井なんか」という論旨である。

 ま、パパかオニーチャンか家庭教師のセンセか、その類いのヒトビトがいて、エックスやホーテーシキの魔法について、先回りして習ってたのに違いない。何かと言えばエックスを持ち出して、偉そうに一席ぶっていた。暢気な昭和の田舎の物語である。
ビーチ1
(メキシコ・カンクン、ホテル最上階からの朝の絶景。水平線のあたりに浮かんでいるのが「イスラ・ムヘーレス」である)

 一方、さすが大都会Tokyoの小学校では、エックスの旗色はマコトに悪かったらしい。「中学受験ではエックスを使ってはいけません」。塾業界50年来の常識であって、エックスちゃんやホーテーシキ君なんかがオズオズ顔を出すと、小学生が集団で石を投げつける。

 まるで悪魔払いみたいなありさまであるが、とにかく「エックスはいけません」「ホーテーシキはいけません」と日々呪文のようにたたき込まれているから、小悪魔Xがニュッと通りの影から顔を見せるや否や、節分の豆まきみたいにみんながポケットの中の小石を握りしめた。

 そんなに小悪魔Xがいけない理由が、今も今井君は理解できない。いまここに数学の天才君がいて、まだ幼稚園児なのに小悪魔Xを独自に思いついたとする。2次だろうが3次だろうが高次だろうが、ホーテーシキの扱いは思いのまま。そんな天才的なヤツが、なぜ中学入試で異端扱いされなきゃいけないの?

 ましてや諸君、メキシコビールは「XX」。「ダブルでエックス」、正式名称「ドスエキス」だ。こいつ、日本の中学入試ならものすごく叱られそうだ。塾の門前で悪魔払いに遭いそうだ。何でそんなにエックス嫌いなの? ましてコイツは「エキス」ですよ。もっと優しくしてあげたら?

 大昔、「旺文社の大学受験ラジオ講座」というたいへん暢気な番組で、数学の寺田文行先生という人が、甲高い声で「エッキス」「エッキス」と連呼していたのを思い出す。文行と書いて、ブンコー先生と呼んだ。早稲田大学教授でもいらっしゃった。

「いまボクらが求めているエッキスはねえ…」
「エッキスの値が…なんだからしてねえ」
いやはや、素晴しく暢気な昭和がそこにあった。小悪魔エッキスは、こうして暖かく花開いていたのである。
ドスエキス
(メキシコビールの代表格「XX」。ドスエキスと発音する。沖縄のオリオンビールとそっくりの味わいだった)

 ま、そんなアホらしくバカバカしいタワゴトをいいながら、4月12日の今井君はカンクンのホテルで目が覚めた。ホントなら「カリブ海の波の音で目覚めた」とウソをつきたいところであるが、カリブ海はマコトに穏やか。最上階の部屋には、波の音なんかちっとも届かないのである。

 しかしカーテンを開けて眺めた光景は、驚嘆に値する。ここでもまた昭和であるが、これはほとんど昭和のジュディ・オング状態。「南に向いてる窓を開け」「一人で見ている海の色」。1979年の歴史的ヒット曲「魅せられて」、阿木燿子どんの作詞である。

 話がやたら古くて申し訳ないが、要するに書いている今井君が古いんだから致し方ない。曲はさらに「美しすぎるとコワくなる」「若さによく似た真昼の蜃気楼」と続く。ジュディオング、本名・翁玉恵さん29歳の大ヒット曲である。知らない人はググってくれたまえ。

 その後に英語の歌詞が一瞬入って、リスニングが苦手で聞き取れない人々のいろんな憶測を呼んだ。当時はまだカセットテープだったカラオケで歌いたくても、そこんところはテキトーに唸る人が少なくなかったが、正しくは「Wind is blowing from the Aegean」。おお、エーゲ海の歌だったのだ。
ビーチ2
(ホテル前のビーチ。カリブ海の波はマコトに穏やかだ)

 エーゲ海の場合は、おそらく歌詞の通りに「美しすぎるとコワくなる」。4年前のギリシャ旅行で、かく言うワタクシもそれはすっかり体験済みだ。ミコノス島でもサントリーニ島でも、ホントに海が美しすぎてコワいほどだったし、サントリーニの夕陽は身震いするほど熱く美しかった。

 しかし今ワタクシの目の前に広がっているのは、ミコノスから地球を半周したカリブ海である。日本人が「カリブ」と言えば、そりゃ何と言ってもディズニーの「カリブの海賊」。ホーキを振りかざした女房に追っかけ回される、情けない海賊どんの姿しか思い浮かばない。

 そこでカリブの山賊 ☞ 今井君は「美しすぎるとハラが減る」のである。37年前の翁玉恵さまをマネて、「うつくーしすぎーると、はーらがへーるー♡」と口ずさみながら、ホテルロビー横のVIP専用ラウンジに降りていった。

 インターコンチのグループでは、サトイモ山賊 ☞ 今井君は異様なほどの特別扱いを受けるので、部屋の無料アップグレードもそうだが、この豪華ブレックファストも世界中で無料。広いラウンジに他のお客は誰もいない。貸し切り状態で、ホットフードもフルーツもみんな0ペソである。
フルーツ朝食
(ホテルでの朝食ざんまいが始まった。最初の1皿はこんなに控えめ。ただしこれを3皿も4皿も貪るのである)

 カンクンの後、キューバのハバナでも、メキシコシティでも、フルーツ食べ放題。ワタクシは今回の旅で完全にフルーツにハマってしまった。

 カンクンではパパイヤとメロン、ハバナではパパイヤとマンゴー。メキシコシティでもパパイヤとマンゴー。2個も3個も意地汚く貪って、普通の人の一生分のパパイヤとマンゴーを、胃袋に詰め込み放題に詰め込んだ。「これじゃまるで小6男子じゃん」と、自ら苦笑したほどである。

 だって諸君、旨いのである。まずカンクンではパパイヤの旨さに驚天動地の思いだった。古い時代の情報が詰め込まれた今井脳の奥のほうから、「君たちキウィ・パパイヤ・マンゴーだね」のメロディが流れはじめた。

 1984年、「中原めいこ」という人が、カネボウ化粧品の夏キャンペーンとしてヒットさせた曲である。当時は「ソルティドッグ」「マイタイ」「チチ」「ブルーハワイ」その他のトロピカルカクテルが全盛。広告というものの威力を思い知らされた時代である。
イグアナ
(ホテルの中庭に、大っきなイグアナが出没する)

 中原めいこに森雪之丞が加わって出来上がった詩を読むと、30年前のバブル時代の雰囲気を、21世紀の若者もよく感じ取れると思う。サビの「君たちキウィ・パパイヤ・マンゴーだね♡」に至るプレリュードを、諸君、ちょっと読んでみてくれたまえ。

「ドライなシェリー ちょっと誘われて 灼けつく恋のアペリティフ」
「本気か嘘つきシャイな眼差し 憎いカサノバ fall in love」
「太陽に虹をかけたら抱かれてもいいわ じらせば最初のkissがアナタを熱くする」
うーん、すげー。よかったら、2ndコーラスもググってみてくれたまえ。

 こういう恐るべきプロセスを経て、とうとうサビに入ってくる。「君たちキウィ・パパイヤ・マンゴーだね 嬉し恥ずかし真夏のウワサ」「咲かせましょうか フルーツスキャンダル」。おお、おそろしい。フルーツスキャンダルには、「果実大恋愛」という漢字があててある。

 さすがにMac君も恥ずかしくなったのか、「灼けつく恋」を「焼けつく鯉」の変換でワタクシを苦しめる。でも諸君、そんな昭和の記憶が際限なく湧き上がる今井君にとっても、このフルーツは例外なく旨かった。フルーツを貪るためだけにでも、またすぐに中米を訪れたいと熱望するほどである。

1E(Cd) Alban Berg:BRAHMS/KLARINETTENQUINTETT & STREICHQUINTETT
2E(Cd) Backhaus(p) Böhm & Vienna:BRAHMS/PIANO CONCERTO No.2
3E(Cd) Solti & Chicago:BRAHMS/EIN DEUTSCHES REQUIEM 1/2
6(DMv) HOSTAGE
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