Wed 170412 ヒコーキが心配/何の変哲もない町/ロバが現役(モロッコ探険記37) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 170412 ヒコーキが心配/何の変哲もない町/ロバが現役(モロッコ探険記37)

 長い外国旅行でも「あと3日で帰国」というあたりから、何となく帰りのヒコーキが心配になるものである。

 昨今のようにいろんな航空会社でストライキが相次ぐようになると、「ホントにチャンと飛んでくれるの?」と、何だか半信半疑な気持ち。「航空会社 ストライキ」でググってみたりして、当日の空港で茫然と立ち尽くす悪夢を振り払おうと努力する。

 今井君にも苦い思い出があるのだ。マドリードからの乗継ぎ便が遅れ、フランクフルト空港で「アナタのヒコーキはもう離陸しちゃいましたよ」と、まるで当然のことのように冷然と通告されたのは、もう何年前になるだろう。

 あれ以来、どうしてもルフトハンザがキライ。旨そうに赤ワインのグラスなんか掲げてみせているルフトハンザの広告を見るたびに、「だって君たち、あの時ボクを積み残して飛んでっちゃったじゃないか」と言い返したくなる。

 だって諸君、キャッチコピーが「Nonstop You」でござるよ。「何だかダサくね?」だ。少なくともワタクシは、「Nonstop」などというハメには陥りたくない。たっぷりストップしながら、余裕コイてゆったり優雅な人生を送りたい。

 最近のコピーは「雲の上のルーフトップバー」。ヒコーキの窓に向かって、中年のオジサマがお酒のグラスを掲げてみせている。やっぱり、ダサくね?「そんなにヒコーキの上で酒ばっかり飲ませたいの?」であり、「ホントにエコノミー席でもそんなに優しくお酒を出してくれんの?」なのである。
ヤギのなる樹
(ヤギのなる樹。モロッコ・エッサウィラ近郊の草原で)

 ゴールデンウィークで海外に出ている人々が、今きっと一番心配なのがヒコーキの運航なんじゃないだろうか。ちょっとググれば、「アリタリア、また経営破綻か?」などという心配なニュースも出てくる。前回の破綻は、確か2008年。10年で2回も破綻してどうすんの?

 前回の破綻の直前、ワタクシはアリタリアで貯めていた13万マイルを損したのである。「新しいミッレミリアが始まります」というお知らせがあって、「今までのマイルは期限までに使っちゃってください」と、恐るべき要請がきた。今井君が圧倒的なANA派になったのは、あの直後からである。

 ま、いいか。モロッコ・マラケシュでの1月18日、「残り3日」という朝、帰りのことが心配になりだしたワタクシは、早朝4時半から起きだして、滞在中のホテル「エッサーディ」の一室でいろいろググりまくっていた。

 帰りの便は、なかなかたいへんそうなのだ。ミュンヘンから羽田まではANAだから安心だが、マラケシュからミュンヘンまでは「ヌーヴェルエア」なのである。ヌーヴェルエア、聞いたことあるかい?

「ヌーヴェル」で検索すると、優しいグーグル先生までが「該当する事項はありません」と冷たく否定する。仕方がないから「ヌーベル」で検索すると、「チュニジア北東部の都市モナスティルを拠点としたLCC」とくる。

 は? モナスティル? 所有するヒコーキは、たった13機? それでマラケシュからミュンヘンまで、サハラ砂漠やアルジェリア上空や、地中海やアルプスを越えて行けるの? ま、そういうわけで、ワタクシの不安はぐんぐん大きくなっていくのであった。
車窓
(砂の荒野の中に、こんな町が点在する)

 それでも予定通り、1月18日は「2度目のエッサウィラ」をやらかさなきゃいかん。最近NHKで「2度目のバルセロナ」とか「2度目のフィレンツェ」とか「2度目のプラハ」とか、旅の上級者を目指す人々を引きつける企画をやりはじめたが、さすがに「2度目のエッサウィラ」はなかなかいらっしゃらないだろう。

 しかもワタクシが心を惹かれたのは、エッサウィラそのものではないのだ。エッサウィラに行く途中、
①「ヤギのなる樹」の写真をどうしても撮影してきたい
② バスが通過する「Sidi Mokhtar」の町をもう1度眺めたい
以上、マコトに贅沢でヘンテコリンな動機なのである。

「ヤギのなる樹」については、今日の写真の1枚目を参照。ものの見事に撮影に成功した。バスの運転手さんも少しスピードを落として、今井君の撮影に協力してくれた。

 なかなか偏屈な運転手さんだったのである。マラケシュを出て数分で、他のクルマの運転手さんとケンカ、かなりの迫力で怒鳴り合いをやったりした。

 気持ちを鎮めるためなのか、運転しながらイスラムの祈りの歌を大音量で流しはじめた。あの日、ワタクシの席は最前列右端。祈りを捧げる美しい見事な歌声を約3時間、エッサウィラに到着するまで聞きつづけた。
Mokhtar1
(Sidi Mokhtar風景。砂埃の中で、今日も市場は大盛況だ)

 砂の荒野の向こうに、目指すSidi Mokhtarが見えてくるのは、マラケシュを出発して2時間弱が経過した頃である。何の変哲もない町にすぎない。しかしワタクシは、日本国内でもそうだけれども、いかにも観光地然とした町より、こういうごく普通の町の方にギュッと興味をそそられる。

 だってやっぱり、フェズもマラケシュも作り物のニオイを拭えない。薄暗いスークの迷宮だって、「無理やりココにまとめました」「さあどうか見てください」「さあ皆さん中世のカホリに酔ってください」と、得意満面の顔で導かれると、心には「ひいちゃう」ものがあるじゃないか。

 ところが、この何の変哲もないSidi Mokhtarでは、モロッコの現実をそのまま眺めることができるのである。若者は革ジャン、中年以上の男子は民族衣装ジュラバをみんな平然とまとって、混沌の市場を埋め尽くす。

 市場でも、別に何か買い求めるものがあるのではない。「みんなが集まっているから集まってみた」「ほお、今日も騒然としているね」「相変わらず騒がしいな」「変わったこともなさそうだな」。そういう憮然とした態度で、山ほどの人々が市場を埋め尽くしている。
Mokhtar2
(Sidi Mokhtar風景。民族衣装ジュラバの似合うオジサマたち)

 怒鳴りあいもあれば、慰めあいもあり、値段の交渉も始まれば、そこいら中で交渉決裂と、激しい言い合いと、怪しい仲裁が続く。

 騒然と混沌と混乱、しかし日本のものとは明らかに異なる何らかの秩序の存在。1週間前のエッサウィラ訪問の際、砂埃の中のSidi Mokhtarでそういうモロモロを感じ、「是非もう一度」と思っていたのだ。

 夜になれば、市場には焼き肉の屋台が出る。ドラム缶の中で赤い炎が燃え、ありあわせの網や鉄板の上でヒツジの肉が紫色のケムリをあげる。それを買って貪る人もいれば、肉の焼ける様子を見ながら喋りまくるだけの男たちもいる。
ロングチップス
(Sidi Mokhtarの売店で、こんなお菓子を購入)

 ロバたちも、現役で活躍している。どのロバもみんな笑顔で仕事をこなしている。観光用のロバさんたちは可哀そうだ。数年前、ギリシャのサントリーニ島で大量の観光用ロバを目撃したが、ロバ本来の仕事は、キャーキャーうるさい観光客を乗せてヨロヨロ無駄に歩き回ることではない。ギリシャのロバは悲しい表情をしていた。

 モロッコのロバは、ホントに現役だ。埃だらけのクルマやトラックももちろん走りまわっているが、ロバもクルマとほぼ対等の仕事をこなしている。形勢はさすがに不利であって、あと10年もすればこの仕事から解放されそうだが、「まだまだ負けませんよ」と意気軒昂の様子なのであった。

 こんな町が、モロッコの荒野に点在しているのである。おお、作り物ではないモロッコ、いいじゃないか。若い諸君も、是非「Sidi Mokhtar」でググってみてくれたまえ。どんな旅でも、こんなごく普通の町を1つぐらい訪ねてみたいものである。

1E(Cd) SPANISH MUSIC FROM THE 16th CENTURY
2E(Cd) The Scholars baroque Ensemble:PURCELL/THE FAIRY QUEEN 1/2
3E(Cd) The Scholars baroque Ensemble:PURCELL/THE FAIRY QUEEN 2/2
4E(Cd) Corboz & Lausanne:MONTEVERDI/ORFEO 1/2
5E(Cd) Corboz & Lausanne:MONTEVERDI/ORFEO 2/2
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