Wed 170329 〆のメロンを用意する/薔薇のこと/肉をワシワシ(モロッコ探険記27) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 170329 〆のメロンを用意する/薔薇のこと/肉をワシワシ(モロッコ探険記27)

 旅と言えば、メロンである。2週間の旅の中間地点をちょっと過ぎて、旅の8日目か9日目ぐらいに、ワタクシは必ずメロンを1個購入するのである。すっかり馴染みになったスーパーで、旅の終わりを飾るメロンを選んでいると、心がうきうきしてくるから不思議だ。

 この習慣をいつから始めたのか、ハッキリした記憶はない。しかし必ずメロンは買う。マルセイユでもナポリでも、シチリアでもシドニーでも、大っきなメロンを1つ買わなきゃ、旅の締めくくりにならない。

 何しろフィナーレを飾るフルーツだから、購入には慎重の上にも慎重を期さなければならない。その土地で一番旨そうなメロンを、1つ1つ手に取ってじっくり時間をかけて選ぶ。

 だって諸君、万が一そのメロンがマズかったりしてみたまえ。2週間も滞在したその街が「メロンのマズかった街」として、グッサリ記憶に残っちゃうじゃないか。

 店で一番ガッカリするのは、農薬のニオイが残っているメロンである。何か農薬以外のものなのかもしれないが、鼻が曲がるほどイヤな薬品臭があって、思わずメロンを床に落としそうになる。ニオイは手にも強烈に残って、セッケンでゴシゴシ洗ってもなかなか流れてくれない。

 そういうのは、もう世界共通である。先進国と呼ばれる国だから大丈夫とか、途上国だから農薬臭が強烈とか、そんな単純な話ではない。メロンみたいに皮の厚いフルーツだと、世界中どこでも似たような状況である。
アメニティ
(マラケシュ「エッサーディ」のシャンプー類。いい香りだった)

 で、慎重に選んできたメロンを、部屋の一番明るい場所において、じっくりと熟させていく。買ってきた当日は、まだちっともメロンのカホリを感じない。

2日目「お、メロンの香りがしてきましたな」
3日目「おおー、メロンメロンしてきましたな」
4日目「うぉ、すげーメロンの香りが充満してますな」

 こういうふうで、5日目ぐらいには、「上品なメロンの香り」と言うより「下品なほどのメロン臭」「これはもう『香り』ではなくて『ニオイ』の次元」と表現したいほど、部屋の空気は芳醇な成熟したメロンに支配されている。

 旅の8日目か9日目に買ってきて、そこから5日が経過すれば、まさにそれが旅の最終日。サトイモ法師の旅のスタンダードは2週間だから、成熟した芳醇なメロンが、締めくくりを花やかに飾ってくれることになる。
学校
(ホテルから程近い、新市街の学校。優秀そうだった)

 おそらく、ハウスキーピングの人々の評判は悪いのである。だって、お掃除に入るたびにお部屋がどんどんメロンくさくなっていくのだ。おそらく「メロン部屋」とか、そういう悪口を言われているに違いない。

 しかし、誰にも迷惑をかけているわけじゃないのだ。もしもハウスキーピングのメンバーに「私はメロンアレルギーです」「今井さんがニンジンをキライなのと同じぐらい、私はメロンがキライです」という人がいれば別だが、それなら他のメンバーに代わってもらえばいいだけのことである。

 いよいよメロンを切って食べる前夜には、部屋の冷蔵庫の中にメロンを入れて、しっかりと冷やしておく。翌朝、よく冷えたメロンを切って、その甘いにカホリに歓声をあげる。

 小型ナイフもスプーンも、この瞬間のために東京から持参する。カンペキに熟れた甘い果肉をすくって口に運べば、「人生の幸福、これに過ぎたるものはなし」であって、この瞬間のためだけにでも、また新しい旅に出たくなる。
白薔薇
(滞在7日目に運ばれてきた白薔薇。満開になった)

 そして実際、大っきなメロンを食べ尽くす頃には、次の旅の計画が、もちろん概略に過ぎないとしても、ほぼ固まっていることが多いのだ。今回のモロッコの計画だって、実際には5ヶ月前、シチリアのシラクーサ・オルディージャ島のホテルで、メロンを貪りながら決めたことである。

 そこで今回も旅の10日目、1月15日にメロンを購入した。マラケシュ新市街、21世紀的に巨大なショッピングセンターの中に「カルフール」を発見。この日まで毎日通っていた店より、遥かに品揃えの充実した大型店舗である。

 購入したのは、シチリアで試してみて絶品だった品種。皮は黄色くて、深いシワが入っている。シチリアでは5ユーロちょいだったが、マラケシュでもほとんど値段は変わらない。考えてみればシチリアとモロッコ、ヒコーキで2時間ほどの至近距離だ。そんなに食生活が大きく違うはずはない。

 このメロンを、これから5日かけてじっくり熟成させよう。「メロン部屋」と呼ばれたってかまわない。旨いものは、もっともっと旨くして食べてあげた方がいいに決まっている。
ZARA
(新市街風景。日本とそんなに違わない)

 さて、こうして無事にメロンも購入した。明日からは、1泊の予定でフェズの街を探険してくる予定。荷物は全部マラケシュ「エッサーディ」に置いたまま、1泊だけのフェズを嵐のように駆け回ってくるのである。

 エッサーディは、ホントによくしてくれる。今日1枚目の写真に示した通り、シャンプーもバスジェルも高級品である。しかも、ナンボでもくれる。あんまりたくさんくれるから、日本にも数セット持ち帰りたいぐらいである。

 薔薇の花も、どんどん新しいのと交換してくれる。初日には赤い薔薇、4日目には黄色い薔薇、7日目には白い薔薇。まだツボミの多い段階で運ばれてきて、満開になった翌日には新鮮な薔薇と取り替えてくれる。10日目、白い薔薇が満開になって、次はどんな薔薇が運ばれてくるか楽しみだ。

 この日も、メシは新市街で食べていくことにした。厳しかった口内炎からも、ほぼ脱した。エッサウィラの絶品クスクスのおかげで、すっかり自信も回復。プリンとチーズとヨーグルトに頼る日々は、終わったのである。

 ショッピングセンターと大きな「ZARA」の店舗の間に、繁盛しているレストランを発見。店の一番目立つところに大きなお魚をたくさん並べて、どうやらウリは魚料理らしいのだが、日本人が海外でお魚を食べると、なかなか「大満足!!」とニッコリするわけにはいかないことが多い。
ミックスグリル
(日当りのよすぎる店で、固いミックスグリルを満喫する)

 しかもこの日の今井君は、「オレはもう大丈夫なんだ」「もうお口の中はちっとも痛くないぞ」と、虚勢を張りたい気持ちでいっぱい。固い肉をワシワシ貪って、自らの全快を自らに誇示したい。そんなマコトにコドモっぽい欲求に憑かれていた。

 そこで諸君、注文したのは「ミックスグリル」。焼けた熱い串に刺さった牛肉に羊肉に鶏肉がジリジリ音をたて、その脇でソーセージもケムリをあげている。その脇に何だか意味の分からないコメの塊。おお、虚勢を張るにはもってこいの一皿だ。

「いざ!! 勝負!!」。いったい何の勝負なのか、その辺も意味不明だが、病の癒えたサトイモ入道の口は、まさに獅子奮迅の勢い。牛もヒツジもニワトリも、あえなく入道の胃袋に吸い込まれた。コメの塊なんか、まさに瞬殺であった。

 このとき、頭上にアフリカの太陽が現れた。今井クマ蔵の勝利を祝福するかのように、その強烈な光線が四角いテーブルに照りつけてきたのである。諸君、こりゃいくら何でも余りにサニーである。とても目を開けたままでいられない。

「おお、オレは今アフリカにいるんだな」と、再び認識を新たにしながら、買ったばかりのメロンをぶら下げてホテルに帰還する。胃袋は早速、さまざまな肉類の消化に全力を尽くしはじめた。

 明日は、いよいよ迷宮フェズへ。2日近くホテルを不在にするわけであるが、留守番はこのメロン君。白い薔薇君とカホリを競いながら、サトイモ入道の帰りを待っていてくれるだろう・

1E(Cd) John Coltrane:IMPRESSION
2E(Cd) John Coltrane:SUN SHIP
3E(Cd) John Coltrane:JUPITER VARIATION
4E(Cd) John Coltrane:AFRICA/BRASS
5E(Cd) Bill Evans:GETTING SENTIMENTAL
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