Mon 170320 上本町・キハの店/長堀橋・燗の美穂/心斎橋の台湾ラーメン/〆はどこで | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 170320 上本町・キハの店/長堀橋・燗の美穂/心斎橋の台湾ラーメン/〆はどこで

 大阪上本町の「ハイハイ酒場」には、他にも行ってみたい店がいろいろあったのだ(スミマセン、昨日の続きです)。「キハ58 0730」もその1つ。昭和の日本を網の目のように走り回った気動車の代表格がキハであるが、この店はそのキハをそのまま居酒屋にしちゃったというシロモノだ。

 自ら「準・乗り鉄」を名乗るほど、世界中の鉄道に乗りまくっているサトイモ法師としては、こういう居酒屋を見かけたら、ちょっと挨拶ぐらいしておきたい気分ではあった。

 しかし諸君、まず、① 長堀橋「燗の美穂」の予約が5時。時計はどんどん5時に迫っていた。続いて ② うーん「キハ58」、残念ながらちょっとテンコ盛りすぎて面倒くさい。こんなにテンコ盛りで、「くまモン」らしきものまでウロチョロするようじゃ、やっぱりいくら大阪でもコテコテすぎる。

 そこでキハ58訪問は、次の機会までスッパリ延期と決めた。4両編成の地下鉄・千日前線と、阪急にも乗り入れている地下鉄・堺筋線を乗り継いで、春の雨の降り続く長堀橋に向かった。

 こんなにタップリ大阪に来ているのに、地下鉄は御堂筋線にしか(おそらく)乗ったことがない。ナンボ仕事で頻繁に大阪を訪れても、仕事は梅田と難波と天王寺でだいたい済んでしまう。

 関西の他の街、奈良や京都や和歌山、西宮や神戸や豊中で公開授業があったって、やっぱり大阪の地下を縦横無尽に駆け回る必要には迫られない。千日前線・堺筋線、一度も乗ったことがないままに、こんな中年のオジサマになっちゃった。
キハ38
(大阪上本町「キハ38の店」。「また今度」と決めた)

 だから、長堀橋などというオトナの街も初めてである。いつか梅田の隣の福島という街でおでん屋や串揚げ屋に入った時、思わず「おお、雰囲気いいですね」と叫んだことがあったが、長堀橋「燗の美穂」もまたマコトに味わい深い店であった。

 失礼になるから、あんまりパシャパシャ店内の写真を撮りまくったりは出来ない。お料理やお酒の写真を撮る時も、必ずお店の人に「いいですか?」と断ってからカメラを取り出す。そういうわけで、「燗の美穂」の写真は今日の2枚目と3枚目だけである。

 店は、明らかに昭和の喫茶店からの「居抜き」。カウンター席が約15席の余り広くない店であって、おそらくホンの4〜5年前まで、店の奥でガンコなマスターがサイフォンでコーヒーを入れていただろう。

 別に今井君が炯眼だからその辺の事情を「見破った」などと言うのではない。店に入ってきたオジサマは皆「こりゃ喫茶店だ」「おお、昔の喫茶店じゃないですか」と嬉しそうに口を揃えている。

 その店を、落ち着いた女子3人で切り回している。客あしらいはむしろ「クール」と言ってよくて、お客との雑談には軽く応じるぐらいにとどめている。黙って手際よく料理を作り、黙ってお酒の燗をしてくれる。

 だからお客の方も、大阪にしては物静かな人が多い。5時の開店を店の前で数分いっしょに待つことになった見知らぬ上品なオジサマも、ちょっと離れたカウンターに陣取って2時間、ほぼ無言のまま盃を傾けた。春の夕暮れ、飲み屋が開くのを黙って雨を眺めて待つなんてのも、稀有な経験である。
鯉川
(お燗の酒が旨い「燗の美穂」にて。山形「鯉川」から飲みはじめた)

 ワタクシはお酒はナンボでも飲むし、お酒とつきあった経験も豊富。強いと言えばめっぽう強くて、日本酒でもワインでもウィスキーでも、人が心配するほどの勢いで飲んで、それでもちっとも酔っぱらわない。

 しかし「日本酒通ですか?」「ワイン通ですか?」と尋ねられれば、「めっそうもございません」と恥じ入るばかりである。ワインのことなんかカケラほども知らないし、どの地方のどの日本酒がどんな味かなんか、全然知らないのである。

 だから、こういうお店はマコトに嬉しいのである。詳しいメニューを矯めつ眇めつながら、適当に旨そうなのを選んで、「お燗してください」と言えばいい。気難しい店主の難解な講釈も聞かなくて済むし、「酒の注文の仕方が間違っている」とか言ってマスターに叱られることもない。

 ま、お店の名前は「ご愛嬌」と言うことで仕方ないとしよう。「燗の美穂」はもちろん「菅野美穂」どんであって、余り似ているとは思えない絵の中で微笑むオネエサマも、おそらく菅野美穂どんということなんだろう。

 お店を経営している人が特定の女優さんのファンだからと言って、それでお酒がマズくなることも、旨くなることもない。静かな雨の夜、牡蠣や昆布やふきのとうや手作り豆腐をツマミに、しっとり温かいお酒でポカポカになっていければ、それだけでいいのである。

 2時間で飲み干した日本酒、約7合。山形の「鯉川」から初めて、島根の「王禄」、能登の「白菊」、神奈川の「いづみ橋」など。ホントはワタクシの酒量は6合であって、6合を超えると危険水域に入る。しかし諸君、こんなにしっとり落ち着いて飲んだお酒なら、危険な感じは皆無であった。
燗の美穂
(燗の美穂)

 近くでもう1軒、賑やかな立ち飲み屋に寄った後、歩いて心斎橋に出た。心斎橋に「味仙」という名の旨い台湾ラーメン屋があって、この5年で今回が3回目の訪問になる。この店に来る時はいつも雨降りのような気がする。

 残念なことに「味仙」は、4月いっぱいで店を閉めちゃうんだそうだ。確かに、客がワンサと詰めかけて「朝から行列ができてます」「ランチの時間帯は1時間待ちはザラです」みたいな、マスメディアが好きそうな派手な店ではない。

 しかし大阪の諸君、一度食べにいってみたまえ。こんなに旨い店がひっそりと閉店を決めちゃうようじゃ、日本の食文化を考える時あまりにも残念。どこもかしこもドーロドロのトンコツばかりの一辺倒になっちゃったら、そりゃつまらないじゃないか。

 ま、こういうふうで、心斎橋まで長い道のりを歩いてきたし、ラーメンをズルズル勢いよくすすりこむうちに、だんだん7合のお酒が脳の奥のほうに回りはじめた。
味仙
(台湾ラーメン「味仙」にて。おいしゅーございました)

 いけないのは、決して「燗の美穂」ではない。7合の日本酒の後で、ラーメン屋を探して歩き回ったワタクシが悪いのだ。7合飲んだら、素直に帰る。それがオトナの基本。しかしあんまり文楽が面白かったせいで、サトイモ法師は人生の基本を忘れていた。

 大人しくタクシーを拾えばいいものを、「意地でも歩く!!」などと片意地を張ったせいで、結局「もう1軒立ち飲み屋に寄っていく!!」ということにもなったし、こうしてラーメン屋で危機に陥る結果にもなった。

 それだけでは終わらないから、調子づいたサトイモ入道は恐ろしい。心斎橋から宗右衛門町、さらに道頓堀の夜景を突っ切って歩くうちに、「やっぱり酒にはチャンとした〆が必要だ」という結論に至ってしまったのである。

「チャンとした〆」も何も、「燗の美穂」の焼き牡蠣3個で〆たはずだし、立ち飲み屋のビールでもう1回〆たはずだし、少なくとも台湾ラーメンがカンペキな〆になったことも間違いない。
道頓堀
(大阪・道頓堀の夜が更けていく)

 しかしその辺が、学部時代から延々と飲み続けてきた友人との飲み会だ。終わらない。絶対に終わらない。どちらかが「もうダメだ」とカブトを脱がないかぎり終わらない。こうして南へ南へと我らが進軍は続き、とうとう難波のど真ん中まで来てしまった。

 ならば、スカッとお蕎麦屋でホントに〆ようじゃないか。ほとんど戦前の旧制高校の世界だが、時計が12時を回らないかぎり、楽しい宴会は尽きるところを知らないのである。

 入ったお蕎麦屋は、ラストオーダー0時。それでもまだいろんなカップルやら親子連れやらがいて、別に我々も肩身が狭いわけではない。注文したのは、とりあえずビール、板わさ、イワシだかニシンだかの甘露煮。お蕎麦は、やっぱりヤメといた。

 南海難波の駅前で、「また夏に文楽を観に行こうじゃないか」と再会を約し、ワタクシは素直にタクシーをつかまえて、ひとりキチンとシェラトンホテルに帰ることとなった。

 偉いなー&偉いなー。めでたし&めでたし。いくら何でも「路上で朝まで居眠り」などという世界には、優等生サトイモ法師は無縁なのである。

1E(Cd) Haydon Trio Eisenstadt:JOSEPH HAYDN:SCOTTISH SONGS 4/18
2E(Cd) Haydon Trio Eisenstadt:JOSEPH HAYDN:SCOTTISH SONGS 5/18
3E(Cd) Haydon Trio Eisenstadt:JOSEPH HAYDN:SCOTTISH SONGS 6/18
6D(DMv) VEHICLE 19
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