Fri 170224 函館☞松阪の大移動/近鉄が運転打ち切り/伊賀越道中双六/万歳、間に合った | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 170224 函館☞松阪の大移動/近鉄が運転打ち切り/伊賀越道中双六/万歳、間に合った

 こんなふうにして(スミマセン、昨日の続きです)、3月15日の朝がやってきた。まだ真っ暗な午前3時頃、寒くて寒くて歯の根が合わず、どうしても眠れなくてムックリ起き上がった。3月中旬、ついに冬眠からさめた直後のツキノワグマ、そんなイメージである。

 暖房はキチンと機能している。設定は26℃、おそらく室温それ自体はむしろ暑すぎるぐらいであって、「おお、この悪寒はタダゴトではないな」「どこかで悪質な風邪をうつされたな」と、さすがにそのぐらいのことはすぐに分かった。

 こういう時には、すぐにタップリの水分。じっくり風呂につかってから、また水分。水分に飽きたらまた睡眠。どんな薬よりもその繰り返しが効果的だ。若干「荒療治すぎないか?」という思いもあるが、若い頃から今井君はそうやって風邪を短期間で退治し続けてきた。

 しかし諸君、この「3月15日」は、2017年早春シリーズのスケジュールが確定した時からずっと、ワタクシが心配してきたウルトラハードな移動の1日だったのである。大まかな移動予定を以下に示しておく。

① 函館国際ホテル09:50 ☞ 函館空港10:20(バス)
② 函館空港11:25 ☞ 大阪伊丹空港14:10(ANA)
③ 伊丹空港14:50 ☞ なんば15:25(バス)
④ 大阪難波16:10 ☞ 三重県松阪17:40(近鉄特急)
⑤ 松阪市民文化会館で公開授業(19:00 ☞ 20:30)
⑥ 松阪駅前で懇親会(21:00 ☞ 21:35)
⑦ 松阪21:45 ☞ 津 ☞ 大阪難波23:50 (近鉄)
⑧ なんば00:11 ☞ 梅田00:19(大阪市営地下鉄)
⑨ 梅田インターコンチネンタルホテルにチェックイン
タグ1
(今井君は旅の達人だ。ANAのダイアモンドメンバー(上)は5年連続、とうとうミリオンマイラーのタグ(下)までもらえた)

 おお、こりゃすげー。まさにオデュッセイア、いま自分がどこにいるんだか、旅の達人サトイモ法師でさえ、一瞬忘れてしまいそうな大移動の一日。しかし人生は決して甘くないので、こういう日に限って人はどこかでヒドい風邪をうつされてくる。

 午前9時半、ホテルをチェックアウト。函館にもウラウラと春の光が満ちあふれ、気温は0℃、鼻から吐く息も真っ白になるほど空気は冷たいが、陽光を浴びているとポカポカ暖かくて、さっきまで部屋でブルブル震えていたのがウソのようである。

 しかしとにかく、風邪の緊急対策をとらなければならない。まず、市販の風邪薬。水分、高級ユンケル、そしてやっぱり「栄養」だ。手っ取り早く肉体が温まる栄養と言えば、むふふふふ、もちろん「ラーメン」以外に考えられない。

 今井君はあんまり味にこだわる方ではないから、空港のラーメン屋でちっともかまわない。「おんじき」という赤い暖簾のかかったお店に入って、メンマとモヤシとネギとチャーシュー1枚だけのシンプルな「塩ラーメン」を賞味させて頂いた。

 うぉ、淡白。うぉ、素っ気ない。もともと淡白で素っ気ないラーメンが好きなワタクシであるが、ここまで強烈に素っ気ないと、「あんまり身体があったまらない」と思わず不平不満を口にしてしまう。醤油ラーメンのほうが良かったかもしれんね。

 ラーメン屋さんを出たところで、いきなり「今井先生でいらっしゃいますか?」という上品なオジサマに声をかけられた。「受験生時代お世話になりまして」とおっしゃる。聞けば「どうすんだい?」時代の生徒であって、自ら講師歴の長さに茫然とするほどであった。
函館塩らーめん
(淡白な函館塩ラーメン。アブラでデーロデロが好きな人には、おそらくムリである)

 函館から伊丹のヒコーキ、伊丹から難波までのバス、その辺はマコトにスムーズな移動が続いて、風邪のせいで眉間が重く、時おりギュッと激しい悪寒に襲われる以外は、何の問題も発生しない。「キツい1日になりそうだ」と覚悟していた割りには、もう行程は半分近くこなしてしまった。

 大阪難波の駅から、古色蒼然としたドレッシング色の近鉄特急に乗り込んだ。鳥羽行き。伊勢や鳥羽に向かう関西のヒトビトで満員、幸いワタクシの隣は空席であったが、他はほぼ空席なしの大盛況であった。

 ところが諸君、「好事、魔多し」。ここまでの好調が一気にひっくり返される自体が発生した。難波を発車して40分、大和八木駅を過ぎたあたりで、車内アナウンスが入ったのである。「この先、桔梗が丘の駅で人身事故が発生いたしました」「運転取り消しも考えられます」とおっしゃる。

 ただし、このアナウンスを聞いても、関西のヒトビトは気にも止めない様子。相変わらず楽しそうに談笑し酒を酌み交わしながら、これから訪れる伊勢や鳥羽の名所の話に花が咲いている。

 今井君は今井君で「運転取り消し」という関西独特の言い回しが面白くてたまらない。「打ち切り」「見合わせ」じゃなくて「取り消し」。うーん、納得は出来ないが、なかなか面白い言い回しじゃないか。
のれん
(函館ラーメンの店「おんじき」。おいしゅーございました)

 そうこうするうちに、空はどんどん暗くなる。夕暮れが近づき、雨雲も広がって、お外ではポツポツ雨が降り始めた様子。奈良盆地を横断した近鉄特急は、名張に向かって山を下りはじめた。恐ろしい宣告が入ったのは、まさにその瞬間であった。

「マコトに申し訳ございません、この列車は桔梗が丘駅で発生しました人身事故を受けまして、次の名張で運転を取り消します」
「お客様におかれましては、名張で皆さま下車していただき、後から来る電車に乗り換えていただきます」

 そういうお達しなのである。「あとから来る列車」というのが何時間後にくるのかも分からない。代替輸送手段も一切示されない。とにかく決まったのは「運転打ち切り」「皆さま下車していただく」、以上2点だけなのである。

 ところが諸君、意外じゃないか。あんなに口うるさそうな関西のオジサマもオバサマも、唯々諾々とそのお達しに従うのである。

「そんなんいきなり言われても困るで」「外は雨やで」「バスぐらい出さんかいな?」「カネ返せ」、みんなそんなふうに大騒ぎするものと思っていたら、誰一人文句も言わず、到着した名張の駅に、むしろ何だか勇んで降りていった。

 その状況でサトイモ入道1人がダダを捏ねていれば、「ダダ捏ねサトイモ」として近畿の新聞に紹介されかねない。「めっちゃウゼー関東の中年男がめっちゃ粘ってた。めっちゃネロネロなサトイモだった」。そういう指弾を浴びるのはイヤである。

 致し方ない。初めて「名張」という駅に降り立ってみると、待合室も地下通路もスキマなく実の詰まったトウモロコシみたいに、ぎゅうぎゅうのギュー詰め状態。しかし身動きのとれないおしくらまんじゅうの中にでも身を置かないと、寒くて肉体が縮んでいきそうである。

 いま乗ってきた特急電車は、サッサと大阪方面に引き上げていった。これはどう見てもヒドすぎないか? せめて「次に来る電車」が何時間後に来るのか、その発表があるまで、乗客を車内に残してあげるのが礼儀なんじゃないか。めっちゃ騒がなかった自分が、めっちゃ情けなくなってきた。
青函連絡船
(函館の旅の思ひ出:青函連絡船・摩周号の勇姿)

 しかし諸君、後悔先に立たず。というか、ハッキリ今は大ピンチであって、くだらん後悔なんかより、話を先に進めなければならない。時計は17時30分。公開授業開始は19時。150名もの受講者が待っている。何としてでもあと90分で松阪にたどり着かなければならない。

 近鉄に見切りをつけたサトイモ法師は、タクシー乗り場に直行。ただし、こんな状況だし、そもそもここは「名張」である。険しい山々に囲まれた盆地の町に、そんなにたくさんタクシーがいるはずはない。

 案の定、1台もいない。三重交通タクシー、近鉄タクシーと続けざまに電話をかけてみたが、「出払っています」「配車まで1時間はかかりますな」の一点張り。いやはや、それじゃ困るのだ。

 せめて大阪か奈良にいるうちにこの事態を知らせてもらえたらよかった。大阪の段階なら、新幹線で名古屋へ、名古屋から松阪への移動も可能。奈良だったら、JR関西本線を使って松阪に向かえた。しかし名張に着いちゃったんでは、タクシー以外に頼る手段は皆無である。

 みんな諦めて、いまやタクシー乗り場には今井君一人、キツい風邪に悩まされている身で、鈴鹿下ろしの寒風に吹かれ、風に乗って飛んでくる冷たい雨滴に打たれ続けた。しかし諸君、こういう時こそ「決して諦めるな!!」であって、待つこと15分、ついに近鉄タクシーが1台姿を現した。

 見れば、名張の駅までサラリーマン3人組を乗せてきて、いま下ろしたばかりである。こういう緊急の場合、大事なのはアイコンタクト。ギュッと運転手さんの顔を見つめ「逃がしませんよ」と目線で伝えれば間違いない。
タグ2
(ミリオンマイラーのタグ。宝飾品並みの豪華化粧ケースに入れて送られてきた。ただし、タグ以外の特典は一切ナシ。うーん、タグの代わりにマイルが欲しい)

「松阪まで行ってほしいんですけど」と告げると、若い運転手さんはギョッとした様子。「1時間半、2万円はかかりますよ」とほとんど絶叫に近い声を出した。

 オカネは構わない、何としてでも午後7時までに松阪に着いてほしい。サトイモ入道独特の熱い気合いを込めて繰り返すと、運転手さんもググッと腰が座った様子。「わかりました」「やってみましょう」「行きますよ」とシートベルトを閉め直し、ぎゅっとアクセルを踏み込んだ。

 こうして諸君、険しい伊賀越えの旅が始まった。歌舞伎や人形浄瑠璃に「伊賀越道中双六」という定番があり、かつては伊賀の忍者たちが飛び回り&駆け回った山中の道である。剣豪・荒木又右衛門がカタキ討ちの助太刀で36人斬りの奇跡を演じた「鍵屋の辻」も近い。

 対向車もほとんど見当たらない暗い山道を、タクシーはひた走ったのである。「夜にはシカやイノシシが出ますよ」という道である。まれに暗闇の中から一軒家のボンヤリした明かりが現れると、こりゃほとんど奥州安達原の不気味さじゃないか。

 三重県のスタッフと頻繁に電話連絡をとりながら、今井クマ助はひたすら紀伊半島の東に進む。ぐんぐん&ぐんぐん東に進む。名張を出て50分、18時30分になって、とうとう山道は終わり、「久居」という所から伊勢高速道に入った。

 残り30分。間に合うか間に合わないかの瀬戸際である。しかし運転手さんは「やり遂げた!!」という満足感で一杯の様子。「電話の様子からすると、お客さんはご講演をなさる先生なんですか?」などと、余裕の質問を投げてよこした。

 しかし諸君「高名の木登り」の例もある。「過ちは、易きところになりて、必ずつかまつることに候ふ」であって、松阪インターで高速を降りてからも、まだまだ油断はできない。

 こうして諸君、ついに公開授業会場・松阪市民文化会館に到着、18時56分。おお、間に合った&間に合った。東進にきて12年、初めて訪れたピンチだったが、ビシッと乗り切った。

 スタッフの皆さんの笑顔、安堵の溜息、伊賀の山越えをやり遂げたサトイモ法師を、それ以上にホクホクさせてくれるものなんか、他に考えられない。

 憎むべきは近鉄電車であって、ポイと車外に下ろされてしまった結果、ワタクシの風邪はもう市販薬で何とか誤摩化せるレベルのものではなくなっていたのである。

1E(Cd) Bobby Caldwell:AUGUST MOON
2E(Cd) Bobby Caldwell:CARRY ON
3E(Cd) Bobby Caldwell:COME RAIN OR COME SHINE
6D(DMv) CHLOE
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