Sat 170204 モロッコのネット環境/自称ガイド/王家の墳墓群(モロッコ探険記9) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 170204 モロッコのネット環境/自称ガイド/王家の墳墓群(モロッコ探険記9)

 1月8日、早朝からホテルのプールは濛々と湯気が上がっている。朝の気温は5℃か6℃、遥かなアトラス山脈の雪が朝焼けに赤く染まる風景も昨日と同じ。こんなに寒くても、朝9時にはプールサイドに少なからぬヒトビトが出てくる。ヤセ我慢にもホドがあるんじゃないかい?

 かく言う今井君は、相変わらず口内炎に激痛が走る。朝5時に起床。口の痛さを噛みしめながら、勤勉にブログを1本アップする。この勤勉さがたまらなく可愛らしいじゃないか。

 何しろカマンベールチーズとヨーグルトぐらいしか食べられないから、お腹はグーグー悲鳴をあげているが、それでもブログだけは何としても継続しなきゃいけない。2012年6月25日から続いている連続更新記録を、まさか「口内炎が痛くて」などという理由で中断することはできない。

 しかも諸君、ネット環境は劣悪である。日本国内なみにビュンビュンつながる時間帯もあるのだが、いったんつながらなくなると、ふとノイローゼ気味になるほどつながらない。写真1枚アップするのに、10分も15分もかかったりする。

 これほど劣悪なネット環境は、2010年のポルトガル以来である。リスボンのホテルで、毎朝ブログをアップするたびに絶叫したくなったのを記憶している。2010年と言えば、すでに7年も前のことである。

 その前年、ブダペストやプラハでも同じ激しい苛立ちを経験した。というか、余りのことにブログをアップすることを完全に放棄した。東欧での2週間で、名目上の日付と実際の日付に1ヶ月弱の大きなズレが生じ、それがそのまま残って、今日に至る。
墳墓群1
(サアード朝の墳墓群。イスラム装飾が美しい 1)

 マラケシュのネット環境は、この数年ワタクシの記憶にないほどの劣悪さであった。しかしその原因は、必ずしもモロッコにあるのではないのだ。宿泊客1人1人の所有するデバイスの数が、爆発的に増加してしまったのが原因の一端なんじゃないか。

 今やデバイスは1人あたり3台ぐらいか。PCがあり、スマホがあり、タブレットがある。高級ホテルとは言っても、1家族3名から4名が一斉にデバイスを使用しようとすれば、一部屋10台もマレではないだろう。ホテル全体としては、激しい電波の争奪戦になる。

 だから、特に朝9時から11時の時間帯、夕暮れ18時から夜23時の時間帯には、グーグルもヤフーもピクリとも動かない。大袈裟に言っているのではない。ホントにピクリとも動かない。

 冷蔵庫に無料で補充されるコーラやファンタやシュウェップスを口に含み、口内炎に細かい泡がシュワシュワ滲みるのを感じつつ、せめて早朝だけでもスピーディにWiFiが機能することを祈りながら、2週間この時間帯にブログ記事を書き続けた。
墳墓群2
(サアード朝の墳墓群。イスラム装飾が美しい 2)

 1月8日、マラケシュ探険の2日目である。昨日はスークの迷宮に予定したよりずっと深く入り込んだから、今日はスークを回避して、旧市街の歴史地区を回ってくることにする。

 午前11時、クトゥピアを左に見ながらアグノウ門に向かった。いやはや、スークではなくても、街の雑踏は悪名高いスークに勝るとも劣らない。鍛え上げられた客引きの男たちは、どんなに無視してもメゲることがない。

 アジア人と見るや、とりあえず「ジャパン?」と声をかける。それに少しでも反応すると、「トーキョー?」「オーサカ?」と矢継ぎ早に畳みかける。彼らにとってはどっちでも別に構わないので、トーキョーだろうがオーサカだろうが、あとは「ジュータン&ジュータン」「見るだけ!!」と続く。

 最初のうちはやっぱり嬉しいから、「トーキョー?」に思わず反応してニッコリ振り向いてしまったりする。そうなると諸君、モロッコおじさんたちは思い切りググッと踏み込んでくる。もう離れない。「絶対に離さない」という迫力には、まさに鬼気迫るものがある。

 昨年末に話題になった「電通・鬼十則」の中に、「つかんだら離すな、殺されても離すな、目的完遂までは…」という一ケ条があったが、その昭和なモーレツ社員ぶりを最も忠実に受け継いでいるのは、むしろこのモロッコおじさんたちなのかもしれない。
墳墓群3
(サアード朝の墳墓群。イスラム装飾が美しい 3)

「トーキョー?」の声にわずかに反応したら、間髪を入れずに「タカダノババ?」と続いたこともあった。おお、こりゃピンポイントだ。確かにワタクシは学部生時代、連日そのタカダノババで深夜まで酒を飲みふけっていたわけだから、「タカダノババ?」に頷かないわけにはいかないのである。

「トーキョーでもオーサカでもない」と判断した場合、モロッコおじさんたちは、すかさず「チャイナ?」と続ける。チャイナについては、トーキョー?オーサカ?みたいな選択肢はない。「ペキン?シャンハイ?」みたいな選択肢を与えられたことは、2週間で1度もなかった。

「チャイナ?」の後にさらに「コリア?」が続くこともあった。しかしその頻度は5回に1回ぐらい。まだモロッコのおじさんたちは、チャイナにもそれほど詳しくないし、コリアにはあまり馴染んでいない様子である。
薔薇
(サアード朝の墳墓群。薔薇の花壇も美しい)

「日本人がウロウロしている」という情報が、きっと人から人へと高速で伝わるらしい。そこいら中で「ガイドは必要ですか?」という声がかかる。「日本人はガイドが大好き」という定評があるのかもしれない。

 ガイドには、① 公式ガイド ② 自称ガイド ③ ニセガイドの3種があって、「自称ガイド」を雇うには当局の許可証が必要。ニセガイドは取り締まりの対象であって、下手をすると雇った側も罰金を支払うハメになる。

 ②と③の区別はマコトに難しいところであるが、②はボランティアの気分が濃く、③はいろんな商店と結託して、ジュータンなり高価な装飾品なりを購入させようとするヒトビトのようである。

 スークの小さな商店の店主が、いきなり「ガイドしてあげようか」と申し出てくることもある。アグノウ門のすぐ近くで、「心配はいらない」「それがワタシたちの役割なんだから」と、ずいぶんしつこくつきまとう店主がいた。

 2020年を控え、我々もそれなりに気をつけなければならない。ボランティア気分で親切に案内を申し出ても、あんまり無闇にしつこくしてしまうと、相手からは「怪しい自称ガイド」「ニセガイドに騙されていはいけません」「ご用心」と判断される場合もあるわけだ。
猫
(ニセガイドが出没するあたりも、やっぱりネコまみれであった)

 アグノウ門付近には、デカいコウノトリの巣がズラリと並んで、なかなか異様な雰囲気である。そんな街角で、いきなり流暢な日本語を耳にする。

「ワタシを、ニセガイドだと思ってるでしょ?」
「違いますよ。ホントにニセガイドなんですよ」
あれれ、自分で正体を暴露しちゃったよ。

 この自称ニセガイドさんには、翌日にも声をかけられた。あんまり面白いので、笑いをかみ殺してサッサと立ち去ろうとすると、「おい、日本人!!」「アンタ、昨日も来ただろ?」と大声をあげながらついてくる。

  いやはや、日本のガイドブックに登場する「シツコイ自称ガイド」って、実は全部アンタのことじゃあーりませんか? それにしても、余りに高い実用日本語能力に唖然とする今井君であった。

 1月8日、まず訪れたのは「サアード朝の墳墓群」。サアード王朝は、1549年から1659年。日本では、鉄砲伝来&キリスト教伝来から鎖国の完成に至る盛り沢山な100年余である。1917年に空から発見されるまで、この墳墓群の存在は知られていなかったらしい。

 中でも今日の写真の1枚目&2枚目、「12円柱の間」の美しさは圧巻。白とピンクを基調にした精細なイスラム彫刻&イスラム装飾に息を呑む。ここでもやっぱり装飾家の強烈な執念に感嘆せざるを得ない。

 墳墓群を飾るのは、世話の行き届いた美しい薔薇の花壇である。マラケシュは、街中がオレンジと薔薇の洪水。薔薇とオレンジの並木がどこまでも続いているが、さすが王家の墳墓の薔薇の花壇は、他とは比較にならない高い気品を備えているのであった。

1E(Cd) Rilling:MOZART/REQUIEM
2E(Cd) Jochum & Bavarian Radio:MOZART/THE CORONATION MASS
3E(Cd) Akiko Suwanai:SOUVENIR
13A(γ) A TREASURY OF WORLD LITERATURE 30:ROMAIN ROLLAND 2:中央公論社
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