Mon 170102 岐阜の祝勝会/きしめんと名古屋コーチン/松方弘樹、死去/勝海舟 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 170102 岐阜の祝勝会/きしめんと名古屋コーチン/松方弘樹、死去/勝海舟

 1月23日、仕事始めの公開授業がボーボー盛り上がれば、まさかそのまま名古屋のホテルに帰るわけはない。懇親会というか祝勝会というか、要するに飲み会がギュッとセットされていた。

 岐阜一番の繁華街「柳ケ瀬」は、むかしむかし美川憲一というヒトが大ヒットさせた「柳ケ瀬ブルース」でも有名。ただし美川どんが歌った頃の濃厚&濃密な繁栄は「今は昔の物語」であって、「寂れた」とは言わないにしても、ずいぶん大人しくなった。今はごくごく地味な飲み屋街に姿を変えている。

 もちろん今井君としてはその方がいいので、あんまり昭和なネチネチ&ネトネトした歓楽街は、やっぱりちょっとおっかない。中年のオジサマ7名でホノボノと今夜の大盛況をお祝いするなら、「お酒はヌルめの燗がいい」「肴は炙ったイカでいい」であって、要するに赤ちょうちんが一番だ。

 岐阜の皆さんが選んでくれた「安兵衛」は、まさにワタクシが求めるベストのお店。最初は愛想が悪い感じの女将が、話してみるとホントに優しく元気なオカタだったりして、シバレル夜の祝勝会は、時間をかけてゆっくりと盛り上がっていった。
浜名湖富士
(1月24日、浜名湖の向こうに白い富士山が見えた)

 お酒は岐阜の誇る「濃姫」。ぬるすぎもせず&熱すぎもしないちょうどいいお燗は、お酒の旨さがよくわかった店である証拠。あっという間に2合徳利が8本カラッポになった。

 それって掛け算すると「1升5合も飲んじゃった」ということであるが、オジサマが7名も集まったんだから、まあいいじゃないか。ただしその1升5合、実際に飲んだのは7名のうちの3名だけ。するとまた、たいへんな酒量であることが浮き彫りになってくるじゃあーりませんか。

「肴はあぶったイカでいい」というのが、昭和から続く渋い酒の飲み方らしい。しかし諸君、何もそんなに無闇に渋くする必要はないので、シバレル夜の酒の肴は、どういうわけかメッタヤタラに揚げ物だらけになった。

 カマンベールチーズのフライを4皿。フグの唐揚げ4人前。ドジョウの唐揚げ4人前。もちろんここは名古屋コーチンの本場であるから、「手羽先の塩焼き」などというものも加わったが、何だかひたすら油&油な夜になった。

「かつては4番&ファーストでした」という野球系のオジサマがいて、身長は190cmに迫る。どう見ても大食漢なので、メニューにあったラーメンとチャーハンをお勧めしてみた。「飲むより貪る方が好き」。お顔にそう書いてあったのだ。
安兵衛
(岐阜・柳ケ瀬の「安兵衛」。ラーメンとチャーハンが旨かった)

 飲み屋のはずなのに、そのチャーハンが絶品。4番&ファーストのお隣に座ったもっと渋めのオジサマが、マコトに旨そうにチャーハンを召し上がる姿が印象的だった。その姿に触発されて、7名全員がラーメンとチャーハンを注文。激しい食欲の燃え盛る不思議な飲み会になった。

 実はこの店に、昨年の夏も来たのである。その時のワタクシの第一声が「オシボリが目いっぱい臭いですな」だった。おしぼりが汗臭いというか、とにかく一瞬ムッとニオったのである。

 あの夜の経験を踏まえて、スタッフのほうで熱湯消毒をしたオシボリを準備してくれた。さすが名門・岐阜金宝町校、気づかいのレベルが一段違うじゃあーりませんか。こうして、夜は楽しく更けていきましたとさ。

 あんまり楽しいので、「あれれ、名古屋行きの終電車が行っちゃった」という予想通りの事態になった。というか、イタズラな今井君は最初から終電なんかに乗るつもりは皆無。名古屋までタクシーで15000円かかるけれども、そんなの自腹で結構。楽しい懇親会に1分でも余計に留まりたかったのである。
鈴鹿
(名古屋マリオットホテルから、鈴鹿山脈方面を望む)

 以上、言語道断にシバれた1月23日の夜の記録である。翌朝の名古屋もまたまたシバれた。マリオットホテル33階から眺める鈴鹿山脈は、黒く分厚い雪雲にすっかり覆われている。「こりゃ新幹線はマトモには走っていませんね」。雪雲を見ただけで、ワタクシには分かるのである。

 11時半までホテルの部屋でゆっくりして、12時12分の「のぞみ」で帰京する。新幹線は軒並み15分の遅れ。しかし、たった15分だ。つい5日前、モロッコの列車は平気で90分も遅れていた。

 モロッコでは、90分遅れても平気の平左、何の挨拶も謝罪のコトバもなし。むしろそれが世界標準なのであって、たった15分で平身低頭&ひたすら謝罪、客の方もイライラ時計ばかり眺めて文句タラタラ、そういう日本のほうが贅沢すぎるのである。

 列車が15分遅れたなら、乗客の方で自衛策を講じさえすればいい。場所が名古屋であれば、今井君の自衛策は最初から決まっていて、もちろん「きしめんをすすって待てばいい」。そのきしめんが、名古屋コーチンと絡めばもっといい。

 新幹線上りホーム「住よし」は、半世紀前から続く老舗であって、昼めし時には長い行列ができている。しかし何しろ立ち食いだし、みんな新幹線の乗客だから、行列に並んでも順番はどんどん近づいてくる。
住よし
(新幹線ホームの「きしめん 住よし」。行列が出来ていた)

 食券の自動販売機の前で一瞬躊躇したけれども、ワタクシの選択は「名古屋コーチンきしめん 870円」である。

「そんなの邪道だ & シロートだ」
「クロートは『単なるきしめん』を選択するもんだ」
そういう難しいことを言うヒトも多いだろうが、どうせ今井君はシロートだ。ちょっとぐらい邪道の贅沢をしたっていいじゃないか。

 忙しげな出張族のオジサマ連とカウンターに一列に並び、きしめんをズルズルすする。吹き抜ける北風は確かに痛いほど冷たいが、熱い出汁の醤油のカオリがたまらない。

 おお、あったまりますな。うるさいウンチクとメンドーなコメントさえ省略すれば、こんなに幸せな世界は滅多に考えられないのである。

 10分遅れてやってきた「のぞみ」に乗り込み、ホームで買ったチーズとソーセージの袋をあけて、小瓶の赤ワインをちびちび飲みながら、急逝した松方弘樹(敬称は略させてください)を思った。富士のよく見える日で、珍しい「浜名湖富士」の写真も撮れた。
きしめん
(名古屋コーチンきしめん。邪道といわれても構わない)

 任侠映画はほとんど見ないから、ワタクシが松方弘樹を知ったのは、1974年のNHK大河ドラマ「勝海舟」である。9回目まで主役を務めた渡哲也が病に倒れ、10回目から松方弘樹が交代して勝海舟を演じた。

 いきなり前代未聞の主役交代に、今井君の父も母も文句たらたら。何しろ松方弘樹と言えば、当時は任侠系の映画にばかり出ていたわけだから、何となくNHKっぽくないし、まして大河ドラマの主役としては余りに不良っぽい。

 しかしその不良っぽい江戸弁の勝海舟が、はまりにはまってくる。ドスのきいた声で「…でんしょう?」と言われると、坂本龍馬も西郷隆盛も何も言い返せない。「おお、松方弘樹、スゲーでんしょう?」と、幼いワタクシもすっかり魅了された。

 脇役も、オールスターキャスト。米倉斉加年・地井武男・坂東八十助・江守徹・戸浦六宏・小林桂樹・宍戸錠・仲谷昇。昭和の名優がズラリと並んだ。女優陣も大原麗子・丘みつ子・大谷直子。まあいろいろ事件もあったけれども、冨田勲の音楽にも恵まれて、最高の大河ドラマの1つになった。

「バラエティ」というものには全く興味がないから、NTVの「元気が出るテレビ」は1度も見たことがないが、松方弘樹はここでもまた大活躍をしたらしい。その後20年かかっても、「元気が出るテレビ」を凌駕するほどのバラエティは存在しないようである。

 帰京して、どうしても彼の映画を一本見たくなった。深夜になって「hulu」で探してみたら、「恐喝こそわが人生」という恐るべきタイトルの1968年作品が見つかった。

「何だこりゃ?」と呟きつつ、早朝まで口をアングリ開けて、氷点下まで下がった明け方の寒さに震えながら、松方弘樹の大活躍を眺めた。ご冥福をお祈りする。
 
1E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN②
2E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN⑤
3E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN⑥
13A(α) 太宰治全集3:筑摩書房
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