Fri 161223 木下サーカス/仇敵カンガルー/タロンガ・ズー(シドニー夏のクリスマス6) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 161223 木下サーカス/仇敵カンガルー/タロンガ・ズー(シドニー夏のクリスマス6)

 12月20日、歴史的建造物の欠如に業を煮やした今井君は(スミマセン、昨日の続きです)、「こりゃ致し方ない。動物園に出かけて、コアラ君やワラビー君、カンガとルーにも挨拶してこよう」と決めた。

 もともとワタクシは、サトイモのようでもキウィのようでもあるが、もともとは「今井クマ蔵」を名乗っていたクマの一種である。日本のクマどんが動物園を訪れてオーストラリアのカンガやルーに挨拶するというなら、別に何の不思議もないじゃないか。

 もう7年も8年も以前のこと、まさにSMAPの全盛期に「海老蔵」をもじった「カニ蔵」がテレビの世界を席巻したことがあった。あの時、ワタクシはホントに悔しい思いをした。カニ蔵がはやりだす数ヶ月も前、先に「カニ蔵」を名乗っていたのは、何を隠そうこの今井君だったのである。

 イチ♡予備校講師の悔しさを噛みしめつつ、それでもしばらくはカニ蔵を名乗り続けたが、とうとうツラさに耐えかねて、今井クマ蔵に改名した。網膜剥離の手術を受けて、見事に復活を果たした頃の懐かしい出来事である。
オペラ座1
(シドニー・オペラハウス、基礎基本の勇姿)

 ところがこの今井クマ蔵、「カンガルー」という生き物が苦手なのである。苦手というか、要するに大キライ。小学3年の初夏、秋田を訪れた「木下♡大サーカス」で、初めてカンガルーを目撃した。あれ以来、ワタクシはアイツがキライである。

 若い諸君は知らないかもしれないが、むかしむかしのその昔、「木下(きのした)大サーカス」の全国巡業を、日本のコドモたちは心待ちにしていたのだ。今みたいに「シルク・ド・ソレイユ」の類いが世界を渡り歩く状況ではない。当時はソ連のボリショイ・サーカスより有名だったに違いない。

 秋田の砂浜に大きなテントを張った木下大サーカスを、何と小学校全体で見学に行ったのである。昭和の秋田市立土崎小学校は、1学年250人、全学年で1500人を数える大規模校であるから、学年別に何度かに分かれて見学したのかもしれない。

 驚くじゃないか。サーカスを「見学」する時代だったのだ。ゾウさんも、トラさんも、「初めて見ました」という児童も少なくなかった。秋田市にも「大森山動物園」という大きな動物園はあったけれども、小学校3年じゃ、「まだ行ったことありません」というヤツがたくさんいるのも当たり前だ。
オペラ座2
(シドニー、海側からのオペラハウス)

 その「木下大サーカス」の中盤、お昼前のヤマ場で始まったのが「カンガルーのボクシング」。オカネ持ちの子なんかは、学校で見学に来る前にとっくに親に連れてきてもらって、カンガルーのボクシンングがどれほど面白かったか、事前にトクトクと語って聞かせてくれたものだった。

 お菓子屋さんの息子の岩谷君。花屋さんの息子の山本君。お医者さんの息子の原君。先にサーカスを観たヤツらは、みんなカンガルーに夢中で、お昼の直前に登場するカンガルーを「今か今か」と待ち受けていたのである。

 コドモの頃は「お医者さんの息子」がどのぐらい偉いかちっとも知らないから、異常に勉強ばかり出来る今井君は、医者の息子だろうが何だろうが、「カンガルーのボクシングなどというアホらしい見せ物に夢中になるようじゃ、まだ諸君は無知蒙昧の徒。未熟じゃのう」と馬鹿にして、ずっとフンフン鼻を鳴らしていた。

 そこで登場したのが、前足にグローブをつけた意地悪そうなカンガルーどんである。筋書きは最初から決まっていて、いかにもカンガルーを見下した態度の人間ボクサーが、途中から激しい反撃にあってタジタジ。ついに人間を降参させて、勝ち誇ったカンガルーがガッツポーズで城内を一周する。
オペラ座3
(タロンガ・ズーからオペラハウスを遠望する)

 純粋なコドモたちが、人生で初めて目にするマコトに不純な「出来レース」である。ストーリーが先に決まっている感激や感動。帰趨の先に定められた勝負、言わば八百長。正義感のヤタラに膨張していた小学3年の今井君にとって、勝ち誇ったカンガルーの態度と表情がどれほど汚く思えたか、想像に難くない。

 だから諸君、あれから数世紀が経過した2016年の今井君も、カンガもルーも大キライ。あの意地悪なお目目、やる気なさそうに地面にへたばって何だかムシャムシャ&モグモグ反芻している口の柔らかさ、ゆさゆさ揺れるお耳、みーんな大キライであって、チャンスがあれば頭の1つもコツンとやってやりたい。

 その辺は、食欲にもあらわれる。5年ぐらいまで西新宿で「ローズ・ド・サハラ」というアフリカ料理のお店が営業していたが、そこでもワタクシはカンガルーのステーキだけは拒絶した。

 ワニもダチョウもみーんな食べてみたが、カンガルーだけはイヤ。「そもそもどうしてアフリカ料理の店にカンガルーが闖入するんだ?」と、尋ねてはならない質問もした。
コアラ
(コアラ君を発見。詳細は明日)

 そのカンガルーに、わざわざシドニーで会いに行く。何しろここはカンガルー側の本拠地だ。敵と和解するのに最も理想的なのは、あえて敵の本拠地に乗り込むこと。戦国の一流武将も、ルネサンス期のヨーロッパ諸侯も、その伝記を読んでみるとみんなそうしている。

 カンガルー部隊の陣地は、我が陣地♡ダブルベイから狭い海峡をはさんで対岸の地。「タロンガ・ズー」という怪しい島に、ゴリラ・キリン・ゾウ・エミューなど、けったいな姿のケモノ仲間を糾合して、クマ蔵の進撃を待ち受ける。

 一方の今井クマ蔵は、ダブルベイからいったん船に乗ってサーキュラーキーへ。サーキュラーキーで船を乗り換え、青く澄んだ快晴の空の下、純白に輝くオペラハウスを右に左に眺めながら、この戦いの必勝を祈願した。

 もちろんタロンガ・ズーには、コアラやワラビーも生活している。遥かにシドニーの都心部を眺める、マコトに平和な島である。夏の海風はあくまで爽やか、クリスマス直前の一日を過ごすのに、こんなに心地よい島はなかなか考えられない。

 ただし、日本の動物園と比較して、動物の個体数が余りにも少なくないだろうか。上野のサル山ほど賑やかでなくとも、旭山動物園ほどイベント♡テンコモリでなくてもいい。せめて男子女子2頭ずつ、つがいでなくてもいいから、仲良く空間を分けあっている姿を眺めたいじゃないか。

 いろんな工夫は凝らされているが、何故かみんな1頭ずつ隔離され、孤立して、さびしそうである。「タスマニアンデビル」なんてのもいる。なんのことはない、ニャゴロワを少しだけ乱暴そうな表情にした類いのシロモノであるが、暗闇に一頭だけじっと蹲って、「可哀そう」の一言しか出ない。
カンガルー
(いざ、カンガルーの陣地へ)

 島の斜面をどこまでも上がっていって、やがてコアラを発見。コアラについては明日の記事で詳しく書くけれども、最初に発見したこのコアラも、一頭だけ完全に孤立して、木の枝にひっかかってひたすら睡眠の最中。「こんな場所で孤立していたんじゃ、さぞかしストレスも大きいだろう」と心配になるぐらいであった。

 諸君、目指すカンガルー部隊に遭遇したのは、コアラの樹のすぐ先である。さすが本拠地だ。うじゃうじゃたまっていらっしゃる。囲いもなければ、陣地をハッキリさせる段差すらない。目の前、ホンの数メートルの所を、にっくきカンガルーどんたちがワサワサ駆け回る。

 2本の足で草を踏んでいく音が生々しい。そのスピード感もいいし、草を踏む音で肉体の重みも感じ取ることができる。顔は相変わらず憎たらしいし、マズそうに餌を頬張る様子も決して愛情は感じないが、諸君、草を踏んで走るあの重量感だけで、すでに和解には十分だ。

 だからと言ってカンガルー諸君、いきなり「食欲」のほうに変化が出てきたりはしないから安心してくれたまえ。万が一「カンガルーステーキ」のようなものがメニューに出ていても、まだ今のワタクシは、諸君を食べちゃいたいほど愛しているわけではない。

 牛、鶏、豚。シカ、イノシシ、クマ。牡蠣、イカ、鴨。今井君の好物はあくまでそのあたり。いまさらカンガルー諸君を「焼いてワシワシ」なんてことはしたくないから、不安げなその視線をこちらに向ける必要は皆無なのである。

1E(Cd) Ono Risa:BOSSA CARIOCA
2E(Cd) Rattle & Bournmouth:MAHLER/SYMPHONY No.10
3E(Cd) Goldberg & Lupu:SCHUBERT/MUSIC FOR VIOLIN & PIANO①
4E(Cd) Goldberg & Lupu:SCHUBERT/MUSIC FOR VIOLIN & PIANO②
5E(Cd) Wand & Berliner:SCHUBERT/SYMPHONY No.8 & No.9①
total m115 y2136 d19841