Thu 161110 五能線の旅へ/リゾートしらかみの指定席ゲット/準備万端/汽笛一声 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 161110 五能線の旅へ/リゾートしらかみの指定席ゲット/準備万端/汽笛一声

 12月3日、「幸先良いスタートを切った」と自称する今井君は、朝の秋田空港からJR秋田駅に向かった。せっかくスタートが幸先いいのであるから、こういう時にはタクシーを使わない。あくまで倹約してバス利用。国際教養大すぐそばの秋田空港から、バスで40分程度の道のりである。

 秋田市の寂れぶりには、何度訪ねても訪ねるたびに唖然とする。一応全国的にも名の通った歓楽街「川反」だけは、さすがに風情もあるけれども、そんなこと言ったってまだ午前9時過ぎだ、バスから眺めた川反にも、人っ子ひとり見当たらないのである。

 秋田駅前も、驚くような快晴。何しろ10階建て以上のビルはほとんど皆無だから、快晴の日の秋田はマコトに気持ちいい。12月上旬の秋田でこんな快晴に恵まれるなんて、ほとんど奇跡的と言っていい。

 来る日も来る日も吹雪、空は分厚い雲に覆われて、青空が見えるなんてのは10日に1度あるかないかというのが、今井君の少年時代であった。それとも強烈な温暖化の影響で、秋田の気候も南国並みになっちゃったんだろうか。

 10時30分、ワタクシは懐かしい秋田駅のプラットホームから、下り列車に乗り込んだ。翌日が青森で公開授業なんだから、「下り列車」というのは当たり前。ただし、ただの平凡な下り列車ではない。五能線回り、快速「リゾートしらかみ」である。
五能線
(五能線の旅を思い立つ)

 12月の初旬に五能線の旅をしてこようと決めたのは、10月中旬のことである。12月4日にポッカリ「青森」のスケジュールが入り、その前後3日ずつを眺めても、予定は空白のままである。

 ならば諸君、前の日に秋田から五能線経由で青森入りするルートで、秋田県北部から青森の西津軽海岸の絶景を満喫してきたいじゃないか。むかしならローカル列車で1日がかりの仕事だったが、21世紀の五能線には「リゾートしらかみ」という夢のような特別列車が走っている。

 この場合、注意すべきことが2つ。① 時間帯 ② 座席の位置である。まず① 時間帯であるが、冬至も間近な12月初旬、午後に秋田を出る列車を選択すれば、肝腎の海岸線に入る頃には夕暮れになり、日本海の絶景を眺めることは困難になってしまう。

 だから何としても、午前11時前に秋田を出る列車を確保しなければならない。それが「リゾートしらかみ3号」。東能代から五能線に進入するのが13時ごろ、岩木山の夕景に涙を流しながら終着・弘前に着くのが15時46分。おお、まさに理想的である。

 まだ夜明け前の新宿からバスに乗り、8時のヒコーキで9時に秋田着。そういう強行軍を我慢したのも、この理想的な時間配分を優先したからである。いやはや、ヒコーキの中の睡魔は恐るべきものだったけれども、お弁当もお断りして惰眠を貪り、鳥海山の勇姿でパッチリ目を覚ました。
リゾートしらかみ
(秋田駅で発車を待つ「リゾートしらかみ」青池号)

 次に大きな問題が、②の座席位置である。せっかく「リゾートしらかみ」の旅を志すなら、何としても「A席」をゲットしたい。秋田発の列車でも、青森方面発の列車でも、事情は全く同じであって、海岸線は必ず「A席」側になる。

 これが通路を隔てて「C席」「D席」なんてことになってみたまえ。せっかくの日本海が車窓に展開し、「A席」側の乗客が窓にかじりついて歓声を上げていても、通路の反対側では指をくわえて眺めているしかない。

 そんなの、余りに悔しいじゃないか。今井君は、悔しいのが一番キライなのである。同じオカネを払って同じ電車に乗ったんだから、意地でも有利な席、何が何でも景色がいい窓側、それ以外で我慢しなさいと言うなら、旅なんかしてやらない。

 五能線の海は、100%例外なしに、「A席」のサイドにある。川や渓谷なら、「車両の両側に見え隠れ」という公平感があるけれども、諸君、海と言うものは、いつでもマコトに依怙地であって、「左と決めたら左」「右と決めたら右」、そういう頑固さが真骨頂なのだ。

 例えば諸君が、ジェノヴァからニースやカンヌまで列車に乗り、「コートダジュールを楽しもう」「イタリア側はリヴィエラと言うよ」などと、こまっしゃくれた旅を考えたとする。いやはや、海は意地でも動かない。北上するなら左、南下するなら右。「ちょっとあんた、こっちにも来てよ」などというワガママの相手はしてくれない。
きっぷ
(チケットをゲット。五能線フリーパスは秋田駅でゲット)

 そういう事情を「乗り鉄」のオジサマがたは熟知しているから、つい5日前の留萌本線の旅でも、ドアが開くや一斉に海側の座席に人が殺到する。ボヤボヤしているヒマなんかちっともないので、気がつけば、残ったのは山と荒れ地が延々と続くほうの座席のみということになっている。

「生き馬の目を抜く」という油断ならない世界は、今や都会の商人より乗り鉄のヒトビトのほうにある。考えてみればこれを書いている12月4日は、増毛 ⇔ 留萌間ラストランの日。最終列車をペンライトを振りながら見送るということらしい。くれぐれもお客様同士のトラブルが起こらないよう、遠く離れた青森の地から祈るばかりである。

 しかし諸君、「リゾートしらかみ」の方には、「指定席」という強い味方がある。乗車1ヶ月前の11月3日、「何が何でも」と張り切ったワタクシは、見事3号車3番Aという理想の座席を手に入れた。あれから1ヶ月、ホクホクしながら今日の日を待ち受けた。
土崎駅
(懐かしい土崎駅を通過)

 発車前の秋田駅で、腹を満たし喉を潤すさまざまな品物を買い揃えた。何しろこの日は「お仕事ナシ」の1日。車内で何を貪り何をグビグビやろうとも、誰にも文句は言われない。

「鶏めし弁当」もいいですな。「はたはた煎餅」、これも旨そうですな。焼きたての「金萬」、おまんじゅうだが、秋田人なら20個は軽い。ついでにチー鱈やアタリメもいいですな。缶ビール2缶、日本酒6合。まあそのぐらいいいじゃないですか。

「えっ? 日本酒6合?」と驚くアナタ。だって弘前までの遥かな旅路を考えてくれたまえ。まるまる5時間の旅、しかもしていることと言えば、ひたすら車窓にかじりついているだけだ。その間、お口のほうは何をしてればいいの? まさかいきなりスックと立って、車内で公開授業というわけにもいかないじゃないか。

 こういうふうで諸君、汽笛一声、はや我が汽車は秋田駅を離れたり。車窓の右側には高校生の頃の通学路がつづき、今井君も早速プシュッと一缶あけて、懐かしい高校時代の思い出にふけった。すぐ右の小高い丘に広がる勇姿こそ、わが秋田県立秋田高校なのだ。

 秋田を出て7〜8分で通過するのが、土崎。先日も書いた通り、ユネスコ無形文化遺産に登録された「土崎曳山祭り」は、駅から徒歩3分の「神明社」のお祭りである。高校1年の夏までこの港町で過ごした。この時期、夜が更けるとホントに海鳴りに包まれるのである。
五能線
(東能代駅。ここから五能線、列車の進行方向が変わる)

 秋田から東能代まで、ワタクシの車窓は進行方向右側である。事情を知らないと、「あれれ、海と反対側じゃないの?」「ダマされた?」と一瞬不安に襲われるところ。しかし諸君、この列車、東能代から五能線に入った瞬間、進行方向が変わる。ヒトビトは一斉に席を立って、座席の向きをクルクル変えるのである。

 都会の人たちはあんまりご存知ないかもしれないが、こういうのは別に珍しいことではなくて、北海道の函館本線では札幌駅で、秋田新幹線では大曲駅で、「一斉に立ってクルクル」、同じような光景が繰り広げられる。出来ればこんな手間はないほうがいいのだが、ま、「リゾートしらかみ」だ。その程度の不便は仕方ないじゃないか。

 こうして列車はいよいよ五能線に入るのであるが、うにゃにゃ、今日もまた長く書きすぎた。五能線本体の旅については明日に譲ることにする。さて諸君、ワタクシはそろそろ青森のホテルを出て、今日の公開授業会場に向かおうと思う。

1E(Cd) Barenboim & Chicago:SCHUMANN/4 SYMPHONIEN 1/2
2E(Cd) Barenboim & Chicago:SCHUMANN/4 SYMPHONIEN 2/2
3E(Cd) Holliger & Brendel:SCHUMANN/WORKS FOR OBOE AND PIANO
4E(Cd) Indjic:SCHUMANN/FANTAISIESTÜCKE CARNAVAL
5E(Cd) Argerich:SCHUMANN/KINDERSZENEN
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