Thu 161103 札幌へ/田沢湖が美しい/生アナウンスが嬉しい/さっそくジンギスカン三昧 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 161103 札幌へ/田沢湖が美しい/生アナウンスが嬉しい/さっそくジンギスカン三昧

 昨日から札幌に来ている。東京も寒かったが、さすがに北海道の寒さは別格であって、新千歳空港に着陸した段階で「外の気温は1℃でございます」とアナウンスが入ると、機内から深いドヨメキがあがった。

 途中、ヒコーキの窓からの景色は絶景の連続だった。冬の東北地方はいつでも雲に覆われていて、滅多なことでは下界の風景を眺めることは出来ないのだが、昨日はまず山形の月山が見え、やがて雪をかぶった秀麗な鳥海山の全貌が見えた。

 つまりワタクシは、北海道に向かうヒコーキの左側の座席、「A」の席に座っていたのである。諸君、北海道に旅をするなら、是非とも「A」を選択したまえ。

 一番右の「K」も、岩手山の眺めは確かにスンバラシーけれども、鳥海山を過ぎてからまもなく眼下に広がる田沢湖の深いブルーは、何としてでも諸君のお目にかけたいのである。

 こういう時にかぎって、カメラをもっていない。カメラはカバンの奥深くに隠れ、その鞄も上の荷物棚の中。いま立ち上がってゴソゴソやれば、ゴソゴソやっているうちに田沢湖はあっという間に過ぎてしまう。

 今は目を皿のようにして、田沢湖の深いブルーを記憶に留めておくしかない。ヒコーキは田沢湖のほぼ真上を通過するので、眼下の湖は驚くほど大きい。400メートルを超える水深は日本第一位。背筋が凍るほどの神秘的な深さを、そのブルーを眺めるだけで感じることができる。
ジンギスカン1
(北海道ジンギスカン 1)

 あんまり田沢湖がキレイだったので、「こりゃ十和田湖も見えるかな」とワクワク、再びカメラがほしくてたまらない。十和田湖のほうの水深も確か日本で第3位。快晴の冬の日、美しいブルーは田沢湖に勝るとも劣らぬものがあるだろう。

 しかしこのあたりからお空は分厚い雲に覆われて、岩木山がかすかに望めるぐらい。十和田湖はカケラも見えず、間もなく大間の港からマグロを求めて進撃するたくさんの漁船の姿が見えて、ヒコーキはどんどん高度を下げていった。

 新千歳空港からは、「快速エアポート」という電車が15分おきに出ている。指定席車両が1つしかないので、いつも満員である。ホンの5〜6年前まではこんなに混雑していなかったはずだが、やっぱりこの5年、北海道の景気もまた間違いなくギュッと上向いたのである。

 中国からいらっしゃる爆買いの皆さまも、相変わらず多い。韓国からの韓流スタイルの皆さま、特に若い男子に韓流が浸透していると見えて、ボタンを外した長いコート、襟元のゴールドやジュエリー、メイクの入ったイケメンとヘアスタイル、こりゃ絵に描いたような激しい韓流だ。
ジンギスカン2
(北海道ジンギスカン 2)

 車内放送は、相変わらずのJR北海道だ。優しそうな男性のおそろしく上品な声で「まもなく北広島でございます」「次は、新さっぽろでございます」「この電車は荷物棚の下の赤い矢印の方向に進みます」と、ホントに優しく教えてくれる。

 ただし、優しくて上品きわまりないのは、あくまで録音された音声アナウンスの方である。地元の車掌さんによる「生アナウンス」というのもあって、こちらはその素朴さに何とも言えない味を感じる。

 今日の車掌さんには、何と言ってもその早口が個性的。早口すぎて細部まで聞き取れない。「聞き取れなくて困った」とか「ムカついた」とか、そんな話ではなくて、「細部まで聞き取れないのがサイコーに楽しかった」「面白かった」と思うのである。

 彼はまず、早口にアナウンスに備えて大きく息を吸う。そのたびにちょっと鼻が鳴って、「すぴーっ♡」「すぴーっ」という音がマイクに入る。「おお、張り切ってるな」と、車掌さんの熱意が聞く者の心を引き立てる。

「すぴーっ、みなさん、おまたせいたしました。この列車は、すぴーっ、札幌方面小樽行き、快速エアポートでございます」
「すぴーっ、4号車は座席指定車、他は自由席でございます。すぴーっ、これから車掌が車内に参ります。ご用の方はお申しつけください」
ジンギスカン3
(北海道ジンギスカン 3)

 おお、温かみの溢れたマコトに素朴なアナウンスだ。録音版のような冷たさは一切感じられない。息を深く吸い込む「すぴーっ」の音とともに、乗客の心の炎もますます赤くメラメラ燃え上がる。

 フランス語で「リエゾン」「アンシャンヌマン」という現象を、ふっと思い起こすのである。例えば彼が「快速エアポート」と発音する時、「かいそけあーと」としか聞こえない。快速の「く」とエアポートの「エ」が融合して「け」に変わる。

「ポ」はどこに消えたのか分からないが、要するに面倒だ、「ポ」なんて軟弱なヤツは、無視しちゃっていいじゃないか。「おまたせしました」は「おまたせしあた」、「札幌方面」が「さっぽろめん」に変わって、「ほう」は完全に無視される。

 おお、なかなか威勢がいいじゃないか。「すぴーっ、さっぽろめん、たるきです」とは「札幌方面、小樽行きです」の省略形。今井君はこういうの、大好きでござるよ。
ビール園1
(サッポロビール園の勇姿)

 北広島の駅を出た後で、この車掌さんが4号車内に登場したのである。「指定席券を拝見」ということなのであるが、諸君、車両最前列にいた今井君の前で、彼は何と「すぴーっ!!」を4回も繰り返した。

「すぴーっ、すぴーっ。ええー、ご乗車ありがとうございます。ただいまから、すぴーっ、指定席券を拝見いたします、すぴーっ」

 おお諸君、「生すぴーっ」である。録音された落ち着き払ったアナウンスではなく、こうして生すぴーっを最前列で堪能できるなんて、こりゃ素晴らしい北海道の旅になった。

 国鉄マンの息子として、かつてはこういう温かい車掌さんに憧れたものである。「路線の半分以上が経営危機」とか、悲しいニュースが伝えられるJR北海道だが、この車掌さんのおかげで、懐かしい昭和の国鉄北海道を生々しく思い出した。間違いなくあの頃が、国鉄の黄金時代だった。

 こうして今井君は、すっかり昭和の思い出にふけりながら札幌に到着した。クリスマスまで1ヶ月、夕暮れが近づいて気温は氷点下にさがり、イルネーションはますます冷たく冴え渡ってきたが、心の中はポカポカでありヌクヌクであって、こりゃどうしてもジンギスカンを貪りに行きたい。

 選んだのは、もちろんサッポロビール園。去年はちょっと郊外までタクシーを飛ばして、初めての「アサヒビール園」を試してみたが、あんまりお客さんが少なすぎて、うまく盛り上がれなかった。
ビール園2
(高級スペース・ガーデングリル。ここなら単独でも大丈夫だ)

 今年の選択は、サッポロビール園の中でもちょっと高級な「ガーデングリル」。数百名だか1000名超だか収容の大ホールも、その賑わいは悪くないのだが、何しろ少しワイルド過ぎる。ヒツジの煙が館内に充満して、人間のほうもヒツジのカホリの燻製みたいになってしまうのだ。

 何しろワタクシは、翌日に仕事を控えている。10時半から250人、14時半から200人。合計で500名に迫る勢いの大規模な公開授業を控えた身で、まさか「頭のテッペンから足の爪先までヒツジ臭」などと、ワイルドな行動をとるわけにはいかないのだ。

 ここはあくまで大人しく、「ガーデングリル」。ヒツジの肉も上品で、ロース・肩ロース・フィレみたいに、5つに分類した部位別に100gずつ注文できる。グリルもIHであって、ワイルドな炎がボーボー肉を焦がし、紫のケムがムンムン充満するようなことはない。

 今井君としては、やっぱり炎ボーボー&煙ムンムンなワイルドワールドが好き。ジンギスカンのタレも濃いめが好き。お酒もビールも安いのをグビグビが好き。仕事を控えて行動も控え目にしたわけだが、ジンギスカンもまたも上品で優しいヤツより、「すぴーっ」と鼻息の荒い、熱くて濃厚なヤツがいいなと実感したのである。

 羊の肉をどのぐらいワシワシやったか、ここに明記するのはヤメにする。このごろあんまり正直に書きすぎて、「先生、そんなに食べて大丈夫ですか?」と、本気で心配してくれる人も少なくないのだ。

 ホントに、大丈夫すぎるぐらい大丈夫だが、人に心配をかけすぎるのはよくないだろう。「ま、500gちょいぐらい」。諸君、心配してくださるな。「まだまだ余裕あり」というあたりでストップする常識は、この今井君にもちゃんと備わっているのである。

1E(Cd) Barenboim, Zukerman & Du Pré:BEETHOVEN/PIANO TRIOS, VIOLIN AND CELLO SONATAS 2/9
2E(Cd) Barenboim, Zukerman & Du Pré:BEETHOVEN/PIANO TRIOS, VIOLIN AND CELLO SONATAS 3/9
3E(Cd) Barenboim, Zukerman & Du Pré:BEETHOVEN/PIANO TRIOS, VIOLIN AND CELLO SONATAS 4/9
4E(Cd) Barenboim, Zukerman & Du Pré:BEETHOVEN/PIANO TRIOS, VIOLIN AND CELLO SONATAS 5/9
5E(Cd) Barenboim, Zukerman & Du Pré:BEETHOVEN/PIANO TRIOS, VIOLIN AND CELLO SONATAS 6/9
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