Mon 161031 朝は洛西、夕は東山/天龍寺/化野念仏寺/仁和寺/壹越・おかず焼き | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 161031 朝は洛西、夕は東山/天龍寺/化野念仏寺/仁和寺/壹越・おかず焼き

 京都のタクシー運転手さんとピッタリ意見が合ってしまったのだが、紅葉の京都を観光するなら、朝から午前いっぱいが嵐山を中心にした洛西、お昼を食べた後は次第に東に移動して洛中、夕暮れに東山にたどり着くようなスケジュールを組むといい。

 今日の首都圏は朝から雪、午後4時にはほぼ雪は止んだけれども、11月24日にして今年の秋は終わりになってしまったようである。「紅葉の京都」などという話も、何となく季節外れの感があるが、まあ諸君、今年はともかく、来年秋のスケジュールを組む参考として、長老・今井の意見をどこかに記録しておいてくれたまえ。

 紅葉は、日の光の当たり方によってその美しさが丸っきり違うものである。京都は丸い盆地状であるから、朝日を正面から受ける嵐山の東斜面が圧倒的にキレイだし、夕陽に照らされる東山の西斜面もまたバツグンの美しさである。

 その逆回りに京都を回って、「朝に東山、夕暮れに嵐山」などということをすれば、日の光は常に山の陰からやってくる。逆光の紅葉では、赤も黄色も黒っぽくくすんで、その魅力は半減するのである。
天龍寺
(午前9時、天龍寺のお庭が美しい)

 朝は嵐山、夕暮れが東山。そのルートにうまく洛南や洛北を組み込めば、忙しい日帰りの京都でも、最高の1日を過ごせるはずだ。陽が落ちたら、どこでもいいからライトアップされた紅葉に埋もれて涙を拭い、最終の新幹線で帰ってくればいい。

 だから11月16日、夕方から大阪・河内松原で公開授業がある日だったけれども、午前9時の今井クマ蔵は早くも嵐山・天龍寺の境内にいた。

 天龍寺は8時半ごろ開門。ほとんど10分刻みで観光客がどんどん増えてくるから、9時か9時15分あたりが限度。その時刻を過ぎれば、ガイドさんの旗を先頭に、団体ツアーと修学旅行生の天下に変わる。

 しかしまだ朝9時なら、静寂の中で絶景の庭園を満喫できる。同じ禅宗でも、曹洞宗と違って臨済宗のオボーサマたちは、庭園を前に禅をきわめる。庭園の奥には借景の嵐山がこんもりと赤く染まり、今年JR東海のCMに登場した見事な庭園が、朝日に照らされてマコトに美しい。

 薄い雲に隠れていた太陽が、雲の外に姿を現した瞬間、庭園を眺めていたヒトビトからどっと歓声が上がった。日が当たると当たらないとでは、カエデの赤もイチョウの黄色も、比較にならないほど輝きが違うのである。ワタクシなんかは、その瞬間の人々のドヨメキに一番感激したのであった。
嵯峨野
(嵯峨野・野宮神社から竹林に入る)

 永観堂・真如堂・東福寺の通天橋あたりの、余りに有名な紅葉を見に行こうとすると、京都の人は「そんなん、人ごみに揉まれにいくようなものやで」と顔を歪めるが、田舎モンの今井君なんかは、紅葉もさることながら人ごみも大好きなのである。

 桜の花やモミジの下で、この上なく嬉しそうに歓声を上げる人々を見るのも、お花見や紅葉狩りの醍醐味の一つなのだ。朝の天龍寺に太陽が帰ってきた瞬間、庭園に集まった数十名の京都通たちが、「おおおー」と深い感激の声を上げた。その感激の一員になれたのが、何とも言えず嬉しかった。

 天龍寺からは、少しずつ東に移動する。午前10時、大河内山荘はすでにたいへんな混雑であるから、これを回避して化野の念仏寺に向かった。

 途中、野宮神社あたりの竹林の眺めを満喫し、たわわに柿の実った落柿舎 ☞ 紅葉真っ盛りの常寂光寺&二尊院 ☞ 祇王寺の少しくすんだ紅葉、そういう定番中の定番を軽く眺めつつ、化野の細道を左にカーブすれば、静まり返った念仏寺は、意外な紅葉の穴場である。
化野念仏寺
(化野念仏寺。モミジの穴場である)

 諸君、嵐山から嵯峨野を横断すると、化野から先はもうホンモノの田舎の風景である。茅葺き屋根のオウチが並んでいて、「もとは庄屋です」と名乗るオウチの軒先で、気のいいオバーチャンが柚子や柿の実を売っている。

 初冬の朝の光の中で、柚子も柿もマコトに旨そうである。オウチの裏に柚子の樹が4本も5本も並び、軒先も柚子の香ばしいカホリに満ちている。あんまりいいカホリだから、柚子を5個一皿購入。ま、お風呂にでも入れて楽しもうじゃないか。

 その先には、鮎料理の名店「平野屋」の看板がある。屋根も緑に苔むして、お庭の赤いモミジと素晴らしいコントラストを見せている。もし季節が初夏から夏にかけてなら、貪欲なこと酒呑童子なみの今井君だ、上がり込んで鮎の十数匹も貪るところである。

 こうして、来年夏のスケジュールもどんどん決まっていく。7月中旬には、5年ぶりの祇園祭に来よう。午前中は山鉾巡行を満喫。昼すぎにタクシーに乗り込んで、化野の平野屋を目指そうじゃないか。

 ただしワタクシは、鮎料理につきものの「タデ酢」というものが苦手。カニを食べるのにも酢、鮎も酢、牡蠣にも酢、そんなに酢酢酢酢と酢ばかり活躍すると、日本全部が酸っぱくなっちゃう気がするのだ。

 鮎も意地でも「酢ナシで」。カニも絶対「酢ナシで」。酢を可能なかぎり遠くに遠ざけて、今井クマ蔵は酸っぱくない人生を送りたい。酸っぱくてもいいのは、あくまで柑橘系の果実のみ。酸っぱいカニや酸っぱい鮎なんか、邪道にしか思えないのだ。
平野屋
(あゆよろし。化野の名店「平野屋」あたりも、紅葉が見頃であった)

 というわけで、酢に対する敵愾心のカタマリと化したワタクシは、化野を後にして御室・仁和寺に向かう。ホントは「平野屋」でボタン鍋を注文してもよかったのだ。イノシシの季節、この店のボタン鍋は絶品であるらしい。

 しかしせっかくのボタン鍋なら、熱い日本酒を4合か5合はクイクイやりながらにしたい。この日は夕暮れから公開授業を控えた身、アルコールは厳禁であって、当然のことながらボタン鍋も延期せざるをえない。

 仁和寺は、嵐山から北野白梅町ゆきのチンチン電車ですぐのところである。徒然草にも登場、京都観光の目玉の1つであり、春の御室桜は有名であるが、話が「紅葉」ということになると、やっぱり永観堂や東福寺ほどの定番ではない。11時を過ぎたが、境内はまだ静まり返っていた。

 キリリと引き締まった五重塔が美しい。金堂の周辺の紅葉が真っ盛りだったし、勅使門から入った北側のお庭の眺めもスンバラシイ。修学旅行で訪れたらしい女子コーセーが数人、今井君を今井君と認識したらしくて、こりゃ油断もスキもないが、ま、無事に事無きを得たようである。
仁和寺
(御室・仁和寺にて。金堂周辺の紅葉が美しい)

 妙心寺道から北野白梅町に向かう交差点で、黒々と「壹越」と大書された大きな白い看板を発見。これで「いちこつ」と読む。フリガナもついているから、読み方は「いちこつ」で間違いない。何となくゴツい響きである。

 何の店かというに、同じ看板に「元祖 おかず焼き」に文字がある。「おかず焼き」。聞いたことがないが、「元祖」を名乗るからには、元祖ではない支流のお店の存在を前提としているはずだ。「おかず焼き」、京都では有名な食品なのかもしれない。いや、壷とか茶碗とか、そういう焼き物の名前かもしれない。

 タクシーの運転手さんに聞いてみると、「実はワタクシも知りません」とのこと。いつも静まり返っているので、京都人としても、なかなか闖入できない店であるらしい。

 大いに興味を惹かれるところであるが、闖入してみる勇気がない以上、グーグル先生に「おかず焼きって、なあに?」「壹越とは、なあに?」と尋ねてみるしかない。

 要するに、今川焼みたいなものらしいのである。ただし、「おかず」なんだから、中身は甘いアンコではなくて、ゴハンのおかずとしても成り立つものが入っている。

 牛すじ・タマゴ・ウィンナー・チャーシュー・チーズ・カレー・ハンバーグ・ポテトサラダ。おお、さすがに元祖であって、なかなか斬新な今川焼が揃っているらしい。諸君、次の京都旅行には、是非おかず焼き、ご賞味あれ。

 ただし諸君、今井君自身は「イチ、ぬーけた!!」であって、おかず焼きよりもやっぱり平野屋を優先する。ちょっと値段は高くても、鮎(酢ナシ)、ボタン鍋、そういういかにも京都らしいものを味わいたいと願うのである。

1E(Cd) COMPLETE MOZART/DIVERTIMENTI・SERENADES 9/11
2E(Cd) COMPLETE MOZART/DIVERTIMENTI・SERENADES 10/11
3E(Cd) COMPLETE MOZART/DIVERTIMENTI・SERENADES 11/11
4E(Cd) Harnoncourt:BEETHOVEN/OVERTURES
5E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES 1/6
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