Fri 161021 自転車で細道を快走する/元祖・天橋立/かさぼう/せこがに丼 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 161021 自転車で細道を快走する/元祖・天橋立/かさぼう/せこがに丼

 人は見かけによらないものだが、ワタクシもまさにその見かけによらない人物の代表格であって、スキーと自転車にはたいへんな自信をもっている。

 資格をとって見せびらかすのはメンドーくさいので、「○級取得」「○段所有者」みたいなことはないけれども、いったんスキーを足につければ、何級の人と競っても別に負ける気はしない。

 最後にスキーを履いたのは、すでに10年も前のことになるが、こういう類いのものは何年怠けていても、十何年を無為に過ごしても、そんなに下手になることはない。

 英語の勉強なんかだと、
「とにかく少しずつでも毎日継続することが重要だ」
「1日でも怠けると10日分は後退するよ」
「その10日分を取り返すのに、3ヶ月もかかるよ」
みたいな、マコトに厳しいおコトバで叱咤激励する人が多いけれども、スキーと自転車については、そんなコワいことは言いっこなしである。
かさぼう
(天橋立のマスコット・かさぼう)

 自転車のほうは、何しろコドモの頃は歩いている時間より自転車に乗っている時間の方が長いぐらいだったし、特に高校の3年間は毎日2時間もペダルを漕ぎまくった。

 自宅から高校まで、自転車で片道1時間。雨が降っても合羽を着て、雪が積もっても全然かまわずに、意地でも自転車で登下校した。高1の春に「5段変速」という豪華な自転車を買ったから、もう電車やバスに乗る気はしなくなった。

 5段変速などという贅沢なヤツは、まさに当時の最新鋭であったけれども、最新鋭というものは往々にしてしょっちゅう故障する。ギアを切り替えるたびにチェーンが外れて、修理するのに時間がかかった。

 しまいに修理が面倒になって、一番重くて速いギアに固定したまま、秋田の農村地帯を激走した。11月も半ばを過ぎれば、北西からの季節風が強烈だ。風速20メートルとか25メートルとか、台風なみの吹雪の中、一番重たいギアで走り続けた。

 フトモモが競輪選手なみに発達して、ズンボがキツくなるほどである。通っていた秋田高校は、小高い山の上にあって、昔は裏山にクマが出たりする恐ろしい場所。登校の締めくくりはその急坂を一気に登っていくのである。雨合羽を風になびかせて猛然とスパートするのが無類に面白かった。
元祖
(対岸からの天橋立。スカッと素朴な直線が美しい)

 雪が積もっても、自転車のスピードは緩めない。今思うとマコトに危険な日々であったが、融けた雪が朝の冷え込みで再び凍った道を走れば、タイヤがサクサク雪を砕いて、爽快さに目が覚める思いだった。

「お手手は冷たくないの?」であるが、諸君、むかしむかしの高校生男子と言ふものは、「お手手が冷たいよ」「手袋がほしいよ」などという軟弱な発言はしなかったのである。

「お耳はちぎれないの?」についても、心配はいらない。キツネのママが子ギツネ君をいたわるような心配は、全く無用なのである。想像してみてくれたまえ。当時は長髪の若き今井君が、その長髪を季節風に靡かせ、パンパンのフトモモで颯爽と雪道を行く。カッコいいじゃないか。

 ただし諸君、その場合、決してブレーキを使用してはならない。ギュッとブレーキを握れば、確実に転倒するのである。雪道でのブレーキは、靴の裏を使用する。右足と左足の両方を地面につけ、体重を左右均等にかけて、地面との摩擦を利用し、あくまで慎重に停止する。

 だから経験の少ないヨイコのみなさんは、決して雪道自転車などという非常識なことにチャレンジしてはならない。ヨイコはあくまでヨイコ。優しい母ギツネに甘えて「手袋がほしいよ」「お耳が冷たいよ」と、ヌクヌクあったかくしている方が幸せだ。
島々
(日本海に浮かぶ島々の絶景)

 さて、以上のような感慨を居抱きつつ、天橋立の今井君は向こう岸に向かって快走していた(スミマセン、昨日の続きです)。自転車に乗ったのは、8年ぶりである。高校卒業とともに自転車とはお別れ。新しい自転車を買うこともなく2016年まで来てしまった。

 途中、2000年ごろに小型の折りたたみ自転車を手に入れた。ちょうどVISAカードのポイントが貯まったので、ポイントを自転車に交換したのであるが、無料で手に入れたものには愛着がわかない。2度か3度乗っただけでサッサと処分してしまった。

 2008年、何度目かのヴェネツィアの旅で、レンタサイクルを借りた。ヴェネツィアにはいくつもの離島があって、ブラーノ島、ムラーノ島、リド島、そういう島巡りも楽しい。一番大きくて細長いリド島を、自転車で疾走することにしたのだった。

 リド島は、ヴェネツィア映画祭の島である。サンマルコ広場あたりから水上バス「ヴァポレット」に乗れば、約10分で到着。地図で確認してみてくれたまえ。こんなに細長く堤防みたいにのびた島は、滅多なことでは見つからない。自転車でも借りないと、ホンキで馬鹿馬鹿しくなるぐらいに馬鹿馬鹿しい。
文殊堂
(切戸の文殊サマにお参りする。みんな賢くなりますように)

 リド島の馬鹿馬鹿しい長さに負けず劣らず、天橋立もマコトに細長い。右も海、左も海、幅は30メートルほどしかない。松風の中、2008年以来8年ぶりの自転車で砂の細道を行く。我ながらあんまり馬鹿馬鹿しくて、「今井君、Youは何しに細道へ?」と問いかけたくなるほどである。

 対岸にもやっぱりリフトとケーブルカーがあって、山の上には展望台がある。天橋立と言えば、昔は専らこの対岸の山の上からの風景だったのであって、「股のぞき」の元祖もこちらである。読者諸君も是非近い将来、レンタサイクルで細道をわたって来たまえ。

 リフト乗り場では、マスコット「かさぼう」が待っている。マツカサ形のアタマをしたたいへん可愛らしいヤツであって、石作りの素朴なかさぼうもいれば、赤や青や黄色を使ったカラフルなかさぼうもいる。ワタクシとしては、素朴な石のかさぼうが好き。こういうものは、素朴なままが一番である。

 こちらの山からの天橋立は、すっと一直線に海の上を走っている。これまた素朴でスカッと爽やかな絶景である。クネクネ折れ曲がった天橋立より、こちらの素直でスッと爽快なほうが、石のかさぼうとともに、ワタクシは気に入ったのである。
せこがに
(日本海の名物「せこがに」。解禁されたばかりである)

 こうして諸君、夕暮れが近づいた。さすが11月も中旬であって、日の傾くのはマコトに早い。時計はまだ14時半であるが、空の雲がオレンジ色に染まりだして、トンビやカラスも「そろそろネグラへ」と気が急いている様子。暢気なのは、海に浮かぶカモメの諸君だけである。

 再び自転車にまたがって、松風の細道を快走。日本3大文殊の1つ・切戸の文殊サマにお参りして、生徒諸君のアタマがもっともっとよくなるようにお祈りしてきた。このへん、予備校講師のお仕事も、決して忘れていないのである。

 ついでだから、近くのお店に闖入して、「せこガニ丼」を貪った。せこガニとは、松葉ガニのメスであって、勢子ガニとか背子ガニと漢字を当てる。香箱ガニとも呼ぶ。兵庫県から京都府の日本海側、さらに越前から能登にかけての名物である。

 ちょうど11月上旬に漁が解禁されたばかり。この時期にこの地方を訪ねたら、コイツを食さないわけにはいかないのだ。内子・外子、もちろんカニの身も、全てたいへんおいしゅーございました。

 こうしてワタクシは、16時の電車で天橋立に別れを告げる。これから京都の亀岡に向かうのである。「亀岡で、何するの?」であるが、それはまた明日の記事を読んでくれたまえ。

1E(Cd) Solti & Chicago:BRAHMS/EIN DEUTSCHES REQUIEM 2/2
2E(Cd) Solti & Chicago:BRAHMS/SYMPHONY No.1
3E(Cd) Solti & Chicago:BRAHMS/SYMPHONY No.2
4E(Cd) Solti & Chicago:BRAHMS/SYMPHONY No.3
5E(Cd) Solti & Chicago:BRAHMS/SYMPHONY No.4
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