Thu 160908 シチリアは危険か/ホテル代を節約/飲み会の後の出発(シチリア物語1) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 160908 シチリアは危険か/ホテル代を節約/飲み会の後の出発(シチリア物語1)

 諸君、「シチリアに2週間滞在する」と決まったら、それなりの覚悟と準備が必要ではないだろうか。それこそ震え上がって「治安は大丈夫なんですか?」だろうし、「ゴッドファーザーぐらいしっかり見て、もう1度考え直したほうがいいんじゃないですか?」という人もいるだろう。

「カオス・シチリア物語」なんてのもある。ただの「シチリア物語」の前に「カオス」のヒトコトを入れただけで、何だかマコトにリアルな実感が伴うのであって、真夏のシチリアに旅立つとすれば、強烈なカオスや混沌と戦いぬく決意が必要な気がしてくる。

 しかし、そんなのは20世紀の幻想である。乱暴な男たちがそこいら中で拳銃やらマシンガンやらをかまえていて、引き金を引くことに全く躊躇しない。乱闘や銃撃戦のあとに血まみれの死体がワラワラ転がっている。そんなことを考えるのはテレビの見過ぎ、映画に溺れ過ぎであるに過ぎない。

 スリやカッパライが満載とか、「暗闇で強盗がこんにちは」とか、そういう発想もまた20世紀的、いや、19世紀的でさえある。シチリアは、G7発足当初から参加し続けている先進国代表イタリアの一部。今どき「強盗さんこんにちは」だの、日常的銃撃戦だの、そんなことがあるはずはないのである。
空から
(ヒコーキがシチリア・パレルモ空港に接近する)

 もっと言ってあげれば、シチリアは古代ローマ帝国の中でもおそらくもっとも平和で先進的な地域。シーザーやポンペイウス、カリギュラやネロの時代から、広大なローマ帝国の食料はシチリアとエジプトに依存していた。イメージとは全く違って、この島は豊かな穀倉地帯であり続けたのだ。

 だからこそ中世には、イスラムとキリスト教勢力の最も激しい争いの舞台になった。どうしたわけかそこに北欧勢力や海賊軍団まで割って入って、勢力争いはますます複雑怪奇になっていったのだが、島の大多数を占める富裕な農民にとって、マコトに迷惑な武力闘争だったに違いない。

 近世&近代になっても、迷惑な外部勢力の闖入は続くので、フランスまで侵入してきて争いはますます深刻化。ヴェルディのオペラ「ヴェスプリ・シチリアーニ」に描かれたような悲劇も起こる。

 和訳すれば「シチリアの晩禱」であるが、こんなのは地元民にとって迷惑至極であって、そういう小競り合いや乱闘の連続から、「コワい島」「ナイフを振り回してばかりのアブナイ島」「銃をぶっぱなしてばかりの危険な島」という血なまぐさいイメージが定着してしまった。

 しかし、この島はあくまで農業と漁業の島である。見渡すかぎり平坦の農地がどこまでも続き、峻烈な岩山を除けばほとんどが畑作地帯。黄金色に実った小麦畑を眺めるに、「なるほど古代ローマの繁栄を支えたのは、このシチリアだったんだ」と実感する。

 シチリアは言わば、地中海の北海道であり、南の海に浮かぶ庄内平野なのである。小麦畑の尽きる所には、オリーブ畑とブドウ畑。そのまた先には緑や黄色の大きなスイカが実り、大きくうねる農地の向こうで青い海が穏やかに光っている。
バスから
(空港からはバスでパレルモ市内に向かう。険しい岩山がどこまでも続く)

 こんな平和な島で「治安は大丈夫?」とブルブル震えているのが日本人。いやはや、新宿や渋谷や六本木のほうがずっとおっかないのであって、メッタヤタラに「治安」「治安」と怖がるのは、相手の国の人々に失礼である。

 ワタクシが「この夏はシチリア」と決めたのは、4月のフランス旅行の最中。ボルドーの旅の真っただ中、強烈な風邪を引いて高熱に悩まされ、ホテルのベッドでブルブル震えながら、「よーし、夏はシチリア2週間♨」と決意した。

 旅の予定は、マコトにシンプルである。まず、ヒコーキを予約する。もちろんエコノミー席だが、夏のシチリアとなると、どういうわけか普段の旅の倍近いお値段に跳ね上がっていた。

「おやおや、高いね」であるが、まあ致し方ない、どうしても夏のシチリアに行きたいので、ヒコーキが高ければ、ホテル代で取り返すだけのことである。

 そういえば、この4〜5年の今井君はずいぶん贅沢になったので、海外のホテルはもうずっとスイートルームが続いている。そろそろ反省したほうがよさそうだ。

 サンパウロ・リオ・ブエノスアイレス・パリ・ローマ・ベルリン・ナポリ・サンフランシスコ。シカゴ・ボストン・ワシントン・アムステルダム・イスタンブール・マルセイユ。考えてみればどこもかしこもスイート ☞ スイートの連続で、「ははあ、今井は物凄い給料をもらってるんだな」と誤解されかねない。
ワグナー1
(パレルモでは、自己申告5つ星ホテル・ワグナーに7連泊する)

 諸君、確認しておくが、ワタクシがこんなスイート三昧をしているのは、決して収入が溢れんばかりのバブル人生を送っているからではない。とんでもない。ひと昔前の「ヒルズ族」じゃあるまいし、そんなクダラン浪費のための浪費とはわけが違う。

 このスイート三昧は、むしろホテルチェーンの大サービスによる所が大きいのだ。たくさん旅をして、たくさん宿泊していたら、いつの間にかいろんなホテルチェーンからVIP扱いされるようになった。放っておいても、ホテル側から無料アップグレードを提供されてしまう。

 インターコンチでは「スパイア・ロイヤル・アンバサダー」のメンバー。オークラ&日航でも「ロイヤル」、ハイアットでも「プラチナ」。SPGグループでも同じだ。いやはや諸君、旅をしたまえ、たくさん旅をしたまえ。雪だるま式にステイタスが高くなって、「スパイア」、つまり「テッペン」「天空」にたどり着く。

 しかし今回のシチリアは、ヒコーキ代で予想外に高額の出費を余儀なくされた。ホテル代で一気に取り返すには、部屋のグレードを下げたほうがいい。別にスイートなんかじゃなくていいのである。

 しかもシチリアで1週間ずつ滞在するパレルモとシラクーサには、インターコンチもハイアットもSPGも1軒も存在しない。初めてエクスペディアを利用する。「格安ホテルで旅をしましょう」という世界である。もちろん覚悟は出来ている。
ワグナー2
(パレルモ、ホテル・ワグナーのエントランス。ありゃりゃ、誰も迎えに出てこない。これがホントに5つ星?)

 予約したのは、パレルモで「グランドホテル・ワグナー」。シラクーサでは「グランドホテル・オルディージャ」。ともに「5つ星」ということになっているが、その5つ星はおそらく自己申告の5つ星であって、実際に宿泊した人の評価では「4つ星ですな」「いやいや、3つ星でしょう」といった世界である。

 旅立ちの前に、とりあえず今年の授業収録は、キレイサッパリ全てカンペキに完了した。ついでに8月27日、シチリアへの旅立ちの12時間前から、激しい飲み会に参加した。大学学部時代の友人たちと、蕎麦をすすり寿司を貪ったのである。

 昼1時から夕暮れ7時までそんなことをやっていて、そのままシチリアに旅立とうというのだから、旅のベテランというものはマコトに恐ろしい精神力をもっている。

 昼1時から6時間で、飲み干した日本酒は7合を超えている。こんな泥酔状態で、2週間分の荷造りを1時間もかからずに済ませてしまった。夜9時、予約したタクシーがきて、羽田まで30分足らず。現金5万円をユーロに両替して、いざ旅立ちである。

 羽田のスイートラウンジで2時間ヒマをつぶす。その2時間で翌日分のブログもアップ。「後顧の憂いナシ」という状況をカンペキにしてから、諸君、例の狭苦しいエコノミー席にクマ助の太った肉体を嵌め込んだ。
ワグナー3
(ホントにだーれも出てこない。この階段も、自ら25kgのスーツケースをかかえて一気に駆け上がった)

 いつもなら無料アップグレードで「プレミアムエコノミー」に潜り込めるのだが、今回はネットが混み合っていてそれもダメ。新幹線のB席みたいな窮屈さであるが、フランクフルトまで12時間、ひたすら耐えに耐えるのである。

 しかし、準備不足のようでいて、実は準備万端だ。ゴッドファーザーのシリーズだって、パート1からパート3まで全てもう1度見直した。マーロン・ブランドも、アル・パチーノも、役の上ではみんな見事な大往生を遂げたのである。

 パート3のラスト30分は、パレルモのオペラ座「マッシモ劇場」が舞台。宿泊するホテル・ワグナーは、その「マッシモ劇場」と、もう1軒の老舗「ポリテアマ劇場」に挟まれたあたりである。

 おお、こりゃ楽しみな2週間だ。狭い&狭いエコノミー席でニタニタ不気味に笑いながら、クマ助はとりあえず、乗り継ぎのフランクフルトを目指したのである。

1E(Cd) Haydon Trio Eisenstadt:JOSEPH HAYDN:SCOTTISH SONGS 17/18
2E(Cd) Haydon Trio Eisenstadt:JOSEPH HAYDN:SCOTTISH SONGS 18/18
3E(Cd) Mehta&London:BERLIOZ/SYMPHONIE FANTASTIQUE
4E(Cd) SCHUBERT:ERLKONIG SUNG BY 18 FAMOUS SINGERS
5E(Cd) TOSHIYUKI KAMIOKA&WUPPERTAL:SCHUMANN/SINFONIE Nr.4
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