Tue 160830 雨の1年/貴婦人と一角獣/今後の旅行計画(ボルドー春紀行43 最終回) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 160830 雨の1年/貴婦人と一角獣/今後の旅行計画(ボルドー春紀行43 最終回)

 9月23日、今日もまた強めの雨が降っている。午前中は静岡県浜松にいて、お昼ごろの新幹線で東京に帰ってきた。浜松も雨、静岡も雨、熱海も雨。天竜川も富士川も大井川も、茶色い濁流が広い河原に溢れて、梅雨の末期の豪雨さながらであった。

 横浜も雨でまさに「恋人も濡れる街角」、もっとも新幹線で通過しただけであるから、横浜の恋人たちが濡れていたのを確認できたのは、遥かな昔「横浜のチベット」と呼ばれていた新横浜駅周辺に過ぎないが、とにかくイヤな雨が10日間、止まずに続けて降り続けているのは確かである。

 帰ってきた東京も雨。新宿にちょっと立ち寄って、3年前に購入したメガネの修理を済ませ、こうしてオウチに帰ってきてブログを書きはじめてみると、「今年はホントに雨にたたられたな」と実感するのである。

 10日前まで滞在していたシチリアのシラクーサだって、連日の雨に悩まされた。タオルミーナも初日は激しい雷雨に襲われた。4月、カルカソンヌも雨、ナルボンヌも雨、バイヨンヌも雨。3日連続して雨に濡れ、その結果あんなにヒドい風邪を引いて、旅の後半は散々だった。

 思えばその後も、ビアリッツも雨、2回目に訪ねたバイヨンヌもまたまた雨、モンサンミシェルからの帰り道も雨。パリでも雷が鳴って冷たい夕立に見舞われた。こういう年もあるので、9月19日の金沢も雨に降られた。
タピストリー
(クリュニー中世美術館にタピストリーを見にいく)

 さて、こうして43回にわたり微に煎り細を穿って書き続けてきた「ボルドー春紀行」も今日が最終回になる。いやはや、今回もずいぶん粘り強く書きまくりましたな。

 もうパリのホテルはチェックアウトしたのだし、まだ粘って「オー・ピエ・ド・コション」で生牡蠣も思う存分むさぼったのだから、素直に「帰国の途へ」をやればいいようなものであるが、さすが今井君、旅のラストは「クリュニー中世美術館」へ。「貴婦人と一角獣」を眺めて帰ることにする。

 3年ほど前、この有名なタピストリーは東京と大阪にやってきた。NHK「日曜美術館」でも取り上げた。ボクチンはずっと「タピストリー」だと思っていたのだが、担当の女性キャスターは「ト」の字なしに「タピスリー」を連発、どうも違和感があったのを記憶している。

 もちろん英語では「tapestry」あっても、フランス語のスペルならば「tapisserie」であって、「t」の字は入らない。フランス語に忠実に発音すれば「タピスリー」で全く問題なし。ワタクシの違和感が余計なだけだが、今井君としてはコイツはあくまで「タピストリー」でござるよ。
クリュニー駅
(地下鉄、クリュニー・ラ・ソルボンヌ駅。さすがパリ、駅名表示もオシャレである)

 15世紀フランドルで織られたものと言われ、「中世の秋」で有名な作品。6枚の連作は、それぞれ視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚の感覚を表現し、残る1枚は「我が唯一の望み」を表す。

 おやおや難しい。「我が唯一の望み」とは何ぞや。専門家の皆様は、「愛」であり「理解」であるとおっしゃる。マコトに難しいお話ではあるが、まあともかく、貴婦人と一緒に描かれた一角獣の表情はすこぶる可愛らしいじゃないか。

 旗を掲げたライオンさんも可愛いし、おサルさんもうさぎさんも文句なしに可愛らしい。こういうものを眺める時には、いきなり難しいほうに話をもっていって偉そうにフガフガ鼻を鳴らすより、「おお、うさぎさん可愛いね」から始めるほうが正しいのだ。

 貴婦人とユニコーンの背景には、美しい赤の地にたくさんの花や小動物が散りばめられて華やか。これもまた専門家のダンナは「宇宙観を示すものである」とフガフガするのであるが、「キレイだな、花の数は1000を超えるかな」ぐらいにウットリすることから始めようじゃないか。

 花が1000あるから、これをミルフルールと呼ぶ。フランス語のスペルならmille fleurs、日本語では「千花模様」ないし「万華模様」と呼ぶんだそうな。
拡大図
(貴婦人と一角獣、「視覚」の拡大図)

 お、ということは諸君、今井君がCMでお得意☞「ミルフィーユ」とも何か関係がありそうだ。ミルフィーユとは、フランス語のスペルでは「mille feuilles」☞「1000枚の葉っぱ」であって、ミルフルールとミルフィーユは一対をなすものなのである。

 ミルフィーユは「食べにくい」とか、いろいろ評判が悪いかもしれないが、それは真上から思い切りフォークで圧迫するからである。そんなことしたらグシャッと潰れちゃう。クリームがにゅっとハミ出てみっともない。アイツはまず横倒しにして、1000枚の葉っぱに垂直にナイフを当てて召し上がるものである。

 その今井君独特「ミルフィーユみたいに単語・文法・音読」のCMポーズが、LINEのスタンプに登場するらしい。メールで連絡がきて「東進公式スタンプ、10月4日からLINEユーザーに公開予定」とのことである。

 自分のスタンプを見てみるに、おお、こりゃいいじゃないか。「Good Morning」の文字の下で、キウィみたいな笑顔の今井君のミルフィーユポーズが、マコトに可愛らしい。10月4日以降、爽やかな朝のLINEに是非とも使ってくんなまし。
うさぎさん
(タピストリーのうさぎざんが可愛い)

 閑話休題、といってもどこからどこまでが「閑話」で、どこからどこまでが本題なのかサッパリ分からないだろうが、諸君、オトナの話術というものは、常にそういうものなのだ。

「本題」と称するものの合間に散りばめられた「脇道」こそ、実際には本題そのものであったり、本題に入る前のちょっとした季節の話題の中に、最重要な情報が隠されていたり、その辺の機微が分からないで「余談が長過ぎる」とか文句を言っているのは、要するに精神年齢が低いだけである。

 ま、こんなふうにして「貴婦人と一角獣」を堪能、うさぎさんや獅子やミルフルールの美しさ&可愛さにすっかり感激しつつ、ワタクシはクリュニー美術館をあとにした。ソルボンヌにもほど近い大学の街であるが、激しい春の雨の中、行き交う大学生の姿はまばらである。

 これでもう、東京に帰るのである。雨に濡れるメトロの駅に駆け込み、モンマルトル方面ゆきの電車に乗り込んでオペラ座前のホテルに戻った。スーツケースを転がしてロワジーバスヘ。オペラ座のすぐ横から空港ゆきバスが出るので、タクシーよりずっと便利である。
メトロ
(雨の日のメトロはいっそう幸せな気分になれる。トンネルの上に「モンマルトル方面」の表示がある)

 バスの中で、「それでは次はどこへ行くかな」と、今井君は早くも舌なめずりを始めていた。9月のシチリアは、この時点でもう計画が決まっていたから、問題はシチリアの次である。

 まず、何と言ってもキューバに行かなきゃ。グズグズしていればどんどん21世紀の要素が入り込んで、20世紀中頃のままのキューバの醍醐味は雲散霧消してしまうだろう。

 10年前の計画では、この時期からはチュニジアを中心に地中海南岸を闊歩する腹づもりだった。しかしこんなに国際情勢が悪化したんでは、夢見ていた地中海南岸のほとんどは、しばらく自重するしかない。

 そこで浮上してきたのが、ロシア全域である。モスクワにサンクトペテルブルグ、この2都市を放っておく手はないだろう。ウクライナの首都キエフも見に行かなくちゃいかん。ポーランドやルーマニアもまだだし、中米はほとんど手つかずのままだ。

「おお、これはナンボでも可能性が残ってるじゃないか」であって、1つの旅行記を締めくくるにあたり、「次はどこにすっかね?」とニヤニヤよだれを流したりすれば、こうしてマコトに楽しい気分なれるものである。

1E(Cd) Jaco Pastorios:WORD OF MOUTH
2E(Cd) Anita Baker:RAPTURE
3E(Cd) Anita Baker:THE SONGSTRESS
4E(Cd) Anita Baker:RHYTHM OF LOVE
5E(Cd) THE BEST OF ERIC CLAPTON
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