Tue 160628 スーツケース君との会話/全体開講式/クラス開講式/基礎基礎基礎の基礎徹底 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 160628 スーツケース君との会話/全体開講式/クラス開講式/基礎基礎基礎の基礎徹底

 「こなみ」のウナ重で満腹してホテルに帰ってくると(スミマセン、昨日の続きです)、生徒たちはすでに5階の大広間に集合して、ひたすら音読を続けている。この宿舎で合宿する全員が声を合わせるわけだから、その大音量ぶりは「耳をつんざく」というレベルまで達している。

 しかもこの段階で音読しているのは、「単語」である。単語1つ1つをバラバラにして声を張り上げるわけだから、初めての生徒でもナンボでも大きな声が出る。高校3年間、体育会系の部活で鍛え上げた腹筋を駆使して、男子も女子もたいへんな声を出している。

 しかも、まだ初日。というか、何にも始まっていない。疲労度ゼロ、エネルギー満タン、若い心がボーボー音を立てて燃え上がっているところだから、音読の声に限度と言うものがない。

 ま、考えてみればかなり滑稽な情景かもしれなくて、数年前にも書いたけれども、声を張り上げて発音している単語は、まず名詞編で「砂漠!!」「妥協!!」「孤独!!」「印象!!」。次に動詞編のページに移って「非難する!!」「提供する!!」「限定する!!」「努力する!!」と続く。

 正直言って「何やってんの? この人たち?」と、思わず噴き出してしまうが、まあいいじゃないか、「エネルギーを発散させてるんだ♨」「青春してるんだ♡」ということで、笑顔で見守ろう。
富士山
(河口湖。向こうに富士山が見えるはずだが、ご覧の通りである)

 ホントの音読は、この後クラス開講式を経て初めて開始されるのだ。1つ1つの単語をバラバラに発音するなんて、そりゃ確かにオモロい&オモロすぎる光景だが、今はまず余計なエネルギーを除去している最中。お肉やウナギを焼くにも「余計なアブラを落とす」はたいへん重要な仕事である。

 いったんお部屋に戻って、自分の荷物を並べる。宅配便で一昨日送っておいたスーツケースは、もうとっくに部屋に運び込まれていて、待ちくたびれた顔で今井君を待ち受けていた。

「遅いじゃないか」
「バスがノロノロ運転だったのか?」
「遅かった上に、いきなりウナギなんか食べにいくなよ」
「今年の合宿は、富士山がちっとも見えませんな」

スーツケースどんも、8年も付き合っていればこんな生意気な口をきくのである。もちろんスーツケース語であるが、ネコ語も分かる今井君は、スーツケース語だってキチンと分かってあげられる。

 その種のコトバの理解には、何よりも優しさが必要。優しさと想像力さえ充実していれば、ネコが「うにゃにゃ」と言っただけで、文章にして7〜8行の中身を理解してあげられる。

 真夜中にニャゴロワが階段の上から今井君をジッと眺め、「何だアンタか」という表情で「うにゃにゃにゃ」と伸びをする。1階の暗い廊下からニャゴを見上げてそのコトバを翻訳すれば、その翻訳だけでブログ1日分が埋め尽くされるほどである。
クラス開講式
(クラス開講式)

 だからスーツケース君の嘆きも、すぐに理解できるのである。
「暑い倉庫でずっとガマンしてたんですよ」
「何だ、着いたと思ったら河口湖ですか。近場ですな」
「最近はあまり遠出をしませんな。12月のベルリン、4月のボルドーは楽しかったですけど、次の遠出はいつですか?」

 まあそんなところである。「ハイハイ、もうすぐシチリアに連れていってあげますよ。パレルモ。シラクサ。あと1ヶ月ガマンしてなさい」と答えると、スーツケース君もひとまず不満を口にするのをヤメにした。

「とにかく早く中身を出して、楽にしてください」
「ワタシだって疲労もしますよ。スーツケースの1年は、人間なら10年分。2007年から働いてるんですから、ワタシももう9歳。人間なら90歳という計算ですな。そろそろお役御免、老後をゆったり過ごしたいもんです」
スーツケースどんはいつまでもムクれているのであった。
部屋
(講師のお部屋)

 中身をみんな出してあげて、教材その他をテーブルと机の上にキレイに並べた。ホテルのご好意で、今井君の部屋には特別にデスクとチェアが運び込まれている。3年前に初めてお願いしたのだが、昨年も今年も黙っていてもこうしてチャンと用意してくれた。感謝&感謝、また感謝である。

 諸君、ワタクシは言語道断に肉体が固い。前屈なんか、ヒザから10cm下ぐらいまでしか届かない。人が見れば爆笑し、自分で自分の前屈を鏡に映して、余りの惨めさに苦笑するしかない。

 そういうガチンガチンの肉体には、畳のお部屋で10日を過ごすのはほとんど拷問のようにツラいのである。公開授業後に「懇親会」「祝勝会」に意気揚々と出かけていって、そこで万が一「お座敷です」「板敷きにザブトンです」ということになると、うーん、我が肉体は1時間ももたない。

 折りたたみ式のデスクとチェアを用意してもらっているのはそのせいであって、おお、ラクチン&ラクチン。これなら授業の準備なんかも快適にできそうである。
黒板
(教室の黒板。ポータブル3枚、ビールケースにくくりつけて並べる)

 さて、13時15分、宿舎単位の全体開講式を行う。ホテル美富士園は、合計300人ほど。生徒全員の前で講師が挨拶するのであるが、今井君の挨拶はこの10年全く変わらない。難しい話をするのは教室単位でいい。ワタクシは生徒諸君とともに「ポンッ!!」「タアーッ!!」の雄叫びをあげるだけである。

 14時30分、クラス開講式。ワタクシの担当するクラスは、H1クラス。Hの他にSやBがあり、HはHIGH、SはSTANDARD、BはBASIC、マコトに当たり前なクラス分けであり、HSBそれぞれを成績順に1組から5組とか6組とか7組までに分けている。

 だからH−1クラスはたいへん優秀である。生徒の所属高校名一覧や志望大学一覧を眺めるに、「うぉ、こりゃ優秀だ」と、思わず呻き声をあげるほどであるが、東大に早慶に難関国公立に医学部、いやはや、これは張り切って難しいことをズラズラ述べ立てなきゃいかんね。
アンヨ
(黒板のアンヨ、拡大図)

 しかし諸君、ワタクシはそういうのはキライなのだ。どんなに優秀な受験生でも、どれほど難関大学を志望していても、常に大切なのは基礎&基礎&基礎の基礎徹底である。文法・単語・音読のミルフィーユである。この合宿も、「ミルフィーユをどれほど分厚く積み上げるか」が勝負。それ以外のことは考えない。

 これからの4泊5日で、彼ら彼女らは200ページ以上もあるテキストを1日10時間以上音読するのである。目標音読回数は20回。テキストを開かなくても音読ができる、文字を見なくても英文がポンポン出てくる、目指す状況はそれだ。

 写真でご覧の通り。黒板はポータブル。これをビールケースにくくりつけて3つ並べた独特のスタイル。ハード面は確かにこんなもんだが、勝負はあくまで中身であって、そのへんをシッカリ理解できている選りすぐり質実剛健な生徒諸君だけが、今ここに集まったわけである。

1E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER①
2E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER①
3E(Cd) Gergiev & Kirov:TCHAIKOVSKY/Symphony No.6
4E(Cd) Akiko Suwanai(v) Fischer & Budapest:SARASATE/ZIGEUNERWEIZEN
5E(Cd) Joe Sample & Lalah Hathaway:THE SONG LIVES ON
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