Fri 160617 山口大学医学部教室でガイコツと共演/お茶々の宴/厚狭駅のシュールな静寂 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 160617 山口大学医学部教室でガイコツと共演/お茶々の宴/厚狭駅のシュールな静寂

 7月9日、山口県宇部での公開授業は、18時半開始、20時10分終了、出席者150名。会場は山口大学医学部の教室であった。

 国立大学の医学部になんか、滅多なことで闖入できるものではない。模試の偏差値70も80も取り続けて、やっと受験に漕ぎ着ける。そういう難関をくぐり抜けなきゃいけない、まさに至難の道である。その教壇に、ついにこのクマ助が立ったのである。いやはや、マコトにおめでたい。

 昨日の写真に大っきなガイコツどんがぶら下がっていたのも(スミマセン、昨日の続きでございます)、要するにそういうことだったのである。国立医学部のエラーい教授先生閣下が、きっとこういうガイコツを使用しながら、エラーい&むずかしーい講義を展開あそばしますに違いない。

 しかし今井君は、そういうエラーい&高貴な教授閣下とは違う。なさけなーい予備校講師に過ぎない。「そんなにアタマがいいのに、何で予備校講師のままでいるんですか?」と疑問を呈した人物もいる。「要するに『天下一の怠け者』ということですか?」と、ド真ん中をついてきた人もいた。

 すると諸君、今井君は怒り心頭に発するのである。とんでもない。今井君が怠け者であるかどうか、「8年間書き続けたこのブログの蓄積が目に入らぬか?」であって、今井君ほどに生真面目で誠実で粘り強く努力を継続できるクマなんか、この世に存在しないのである。
厚狭
(厚狭。これで「あさ」と読む)

 というわけでワタクシは「怒り心頭に発する」の状態から、むしろ「怒り心頭にハッスル」と書き換えていいほどに教壇でハッスル。選挙戦最終盤の立候補者よろしく激しい熱弁をふるい、英作文を15問を解き尽くし、ジュッと湯玉が飛び散る火のようなアジテーションも繰り返した。

 その勢いたるや、軽い気持ちで見学にきてみた保護者のパパが、爆笑の果てに机の上に倒れ込みそうになり、ママたちはママたちで、爆笑と感動と感激の末に感涙とどまるところを知らず、そういうありさまであった。

 こうなると、「初めて東進にきてみました」という外部生諸君も、昨日まで受けていた他塾の授業がほとほとバカバカしくなって、「何であんな授業にオカネをムダにしてきたんだろう」と嘆きつつ、一斉に今井君の招待講習に申し込みを済ませて帰る。

 しかも、ただ単に「今夜から直ちに」というだけではない。
「走って帰らなきゃイカん」
「走って帰って、直ちに始めなきゃイカん」
ということになっている。

「弟にも、妹にも、部活の後輩たちにも『英語は音読だ』『英語は今井だ』『単語・文法・音読。イマイ流ミルフィーユだ』と伝えなきゃイカん」
「周囲まで巻き込む激烈なスタートダッシュを切らなきゃイカん」
まさに烏賊パワー全開なのである。
獺祭
(宇部で「獺祭」をいただく)

 マグマのように熱く燃え、ジュッと無数の火花を飛び散らせて、山口県宇部の諸君に燃える闘争心を植え付けた後は、もちろん冷たく冷えた黄金色の液体で自らの心を冷やさなければならない。夏の盛りにこんなにボンボン熱く燃えていたんじゃ、精神も肉体も熱中症にかかっちゃう。

 懇親会場は、雰囲気のいい居酒屋「お茶々」。店のカウンターには阪神タイガースのウルトラ♨ファンらしい地元オジサマがドッカと腰をおろし、7−1のタイガース劣勢に激烈な罵声を浴びせていらっしゃった。

 1日中待ち望んだ冷たいビアで精神と肉体を潤した後は、おいしい和食のコースである。お刺身 ☞ メバルの煮付け ☞ 天ぷら ☞ その他いろいろ ☞ 〆のお蕎麦。山口の名酒「獺祭」も2本カラッポにして、2時間はあっという間に過ぎた。すべて、マコトにおいしゅーございました。

 思えば先月の初旬から始まった夏シリーズは今が折返点。これから後半戦に突入するわけであるが、もうワタクシの疲労は極に達している。疲れた。疲れ果てた。マラソンなら30km地点、野球の先発投手なら6回裏2アウト、でもランナー1塁2塁な感じの、マコトに暑苦しい圧迫感がある。
寝たろう
(厚狭駅前、「三年寝太郎」が夏の静寂の中に立ち尽くしていた)

 しかし諸君、今井クマ助は絶対にヘコタレナイ。どうしてそんなに強靭な精神力が身についたのか、自分でも不可思議であるが、とにもかくにもどういうわけか今や我が精神は「史上マレに見る」というレベルの強靭さを発揮している。

 これほど強靭な心が、もし受験生の頃のワタクシに備わっていたら、東大理科Ⅲ類だって夢ではなかったかもしれない。そのまま東大医学部に進学して、今ごろはエラーい教授、うんにゃそれどころかノーベル賞候補、そんな所まで行ってたかもしれねえぜ。いやはや、やっぱり疲れてますな。

 翌日午後2時、宇部から下関に移動する。これがなかなか大変だ。東京から札幌にヒコーキでビューン、大阪から福岡まで新幹線でビュワーン、そういうのはラクチンであるが、宇部から下関となると、田んぼや畑や名もない山道をエッチラ&オッチラ、したたる汗を拭いつつ、ロバさんよろしくノンキに進むしかない。

 宇部のホテルから、まずタクシーで厚狭に向かう。厚狭と書いて「あさ」と読む。今年3月まで日本中「あさが来た」に夢中だったが、夏の今井クマ助は「あさに来た」をやったわけである。
ななせ
(厚狭駅の蕎麦「ななせ」。クーラーの効いた空間はここだけだ)

 諸君、一生に一度でいいから「厚狭」を訪ねてみたまえ。人っ子一人いない夏の静寂を味わってみたまえ。駅南の新幹線口には、なぜか薬局が一軒のみ。他には店もなく、家もなく、人影もなく、犬も猫もカラスもいない。

 15年前の映画「バニラスカイ」で、トム・クルーズは無人のタイムズスクエアを疾走した。そのシーンで彼の左腕に光っていたのが、IWCの時計。「おお、いいね」と思ってワタクシも、IWCの時計を身につけている。いま今井君は真夏の厚狭の駅前で、バニラスカイと同じシュールな静寂を味わっていた。

 駅北口に回っても、静寂は変わらない。日陰のベンチでうなだれるジーチャンが1人、バーチャンが2人。タクシーが2台客待ちをしているが、運転手さんとしては「まさか乗る客はいないだろう」というスタンスで、タバコを心ゆくまで楽しんでいる。

 この駅前に、飲食店が2軒だけ存在する。1軒は古色蒼然とした「二反園旅館」。昭和の中頃に置き去りにされた旅館であって、最後に宿泊したのはおそらく「はぐれ刑事・純情派」の安浦刑事あたりだと思われる。

 もう1軒は、要するに「駅そば」であるが、ワタクシはこの「うどん そば ななせ」を選択。誰もいないカウンターに座って「ゴボウ天そば」を注文したみた。
ごぼう天
(厚狭駅「ななせ」のゴボウ天そば。丸い天ぷらが哀愁を誘う)

 別にそんなもの食べなくてもいいのであるが、冷房の効いている空間が他に見つからない。7月10日、梅雨まっただ中の猛暑の日曜日、暑がりのクマどんがクーラーなしに10分も過ごせば、即座に「熱中症の危機」に至るのである。

 ワタクシとほぼ同年代と思われる店のオバサマと雑談してみたところ、「滅多にお客さんは来ません」「東京のカタはホント珍しいです」とのこと。丸く固めたゴボウ天を蕎麦の出汁にジュッと浸しながら、「何で厚狭なんかに?」と質問を返してきた。

 しかし諸君、20世紀の前半まで、この厚狭は山陽本線の中でも指折りの大事な駅だったのだ。東京⇔九州を往復する寝台特急も、この駅にはほとんどが停車した。

 内田百閒「阿房列車」にも、厚狭駅についての言及がある。野良猫出身の雄ネコ「ノラ」が失踪し、日々熱い涙にくれていた百閒先生は、心配した弟子たちに連れられて出かけた熊本八代への旅の途中、厚狭駅を通過した感慨を「阿房列車」に記している。

 そういうことをオバサマに語りつつ、新幹線の到着を待った。これほど静まり返った21世紀の厚狭でも、「こだま」だけは停車するのである。汗まみれでドロドロの今井君も、しばし百閒先生になったつもり。夏の駅の深い静寂の中に身を置いてみたのであった。

1E(Cd) Holliger & Brendel:SCHUMANN/WORKS FOR OBOE AND PIANO
2E(Cd) Indjic:SCHUMANN/FANTAISIESTÜCKE CARNAVAL
3E(Cd) Argerich:SCHUMANN/KINDERSZENEN
4E(Cd) Solti & Chicago:MAHLER/SYMPHONY No.1
5E(Cd) Solti & Chicago:MAHLER/SYMPHONY No.4
total m93 y1025 d18730