Thu 160609 「九州でブラブラ1週間」の困難/「なんにもしない」を書いてるところ | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 160609 「九州でブラブラ1週間」の困難/「なんにもしない」を書いてるところ

 7月1日、まだまだ九州シリーズは始まったばかりだが、いったん福岡から東京に帰ろうと思う。1日に帰京して、3日にはまた鹿児島に向かう。鹿児島の次はまた福岡、次が熊本、その次が山口2連発。そんなら何も今日東京に帰らなくても、そのまま九州をブラブラしていればよさそうなものだ。

 そのへんが「趣味は移動か?」と皮肉られる所以なのだろうが、「九州をブラブラして1週間」というのは、まさに「言うは易く行うは難し」の好例であって、中年男が1週間も1人でブラブラするのはなかなかの難事である。

 そりゃ九州なら、いい温泉だってたくさんある。湯布院でも黒川でも指宿でもいいし、霧島に雲仙に別府、意外に知られていない「妙見温泉」なんてのもいいし、佐賀の武雄温泉も有名だ。

 福岡県柳川の近くに「船小屋温泉」と言ふ炭酸泉の名湯があって、6月初旬の段階ではその船小屋なるものに大いに興味を引かれていた。「うーん、1泊予約すっかな」「ヌルい炭酸泉にジックリ浸かってくっかな」と、いったんは予約のボタンをクリックしてみたのである。
空港イカ
(帰りの福岡空港でもイカの姿づくりにチャレンジ。「全刺し」をお願いしたが、やはり「河太郎」と比較するのは可哀そうだ)

 しかし諸君、何と言っても「船小屋」だ。船小屋とは「船をしまっておく小屋」であって、クマやサトイモが身の程知らずにノコノコ入り込めば、キツく叱られるのが関の山。クマにはクマ小屋、サトイモにはイモ小屋。クマが船小屋に潜り込むのは、田舎のジーサマが渋谷109に潜り込むみたいなもんである。

 しかも万が一「船小屋温泉でじっくり温まろう」と決意したところで、実際の温泉旅館が今井君のテイストに合わない。諸君、こう見えてもワタクシは大の高級好みだ。

 パリでもマルセイユでもボルドーでも、お部屋はみんなプレステージスイート。確かに無料アップグレードしてもらった部屋ではあるが、そりゃ諸君、「腐っても鯛」であって、とにかくスイートはスイートだ。シカゴもサンパウロもベルリンも、ずっとスイートで通してきた。

 それなのに「船小屋温泉」ということになると、めぼしい旅館は「樋口軒」と「船小屋別荘」の2軒しかない。「樋口軒」もなかなか味わい深いが、諸君、「船小屋別荘」で画像検索してみたまえ。うーん、やっぱりここに入り込むには、ジーチャンの109以上の覚悟が必要だ。
淡路島
(東京に帰っても、結局は西新宿のこんな店に入ってしまう)

 ならば一気に超高級を狙って、湯布院「無量塔」あたりはどうでっしゃろ。「無量塔」と書いて「むらた」と読む。もうそのあたりで十分クマには侵入困難だが、古民家を移築した広大な離れの部屋に、「中年男が1人でご宿泊」となれば、うにゃ、またまたジサマ109の困難に遭遇する。

 もしワタクシが昭和のエラい作家先生なら話は別だ。谷崎潤一郎や川端康成だというなら、ドテラに懐手で朝飯、朝飯ついでにヒトップロ浴びて、も1つついでに瓶ビール3本。そのまま昼食に突入して日本酒をお銚子に3本、酔っぱらって眠くなって昼寝。晩飯にお銚子5本、そのまままた眠くなって熟睡。それもいいだろう。

 しかしワタクシの今のアリサマを見たまえ。要するに中年のクマであって、このごろ日本中で暴れ回っているクマどんが、高級旅館に上がり込んでお酒を注文したりすれば、鉄砲かかえた猟友会の皆さんが慌ててやってくるだろう。おお、恐ろしい。とてもそんな高級な宿には宿泊できまへん。
ざるみせ
(お店のヒトが見せてくれた淡路島直送のお魚さんたち。鯛・鯖・メバル。この中から今井君は大胆にも一番デカい鯛を選択した)

 というわけで、「九州をブラブラ」は断念せざるを得ないのだ。もちろん普通のホテルに部屋をとって、「マジメに勉強や予習や執筆に励む」という選択肢は残っている。しかし諸君、この今井君が「マジメに予習」「マジメに執筆」という姿は、似合わない。自分でもちっとも想像できないのである。

 もし博多にいれば、烏賊が食べたくなる。唐津にいても佐世保にいても、やっぱり烏賊クンたちが誘いにくる。熊本なら馬刺君、大分では関サバ君に関アジ君、例え海峡を渡って下関まで逃げたって、今度はフグ君が追っかけてくる。群がる追手に追いつめられ、クマどんはもう逃げ場がない。

 逃げ場がなければ、いきなりギュッと振り返って逆襲に出るだけのことである。大っきな口をワッと広げて、馬刺君もフグ君も関サバ君も、一網打尽に平らげる。今回たった2日の博多滞在で、それほど多くの烏賊君がワタクシの犠牲になったか、諸君もこの2~3日の記事で確認したはずである。

 こうして今井君は、「九州でブラブラ」を諦め、たった1日のためにスゴスゴ東京に帰ることにした。そしてまた、このちっとも中身のないブログの執筆に励んだのである。
煮付け
(鯛の煮付け、マコトにおいしゅーございました)

 いやはや、ホントに中身がありませんな。自分でも忸怩たる思いであるが、しかし諸君、「中身がないとムカつく」というんじゃ、そりゃ精神年齢的にずいぶん幼いんじゃあーりませんか? せめて「竹の美しさ」ぐらい理解しておかないと、立派なオトナとは言えませんぞ。

 人生の達人になるには、せめて竹みたいな空虚さの妙味を味わえなきゃいかん。茶碗とお皿とお箸だけで満腹になれなきゃダメだし、シーンと静まり返った静寂の1時間を過ごして、交響曲1曲分の感激を手にしていなければならんのじゃ。

 本を1冊買ってきて、開いてみたら全ページが白紙。しかしその白紙のページを頷きながら一晩めくり続け、朝まだき、聖書1冊読み上げたような深い感動を胸に、静かに目をとじ、ふと眠りにつく。そういう人生こそ、最高の人生だと思わんかね?

 こう見えてもワタクシは、いつでもそういう文章を読みたいと熱く願い続けている。「見渡せば花も紅葉もなかりけり」。あれもしなかった。これもしなかった。ちっとも行動しなかった。ホントに何にもしなかった。それなのに、ずいぶんたくさんのことをした感激がある。実際に行動したより、はるかに濃密&濃厚だ。文章を読むとは、そういうことなんじゃあるまいか。
刺身
(淡路島の鯛のお刺身、マコトにおいしゅーございました)

 というわけで、今日の記事もクマのプーさん並みに「なんにもしないをしているところ」であり、「なんにもしないをしてきた話」なのである。人生を突き詰めれば「what よりも how」であって、「何をした」「誰と会った」「何を食った」ばかりに夢中になっていては、その先は空しさが残るだけである。

 ただし、写真だけは掲載しなければならないから、それが「何をした」「何を食った」という記録になってくれる。7月1日、福岡の空港でお腹が空いたので、「烏賊の旅」の締めくくりとして烏賊1匹を貪った。ゲソやミミまで全て刺身にしてもらって、山口の高級酒「獺祭」(2割3分)を3合いただいた。

 7月2日、夕暮れに寂しくなってきたので、西新宿「淡路島と喰らえ」に出かけ、淡路島から直送の鯛をワシワシやることにした。大きな鯛だったが、① 刺身 ② 煮付け ③ 塩焼きと、3種に分けて料理してもらえば、「最後までおいしゅーございました」と、大満足の一夜になった。

 こういうふうで、「何をした」「何を食った」だけに限定すれば、話はマコトに無味乾燥にスッと終わって何の面白味もない。「甘い鯛でした」の一言で完了では、その辺のチープなグルメ番組と択ぶところがない。

 というわけで諸君、これを書いている段階で7月3日。今井クマ助は羽田空港のダイアモンドラウンジでこれを書いている。鹿児島行きのヒコーキの出発まで、あと30分。記事をアップする時間の余裕はないから、アップは午後遅く、鹿児島のホテルにチェックインしてからになりそうだ。

1E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES 5/6
2E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES 6/6
3E(Cd) Kempe & Münchener:BEETHOVEN/SYNPHONIE Nr.6
4E(Cd) Karajan & Wiener:BEETHOVEN/MISSA SOLEMNIS 1/2
5E(Cd) Karajan & Wiener:BEETHOVEN/MISSA SOLEMNIS 2/2
total m53 y985 d18690