Sun 160403 夜の角館を徘徊する 最終の新幹線にギリギリ オジサマ達がウルサイ | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 160403 夜の角館を徘徊する 最終の新幹線にギリギリ オジサマ達がウルサイ

 4月22日午後6時、桜が大好きな今井クマ蔵は、もうすっかり日が暮れたのも関わらず、「角館をもう1周してこよう」と決めたのである。

 桧木内川の左岸と右岸をもう1回堪能してきたい。武家屋敷を鮮やか&妖艶に彩る枝垂れ桜の夜の艶姿を1つ残らず写真に収めたい。そうやって頑張っていれば、秋田犬のアッシュ君ともまた会えるかもしれない。いやはや中年男というものは、世にも欲望の深い存在なのである。

 ついでに諸君、「お花見と言えば屋台」じゃないか。ダラしないオジサマたちを捉えて離さない「おでん」「やきとり」の文字のノボリが、清冽な雪解け水の流れる桧木内川の岸辺に余りにも魅力的に並んでいたのである。

 山の端に日がトップリと沈んでズンズン暗くなっていく河岸を、今井君は半時計回りに早足でもう1回歩いてこようと決めたのである。ワタクシは秋田のコドモであったが、コドモ時代のワタクシには決して許されなかったであろう夕暮れの大冒険だ。
ねこすけ
(角館で出会ったネコ助。ホンモノと思って撫でてみる人が続出。エラく気に入って「ホンモノと思いました」と絶叫しているオジサマもいらっしゃった)

① 左岸を2km溯り、
② 橋を此岸から彼岸に渡り、
③ ほぼ暗闇に変わった彼岸を北から南に2km踏破し、
④ 彼岸から此岸に橋を渡って、日暮れ前に秋田犬のアッシュ君に出会った此岸から、オジサマ用屋台村に戻る。

 合計で4km余りの道のりであるが、考えてみるとこの日の踏破距離はすでに10kmに近い。桜並木を半時計回りに2周したんだから、それだけですでに8km。武家屋敷の枝垂れ桜を眺めつつウロウロした距離だって、少なくとも2kmは下らない。

 なるほどヘトヘトになるはずだ。左脚の裏のあたりは、そろそろ「これ以上歩くと危ないですよ」のサインを送ってきている。膝の反対側あたりがピリピリ引きつるように痛む。

 昨年12月のドイツでも今年4月のフランスでも、昨年夏休みのマルセイユでも春休みのナポリでも、とにかく今井君の旅は果てしなく歩き回るのであるが、さすがに今日の歩きっぷりは尋常ではない。
枝垂れ桜1
(夕暮れの迫る角館の枝垂れ桜)

 午後7時前、河岸の散策を切り上げて、武家屋敷群に戻る。ライトアップされた枝垂れ桜がマコトに妖艶であるが、今日はテレビ局のニュース番組か何かで生中継があるらしく、ライトアップにもますます気合いが入っている。

 あとで分かったことであるが、ワタクシはつい先ほど、たいへん有名なお天気キャスターのオネーサマないしオバサマとすれちがったらしい。秋田犬のアッシュちゃんに夢中になっていた直後のことであるが、「ずいぶん厚塗りのオネーサマだな」と思って振り返ったのがその御仁であったらしいのだ。

 ま、いいか。お天気オネーサマという存在にそれほど興味があるわけじゃなし、そんなことよりひたすら枝垂れ桜&枝垂れ桜。お天気オネーサマのおかげで、枝垂れ桜のライトアップにもググッと気合いが入っていて、この夜の今井君はマコトにおトクな夜桜見物を楽しむことができた。

 ただし、そのぶんピンチも訪れた。夜の桜に夢中になっているうちに、最終の新幹線に間に合うかどうか、ちょっと微妙な時間になってしまった。東京行きの最終は、19時54分発。武家屋敷のあたりを19時半近くまでウロついていたんじゃ、ピンチに陥るのも当然である。
枝垂れ桜2
(角館、武家屋敷の枝垂れ桜 1)

 満月の夜である。武家屋敷、枝垂れ桜、快晴の夜の鮮やかな満月。この最高のシチュエーションなら、「新幹線に間に合うか」「間に合わないか」などという無粋なことはどうでもいいが、とにかく中世のままの雰囲気の町を、角館駅に向かってひたすら急いだ。

 相変わらず左膝は「そんなに歩いたら危ないよ」「これ以上急ぐとヤバいよ」と警告を発しているけれども、間に合うか間に合わないかの瀬戸際じゃ、若干のヤバさは無視するしかない。

 だって諸君、こんな田舎町だ。万が一新幹線に乗り遅れた場合、宿泊する場所があるかどうかも心許ない。駅前にはビジネスホテルの影すら見えない。 

 たとえ田舎町でも、「スーパーホテル」「α—1」「東横イン」の1つぐらいは見つかるものだが、さっきコインロッカーに荷物を入れた時には、そういうホテルの存在する気配はなかった。

 もちろん、下り列車で秋田や大曲の街まで戻れば、何とかならないでもない。角館駅に隣接して「フォルクローロ」という名前のプチホテルがあるのも承知の上だ。

 しかし諸君、こんなに濃厚&濃密なお花見の季節、空室があるとは限らないじゃないか。世界中を傍若無人にノシ歩く大胆不敵なクマ助でも、角館の桜の樹の下に野宿するのはさすがにイヤなのである。
枝垂れ桜3
(角館、武家屋敷の枝垂れ桜 2)

 それでも、満月に照らされた満開の夜桜に導かれ、駅に急ぐ地元の女子高生に混じって早足で急いだワタクシは、無事19時35分には角館駅に到着。「フーッ、間に合った」であって、エキナカのコンビニで20分、ショッピングを楽しむ余裕さえ残されていた。

 コンビニで購入したのは、日本酒1本、ウィスキーの小瓶1本。ハタハタの干物1袋、いぶりがっこも1袋。ウィスキー用の氷を小さめのカップで1つ。何しろ角館から東京まで新幹線で3時間もかかる。長丁場には長丁場なりの準備があるというものだ。

 しかし諸君、「好事 ♨ 魔多し」。旅を満喫しようと思ってワクワクしていた今井君に「サラリーマン2名」という厄介な妨害が入ることになった。すでにホロ酔いの2名は、一切遠慮ナシなのである。

 静寂を求める乗客が周囲にたくさん存在することなんか、一切おかまいなし。社内の人事に関するコマゴマとした不満を、夢中で延々と語り合う。話し声を抑えるとか抑制するとか、そういう才覚は全く持ち合わせなしなのだ。

 角館から険しい奥羽山脈を越えて盛岡に到着。盛岡から急激にスピードをあげて、30分で仙台に到着。それでもサラリーマン2名の元気は全く衰えない。話し声は車内に響きわたり、誰も居眠りすら出来ないが、乗務員のオジサマもオネーサマも彼らを諌める様子は全く見えない。
角館駅
(最終電車直前の角館駅)

 仙台を出て15分、さすがに業を煮やした今井君は、クダンの2人に旅の礼儀を教え込むべく、キリッと表情を改めて立ち上がったのである。しかしまさにその一瞬、今井君と同様にムカムカしていたらしい勇ましいオネーサマが1名、サラリーマン2人にツカツカ近寄っていった。

「あの、話し声が大きくて気になるんです。少し話し声を抑えてくださいませんか?」。うぉ&うぉ。よく言った。うぉ、素晴しい。うぉ、まさに正義の味方である。素晴らしい。全く素晴らしい。

 ビックリした2名はシュンと縮み上がり、すっかりションボリしてしまい、おそらく今後50年間、彼らが電車やヒコーキで他人に迷惑をかけることはなさそうだ。それどころか、マナーを知らない同僚たちに対して、自らの体験の語り部になってくれるかもしれない。

「新幹線とかヒコーキには、コワいオネーサマが潜んでいるかもしれないぜ」
「油断して、ワイワイ騒いでいると痛い目にあうぜ」
「気をつけろ♨」
「気をつけろ♨」

 ま、そういうわけだ。ワタクシは、オネーサマの勇気に大喝采をおくる。こんなオネーサマがたくさんいてくれれば、秋田犬なみに獰猛なワタクシ♨クマ蔵が、恐るべきキバを剥き出しにして猛然と吠え立てる頻度は、ググッと減らせそうな気がするのである。

1E(Cd) The Scholars baroque Ensemble:PURCELL/THE FAIRY QUEEN 1/2
2E(Cd) The Scholars baroque Ensemble:PURCELL/THE FAIRY QUEEN 2/2
3E(Cd) Corboz & Lausanne:MONTEVERDI/ORFEO 1/2
4E(Cd) Corboz & Lausanne:MONTEVERDI/ORFEO 2/2
5E(Cd) Festival International de Sofia:PROKOFIEV/IVAN LE TERRIBLE
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