Fri 160318 往生際が悪い ダイハード 夜のドレスデン(ドイツ・クリスマス紀行20) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 160318 往生際が悪い ダイハード 夜のドレスデン(ドイツ・クリスマス紀行20)

 ワタクシは「往生際が悪い」という人種の筆頭格であって、宴会でも長っ尻、大学受験でも1年浪人しただけでは諦めきれずに、大学入学後も「仮面浪人だ」「捲土重来だ」と唸り続けていた人間の1人である。

 昔は「春スキー」「夏スキー」というのにも夢中になった。弥生も果て、卯月も半ばを過ぎて、フツーの人々がもう夏のリゾートを夢見ているころに、「ニセコならまだ行ける」「札幌国際なら大丈夫」「天神平という手もある」など、5月の連休すぎまでスキーを担いで、羽田や上野駅をノコノコやったものである。

 お花見だっておんなじだ。こんなポカポカ陽気じゃ、東京のサクラはもうとっくに葉桜だろうけれども、ならばチョイと足を伸ばして、宇都宮・水戸・前橋、まだ雪の峰々が望める北関東に出かければ、まだまだ楽しめるサクラは見つかるに違いない。
ドレスデン1
(夜のドレスデン)

 こうしてマコトに往生際の悪いボクチンでも、「八重桜のお花見」にはどうも違和感があって、あのモッタリ&ボッテリした濃厚&濃密なピンクの諸君が、生温い風の中をゆっくりユラユラ揺れるアリサマを見ると、やっぱり暑苦しくてたまらない。

 例えるなら、満腹した後のデザートにヨーカンまるまる1本が出てきた感じ。何もそんなにボッテリ&モッチリして下さらなくてもOKなのであるが、あんまりいうと八重桜君たちが可哀そうだから、「今年の春も締めくくり役、頑張ってくれたまえよ」とだけ記しておく。

 しかし「往生際が悪い」のも決して悪いことではないのであって、まあ「ダイハード」と言ってもらってもいい。ダイハード今井のお花見は、こうして北へ北へと伸びていく。

 昨年は青森県弘前へ。今年は秋田県角館を予定していたが、ありゃりゃ、地球温暖化が予想以上に激しいらしくて、4月下旬の角館では、今年はもう遅きに失する可能性が高くなってきた。ならば、不都合な真実の裏をかいて一気に海峡を抜け、函館五稜郭を目指してもいい。
ドレスデン2
(ドレスデン、エルベ河の夜景)

 こういうふうで、ワタクシは「浪人を決めました」というダイハードな諸君をも激しく応援するのである。4月10日を過ぎ、昭和の昔ならこの時期は「予備校の入学式」のニュースがテレビで大きく紹介されたものである。

 代ゼミも駿台も、入学式の会場はもちろん日本武道館。「ちなみに前日は東京大学の入学式でした」みたいなイヤらしいヒトコトをキャスターが付け加えてから、「ではCMをどうぞ」ということになった。

 その武道館がまた、超満員になったのである。代ゼミも駿台も、テレビで紹介されてガラガラという訳にはいかないから、学校全体をあげて懸命に動員を図る。駿台ならば、英語・伊藤和夫師、数学・野沢悍師、古文・桑原岩雄師。そういう昭和のスター講師を繰り出して、会場はホントに満員になった。

 中小の塾もこれをマネて、1983年だったか84年だったか、「国立学院予備校」という首都圏の塾が武道館での入塾式を敢行した。これはもう「意地で満員」の極致。小学4年から中3まで、首都圏各地からご父兄まで含めてすべてバスで送迎、武道館の半分ぐらいは何とか埋まって、何とか面目を施した。

 浪人を決めた諸君、もう4月10日を過ぎている。1日でも早くホンキでスタートしてくれたまえ。「予備校の授業が始まるまで慌てない」「急いてはことを為損じる」。そういう暢気なことを言っている場合ではない。
ドレスデン3
(ドレスデン「君主の行列」は、誰も見ていない真夜中も粛粛と続く。若い諸君も、是非こうであってほしい)

 センター試験まで、あと9ヶ月しか残っていない。1分もムダにできない状況なのだ。今の段階で、もう理科社会なんかは完璧に終了しているぐらいの勢いじゃなきゃいけないんじゃないかね。

 と書くと、ビックリする人も多い。「理社科は後回しなんじゃないですか?」「先に英数国なんじゃ、あーりませんか?」というわけである。いやはや、シロートはこれだから困る。浪人したら理社科優先、少なくとも5月6月の段階で完璧に持ってかなきゃダメじゃないか。

 それというのも諸君、「浪人してでも第一志望はゆずれない」というレベル生徒なら、今からつい50日前、2月末の受験本番のころに、「理社科はほぼ完璧」というレベルまで行っていたはずだ。

 わずか50日前にせっかく「ほぼ完璧」の領域まで行っていたものを、このあと夏まで放置して、何か得があるんですかね。「ほぼ完璧」まで行ったなら、夏前に「100%完璧」にまで持っていけばいい。

 時間のかかる英数国ももちろんキチンとやりながら、「理社科はもう誰にも負けません」とニヤリとする。大事なのは、その「ニヤリ」なのだ。「現役時代にもほぼ完璧までは行きましたが、何しろ浪人したんです。理社科は誰にも文句を言わせません」。そんなふうにニヤリとしてみたまえ。
ホフブロイハウス
(ドレスデン「ホフブロイハウス」で、焼きソーセージとプレッツェルを貪る)

 さて、何でクマ助がこんなことを書いているのかと言えば、スミマセン、すっかり忘れてしまいました。ただし「往生際が悪い」ことでは人後に落ちない自信の或る今井君は、12月23日の夜も、最後まで諦めずにドレスデンの街を歩き回った。

 だって諸君、ドイツ最大&最古のクリスマス市が、あまりにもスッキリといきなり全て終わってしまったのだ。午後9時、教会の鐘の音が響きわたった瞬間、いきなり後片付けが始まって、その30分後にはゴミ回収車が走り回って、10時には、ホントにありゃりゃ、クリスマス市は影も形もなくなった。

 長っ尻な人もほとんどいない。みんな家路について、街はどんどん静まり返っていく。店も次々と閉まって、いつまでも街をうろついている人には「困ったヤツらだ」という冷たい視線が飛ぶのである。

 しかしワタクシは、長っ尻の権化。花見なら北上し、紅葉なら南下し、受験でも仮面浪人を決意するタイプ。ダイハードな日本人の代表として、そうカンタンにホテルの四角い部屋になんか引き上げられるものじゃない。
ワイン
(ドレスデンで、こんなワインを飲んでみた)

 そこで闖入したのが、最後まで店を開けていた「ホフブロイハウス」。「あれれ、ホフブロイハウスはミュンヘンじゃないの?」というアナタ、ホフブロイハウスほどのデカい店になれば、チャンと『ドレスデン店』だって存在するのである。

 赤ワイン1本、焼きソーセージ1皿(実は2皿)、もちろん定番のプレッツェル、冷えたビアも大ジョッキ1杯。だんだんお客が引いていく寂しい店に座って1時間、ドレスデンの夜の名残を最後まで楽しんだ。

 店を出たのが23時ごろ。さらに夜の街を散策し、真夜中も無言のまま続く「君主の行列」やエルベ河の夜景を満喫。静寂の中のドレスデン城を振り仰いだ。戦後70年、ダイハードな努力を世代から世代へ受け継いで、煤けた粉々の廃墟をついに大空襲前の姿にまで復活させたドイツ人の静かな激しさを思ったのである。

 ホテルに戻ったのは、もう真夜中に近い。それでもフロント前のバーが開いていた。呆れ顔のオネーサマにビールを注文。疲れきってビール1杯さえ「もう飲めません」な気分ではあったが、そんなこと言ったら諸君、寂しいじゃないか。往生際の悪さこそが、人生で一番大切なんじゃないかね。

1E(Cd) Maria del Mar Bonet:CAVALL DE FOC
2E(Cd) CHAD Music from Tibesti
3E(Cd) AZERBAIJAN Traditional Music
4E(Cd) Ibn Baya:MUSICA ANDALUSI
5E(Cd) Bobby Coldwell:AUGUST MOON
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