Sat 160305 切手市でコレクションを購入 余りに几帳面(ドイツ・クリスマス紀行8) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 160305 切手市でコレクションを購入 余りに几帳面(ドイツ・クリスマス紀行8)

 弥生も末の29日、日本国中いきなりポカポカ暖かくなって、サクラもモモもおそらく虫たちもさぞかしウキウキ、「オンモに出たいよ」と動き始めたことだろう。昨夜の東京は豪雨と雷と雹に襲われたらしいが、ワタクシは所用で仙台市に滞在していたから、東京の荒れ模様はすかり他人事であった。

 仙台は昨日も今日も快晴。仙台のサクラも咲きそうで、
「昭和の昔、仙台のサクラは4月中頃の開花だった」
「やっぱり地球温暖化が強烈なのかね」
と、ウキウキ気分もチョイと沈みがち。「目出度さも 中ぐらいなり 温暖化」の一句に、しばし暗然と青空を見上げる。

 この青空と対極の暗さだったのが、12月20日のベルリン。正午を過ぎてもまだ明けきらず、午後1時にはもう夕暮れの雰囲気になりかけた。雲の色は赤味の混じった薄黄色であって、雲間から差し込む日の光も「さすがに北ドイツ」という弱々しいものであった。

 2008年以来、網膜剥離の手術直後だった2010年を除けば、年の暮れは必ずヨーロッパで過ごしている。2008年はロンドン、2009年はブダペストとウィーン。2011年はグラナダとサンチャゴ・デ・コンポステラ。13年はパリ、14年がローマであった。

 こう並べてみると、やっぱり今年の「北ドイツ」が一段と暗く感じられるのも「ムベなるかな」という感じ。ワタクシの旅はヨーロッパの中でもグッと南よりなのであって、真冬の旅でこんなに緯度の高いところに来るのは2008年のロンドン以来である。
15846 ボーデ
(ベルリン・シュプレー河とボーデ美術館)

 昨日の写真に示した「壁にアタマを突っ込んだ男」「もしかしてスレンダーマンさん?」なんてのも、やっぱり北ドイツならではのもの。これがパリやローマやフィレンツェなら、「街の美観をそこなう」「地味にマジメでヘンなんじゃないか」と非難を浴びて、スゴスゴ物置に引っ込められそうだ。

 バルセロナならどうだろう。例えばサグラダ・ファミリアのあたり、あるいはカサ・ミラやカサ・バトリョのあたり。ガウディどんの世界となら、壁にアタマを突っ込むぐらい、何とか許してもらえるんじゃないか。

 うーん、しかし、やっぱり無理なものは無理、ならぬものはならぬのです(これは懐かしいNHK「八重の桜」でござる)であって、「地味にマジメでヘン」の世界をガウディどんに押し付けることはできない。

 バルセロナには他にミロもいるし、すぐそばのフィゲラスはダリの出身地だけれども、ミロ助やダリ左衛門だって、壁にアタマなんか突っ込んだまま永遠に凝縮しちゃったこの男を受け入れるのは無理に違いない。

 やっぱり諸君、この男はこのままベルリンの地味な街に、永久に地味なまま立ち尽くしているしかないようである。顔だけが壁に飲み込まれている状況ではさぞかし息苦しいだろうし、肉体もさぞかしコワバっているだろうが、ビルに取り壊しの時期がくるまで、地味にマジメに耐えていくのみなのである。
15847 切手市1
(近くの切手市で古いコレクションを購入。ドイツ人の几帳面さに圧倒される 1)

 さて今井君は、ここからトラムのレールに沿って博物館島を目指す。最初に見えてきたペルガモン博物館は、昨日の国立歌劇場と同様に「改修中」。ただし「中身は元気に営業中」とのことで、ここだけは最終日ごろにどうしても訪れたいと思う。

 さらにシュプレー河をズンズン溯っていくと、おやうれしや、路上でアンティーク市を開催中。向かって右が古本市、左がアンティーク市。アンティークじゃ、せっかく買っても持ち帰りがたいへんだから、とりあえず古本市のほうを覗くことにした。

 最初に発見したのが、切手アルバムである。「5冊で50ユーロ」という大きな山と、「1冊で5ユーロ」の山があって、誰かのコレクションがドッと売りに出されたんだと思われる。
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(近くの切手市で古いコレクションを購入。ドイツ人の几帳面さに圧倒される 2)

 諸君、ワタクシは小学生の頃に切手収集に夢中になった時代があって、「三つ子の魂 ☞ 百まで」というか何と言うか、切手を見ると今でも血が騒ぐ。バルセロナの広場でやっていた切手市でも買った。パリ・セーヌ河右岸「ブキニスト」の店でも買った。アムステルダムでも買った。

 高価な切手には全く興味がないので、使用済みのスタンプがペタンと黒く押されているようなヤツをまとめ買いするのである。1回で買うのは、せいぜいで15ユーロ。2000円ちょいなら、まあオミヤゲとしてベストじゃないか。

 パリの時なんか、切手は何と「重さ」で値段がついていた。「博多あまおう」とか「佐賀とよのか」とか、そういうイチゴが入っているようなプラスチックの容器に、無理やり詰め込まれた「…グラムで16ユーロ」というヤツである。
15849 今井コレクション
(大昔の今井コレクション。おお、几帳面さではワタクシも決してドイツ人にヒケをとりませんね)

 しかも諸君、あの時のヤツは封筒から切手を剥がしてさえいなかった。封筒に貼られたまんま四角く乱暴に切り取ったヤツが、プラスチック容器にギュッと詰め込まれて「…グラムで16ユーロ」なのである。

 切手収集のプロに言わせれば、
「使用済みの切手は封筒と一緒に取っておくべき」
「そのほうが、時代時代の郵便事情が分かっていい」
なのであるが、スミマセン、今井君はそこまでのプロじゃないから、…グラムで16ユーロのイチゴパックを何度も何度も水に漬け、切手の糊を溶かして封筒からキレイに剥がしとった。

 ま、そんなふうにしてワタクシの切手収集は今もなお増え続けている。そしてその切手を几帳面に整理することでも、決して人後に落ちない自負がある。

 しかし諸君、12月20日のベルリン切手市で購入した5ユーロのコレクションには、ドイツ人ならではの強烈な厳格さが詰まっていて、「こりゃさすがのワタクシも兜を脱がなきゃな」とタメイキが出るほどだった。
15850 猫切手
(今井コレクション「世界のネコ切手」。おお、悪くないですな)

 こうしてコレクションが市に出るからには、コレクションの主はきっと今ごろ天国なのだ。いつごろの人だろう。どんな町でどんな生活をしていた人だろう。家族との関わりは? 友人たちとの関わりは?

 普通なら、こんなに几帳面な人は家族から煙たがられ、友人との付き合いもあんまり上手じゃないことが多いんじゃないか。だって考えてもみたまえ、食器の並べ方・酒を飲む順番・お風呂の掃除の仕方・家族の朝の過ごし方、こういう人はその全てに強烈な持論を展開するはずだ。

 家族は、こういうオジサマやジーチャンを敬遠する。友人たちだって、「気をつけろ、今日はアイツが来るぞ」とニヤニヤする。もしもジーチャンだったら、長く白い眉毛をフサフサさせながら、老妻の掃除にも孫たちの朝の挨拶にも、必ず一家言ありそうじゃないか。

 しかしここは北ドイツだ。そういうジーチャンも、きっと最後まで幸せに過ごせたと確信する。だって諸君、その「老妻」や「孫たち」にしても、「息子たち」「娘たち」「友人たち」も、きっとみんな超マジメな一家言の持ち主だったのだ。偏屈なぐらいマジメな人間どうし、うまくいっていたに違いない。
 
1E(Cd) SECRET OF ISTANBUL
2E(Cd) 1453
3E(Cd) Santana:AS YEARS GO BY
4E(Cd) Gregory Hines:GREGORY HINES
5E(Cd) Holly Cole Trio:BLAME IT ON MY YOUTH
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