Fri 160304 ニベアとフンボルト大 サンタ軍団 地味にヘン(ドイツ・クリスマス紀行7) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 160304 ニベアとフンボルト大 サンタ軍団 地味にヘン(ドイツ・クリスマス紀行7)

 ブランデンブルグ門から、ベルリンの目抜き通り「ウンター・デン・リンデン」を進んだ。ベルリンの壁が崩壊するまでは、バリバリの東ドイツ圏だった地域であって、ホンの25年前までホーネッカーどんの強硬な社会主義政権がここを支配していた。

 しかし見よ、たった25年でベルリンはすっかり変わった。マコトにニベアくさいニベアのお店も大繁盛。昨日の1枚目の写真の通り、2頭のニベア・ベアが「おいで&おいで」のポーズで道行く人を誘う。

 残念ながらこの日は日曜でニベアのお店はお休み。ニベア・ベアのおいでおいでもほとんど意味はないが、あんまり2頭が可愛いから「近い将来ニベアくさいニベアの店に足を踏み入れてみるのも悪くない」とニタニタするワタクシであった。

 今井君がコドモの頃、オウチのハンドクリームは「チョコラザーネ」であって、冬になるとオウチの中がチョコラザーネの匂いに満たされたものであるが、小学校3年だったか4年だったか、いきなり家庭内で方針転換があって、チョコラザーネを裏切ってニベアが主流になった。

 丸く平たい青い缶入りのニベアは、だからたいへん懐かしい。今日このベルリンの店がお休みでも、店のガラスにもにニベアの匂いが染み付いているのか、2頭もやっぱりニベアのカホリ。おお、懐かしいじゃないか。
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(壁にアタマを突っ込む男。フンボルト大学近くで発見)

 さらに「ウンター・デン・リンデン」を進んでいくと、まもなく名門・フンボルト大学が見えてくる。10年前の「ヨーロッパ40日の旅」でも、ブランデンブルグ門のあと最初に立ち寄ったのがこの大学であった。

 あの時は冷たい雨が降っていた。ワタクシは昔から「意地でも傘をささない」という偏屈な人間であるから、わずかな距離を歩くうちに頭からすっかり濡れてしまっていたが、濡れた上着を乾かしがてら、ズンズン大学構内に入り込んだ。

 どうしてあんなに大胆だったのか、10年も過ぎた今ではよく分からないが、大学の暗い廊下をどんどん歩いていって、教室やらゼミ室やら学生会館やら、マコトに厚かましく見学させてもらった。

 あの時は、Tシャツも買った。濃いグリーンの地に白い文字で「Humboldt University」、スッキリしたデザインだった。その後、世界中の名門大学を訪れてはTシャツを購入する変なクセがついた。その最初がこのフンボルト大学だったのだ。
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(SANTA'S MARCHING BAND)

 1810年、フンボルトによって創立。19世紀にできた比較的新しい大学だから、そりゃ歴史的にはオックスフォードやハイデルベルク大にかなわない。しかし初代総長フィヒテを始め、ショーペンハウエルにヘーゲルに、コッホにグリムにリスト、歴代の教授連は錚々たるメンバーだ。

 卒業生のほうも、もちろんスゲー人々が並ぶ。ヴァイツゼッカーにカール・シュミット、リルケにムージルにブレヒト、マルクスにハイネ、マックスウェーバーにチェリビダッケ、寺田寅彦や新村出なんかも留学している。哲学部が第1から第4まであるのも、何となく素敵じゃないか。

 ランキング好きの我々としては、思わず世界大学ランキングをググってしまうところだが、おやおや、こりゃどうもランキングを作った人たちに嫌われたかな? 日本の大学同様、ランキング的には低迷している感があるが、なかなか雰囲気のいい大学であることは間違いない。

 ただしやっぱり日曜日で、大学もお休み。中には人影もなく、みんな恐る恐る門から中を覗き込んでカメラをぱしゃぱしゃやっている。10年前みたいズンズン中に入っていくのは不可能であった。
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(フンボルト大学)

 ウンター・デン・リンデンを挟んで大学の向かい側が、ベルリン国立歌劇場(正式名称:Staatsoper Unter den Linden)。10年前には、ライプツィヒから帰ったその足でここにタクシーで乗りつけた。

 あの時見たのは、バレエ「ジゼル」。日程に合うのがジゼルしかなかったからジゼルにしたのであるが、まさにあの時以来の訪問である。しかしマコトに残念なことに、2015年冬、Staatsoperは改修中。美しい勇姿を見上げて感激することはできなかった。

 まさにその時である。バイクに乗ったサンタ軍団が、東の方角から現れた。うーん、諸君、地味じゃないか。まもなくクリスマス、12月20日はクリスマスイブイブイブイブイブだ。もっと派手にやってもよさそうなものだが、さすがにマジメなドイツ人、派手に騒ぐのは得意ではないようだ。

 ウンター・デン・リンデンは、パリならシャンゼリゼに該当するベルリン1番の目抜き通り。なのに、この殺風景さは何だろう。そこいら中が工事現場。どこまで行っても灰色が支配し、工事現場からは砂ボコリが舞い上がっている。

 だからこそ、ポツポツ降り出した冷たい雨の中、轟音を響かせてやってきたサンタクロース軍団には、観光客もみんなずいぶん期待したのである。
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(爆走!! サンタ軍団)

 しかし諸君、何の演出もなしだ。ただ単にやってきて、ただ単に駆け抜けた。歓声をあげるぐらいすればいいのに、みんな黙って赤信号で停止し、信号が変わるまでジッとマジメに前方を見据え、信号が変わるとたちまちブランデンブルグ門のほうに走り去ったのである。

 要するに、通過しただけのこと。他には何にもなし。ならばいったいどういう意図があって、あえてみんなでサンタさんのカッコをしたのかね。ホンの一瞬だけ期待を居抱いた観光客も、三々五々その場を立ち去っていった。

 今井君はここでフンボルト大学に沿って左折。ホンの10分ほど歩けば、「博物館島」がある。シュプレー河の中洲にあって、ドイツ語ならMuseumsinsel、ペルガモン博物館やボーデ美術館など、5つもの巨大博物館&美術館が並んでいる。

 ワタクシは巨大美術館ギライであり、巨大博物館はもっとキライ。3日かけても4日かけても見て回れないほどのコレクションをズラリと並べ、「どうだスゲーだろ?」と胸を張るのは、あんまりいい趣味ではないんじゃあるまいか。
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(壁にアタマを突っ込む男。手前はトラム。やっぱり「ドイツ人は黄色がお好き」のようだ)

 今日は15時間もヒコーキの旅をしてきて、疲労はピークに達している。「ついさっきまで公開授業をやってました」という状況で、まさかいきなり美術館というわけにもいかないじゃないか。

 しかしまあ美術館の外観だけを眺め、その偉容に感激するのは悪くないだろう。今日はそれだけにとどめて、「中に入るのはまた後にすっかな?」と自らに言い訳しておく。その言い訳が旅の終わりまで効力を保って、見事に美術館をパスできることもしばしばである。

 そういう小ズルいことを考えながらベルリンの街を行くと、おやフシギ、夢ではないか、向こうの建物にアタマを突っ込んで、壁の中に消えていこうとする巨大な男の影がある。

「いま大流行中のスレンダーマンが、とうとベルリンに出現か?」と思わず身構えたのであるが、スレンダーマンだって壁をよじ上ることはあっても、まさか壁にアタマを突っ込むような痛い行動には出ないだろう。

 こういうふうで、ベルリンはマコトに地味に風変わりな街なのだ。「地味でマジメでしかもヘン」。そういう不可思議なノリを味わいたければ、ぜひ諸君、近いうちにベルリンを訪ねてくれたまえ。

1E(Cd) Pešek & Czech:SCRIABIN/LE POÈME DE L’EXTASE + PIANO CONCERTO
2E(Cd) Ashkenazy(p) Maazel & London:SCRIABIN/PROMETHEUS + PIANO CONCERTO
3E(Cd) Ashkenazy(p) Müller & Berlin:SCRIABIN SYMPHONIES 1/3
4E(Cd) Ashkenazy(p) Müller & Berlin:SCRIABIN SYMPHONIES 2/3
5E(Cd) Ashkenazy(p) Müller & Berlin:SCRIABIN SYMPHONIES 3/3
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