Fri 160212 千本鳥居 伏見稲荷の夜を思う すずめ&うずら きつねそば&いなり寿司 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 160212 千本鳥居 伏見稲荷の夜を思う すずめ&うずら きつねそば&いなり寿司

 こうして伏見稲荷にたどり着いたワタクシは(スミマセン、昨日の続きです)、稲穂やらゴツい鍵やらをくわえた勇ましいキツネどんたちを振り仰ぎつつ、いよいよ千本鳥居をくぐりに出かけた。

 日本の名所で「1000」と言えば、「実際には1000に及ばないが、とにかく数えきれないほどたくさん」という含意があって、1つ1つ数えてみれば実際には200だったり300だったり、X<1000であることは最初から自明の理になっている。江戸は八百八町、大坂は八百八橋。そういう誇張表現である。

 ところが伏見稲荷の千本鳥居については、どうやら完全に逆の様相を帯びていて、明らかにX>1000であるらしい。もちろんワタクシも忙しいニンゲンであるから、実際に数えてみるヒマはないが、人の話によればおよそ1万なんだそうな。

 1万本の鳥居ということになるとニワカには信じがたいけれども、「願い事が叶いました」という御礼の意味で誰でも奉納できる。それが江戸時代から延々300年も400年も続けば、いつの間にか1万本ぐらいになっちゃうわけだ。「継続は力なり」。素晴しいことである。

 となると、ワタクシも近い将来1つぐらい奉納したくなる。調べてみるに、一番安くて17万5千円。高価なのは130万円ほど。金額はともかく、「どんな願い事にするかな?」と舌なめずりする思いである。
お稲荷さん
(伏見稲荷「稲福」のいなり寿司。おいしゅーございました)

 さて実際の千本鳥居の風景については、昨日の記事に3枚ほど写真を掲載した。鳥居群の入口に写真を撮る人々が黒山の人だかりを形成しているが、奥に進めば進むほど人口密度は低くなっていく。

 その点、美術館の特別展とおんなじだ。こういう時は、入口で黒山の一部となってモジモジしているより、一気に人だかりを抜けて向こう側に出たほうがいい。鳥居を200か300くぐった向こうには、人のマバラな静寂の世界がある。

 奥社奉拝所 ☞ 熊鷹社 ☞ 三の峰まで歩いて、そろそろ人影がほとんどなくなったら、写真撮影にはベストな雰囲気である。「深い神域に入ってきた」という感覚で、感じやすいコドモなら、異界やら魔界やらの存在が周囲を跳梁しているのを感じて、「お父さん、もう帰ろうよ」と泣き出すかもしれない。

 ここから先は、標高233メートル「稲荷山」への登山が始まる。間の峰 ☞ 二の峰 ☞ 一の峰と、山頂に向かって一気に登っていくのであるが、これはもう登山の一種と言ってよくて、今日の今井クマ助は「三の峰」までで自重することにした。
きつねそば
(伏見稲荷「稲福」のきつねそば。おいしゅーございました)

 何しろ諸君、出張の途中でここに立ち寄ったのである。ツルツル滑るChurchの革靴。Zegnaのスーツ。Zegnaのワイシャツ。Loro Pianaの冬用コート。たった233メートルと言っても、こんなウルトラ仕事着で神の山に分け入ったら、どんな祟りがあるか分からない。

 というわけで、今井君は三の峰から引き返した。「また来ればいい」であって、出張の途中に山で足を滑らせてケガでもしたら、たくさんの人に迷惑をかける。むしろ「今度はいつ来るかな?」とワクワクするほうがいいじゃないか。

「伏見稲荷の夕暮れ」というのも、幻想的で悪くなさそうだ。10月の終わりごろ、つるべ落としに秋の日が沈んで、暗くなりかけた千本鳥居に点々と提灯の灯がゆらゆら揺れるのである。

 異界というか、魔界というか、おおコワい。ズラリと並んだ鳥居の世界があんまり赤いものだから、思わずこの世の向こう側に行ってしまいそうじゃないか。伏見稲荷には異界にからんだ怖い話もいろいろあるようで、神隠しになりかけた人の告白などを読んでいると、いやはやマコトにゾッとするものがある。
ぽいすて
(ここはご神域。「ぽいすて」は厳禁だ)

 いつまでもゾッとしているのもなんだから、お昼すぎのクマ助は「うずらの丸焼き」を貪りに行くことにした。入ったお店は「稲福」。看板には「やき鳥 うどん そば」とあるが、「やき鳥」とは普通にニワトリを指すのではなく、「すずめ」「うずら」を焼くのである。

 お稲荷さんは稲の神様であるから、コメを食い荒らす雀は「食っちまえ」の対象になるらしい。看板には「国産すずめ」とあって、ホントにあの可愛い雀さんたちを捕まえて焼き鳥にしちゃうんだ。いやはや、いちいちあんな小さな雀さんたちを捕まえるのって、さぞかしたいへんなんじゃなかろうか。

 今井君は疑り深いクマであるから、
「雀とは言ってるけど、ホントはヒヨコなんじゃないの?」
「オスのヒヨコは『処分』の対象であって、生きたままシュレッダーにかけられて肥料になる運命。ならば『すずめ』という名目で焼き鳥にされるほうが幸せ&人道的なんじゃないの?」
とか、まあそういうことを考える。

 千本鳥居の夜の光景を思ってゾッとしたのも束の間、今度はオスのヒヨコの運命を思って全身に鳥肌が立った。もちろん、ここの「すずめ」はホンマモンの雀であって、決してオスのヒヨコではないだろうが、要するに残酷物語であることには変わりない。
うずら
(伏見稲荷「稲福」にて。「頭から全部食べられます」なウズラどん。うーん、こりゃ残酷物語だ)

 しかし右隣りのテーブルの家族連れは、お父さんがその「すずめ焼き」を注文。黒く焼かれて出てきた「すずめ」を見るなり、娘たちが高く悲鳴をあげる。「無理やで」「無理やで」「マトモに顔を見られんで」と絶叫している。

 そこで諸君、優しい今井クマ助は、① きつねそば ② いなり寿司 ③うずらの丸焼きを注文。何だ、すずめは食べなくても、うずらには丸ごとかぶりつくのである。いま写真を眺めてみれば、すずめ以上に残酷度が高い気がする。でも許してくれたまえ、こんなに残酷なシロモノとは知らなかったのだ。

「お味は?」であるが、口の中でパリパリ砕けていくウズラどんの骨の食感ばかりが記憶に残り、「お味うんぬん」などという暢気な世界ではない。砕けた骨が口の中の皮膚に突き刺さり、「口内炎 ☞ 多発の予感」というマコトにありがたくない予感が走る。ネタにはなるが、ネタ以上のものではない。

 そこへいくと諸君、きつねそば、おいしゅーございました。ここは関西なんだから、きつねは蕎麦よりうどんにすべきだったんだろうけれども、いやはや、甘辛く煮込んだ油揚げが、「五臓六腑に染みわたる」と唸るほど旨かった。
稲福
(お世話になった「稲福」の外観。全ておいしゅーございました)

 そこでワタクシは、「こりゃどうしてもお稲荷さんもムシャムシャやらなきゃいかんね」と思い立った。ホントはダイエットのことも考えて、「きつねそば & お稲荷さん」という炭水化物セットはヤメようと思っていたのだ。しかしこんなに旨い油揚げを貪らないで帰ったら、伏見稲荷のキツネどんに叱られる。

 追加注文したお稲荷さんは、4ケ。これを瞬時に貪って、「オミヤゲは出来ますか?」と質問した。まるで大型犬がビタワンでも貪るような激烈な勢いに、お店のオバサマも嬉しそうにニンマリ。四角い折りにお稲荷さんを10個、ギュッと詰めて下さった。

「うぉ、炭水化物♡」と、再び鳥肌が立ちそうなサイコーの瞬間である。これから大阪のホテルに戻って一休み、夕暮れから神戸の三宮でお仕事に励み、真夜中ごろにお部屋に帰る。折り詰めいなり寿司の出番は、まさにその時になる。

 きっと三宮の公開授業は最高の盛り上がりになるだろう。その後は、もちろん大祝勝会。祝勝会場は梅田であって、ついでにバッティングセンターにも行く予定。金属バットを100回も振り回した後、ホテルに帰ってこのお稲荷さんをワシワシやろうじゃないか。

 そういう近未来ワシワシに胸を躍らせつつ、3月3日のポカポカ陽気の中、京阪電車で梅田に戻る今井君なのであった。どうだい諸君、こんな幸せな中年オジサマは、日本にも世界にも、そんなにたくさんは存在しないんじゃないかね。

1E(Cd) Karajan&Berlin:HOLST/THE PLANETS
2E(Rc) Amadeus String Quartet:SCHUBERT/DEATH AND THE MAIDEN
3E(Rc) Solti & Chicago:BRUCKNER/SYMPHONY No.6
4E(Rc) Muti & Philadelphia:PROKOFIEV/ROMEO AND JULIET
5E(Cd) Akiko Suwanai:SIBERIUS & WALTON/VIOLIN CONCERTOS
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