Thu 160121 福岡・柳川を訪ねる 琴奨菊と五郎丸 北原白秋の生家 豪華さげもん  | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 160121 福岡・柳川を訪ねる 琴奨菊と五郎丸 北原白秋の生家 豪華さげもん 

 2月14日は、九州の佐賀に出張である。佐賀でのお仕事は、14時スタートの予定。すると諸君、14日の早朝に羽田空港に駆けつけて、9時ごろのヒコーキに乗らないと危険である。佐賀便は少ないから、ナンボでも飛んでいる福岡便を選択、博多からは長崎行きのJR特急に乗る。

 しかし、そんなキツキツの旅行計画を立てるより、「前乗り」という素晴らしい選択肢がある。14時にお仕事開始なら、前の日のうちに九州入りして、ゆっくり翌日に備えるほうがいい。

 スタッフの皆さんからみても、明らかにそのほうが安心だ。特に天気予報で「明日は荒天、春一番が吹くとみられます」という朝に、「アイツは無事に佐賀まできてくれるかな?」などと不安な面持ちで空を見上げるんじゃ、そりゃみんなたいへんだろう。

 そこで諸君、お仕事の前日、2月13日のクマ助は、朝早くからムックリ起きだして、丸1日早く福岡に向かうことにした。福岡周辺なら、前乗りしても楽しめる場所はいくらでも思いつく。

「楽しむ」「遊ぶ」と書くと何となく人聞きが悪いかもしれないが、前日に現地入りして心身ともにゆったり過ごすのは、仕事本体のためにもマコトに有益だ。① 唐津でステーキ ② 下関でフグ ③ 柳川でウナギ、選択肢はまさによりどりみどりである。
さげもん1
(柳川・北原白秋生家、豪華お雛さまと「さげもん」の光景)

 朝9時半のヒコーキで福岡に飛び立ったワタクシは、11時半にはもう福岡に到着していた。「ニアミス」というか何と言うか、ほぼ同時間帯に、数学のS田先生が羽田にいて、四国の高知を目指していたらしいのだが、ま、S田さんとは2月16日に新宿で一緒に仕事する予定。その時に挨拶すればいいだろう。

 福岡からクマ助が向かった先は、今や「琴奨菊の故郷」として脚光を浴びる柳川である。ホンの2ヶ月前までは琴奨菊の「こ」の字もなかったような気がするが、今や柳川のヒーローは完全に琴奨菊どん1人。「北原白秋も真っ青」という状況である。

 福岡から西鉄の特急で柳川まで約50分。特急と言っても、ごく普通の通勤電車スタイルであって、この電車に横向きに座ったまま50分はたいへんツラい。しかし何しろ「卒タクシー」だ。贅沢なんか言ってちゃダメである。

 途中、久留米の手前に「宮の陣」という駅がある。急行停車駅であるが、ここで「西鉄・甘木線」というローカル線に乗り換えが出来る。今日のワタクシはあくまで柳川を目指す身だから遠慮しておいたが、もし甘木線に乗り換えれば、1つ目の駅が「五郎丸」である。
五郎丸駅
(西鉄、久留米付近の路線図。宮の陣から支線で1つ入れば「五郎丸」の駅である)

 昨年の秋、テレビの世界で何度かこの「五郎丸駅」が話題になった。ただし、実際に行ってみれば何の変哲もない田舎の小駅に過ぎない。一時燃え上がったラグビーブームも、シーズンの終わりとともに、すでにどうも心許ない状況。うーん、もっとイケイケ&ドンドンでブームを盛り立てなきゃイカンね。

 琴奨菊に五郎丸、何だか今日のワタクシはスポーツ・ミーハー世界の真っただ中であるが、「五郎丸」の次の駅は「学校前」だ。さすがに「学校前」となると、イヤというほどホノボノなローカル線だ。3月、菜の花が咲き乱れるころに、またこのあたりを訪れたいものである。

 14時半、柳川に到着。駅にも駅前にもズラリと「おめでとう琴奨菊」のノボリが立ち並び、春一番の生温い風に無数のノボリが揃ってハタハタと揺れ、春はマコトにおめでたい。

 琴奨菊の洪水は、「東洋のヴェネツィア」☞ 柳川旧市街に入ってもかわらない。春の雨の中、合羽を着込んだ船頭さんたちが舟下りのお舟の竿を押してゆくが、その頭上にもやっぱり「琴奨菊おめでとう」の横断幕がある。

 そろそろこのぐらいにしないと、せっかく福永武彦が見事に描ききった「廃市」のムードが台無しになっちゃうんじゃないか。おせっかいなクマ助は春一番に吹かれながら、チョイと心配になってきた。
横断幕
(柳川、お堀の上も「琴奨菊おめでとう」の横断幕だ)

 柳川は、豪華な雛飾りでも名高い。14日はバレンタインデーであって、日本中の女の子たちは「ひたすらチョコ」。とても「お雛さま」どころではないだろうが、確かにチョコもいいけれども、せめて写真でいいから、柳川の豪華な雛飾りで目の保養をしてくれたまえ。

 今日の写真の1枚目は、柳川の名家・北原家の雛飾りである。もちろん白秋の生家であるが、いやはや、素晴しいじゃないか。正面に7段飾りの正統お雛さま。それを囲むように無数に天井からぶら下がっているのは、柳川名物「さげもん」である。

「さげもん」とそっくりのお飾りが、今や全国各地に存在して、「うちこそ元祖」「我々こそ本家」を主張しているようだが、今井君の知る限り「さげもん」はあくまで柳川が元祖。柳川藩主・立花家の邸宅「松濤館」☞ 別名「御花」にも、マコトに豪華な「さげもん」が飾られていた。

「さげもん」とは、要するに「下げたもの」であって、むかし大流行した「あげまん」とは何の関係もない。九州の人のコトバは、モノに対する愛情に満ちていて、「下げたモノだから『さげもん』ばい。何か文句ばあっとね?」とニッコリされれば、ヨソ者がそれ以上ツッコミを入れる筋合いはない。
さげもん2
(旧柳川藩主・立花家邸宅、豪華お雛さまと「さげもん」の光景)

 旧藩主邸・松濤館も、地元の人からは愛情を込めて「御花」と呼ばれる。アジアの超大国からの皆様も、やっぱり大型バスで御花に押し寄せているが、さすがに春節もおしまいだ。明日には上海の株式市場が開く。世界経済の先行きが心配だが、ひとまず春節の終わりの1日をみんな静かに楽しんでいる。

 超大国の人々の様子も、今年はずいぶん変ったように思う。銀座や梅田や新宿では、「うるさすぎ」「あの傍若無人、何とかなんないものかね」という相変わらずの声も聞いたが、さすがに柳川で「さげもん」に魅了されている人々には、厚かましさや傍若無人はほとんど感じられなかった。

 つまり、春節の人々も2つに大きく分化されつつあるようだ。東京・大阪・福岡の量販店に押し寄せて、今もまだ爆買いを続ける人々。一方で、柳川や萩や白川郷や角館を訪ねて、日本文化を深くしみじみ体験しようとする人たち。当然、迎えるほうの我々の心にも、変化があって然るべきだと思うのである。
庭園
(素晴らしい旧藩主邸の庭園も、春一番の雨に濡れていた)

 「御花」の見事な庭園を眺めていると、春一番の雨はまるで梅雨時のようで、「小糠雨」というか、庭園全体をしっとりと小さな雨粒でおおいつくすようである。気温も20度を超えて、暑がりのワタクシの肉体はとっくに汗ビッショリだ。

 大汗をかいているクマどんの周囲は、やっぱり超大国からの観光客。しかし彼ら彼女らに、例の独特の喧噪はない。雨を楽しみ、雨の庭園の風景に溶け込み、「さげもん」の豪華絢爛さを語り、外のお堀を滑るように行く川下りの舟の情緒に浸っている。

 これなら諸君、お互いにいい関係が作れそうじゃないか。春節の新宿や道頓堀でウンザリした諸君、むしろ我々のほうで、視線を少し脇にズラし、古都や小京都を静かに楽しんでいる外国人観光客の優しい様子に、もっと目を向けようじゃないか。

1E(Cd) Indjic:SCHUMANN/FANTAISIESTÜCKE CARNAVAL
2E(Cd) Argerich:SCHUMANN/KINDERSZENEN
3E(Cd) Solti & Chicago:MAHLER/SYMPHONY No.1
4E(Cd) Solti & Chicago:MAHLER/SYMPHONY No.4
5E(Cd) Solti & Chicago:MAHLER/SYMPHONY No.5
total m105 y105 d17810