Sat 160102 カイザーヴィルヘルム教会とツォー駅、変遷10年(ドイツ・クリスマス紀行3) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 160102 カイザーヴィルヘルム教会とツォー駅、変遷10年(ドイツ・クリスマス紀行3)

 こうしてベルリン早朝ウォークが始まったが(スミマセン、一昨日の続きです)、考えてみれば12月20日は日曜日。もう8時45分を回ってはいるが、北ドイツの朝は明けたばかりである。日曜日の早朝、街はまだ閑散としていて、人もクルマもまだ寝床でポカポカ&ウトウトしているらしい。

 そういう時間帯に、静かな教会に入る。マコトに清々しい気分であって、旅の疲れなんかちっとも感じない。カイザー・ヴィルヘルム教会の中は、下の写真に示す通りの美しいブルーの空間。旅の疲れなんか、春先の河の氷のようにトロトロ融けてしまった。

 羽田から16時間。ついでにフランクフルトで大疾走。いやその前の埼玉県大宮での仕事から、もう40時間も行動し続けていて、本来ならもうグッタリのはずだが、諸君、誰もいない日曜の早朝の教会というのは、ホントに素晴らしいものである。

 濃密なブルーの空間に落ち着いて、2分か3分した時だった。いきなり頭上で荘重な教会音楽が始まった。「朝の無人の教会で、ワタクシのためだけにこんな演出をしてくれるのか」と、まさに驚きの極致であるが、パイプオルガンを中心とした演奏は、間違いなく頭上から響いてくる。
ステンドグラス
(日曜日朝、誰もいないカイザー・ヴィルヘルム教会)

 見上げれば、演奏者は6~7人。全て正装したオジサマたちで、オルガンの前に1人、金管の人が2~3人、弦楽器のオカタも2~3人。クリスマス直前の日曜日、朝から熱心な練習に励んでいらっしゃるところであった。

 他にも1人、10歳前後の男子が無邪気に走り回って、スルスル階段を昇ってはパイプオルガンのオジサマや弦楽器のオカタにじゃれついている。「おやおやずいぶん大胆ですな」であるが、オジサマたちのうちの誰かの息子さんだろう。演奏は、その男子をからかいながら途切れ途切れに続く。

 教会のブルーの空間にじっと蹲って、しばらく演奏に耳を傾けた。他にはホントに誰もいない。濃紺のステンドグラスをすかして差し込む北ドイツの朝日がマコトに清々しい。

 このまま1時間でも2時間でも座っていたいが、ホントは今ここに日本人旅行者が闖入する予定はなかったのだろう。入口のあたりを教会関係者のダンナがウロウロし始めて、ちょっと居心地が悪くなってきたところで、すごすご退散することにした。
2016年
(2016年、教会は10年前より格段に美しくなった)

 外に出てみると、カイザー・ヴィルヘルム教会は朝日を浴びてオレンジ色に染まっている。第2次世界大戦末期、連合国側の容赦のない空爆にさらされて見る影もなく破壊された塔であるが、破壊から70年、見事に蘇ったようである。

 10年前の2005年2月9日、降りしきる雪の中でこの教会を見上げた時、戦争の悲惨を思って涙ぐんだものである。あの段階でも、すでに戦後60年。60年も前の爆撃と破壊の音が間近に感じられたほどである。

 ところがどうだ。あれからたった10年、教会は見違えるように美しく復活した。10年前は、もっと悲惨に黒ずんでいたはずだ。塔のテッペンまで黒い煤に覆われていたし、痛々しい爆撃の傷痕がたくさん残って、崩壊寸前の感さえあった。参考までに、10年前の写真を下に掲載しておく。

 戦後70年、その後の東西冷戦でも最前線に立たされたベルリンやドレスデンの人々として、
「そろそろ修復を進めてもいいころじゃないか」
「さもないとホントに完全に崩壊してしまう」
そういう意見が多数を占めても、決してフシギではない。
2005年
(10年前のカイザー・ヴィルヘルム教会。空襲による破壊の痕が生々しかった)

 さて、教会をあとにして、ツォーロギッシャーガルテン駅に向かう。ドイツ語の響きはマコトに物々しいが、日本語で言えば要するに「動物園駅」であって、確かに駅から徒歩10分ほどの所に大きな動物園がある。

 東西冷戦の真っただ中、ベルリンの壁が建設されたのが1961年。ベルリンは真っ二つに分割され、もちろん鉄道も完全に分断されてしまった。それから半世紀にわたって西ベルリン中央駅の役割を担ってきたのが、このツォーロギッシャーガルテン駅である。

 あんまり名前が長ったらしいから、みんな短縮形で「ツォー駅」と呼ぶ。すぐ近くには繁華街「クアフュアシュテンダム」があるが、こっちもまた長ったらしくてメンドーだから、短縮して「クーダム」と呼んでいる。物々しいドイツ語の単語に、若い世代は辟易しているのかもしれない。

 50年にもわたって中央駅の立場に君臨したが、さすがに「動物園前」に過ぎないツォー駅にとって、その立場は重すぎた。ベルリンの壁の崩壊から20年近くが経過した頃になって、ツォーから3駅ほどの所に新しい中央駅が誕生した。

 新しい中央駅(BERLIN HAUPTBAHNHOF)については明日の記事で説明するが、地下から地上まで壮大な3層構造。地下鉄Uバーン、近郊電車Sバーン、ドイツ国鉄(DB)の誇る新幹線ICE、全てが一堂に会する総ガラス張りの巨大なピカピカ君は、ハブ空港にだって負けない規模だ。
ツォー駅
(かつてのベルリン中央駅、ツォーロギッシャーガルテン)

 一方のツォー駅は、すでにかつての栄光の面影すら感じられない。泥だらけの薄暗い工事現場が続き、壁も階段もエスカレーターもみんな黒く煤けて、路上生活中の人々が朝から車座になって酔っぱらっていらっしゃる。チケットの自動販売機も、故障中のものが少なくない。

 やはり10年前、ヨーロッパ40日の旅の初めに、まずワタクシはこの駅を訪れた。30日有効のユーレイルパスをヴァリデイトしてもらうためである。1等車用のユーレイルパスで、これにスタンプを押してもらいさえすれば、1ヶ月間ヨーロッパ中の鉄道1等車に乗り放題。意気揚々と駅を訪れた。

 あの時のツォーロギッシャーガルテンは、まだベルリン中央駅。薄暗い「REISEZENTRUM」には長蛇の列が出来ていて、スタンプをポンと押してもらうためだけなのに、優に30分もかかってしまったニガい記憶がある。

 しかし諸君、あれから10年、ツォー駅にかつての賑わいはない。ガランとした薄暗い構内に、冬の北ドイツの冷たい風が吹き抜け、まさに場末の駅の雰囲気である。

 REISEZENTRUMとは、英語で書けばTRAVEL CENTERであるが、長距離列車の指定席を買ったり、ICEの座席を予約したり、大事なユーレイルパスにスタンプをポンしてもらったり、そういう花やかな旅の一コマを、この駅の旅行センターに任せようという人はほとんどいないようである。
窓口
(ツォーロギッシャーガルテン駅、REISEZENTRUM。かつての賑わいは去り、薄暗さだけが残った)

 さて、今日の記事はこれでおしまいである。「おや、いつもより短くないか?」と首を傾げるアナタ。旧暦男♡今井君の「旧正月の決意」に気づいてくれたまえ(スミマセン、ここからは「昨日の続き」です)。

 昨日「名目上の1月1日」を迎えたワタクシは、「今年こそブログ記事を短くします」「せめてA4版2枚半にとどめるようにします」と誓ったのである。

「どうせまた挫折して、すぐに長くなるんでしょ」
「守れない決意なら、しないほうがマシ」
と失笑するアナタ、ちょっと待ちたまえ。何度でも挫折を繰り返し、それでもまた決意するこの不撓不屈、ぜひ理解してほしいのだ。

 世の中には、まるで世をスネたような態度で、もう決意することさえ拒絶したヒトが多すぎる。一方のワタクシは、挫折を何度繰り返しても、それでもまた立ち上がって決意する。

 ブログ開始以来、「短くします宣言」はすでに10回を超えているかもしれない。しかしたとえ3日で挫折する決意でも、決意の拒絶よりはマシなのだ。

 諸君も、ぜひ旧暦1月1日の誓いを固めてくれたまえ。それが「さあダイエットだ」でも「さあ音読だ」でもかまわない。お正月の記憶が薄れていく中、我々だけはコッソリもう1回、キラキラ決意に輝く新年をスタートさせようじゃないか。

1E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 7/10
2E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 8/10
3E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 9/10
4E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 10/10
5E(Cd) COMPLETE MOZART/THEATRE & BALLET MUSIC 1/5
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