Thu 151210 舟と橋が好きだ 76X番バス まずあちら側へ(速攻サンフランシスコ4) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 151210 舟と橋が好きだ 76X番バス まずあちら側へ(速攻サンフランシスコ4)

 「何でこんなにお舟が好きなの?」というぐらいに舟好きである。そこに舟があれば、意地でも舟に乗る。ナポリでもブダペストでも、プラハでもリヨンでも、アテネでもイスタンブールでもアムステルダムでも、考えてみればいつもいつも舟にばかり乗っている。

 もちろん「舟の上に生涯を浮かべ」の一環なのかもしれないが、まあこう見えても「生まれも育ちも港町」だ。秋田市土崎港は、河村瑞軒「東回り航路」&「西回り航路」が日本の北辺で交わるあたりである。

 だから小学校の校歌にも「港ダマシイ」を歌った一節がある。金子洋文という作詞家であるが、彼は秋田市立土崎小学校の校歌3番をこんなふうに締めくくった。

  北荒海の 日本海
  吹雪に鍛えし 港魂
  逆巻く波に 帆を上げて
  自由の海に 漕ぎいでむ

 1874年創立。明治7年から150年、気の遠くなるような歴史を刻んできた小学校である。今井君の在学した頃は、1クラス50人×1学年4クラス。全校生徒は50人×4クラス×6学年=約1200人の生徒で溢れた。まあ名門と言っていい。

 1年1200人で150年ということになると、合計18万人が「吹雪に鍛えし港魂」を誇り、北荒海 ☞ 日本海の逆巻く波の真っただ中に帆を揚げ、傲然と港から舟を漕ぎ出したことになる。今井君もその1人である。
ブリッジ
(サンフランシスコ・ゴールデンゲイトブリッジ。まずバスで向こう側までわたり、徒歩で戻るルートを選択)

 舟好きは、おそらくそのせい。身の回りで水がタポタポ揺れていないと、どうも気に入らない。というか、落ち着かない。腹が減れば、足許の浜辺にいくらでもハタハタが打ち寄せられ、ハタハタを焼けば最高の酒のツマミになる。

 海の物をいろいろ集めて鍋に入れ、味噌と酒をタップリ入れた後で、熱く焼けた石をぶち込めば、お馴染み「石焼鍋」のできあがり。身の回りに水がタポタポ揺れていてくれないと、なかなか出来ない芸当である。

 すると諸君、舟と同じように常に「水がタポタポ」な場所もこの世の中にはあって、それが「橋」である。昭和の大昔、紅白歌合戦の定番と言えば「舟木一夫」と「橋幸夫」であったが、こうして「舟」と「橋」は「水タポタポ」という共通点で再び結ばれることになる。

 当然クマ助は、舟に負けないぐらい橋も好き。この10年、橋をわたることこそが旅のクライマックスになったことも少なくなくて、国内でも国外でも、美しく大きな橋をわたりきるのは「旅の白眉」の名に相応しい。
チケット
(サンフランシスコ・ミュニチケット。使用する月と日付をスクラッチして使う。バス。地下鉄・ケーブルカー共通だ)

 徳島で公開授業があれば鳴門大橋で渦潮を眺めたし、松山でお仕事の時はわざわざ今治まで出かけて、「よーし、しまなみ街道を一気に尾道まで自転車で踏破するぞ」と張り切ったこともあった。

 自転車で今治から尾道まで、途中には「因島」などという大物も横たわる。あの懐かしい自転車の旅は、ちょうど大型の台風が日本列島に迫っていた日のことであって、橋を3つわたったところで豪雨に襲われて空しく断念せざるを得なかった。

 海外でもクマ助はひたすら橋をわたる。ロンドンならロンドンブリッジ。ニューヨークならブルックリンブリッジ。ブダペストなら鎖橋。12月、厳寒のブダペスト鎖橋では頭のテッペンから足の爪先まで凍りつく寸前、ほうほうのていで向こう岸にたどり着いた。

 だって諸君、「橋」には魔力があるじゃないか。気の遠くなるほど長く対立を続ける2者を、橋は見事に結びつけるのだ。ブダペスト鎖橋は今から1900年前、北がゲルマン民族、南がローマ帝国。これを5賢帝の一人トライアヌスが結びつけた。
ケーブルカー
(サンフランシスコ、100歳のケーブルカーは今日も元気だ)

 我々も、どんどん橋をわたろうじゃないか。わたってわたって、わたり放題にわたって、橋が擦り切れるほどわたって、橋が「もう勘弁してください」と我々に懇願するほどわたり倒せば、きっと穏やかな交流が支配する平和な世の中がやってくる。

 アメリカ西海岸にもそういう橋があって、それがサンフランシスコのゴールデンゲイトブリッジである。昭和世代は「金門橋」と呼んだ。何なんだ、その直訳ぶりは? 新宿はニューホテル、渋谷はビターバレー、姫路はプリンセスロード、大阪はグレイトスロープ、そんなことでいいのか?

 ま、「金門橋」でいいことにしておこう。サンフランシスコのど真ん中・Powell Streetからゴールデンゲイトブリッジまで、徒歩でいける距離ではないから、地道な今井君は「よおし、路線バスで行きますかね」と決めた。

 サンフランシスコ滞在2日目、10月3日は土曜日である。土休日には「76X」というゴールデンゲイトブリッジ方面行きのバスが出ていて、昨日35ドルで購入した「MUNIパスポート7日券」を運転手に提示すれば、橋のたもとまで一気に行ける。

 こんな観光客は滅多にいないのだ。普通は団体ツアーバスでワーッと行っちゃう。しかし諸君、そんなのはつまらない。あくまで地元の人々と一緒に、路線バス・地下鉄・ケーブルカー。世界中どこに行っても、今井君のスタンスはおんなじだ。
76Xバス
(ゴールデンゲイトブリッジには、路線バス76X線が便利)

 いつもいつもあんまり「役に立たない情報」ばかり満載していると、「ちっとも役に立たない」と怒り心頭に発する短気なヒトも出てくるから、珍しくちょっと「お役立ち情報」も書いておく。

 ゴールデンゲイトブリッジ方面「76X」番バスは、始発から乗れば橋までゆうゆう余裕で座って行ける。問題は、「始発のバス停はいずこに?」である。

 何しろ最近はビックリするようなことに悩んでいるヒトも少なくない。「真田丸」、誰が考えても「さなだまる」であるが、「シンデンマルとは何ぞや?」と真顔でクマ助に尋ねた御仁もいた。「シンデンガン」というオカタだって少なくないだろう。

 そこで「76X」路線であるが、この始発バス停のアリカを突き止めるのもまた、シンデンガンの本拠を突き止める以上に困難をきわめる。サンフランシスコ制覇を目指す諸君は、次の手順でバス停を発見したまえ。

① POWELL STREETから、北の海岸を目指す
② ケーブルカーと一緒に、ユニオンスクエアを通過する
③ ユニオンスクエアの「ハートのオブジェ」2つは無視する
④ スクエアを通過したら、Sutter Streetに右折する
⑤ そのまま4ブロック、「あれれ、まだ?」と心配になるまで、ひたすら東進する

車内
(バス車内。おお、まさに「アメリカ本土」な雰囲気だ)

 諸君、そこが76X線の始発地点だ。驚いたことに、バスの運転手どんは一切やる気ナシ。12時30分発のバスに乗ろうとしてステップに足をかけたら、「このバスは11時30分発なんだ。だからちょっと待ってくれ」と、スマホで誰かと通話を始めた。

 いつ果てるともない長電話。麗らかな秋の1日はどんどん過ぎていく。始発のバス停で発車を待つのは、3人か4人しかいない。「いったいバスはいつ出るんだ?」と苛立つところだが、諸君、欧米での旅の極意は、「何があっても決して苛立たないこと」である。

 この場合、苛立てば苛立つほど、それを見透かしたように長電話はますます長くなる。放っておくべ。「完全な放置こそ、旅の極意」と知るべし。12時40分、マコトに不機嫌な運転手が運転席に戻って、「さあいよいよ金門橋」と段取りは整った。

 もう1つ、旅の極意を披露しておこう。「橋をわたるときは、こちら側で降りるのではなく、あちら側で降りましょう」。地下鉄でもバスでも、まずあちら側まで一気に行って、そこから徒歩でゆっくりと戻ってくるのがいい。

 心理的にも肉体的にも、「まずあちら側まで行ってから戻る」ほうが、帰り道のことを心配しながらこちら側からあちら側に行くよりも、圧倒的に有利であることは間違いないのである。

1E(Cd) Savall:ALFONS V EL MAGNÀNIM/EL CANCIONERO DE MONTECASSINO 2/2
2E(Cd) RUSSIAN MEDIEVAL CHANT
3E(Cd) Philip Cave:CONONATION OF THE FIRST ELIZABETH
4E(Cd) Rachel Podger:TELEMANN/12 FANTASIES FOR SOLO VIOLON
5E(Cd) Sirinu:STUART AGE MUSIC
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