Mon 151130 連続更新の危機 「白ワインは、サッパリしてますよ」(また夏マルセイユ39) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 151130 連続更新の危機 「白ワインは、サッパリしてますよ」(また夏マルセイユ39)

 こうして今年もいよいよクリスマスイブがやってきたわけであるが、今朝のクマ助はブログ連続更新が3年半でついに途絶えるか/途絶えないか、かなり微妙な瀬戸際に立たされていて、こうして記事を書きながらも、正直言って「気が気でない」というアリサマである。

 やっぱりモト東欧地域は、「ほのかに」「かすかに」「ホンの2~3年」ではあるが、ネット環境などの面で遅れをとっていて、「つながらないな」「遅いな」「重いな」というイライラ感が募るのである。

 それがとうとう昨夜から、「ホントにつながらない」「ピクリとも動かない」という状況に陥った。いや、「ピクリとも」という表現にはウソがあって、実際には「マコトに不承不承にしか動かない」である。

 どのぐらい不承不承かと言うに、昭和の田舎の役場の窓口なんかに「相手を苛立たせることにしか興味がない」としか思えないオジサマ職員がいたものであるが、昨夜のクマ助は苛立ちのあまり、何の罪もないMac君を何度も殴りつけそうになった。

 ま、こういう状況に関する告白も、もしかしたら今日中に読者諸君には届かないかもしれない。日付が変わるまで、残り時間はまだ12時間もあるが、このネット環境を何とかしない限り、連続更新は3年半で途切れる可能性がある。
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(9月8日、リヨン小旅行の翌日は、マルセイユでまたまた大量の生牡蠣を貪った)

 こういうふうで、「とても旅行記どころではない」という気分であるけれども、五郎丸どんがお手本を示してくれた通り、ルーティンというのはこの上なく大切なものである。今井君のルーティンは、あくまで日々の旅行記。ちょっとやそっとのことでヘコタレてはいられない。

 9月7日、リヨン「LE NORD」のクマ助が「さあいよいよメインのフィレステーキだ」と張り切っていた頃、真後ろのテーブルに上品な日本人老夫婦がやってきた。現地の男性日本人ガイドがついて、一行は3人である。

 ダンナのほうは、かつてはなかなか高い地位についていたんじゃないか。年をとってもさすがに男子はヤンチャであって、その発言も口調もまだまだヤンチャなままであるが、たくさんの部下を率いていたヒト独特の深い余裕を感じさせる。

 奥方は70歳代半ばぐらいか。ダンナのヤンチャにもすっかり慣れたもので、やわらかな言葉や態度で、おそらくは目線や音程で、見事にダンナを操縦していらっしゃる。言わば理想の老夫婦である。スイスから列車でフランス入りしたばかりであるらしい。
15367 トラム1
(生牡蠣屋には、トラムで向かう)

 今井君は「地元の日本人ガイドつき」などという旅を経験したことはないが、ガイドさんというものは、駅まで迎えに出向き、街を案内し、レストランでの食事にも同席して、最後は帰りの列車に乗せるところまで面倒をみるものであるようだ。なかなかたいへんなお仕事である。

 しかしこのガイドさんは、どうやら本職のヒトではない。クマの背中でじっくり話を聞いたところでは、リヨンのどこかの大学で19世紀のフランス詩を研究しているらしい。35歳ぐらいか。「オーバードクターが、軽いバイト気分でやってます」の雰囲気がムンムンするのである。

 ウェイトレスがメニューをもってくると、フランス語で冗談の1つも飛ばしてみせる。ウェイトレスのオネーサマもそれを軽く受け流して、まあ悪くない雰囲気だ。しかし諸君、ダンナと奥方に対する案内ぶりが、マコトにいい加減なのである。

 ダンナはワインを飲みたがっている。しかし「オススメのワイン」について、ガイドさんはほとんど説明する気がないらしい。
「そうですね、ワインには赤と白がありますよ」
「赤はいろいろですが、白ワインはサッパリしてますよ」
ときた。うぉ、「白はサッパリしてますよ」。なかなかご丁寧な解説じゃないか。

 ダンナも奥方も、正直言ってワインには相当お詳しい感じのカタガタ。そういう高級老夫婦を美食の都リヨンの有名レストランに案内して、「白ワインはサッパリしています」、そういうガイドでオカネをもらっていいんだろうか。
15368 トラム2
(トラム車内。「マルセイユは治安が悪い」というイメージとは全く違って、車内は清潔そのものである)

「オススメの料理は?」とダンナが尋ねると、ガイドさんの返答は「何でも、お好きなものを召し上がってください」「どれもきっとおいしいですよ」「ご自分でお選びいただいていいんですよ」と来た。

 ダンナがリヨンの郷土料理「川カマスのクネル」に興味を示した。すると「何だか分かりませんが、川魚をこねたものにザリガニのソースをかけたらしいです。いいんじゃないですか?」と、またまた投げやりな返事しかしない。

 その料理、今井君はホンの3~4日前に試したばかりである。要するにリヨン風のハンペンに薬草臭いソースをかけただけ。今日のメニューの中で「一番オススメでないもの」がまさにその川カマスのクネルだ。別の選択肢にしたほうがいい。

 ガイドさんが全く相談に乗ろうとしないので、クマ助はだんだんイライラしてきて、ここは思い切ってクルリと振り向き「ダンナ、それはヤメにしたほうがいいですよ」と忠告したくなってきた。

 しかしそれじゃダンナも奥方もビックリするだろう。ガイドさんの顔もグシャッと潰れちゃう。ガイドを派遣した旅行会社のメンツもムニュッと潰れちゃう。ここはグッとガマンして、ちょうど今井君の前に置かれたナポリ名物のデザート「ババ」に、ラム酒をドボドボかけながら、成り行きを見守った。
15369 ロゼ
(今日もまたロゼワイン)

 やがて運ばれてきた「クネル」に、一瞬でダンナも奥方も落胆した様子。口に運んでまた落胆。「なんだ、ハンペンじゃないか」という落胆がクマ助の背中にもヒシヒシを感じられたが、ガイドさんは全く気にする様子はない。ご自分は何かパスタみたいなものを注文して、平気で旨そうに貪っている。

 クネルには、お米がつく。ただしパサパサのインディカ米だ。水気の一切ないサラサラしたヤツが、お茶碗まるまる1杯分。これをどうやって食べたらいいのか、それを説明するのがガイドさんの仕事のはずだが、彼はパスタもぐもぐに夢中で、インディカ米には何の興味もない。

 20世紀、日本人がインディカ米をたくさん食べたことが2回ある。1回は、戦時中。2回目は1990年だったか、日本のお米が何かのハズミで大凶作になったことがあって、タイから大量のインディカ米を輸入した。4半世紀前のことである。
15370 ステーキ
(どんなに大量でも、生牡蠣は前菜あつかい。メインは今日もまた大きなステーキをワシワシやる)

 実は食事の後、店の洗面所でダンナとちょっと話をするチャンスがあった。東京の人で、「スイス&フランス6日間の旅」であるとのこと。「クネル、おいしかったですか?」と尋ねると、「珍味というか、何というか」と苦笑するだけであった。

 ダンナは特にインディカ米に四苦八苦した様子。「戦時中を思い出して、何だかイヤでしたな」と、またまた口許を歪めて苦笑したところへ、くだんのガイドさんがやってきた。鋭い視線をチラッとクマ助に向けて、何故だか分からんが「よろしく」「ハハハハ」と乾いた笑いを漏らしてみせた。

 何がどう「よろしく」だったのか今も分からない。しかしあれ以来、「白ワインは、サッパリしてます」と言った彼の投げやりな口調が、クマ助の頭から離れない。

「自分は本来こんな仕事をしている人間じゃない」
「ボクにはもっと大事な、ホントの仕事があるんだ」
という気持ちはよく理解できる、しかし例えバイトのつもりでもキチンとこなさなきゃ、「本来の仕事」なるものも、マコトに怪しいものであると言わざるを得ない。

 あれから3ヶ月半。クリスマスから年末年始のフランスにはたくさんの日本人が押し寄せるのが常だから、彼はきっと今日もバイトだろう。今日もまた「白は、サッパリしてますよ」を続けているのかどうか、何だかクマ助は心配でならないのである。

1E(Cd) Billy Wooten:THE WOODEN GLASS Recorded live
2E(Cd) Kenny Wheeler:GNU HIGH
3E(Cd) Jan Garbarek:IN PRAISE OF DREAMS
4E(Cd) Bill Evans & Jim Hall:INTERMODULATION
5E(Cd) John Dankworth:MOVIES ’N’ ME
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