Mon 151123 人形町と八丁堀TAPの思ひ出 クリスマスの渋谷はコワい 生焼けハンバーグ | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 151123 人形町と八丁堀TAPの思ひ出 クリスマスの渋谷はコワい 生焼けハンバーグ

 12月15日は人形町、ビジネス街としてもそんなに大きな街ではないし、高校生が殺到する要素も一切ナシ。「公開授業」というと何だか花々しい雰囲気であるが、小規模校舎の地味で小規模な公開授業も、1年に3~4回は奮闘努力しなければならない。

 神田に近いビジネス街のド真ん中・人形町に高校生が約70名も集まってくれた。ひと昔前、今井君が移籍してきた当初の東進には「30名」「40名」という寂しい公開授業も普通にあったから、「人形町で70名」なんていうのは、ハッキリ奇跡的な数字である。

 だって諸君、周囲にはターゲットとすべき高校も見当たらない。地下鉄・人形町駅で受験生が下車するとか乗車するとか、そんな姿を見かけることは、普通には考えられないのである。

 その証拠に、東進の校舎が絶好調なら必ずその直近の貸ビルにオープンする「K合塾マナビス」が、人形町には見当たらない。さすがのマネッコ名人も、「まさか人形町校舎が繁盛するはずはない」と、直観というか、偏見というか、先入観というか、まあそういう触覚をピクピク動かしたんだろう。

 しかし諸君、そうは問屋が卸さない。わが人形町校は若い女子の校舎長を先頭に「見事」と形容していい奮闘努力を展開。飲み屋街のまん真ん中で、高1&高2限定の70名を集めきった。熱々クマのマブタから、ふと沸騰寸前の熱い涙が滴り落ちる瞬間である。
ハンバーグ1
(12月15日、人形町から渋谷に出て、巨大ハンバーグを貪った)

 東京の諸君、ボクチンは叫びたい。「人形町だヨ、全員集合!!」。そりゃ東進の校舎は今や日本全国に1000を超えている。もう1回、真剣に数え直してみないと正確な数は分からないが、下手をすると1200にも近づいている。ローソンやファミマより多いんじゃないか、そんな気さえするほどである。

 しかしやっぱり「人形町だヨ、全員集合!!」であって、こんなに夢中で生徒指導にあたっている校舎長なら、もちろん生徒の成績急上昇も当たり前だ。ターゲットもハッキリしないビジネス街の校舎で、70名がこんなに熱く盛り上がっているのは、ホントにホントに感動的である。

 まず諸君、「TAP」について調べてみたまえ。1980年代まで、東京の中学受験と高校受験で最も有名かつ優秀な塾は、東京・八丁堀のTAPだった。昭和世代の意見として、おそらく誰ひとり異論のないところである。

 そのTAPから、人気講師たち十数名が電撃的に独立して「SAPIX」を名乗った。TAPの八丁堀本校を、激震が襲ったのである。例えば今の民主党から、枝野サンと細野サンと前原サンが独立して新党を作ったとする。激震はそのぐらいの強烈さであった。

 もちろん独立してSAPIXを形成した当初は、TAP本校の目の前に校舎を開設する。誰だって考える戦略であって、TAPの上位生たちはこぞってSAPIXに転校した。いまや押しも押されもせぬ中学受験の雄SAPIXは、こうして誕生したのである。
人形町1
(人形町の大盛況)

 その1980年代、今井君は埼玉県東部の塾でバイトに励んでいた。バイトながら「校舎長」なんてのも務めた。春日部のカレー屋「ラホール」に通い続けているのも、当時の思い出がタップリ詰まっているからである。

 中学部で一番優秀だったクラスからは、早慶の系列高校にバンバン合格した。懐かしい渡辺君、三瀬君、米原君、菅原君、森君、宮部君。井上サン、鈴木サン。今ではみんな立派なパパやママになっているはずだが、1週間に5回も通ってくる「特訓クラス」には、ホントに優秀な中3生が揃っていた。

 M島君も、そのクラスのメンバー。埼玉県だと、優秀な中学生はみんな公立を目指す。何と言っても浦和高と浦和一女高。続いて、春日部高に越谷北高。しかし諸君、あの時の特訓クラスからはM島君を中心に「開成高校を目指そう」という雰囲気が盛り上がった。

 優秀だったM島くんは、首都圏の模試で常に第1位。すべての模試で首都圏トップ。しかしあんまり優秀だと、「ライバルがいない」ということに不安を感じて当然だ。中3の冬、いきなり「TAPの冬期講習に行きます」と言い出した。
大人の
(渋谷「大人のハンバーグ」を発見。東急百貨店本店の向かい、ドンキホーテの隣りの隣りの隣りである)

 諸君、中3の冬に他の塾に行かれてしまうと、新聞やチラシの広告に「合格実績」として発表できなくなってしまう。マトモな塾や予備校の流儀として、それが一応エチケットだ。

「講習に参加しただけ」「模試を受験しただけ」、そういう生徒を実績とか合格者数に加える予備校もあったが、21世紀前半、そういうオキテ破りを続ける予備校は、この厳しいマーケットから退場を余儀なくされつつある。

 そういう流れがあったから、バイト校舎長の今井君もM島君の「TAPの冬期講習に行きます」発言には愕然とした。そりゃきっと、TAPの授業はスゴいんだろう。しかしバイト校舎長・若き今井クマ助だって、授業はダントツにスゴいはずだ。

 あんまり悔しくて、「いつかはTAPの講師陣よりスゴい授業を出来るようになってやる」と固く決意。1988年のことである。河合塾と駿台、カケモチで授業を始める2年前のことであった。

 こうして、八丁堀で「TAP本校」と独立直後の「SAPIX」の大激戦が始まった。東京駅東側の一帯が塾どうしの大激戦の舞台となり、やがて直近の人形町に「四谷大塚」も開校した。我々の人形町校があるのは、その流れを21世紀に伝えているのである。

 というわけで、昭和の塾&予備校バトルを生き抜いてきた大ベテラン・クマ助としても、人形町の公開授業に並々ならぬ闘志を居抱いて登場。生徒のママたちも2人参加する中、うひょ、とても「わずか70名」とは思えない強烈な盛り上がりを実現した。
ワイン
(もちろん赤ワインも1本。グラスが可愛いじゃないか)

 そして当然その興奮を、単独祝勝会にも持ち込まなきゃイカン。人形町から渋谷まで、奮発してタクシー30分。クリスマス直前で大混乱の渋谷に乗り込んで、今夜はハンバーグとワインで締めくくることにした。

 渋谷駅前のスクランブル交差点、道玄坂を登って109に至る道筋、東急百貨店とドンキホーテのあたり、クリスマスを控えた夜の渋谷は、おそらく世界で一番ワイルドだ。治安が悪いというか物騒というか、渋谷の夜を経験した人は、先進国の雑踏ならどこへ行ってもワイルドさを感じることはなさそうだ。

 選んだ店は、渋谷東急本店の向かい。「この先には危険ドラッグ店とラブホしかありません」という角を曲がって、店の名も「大人のハンバーグ」。クマ助は分厚い赤身ステーキをワシワシやるのも大好きだが、ハンバーグ♡愛の熱さも他者に負けるつもりはない。

 ウェイトレスのオカタはどうも今井君を知っている様子で、ニコニコしまくっていらっしゃる。お隣のテーブルのオバサマ2名は、たった今BUNKAMURAで演劇を観てきた帰りであるらしい。ミュージカル俳優の1人1人について、ゴシップやら何やら語り合ってはケロケロ笑っていらっしゃる。

 そういうマコトに微妙な雰囲気の中、クマ助は玉子やチーズがタップリ乗った巨大ハンバーグを貪ることにした。赤ワインもボトル1本注文して「よーし、ひき肉いくぞぉ、ひき肉バンザイ!!」と、ボンボン燃えに燃えたのである。
ハンバーグ2
(ハンバーグ、玉子のせバージョン)

 しかしやがて運ばれてきたハンバーグは、クマ助の好みとはホド遠い。外は焼けているが、中はドロドロの生焼け状態。もちろんこの店のウリはそれであって、「生でこそ、肉の甘さが引き立ちます」という方針なのだ。

 これがグルメ番組なら、
「噛まなくても溶けちゃうよ♡」
「何だ、こりゃぁ♡」
という世界。実際、テレビのバラエティでも何度も紹介されたらしい。

 しかし諸君、たとえタレントさんたちが口を揃えて「何だ、こりゃぁ?」「溶けちゃったぁ♡」「あまーい!!」「やわらかーい♡」と絶叫しようと、ワタクシは違うと思うのだ。ステーキには、十分な固さと歯ごたえが必要。ハンバーグは1粒1粒ひき肉をかみつぶす食感が不可欠だ。

 このままでは、22世紀の日本人には「アゴ」というものがなくなっているんじゃなかろうか。「かまなくても溶けちゃう」「アブラがとろーり」「甘みがどろーり」ばっかり称賛されている状況では、アゴの骨も筋肉も鍛えられる余地がないじゃないか。

 ま、とりあえず、おいしゅーございました。玉子をのっけるバージョンも、玉子をのっけないバージョンも、溶岩の一枚板でしっかり時間をかけて焼きさえすれば、アンコのカタマリみたいな生肉のナマナマしさは一応セーブできる。

 しかし諸君、生のナマナマ、かまない生活様式、「甘い」ばかりを称賛する硬直した発想、そういうのをホンの少し変えたほうがいいんじゃないかと思うのは、ガンコなクマ助ばかりなんですかね?

1E(Cd) Patricia Barber:NIGHTCLUB
2E(Cd) Yohichi Murata:SOLID BRASS Ⅱ
3E(Cd) CHET BAKER SINGS
4E(Cd) Art Pepper:SHOW TIME
5E(Cd) Maceo Parker:SOUTHERN EXPOSURE
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