Mon 151005 なでしこに花が届く 新刊は好調だ リヨン大行進(また夏マルセイユ29) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 151005 なでしこに花が届く 新刊は好調だ リヨン大行進(また夏マルセイユ29)

 10月29日午前、「なでしこちゃんに」「ご冥福をお祈りします」というキレイなお花が届いた。他にもいろいろな人からメールやプレゼントが届いて、なでしこはホントに幸せなねこであった。すぐにお花をお供えして、「こんなにキレイな花が届いてるよ」と報告した。

 きっとなでしこのおかげで、新刊の売れ行きも好調である。「英語学習法部門」で全国3位になっているそうで、丸善の丸の内本店でも好評、たくさんの追加注文が入ったとのこと。マコトにおめでたい。

 読者諸君、ぜひ友達や後輩や先生、パパ&ママやジーチャン&バーチャンにも、どんどん勧めてくれたまえ。英語に限らない。他の科目の先生にも「この本いいですよ」と勧めてあげる価値のある本である。
なでしこ
(キレイなお花をいただいた。早速なでしこの前にお供えして手をあわせた。おかげで新刊書の売れ行きも好調らしい)

 さて、ヒトが普通に歩く速度は、時速約4kmである。小学校4年生の時、「毎日の勉強」というドリル本で読んだ記憶がある。「毎日の勉強」は、昭和の小学生用定番ドリル。小学校に出入りの業者が、毎学期の始めに体育館に売りにきたものだった。

 われわれ児童は保護者から渡された集金袋を握り、たいていの者は国語・算数・理科・社会の4冊を買って、日々の学習に励んだ。「算数と国語だけ」という締まり屋もいたが、幼いクマ助は小4から小6まで、必ず4科目を買ってもらっていた。

 出版社は、確か学習研究社。通称「学研」であるが、当時の小学生なら誰だって学研の「科学」か「学習」を定期購読していたから、その学研が「毎日の勉強」を売りにくれば、「何となく当然」という感じで毎学期の「毎日の勉強」を買いに並んだ。

 ドリルは、表が「予習のページ」で、裏が「復習のページ」。予習のページには読み物形式でいろいろ面白い記事が掲載され、ググッと興味を引きつけたところで、では「問題を解いてみましょう」「ドリルで力を鍛えましょう」という流れになった。
合流点
(ローヌとソーヌの合流点。上が白いローヌ、下が黒いソーヌ。こういうのは、船に乗らないとピンと来ない)

 クマ助は、「復習のページ」のファン。他人の書いたものを読むのはまだあんまり好きではなかったから、「予習のページ」はすべて省略して、ひたすら問題演習とドリルに励んだものである。

 その場合、自分が何ともエラかったと思うのは、何より先に解答集をハサミで切り離して、親に預けてしまうこと。解答集なんかと首っ引きでは、どうせ勉強の成果は上がらない。答えがあっていようといまいと、とにかく誠実にドリルを解いていく。基礎力をつけるには、解答集に頼っていちゃいかんのだ。

 そうやって小学校4年から6年まで、「毎日の勉強」は毎学期の国算理社4冊、ドリル部分はすべてやり遂げた。うぉ、何ともイヤな小学生でござるね。しかし諸君、今井君の基礎力は、そういう形でパンパンに身についてしまった。

 いまググってみても、「毎日の勉強」というタイトルは跡形もない。残っているのは、やっぱり学研の「毎日のドリル」であって、それが20世紀の「毎日の勉強」の流れを汲むかどうかは、ちょっとやそっとでは確かにはならない。

 しかし諸君、小中学生でウンと基礎力を身につけるには、ああいう毎日のドリル形式が間違いなくベストなのである。「こういう教材で英語版はないかな」と思うのであるが、やっぱり学研の「英語・毎日のドリル」か、さもなきゃ「ひたすら音読」。難しいことを言わず、とにかく根気よく継続するにかぎる。
白鳥さん
(ソーヌ川の白鳥たち)

 さて、何でこんなにシミジミ書いているのかと言えば、「ヒトの歩行速度は時速4kmぐらいです」と記憶したのが、「毎日の勉強」の算数バージョンだったからだ。

 今や、そういう勉強は塾が一手に握っていて、塾の算数の世界に「はじき」というコトバがある。「速さ=距離÷時間」というヤツであるが、速さの「は」、時間の「じ」、距離の「き」をつなげて「はじきの問題」と称するわけだ。

 何もそんな難しいことをやらなくても、「km/時」という速さの単位を記憶すれば、それがそのまま「距離÷時間」になっているのであるが、それでは小学生にとってあんまり身もふたもない。「はじき」とか、何となく面白いような面白くないような、そういうことを盛り込まないと塾の授業が成り立たない。

 で、諸君、ヒトが歩く速さは1時間に4kmであり、30分なら2kmである。リヨンのクマ助くんがソーヌ川の岸辺で遊覧船から降りたのは、16時ちょうどでした。マルセイユ行きのTGVが出るのが16時25分です。船着き場から駅までの距離は2.5kmあります。クマ助くんは、TGVに間に合うでしょうか。

 毎日のように塾に通っている優秀な児童なら、直ちに「無理でーす!!」と声を合わせるはずである。しかも諸君、このクマは他人からは分からないが明らかに泥酔していてお目目が楕円形だ。その場合、歩く速度は普通のヒトより明らかに劣るのである。
本屋さん
(リヨンの古本屋さん。リヨンは落ち着いた街である)

 TGVのチケットは、朝マルセイユを出る時に買ってあって、もしも乗り遅れればまるまる1万円だか2万円だかが紙クズになる。「ええっ、2万円が紙クズ?」と考えると、クマはあまりのもったいなさにガオーッと吠えるしかない。

 しかしこの場合、小学生がいくら塾に通っても教えてくれない裏ワザがあって、「タクシーというマホーのジュータン」に乗っかれば、状況は一気に打開できる。道路さえ混んでいなければ、駅まで10分もかからない。「無理です!!」どころか、マコトにヤスヤスとTGVに間に合うのである。

 ところが諸君、そうでもないのだ。金曜日の夕方、リヨンの街はもう絶望的な渋滞の真っただ中であって、マホーのジュータンもちっともその魔力を発揮できない。

 そこでクマ助は、ものすごい勢いで駅の方角に驀進しはじめた。「25分で2.5kmを踏破する」ということになれば、走るか走らないか微妙なバランスで突き進まなければならない。

 もしも「勝手知ったる故郷の道」ということなら、中学生の運動会よろしく2500mの爆走もいいだろうが、残念ながらここは故郷を遠く離れたリヨンである。話はそんなにカンタンではない。ちょっとでも油断すれば道に迷うから、勢いに任せた中学生的爆走に身を委ねるわけにはいかないのだ。

 そして驚くなかれ、見知らぬ道を20分ちょいで2.5km、見事にクマ助は踏破してみせた。工事現場のフェンスやら、複雑に入り組んだ駅前交差点をモノともせず、16時22分、TGV発車まで3分の余裕を残して、「日本のクマがトップで戻ってまいりました」と、感動のマラソン中継よろしく駅構内になだれ込んだ。
トラム
(リヨンのトラム。可愛いじゃないか。日本の静かな地方都市にも似合いそうだ)

 ところが諸君、一難去ってまた一難。リヨン駅は言語道断にごった返している。朝の山手線の電車内とほぼ相似形の大混雑が、クマの行く手を塞いでまさに1歩も進めない。

「すみませーん」「急いでるんです」「どいてください」の絶叫が口をついて出そうになるが、何しろここはヨーロッパだ。駅を埋め尽くした群衆は、一人につき2つも3つも巨大スーツケースを引きずっていて、「どく」「道を譲る」という行動も困難をきわめる。

 おやおや、これではこの25分の奮闘も水の泡だ。駅にはたどり着いたが、ホームに上がるのは不可能に近い。しかもその前に、チケットを刻印機に通さなければならない。それを怠れば、「不正乗車だ!!」と車掌さんに叱られて、「罰金80ユーロ」と理不尽な要求を突きつけられる。

 ほとんど絶望のていで天を仰ぐ気持ちだったが、諸君、あれれ、どうも雰囲気がオカシイ。そもそも先進国の駅全体が、これほど身動きの取れない状況になるものだろうか。こんな大混雑じゃ、ラグビーの優秀なバックスでも、巧みなステップでかわしていくのは困難である。

 構内を埋め尽くした群衆は、何故かみんな同じ方角を向いて、それぞれに思い思いの絶望のジェスチャーを見せている。見上げているのは「DEPARTURE」の巨大掲示板。どうやら、列車の運行が大きく乱れているらしい。

 お、こりゃひとまず助かった。今井君は思わず安堵の胸をなでおろした。「残り2分」「それなのに前進できない」「予約したTGVが行っちゃうよ」「2万円が紙クズだよ」という目前の危機は、これでひとまず去ったのである(明日に続く)。

1E(Cd) Barbirolli & Hallé:THE DREAM OF GERONTIUS 2/2
2E(Cd) Ashkenazy & Philharmonia:SIBERIUS/SYMPHONIES 1/4
3E(Cd) Ashkenazy & Philharmonia:SIBERIUS/SYMPHONIES 2/4
4E(Cd) Ashkenazy & Philharmonia:SIBERIUS/SYMPHONIES 3/4
5E(Cd) Ashkenazy & Philharmonia:SIBERIUS/SYMPHONIES 4/4
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