Sat 150912 ネリー&アイリーンの思い出 ロンシャン宮を訪問(また夏マルセイユ19) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 150912 ネリー&アイリーンの思い出 ロンシャン宮を訪問(また夏マルセイユ19)

 昨年9月、マルセイユの旧港に面したカフェ「Petit Pernod プチ・ペルノー」で、60歳代と思われる老姉妹と出会った。リヨンで生活しているネリーと、ニースの美術館で働いているアイリーンである。フランス人でアイリーンという発音はおかしいから、きっと本名はイレーヌ。それを英語風に発音して、クマ助にも英語で話しかけてきた。

 詳しくはブログ内検索で「アイリーン」を検索していただければいいが、彼女たちが盛んに訪問することを勧めてくれたのが、① ロンシャン宮、② バロン・デ・ゾフのレストラン「フォンフォン」と「シェ・ジャノー」であった。

 そのうち②の方は早速2軒とも訪ねてみて、そのあと3日間はすっかりバロン・デ・ゾフに入り浸る結果になった。「フォンフォン」はブイヤベースの有名店、「シェ・ジャノー」はピザの人気店であった。

 そもそもアイリーンが話しかけてきた原因が、「あなた、ブイヤベースの食べ方が間違ってますよ」ということだったので、「どうしてもFONFONには行かなきゃダメですよ」と続いた。

 しかし根が下品なクマ助としては、高級すぎる雰囲気のFONFONはどうも面倒。シェ・ジャノーのピザに喰らいつくほうが気に入ってしまった。昼も夜もジャノーに出かけ、ついでにTシャツまで買ってきたのだから、どれほど気に入ったかは言わずと知れたことである。
ロンシャン宮
(マルセイユ・ロンシャン宮の勇姿)

 ネリー&アイリーンとはあれっきりになってしまったし、「毎年マルセイユに1週間ほど滞在して姉と妹の再会を祝うんです」と笑っていた2人を探しに、プチ・ペルノーや、アイリーンが働いているという「ニースの美術館」を訪ねることもしなかった。

 しかしそれでも気になっていたのは、アイリーンが最初に推薦してくれた①の「ロンシャン宮」をまだ訪れてみていなかったことである。「マルセイユに来たなら、ロンシャンだけはどうしても行くべきですよ」とおっしゃるそのロンシャン宮には、マルセイユで一番優れた美術館があるのだと言う。

 では何故そのロンシャン宮に足を運ばなかったのかと言えば、日本人独特の「治安が心配で」というのだから恐れ入る。「治安・治安と言いなさんな」が持論のクマ助は、多少の危険なんか顧みずにズンズン進んでいくのが好き。そもそも「治安が悪い」という発言自体、地元のヒトビトに失礼な気がする。
トラム1
(マルセイユ、新開通のトラム)

 しかし諸君、昨年までのマルセイユは、旧港の周辺はすっかり美しく変貌を遂げていたけれども、旧港から大通りを陸地のほうに上がれば上がるほど、「昔のままのマルセイユ」「イメージ通りのマルセイユ」が残っていて、ウカツに足を踏み入れるのが憚られる雰囲気であった。

 普段から渋谷や新宿の街を闊歩しているクマ助としては、本来なら「イメージ通りのマルセイユ」という程度で恐怖を感じたりするはずがないのだ。「昔ながらのマルセイユ」であったとしても、夜の渋谷&新宿と比較すれば、そんなにコワい場所ではない。

 その証拠に、クマ助はバロン・デ・ゾフのほうには午後11時近くまで入り浸って、あのいわゆる「治安の悪い」真夜中のマルセイユを、ホテルまで徒歩で40分もトボトボ歩いて帰ったのである。

 ガイドブック風に言えば、「帰りは保険をかけるつもりでタクシーを利用したほうが無難です」「流しのタクシーを拾うのは非常に危険です。お店の人に呼んでもらいましょう」なのであるが、それでもクマ助は夜の波打ち際を眺めながら夜のお散歩を楽しんだ。
トラム2
(ロンシャン宮の足許を行くトラム君)

 しかしさすがに外国人旅行者として、昨年までのロンシャン宮周辺はビクビクものであって、例えアイリーンとネリーに「一番のオススメですよ」と言われても、積極的に足を運ぶ気にはなれなかった。

 それが今年はすっかり様変わりしたのである。それもこれも全ては新しく開業したトラムのおかげ。5分に1本、ということは上り下り合わせて2分半に1本、轟音をあげて堂々と走ってくるトラムが存在する所に、凶悪な犯罪などありえない。

 やっぱり外国人旅行者にとって、バスでは頼りないのだ。どこをどう走ってくるかも分からない。停留所がどこにあるかも分からないし、キチンと時間通りに走ってもくれない。たった1両のバスでは、周囲を威圧する迫力にも欠ける。走り去ってしまえばそれっきり、どこに消えたのかも分からない。

 そこへ行くと、トラムはマコトに頼りがいがあるのである。この線路の上を、5分待っていれば必ずやってきてくれる。どこから来てどこへ向かうのか、極めて明確&明瞭であって、「今日は運休です」「都合で20分遅れてきます」などということはありえない。

 そういう安心感が治安に与える影響は絶大であって、ロンシャン宮方面からも「昔ながらのマルセイユ」は姿を消した。姿も消え、暗いイメージもなくなって、雰囲気は一変した。
ウシ1
(女神の足許には、たくましいウシ君たちの姿が)

「さて、それではアイリーンが力説していたロンシャン宮に出かけてきますかね」であって、9月2日、ノートルダム大聖堂 ☞ ナヴェットの店 ☞ 聖ヴィクトール修道院と続けてきたマルセイユ散策を締めくくるのに、迷わずロンシャン宮を選ぶことにした。

 トラムで10分ほどの旅である。かつて無秩序な路上で移民の子どもたちがサッカーに興じ、規律が乱れて無秩序になりかけたデモ隊が、塀やフェンスを蹴り倒していたあたりであるが、今はマコトに整然として、夏の真昼の太陽のモト、まるで100年も前から穏やかに成長してきた優等生みたいな風情である。

 その道の尽きるあたりの丘の上に、ロンシャン宮があった。キレイに整備された噴水のしぶきが清々しい。ミサンガ売りのニーチャンたちも、セルフィ売りのオジサンたちも、一切その姿を見せない。ましてや、かつてナポリやヴェネツィアの路上を占拠していたフェイクバッグ売りの男たちもいない。

 穏やかな晩夏の午後の静寂。うぉ、まさにこの日のクマ助が求めていたものがそこにあって、こういう庭園でくつろげば、そろそろ蓄積してきた旅の疲労も、優しく癒されるというものである。

 巨大な噴水の主役は、4頭のウシたちである。「あれれ、馬じゃないの?」であるが、勝利の女神のクルマを引いていくのは、マコトにたくましい4頭のウシたちであって、その堂々とした体躯と怒りの表情が、目の前の群衆を威圧する。
ウシ2
(たくましいウシ君の表情)

 噴水の坂道を登って、勝利の女神とウシさん4頭の背後に回ると、そこには穏やかな公園が広がっていて、夏の昼下がりを静かに過ごすには絶好のロケーションである。

 もう若くはない男女2名が、物陰で少し怪しい行為を始めようとしていたが、ヒトビトの厳しい視線を受けて、すぐに遠慮した模様。かつてマドリードのレティーロ公園で「上空からソースが降ってきた」という事件があったが、そういう危険な雰囲気もここには一切感じられない。

 マドリード・レティーロ公園では、
① ソースが降ってきた
② 明らかにウスターソースだが、
③ ラテン系のオジサンがどこからともなく接近
④ それは「鳥の糞だ」と主張
⑤「拭いてやろう&拭いてやろう」とニコニコ
というお馴染みのストーリーであった。

 こういう人にダマされて、おサイフ&パスポート、大事なものがみんな「いつの間にかドロン」「オジサンもドロン」という筋書きは定番だが、今やマルセイユはそういう危険性を全く感じさせない街に変貌したのである。

1E(Cd) Maggini String Quartet:ELGAR/STRING QUARTET IN E MINOR 他
2E(Cd) 東京交響楽団:芥川也寸志/エローラ交響曲 他
3E(Cd) Maggini String Quartet:ELGAR/STRING QUARTET IN E MINOR 他
4E(Cd) Eduardo Egüez:THE LUTE MUSIC OF J.S.BACH
5E(Cd) Cecilia Bartoli:THE VIVALDI ALBUM
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