Mon 150907 名前を変えつつ成長するダイハードなヤツ OUIGO(また夏マルセイユ14) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 150907 名前を変えつつ成長するダイハードなヤツ OUIGO(また夏マルセイユ14)

 美濃一国をものの見事に乗っ取った斎藤道三は、生涯に数えきれないほど名前を変えた。コドモのころ、まだ視聴率が30%も40%もあった昭和のNHK大河ドラマで、司馬遼太郎原作・平幹二朗主演「国盗り物語」がそういうふうに描いていた。

「花燃ゆ」にはマコトに申し訳ないが、さすがに宣伝文句が「新天地、群馬へ」というのでは、「うーん♨」と唸らざるを得ない。もちろん群馬は素晴らしい県であって、県そのものの魅力は決して否定するものではないが、それをキャッチフレーズにして視聴率が上がるかどうか、一考の余地があるだろう。

 吉田松陰の妹を主人公にするか、僧侶 ☞ 油商人から身を起こして美濃一国の主になった斎藤道三を主人公にするか。しかも「国盗り物語」では斎藤道三の一生が半年に凝縮されていた。夏の段階で斎藤道三は殺されてしまい、あとは織田信長と明智光秀の確執に舞台を譲るのである。

 そうなると凝縮の度が過ぎて、何だか「あらすじ」を読んでいるような荒っぽいストーリー展開にならざるを得ないが、妙覚寺の僧侶・法蓮房 ☞ 松波庄九郎 ☞ 西村新九郎 ☞ 斎藤道三と、名前を変えるたび着実に国盗りに前進する主人公がマコトに魅力的に描かれていた。
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(朝のマルセイユ駅で。スペイン国鉄RENFEの誇るAVE(左)と、フランス国鉄のLCC特急OUIGO(右)が並んで停車していた)

 クマ助がそんなことを思ったのは、今夜から明日の日本を直撃するらしいウルトラ低気圧のせいである。彼もまた、マコトにダイハードなヤツであって、頻繁に名前を変えることにおいても斎藤道三クラスの豪傑と言っていい。

 彼は諸君、もともとは「台風21号」であった。ホンの4~5日前に、石垣島に80m/秒の暴風を吹かせたヤツである。その後、台湾を横断して一気に衰弱し、中国大陸に上陸してますますヘナヘナになり、一時は「消滅」の危機に瀕した。

 ところがこのダイハード君、名を変えて驚くべき復活を遂げる。「温帯低気圧に変わりました」と天気予報士がニッコリ笑うとき、「まだ油断は禁物です」の言葉とは裏腹に予報士自身の表情に余裕の笑顔が浮かんでしまうものだが、21時現在で990hPのコイツが、明日朝には944hPに急成長するらしい。

 1週間前には、925hPの超大型台風。いったん消滅の危機に瀕しながら、再び940hp台に復活。台風の台之助から、熱低の熱次郎へ、熱次郎はやがて低気圧の低三郎へ。名を変え手を変え品を変え、台之助は熱次郎へ、熱次郎は低三郎へ、明日はオホーツク海で大見得を切る覚悟なのだと言う。
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(OUI GOとは、YES, LET'S GOないしHERE WE GOをフランス語にもじった感じ。デザインもネーミングも「うーん♨」である)

 その程度の感慨を書くのに、斎藤道三に「花燃ゆ」に妙覚寺まで登場願ったのではマコトに申し訳ないが、「花燃ゆ」はホントにあと3ヶ月、やっていけるんだろうか。

 Mac君もとうとう無視を始めて、「はなもゆ」で変換してみたら「華も湯」と来た。流行らない温泉旅館の大浴場みたいな変換をされて、何だか可哀想じゃないか。

 もちろんMac君のことだ。「無視を始めて」についても「蒸しを始めて」と、寿司屋の茶碗蒸しか土瓶蒸しみたいな変換して憚らないんだから、まあ放っておけばいいだけのことではある。

 しかし諸君、そこにニュースは「おおさか維新の会」ときた。あれれ、「大阪維新の会」は「日本維新の会」「維新の党」と改名を重ねて、とうとう平仮名攻撃に移った模様。大阪がおおさかになって、元の橋下党に戻ってきた。大阪を副首都をして機能させるべく、今度こそこのまま突っ走ってほしい。
並ぶ人々
(OUIGOに乗るには、お団子状に密集した列に並ばなければならない。ヨーロッパの人々は、この程度の密集には慣れっこである)

 さて諸君、ネーミングということになれば、やっぱりフランス人のセンスのよさはピカイチのはず。フランス新幹線にも、さぞかしピカッと光る名前をつけてくれるんだろうと思っていたら、TGVとはTrain à Grande Vitesseの略称にすぎない。

 何のことはない、「高速度(Grande Vitesse)列車(Train)」。「なんや、マンマやんけ♨」であって、フランス人の繊細なセンスなるものも、日本人の考えた「新幹線」と大差ないのである。

 その新幹線が、インドネシアで中国高速鉄道とシノギをけずり、受注合戦で敗北したのだという。雛壇のニュースコメンテーターは一様に驚きの表情を示し、官房長官は不快感を露わに示した。

 しかし諸君、日本の新幹線はあまりに贅沢なウルトラ完成品。パーフェクトなサトイモでも、「1コ2000円です」では誰だって二の足を踏む。どんなにカンペキなカボチャを開発しても、長い行列ができていて「2年待ちです」と言われたら、ちょっと不満な商品でも、手っ取り早くて安いほうに手が伸びる。

 3分おきや5分おきのダイヤで運行し、しかもダイヤはすこぶる正確、2分か3分遅れただけで平謝りに謝ってくれる。冷静に考えれば、これは人間ワザではない。すでに神の領域に達し、神様のマネを50年も継続している。

 それを海外に売ろうということになれば、海外のヒトビトにも神ワザを要求することになる。「ええっ、オレたちもこれから未来永劫、神のような正確さを要求されるわけ?」であって、何だかコワくなって手軽な中国製品に手が伸びるのはむしろ当たり前のことである。
コートブルー線
(美しい海岸を走る「コートブルー線」。これほど厚塗りの落書きにも、フランス人はビクともしない)

 東京—大阪みたいなウルトラ大量輸送を必要とするわけではないし、超の上にまだ超の字が3つも4つもくっつくほどの正確さを要求するわけでもないところに、「超だ」「超だ」とそればかり売り込めば、相手が尻込みするのも当たり前。中国にもフランスにも負けちゃうのは、超をつけすぎるからである。

 神ワザではない点、10分や20分の遅れが日常茶飯事である点、ヨーロッパ鉄道網はマコトに人間的であり、「人間的な、あまりに人間的な」のニーチェどんも草葉の陰でニッコリ微笑んでいるに違いない。

 せいぜいで30分に1本の運行。遅れても、みんな「そのぐらいいいじゃないか」と苦笑する程度。トイレも汚いし、車内販売も来ないし、落書きも消そうとしない。車内はゴミが散乱し、高速鉄道といいながら、ちっとも高速で進まない区間が延々と続く。

「その程度でいいんです」という人々のほうが、今もなお世界基準なのである。東京駅での新幹線の清掃はマコトに感動的であるが、「何もそこまで徹底しなくても」という気持ちもわかる。掃除機や洗濯機に追い立てられる日曜日のダンナたちと、おそらく気持ちは同じなのである。

 それでもヨーロッパ鉄道網はどんどん進化している。昔はせいぜいで「2時間に1本」だった路線でも、「30分に1本」の頻度に高まった。マルセイユからも、パリ行きばかりとは限らない。レンヌ行き、フランクフルト行き、マドリード行きなど、多彩なダイヤが組まれている。
ニーチェの道入口
(ニース近郊、険しい丘の上の「鷲の巣村」エズ。「人間的な」のニーチェお気に入りの散歩道は、海岸から標高400mの丘の上まで続く。詳しくは明日の記事で)

 9月1日、クマ助は「10年ぶりにニースに行ってみよう」と思いつき、朝早くホテルを出た。マルセイユ・サンシャルル駅からニースまで、TGVで片道3時間。高速で走る区間は1カ所もないが、まあTGVなら通学の騒がしい高校生集団に取り囲まれる可能性はゼロである。

 マルセイユ駅には身動きの取れない団子状の列ができていて、これは低価格新幹線OUIGOの乗車手続きを待つ人々。普通のTGVでパリまで行けば運賃は70ユーロ。しかしOUIGOなら25ユーロで行ける。

 ネーミングは諸君、HERE WE GOをフランス語式にもじったらしい。Ouiは「Yes」だから、Oui goとは「Yes, let’s go」の類い。フランス人のセンスも怪しいものだが、「安価であれば細かいことはどうでもいい」「ちょっと列に並ぶぐらいかまわない」という感覚。この辺は、日本人も学んだ方がいい。

 お隣のホームには、スペイン国鉄RENFEの誇る新幹線AVEが停車している。昔はもっぱらマルセイユ⇔パリ往復だった高速鉄道網は、今やドイツやスペインの真ん中まで連結し、遅くて遅れて不便だが気楽で安価な鉄道網が、ヨーロッパをますます強固に結びつけつつあることは間違いない。

1E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 7/10
2E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 8/10
3E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 9/10
4E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 10/10
5E(Cd) COMPLETE MOZART/THEATRE & BALLET MUSIC 1/5
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