Sun 150809 冷笑的論調はイヤ 18歳でタバコ? 国立考古学博物館(ナポリ滞在記44) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 150809 冷笑的論調はイヤ 18歳でタバコ? 国立考古学博物館(ナポリ滞在記44)

 議論の前に結論が存在するメディアばかりなのが、日本という国の最も危うい所なんじゃないか。世界株安と連動して株価が2週間ほど連続で下落を続けると、いきなり大新聞の社説に「アベノミクス崩壊」の文字が嬉しそうに踊るようでは、キチンとしたメディアとして機能していないように感じる。

 テレビのニュースショーは、どれもマコトに冷笑的。何でもかんでも軽蔑したように口をゆがめ、世論調査なり株価なりの数字を掲げては、雛壇芸人全員で勝ち誇ったようにニヤリと笑って「では、次に行きます」というんじゃ、国民がみんな冷笑的になっていく。

 今でも株価は1万8千円前後であって、ホンの2~3年前から見れば夢のような数字なのに、画面にはお決まりのように地方都市のシャッター街の風景が映し出され、「でも地方は疲弊しています」のナレーションがかぶる。

 地方の中でも特に疲弊の激しい某地方都市の出身者として申し上げるが、地方の疲弊は何も今に始まったことではない。地方の疲弊の始まりは、バブル崩壊以降20年の不況よりも、もっと遥かに昔、1970年代後半ではなかったか。

 江戸時代から明治大正昭和と、それなりに隆盛を誇った地方都市も、20世紀の後半、ちょうどアメリカでデトロイトが疲弊を始めたのと同じ時期から、「どうも調子がでないねェ」と、老いのうめきをあげはじめていたのだ。地方の疲弊の原因は、ずっと奥深いところにあるはずである。
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(エフェソスの女神・アルテミーデ。ナポリ国立考古学博物館で)

 まあそういうわけで、クマ助は新聞もテレビもほとんど見ないし、時の政権のすることを意地でも全て否定しようとは思わない。しかし諸君、「飲酒&タバコの年齢制限を18歳に引き下げ」のニュースを見た時には、目も耳も疑い、鼻さえ疑って、お鼻がピクピクしたほどである。

 18歳と言えば、高校3年生である。選挙権が18歳に引き下げられるんだから、酒やタバコに関しても当然「自己責任」ということで18歳に引き下げ。競馬・競輪・パチンコの類いまで、18歳からOKになっちゃうのかい?

 諸君、考えても見たまえ。20世紀後半、今井君は超優良高校生♡であったから、タバコをくわえつつパチンコ屋に入っていく高校生の姿を見て、「うぉ、なんて時代遅れなんだ」と大いに嘆いたものであった。

 今ではもう信じられないかもしれないが、昭和の時代には、「タバコをくわえた高校生」というシロモノが巷にあふれていたのである。高校からの帰宅の時間帯、地方都市の電車や列車に乗る時は、朦々と上がるタバコのケムリに耐えなければならなかった。
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(アルテミーデ全体図と、ナポリのオジサマ)

「厳しく注意してあげればいいじゃん」という意見には、むろん同意する。実際に「注意」なることをした経験も少なくはない。しかしほとんどの場合が「シカト」。「何言ってんの? このオヤジ?」であって、むしろ注意する方がヘンタイ扱いされて終わりであった。

 それが、法律の世界で「合法」ということになったら、いったいどうすればいいんだ? チェーンの安い飲み屋を占拠して、18歳集団が大宴会なんか開いているアリサマを考えてみただけで、クマ助は怒りの震えが止まらない。

 そもそも21世紀の世の中で「タバコ」だなんてのは、いくら何でも古くさすぎませんかね。飲食店で平気でタバコを吸って、周囲のお客の食べ物の味も香りもみんな台無しにして、「誰にも迷惑かけてません」と開き直るようなのは、30歳であろうが40歳であろうが、ずいぶん困った存在じゃないか。
暴君謀殺者
(ナポリ国立考古学博物館、「暴君誅殺者」とナポリのオジサマ。左が暴君ヒッパルコス)

 18歳で酒をグビグビ、タバコをモクモクさせ、馬券を買い、パチンコで時間をつぶす。うにゃにゃ、ご本人のためにも、そんなの絶対にヤメた方がいい。人生は台無し、ロクなオトナになれそうにない。

 クマ助が信じるのは、21世紀の若者たちのセンスである。タバコ ☞ プカプカ、安酒 ☞「一気!!」でグデングデン、パチンコじゃらじゃら、馬券売り場でタムロ。いやはやマコトに20世紀的で、オジサマ臭がプンプンしてますな。

 むしろ「やめときな、やめときな」であって、ならば何も「合法」などということにしなくてもいいじゃないか。20世紀終盤、ナポリやマルセイユの治安が決定的に悪くなったのだって、何も特定の暴力集団が街を支配したからじゃなくて、若者のモクモクやグビグビを放置したことに、その原点があったのだ。

 そもそも「酒&タバコ ☞ 18歳で合法」を、嬉しいと思う諸君が存在するんだろうか。父親の世代なら、補導 ☞ 自宅謹慎 ☞ 停学 ☞ 退学の危機と、奈落の底に落ちていく道だったものを、そのコドモたちが「わーい、いくらでもスパスパやっちゃうぜ」と、そんなセンスの悪い発想をするだろうか。
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(ナポリ国立考古学博物館、「走者」の像)

 むしろ今井君なんかは、「国公立の美術館を無料化」「国公立のホールではクラシック・オペラ・バレエなどを限りなく無料に近づけます」みたいな方向性の方が正しいと信じる。18歳以下なら、国立美術館は無料。コンサートでも演劇でも、3階席や4階席なら無料。そっちの方がずっと時代に合っている。

 今のヨーロッパが日本よりも優れているところと言ったら、何よりもそのタイプの若者優遇策である。学生証さえ提示すれば、国立美術館でもオペラの4階席でも、きわめて安い料金で入場を許される。もちろんそれ相応のマナーも叩き込まれるわけだが、そうやってどんどんオトナになっていく。

 ナポリみたいな自由な街でも、だから美術館&博物館で騒いでいる諸君は少ない。残念ながら学校単位の遠足なり見学なりでやってきて騒いでしまう諸君は多いが、それは引率の先生が悪いので、若者たちに罪は(それほどは♡)ない。

 だからヨーロッパで美術館に足を運ぶなら、むしろ日曜祝日がオススメ。平日は遠足の小学生と見学の中高生に占拠され、引率の先生も甘やかすから、ロクなことにならない。
走者2
(エルコラーノで発掘、「走者」の後ろ姿)

 4月6日、イースター翌日の月曜日は「イースターマンデー」であって、少なくともナポリの人たちにとっては、イースター本体以上におめでたいようである。学校も会社もみんな休みになって、美術館に見学にくる学校なんか1つもない。美術館は、こういう日こそ穴場なのである。

 ホンの10年前までのヨーロッパなら、店やレストランが閉まるどころか「バスも電車もみんなストップ」「移動するにも足がない」という極端な事態になったが、この10年、状況はグッと改善して、公共交通機関はみんな普段通り。運行本数が極端に減ることもない。

 今井君は朝から目を覚まして「今日1日、ずっと国立考古学博物館」と覚悟を決めていた。1777年創設の大博物館は、ポンペイとエルコラーノの遺跡から発掘された収集品でいっぱいである。

 丸1日かけても全部は無理、3日でもきっと無理、1週間かけてもおそらく無理という膨大なコレクションだが、そこはそれ、美術館&博物館はベテランの今井君だ。回り方次第でどうとでも楽しめる。

 明日は、むかしの今井君が得意中の得意とした「美術館の回り方」を中心に、ナポリの誇る国立博物館の話を進めたいと思う。

1E(Cd) Anita Baker:RHYTHM OF LOVE
2E(Cd) Grindenko:RUSSIAN MEDIEVAL CHANT
3E(Cd) 村治佳織・山下一史&新日本フィル:アランフェス交響曲
4E(Cd) 1453
5E(Cd) Preston:BACH/ORGELWERKE 5/6
total m45 y1321 d16642