Fri 150807 切羽詰まる ナポリのイースター 危機4パツ目(ナポリ滞在記42) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 150807 切羽詰まる ナポリのイースター 危機4パツ目(ナポリ滞在記42)

 世の中にはいろいろな切羽詰まり方があるもので、8月30日とか31日とかになれば、日本の小中学生はほとんどが滅多ヤタラに切羽詰まる。「もう地球の終わりが来てくれた方がいい」とさえ思うものである。

「そんなことありません。ワタシは余裕シャクシャクです」などと涼しい顔をしているようなのは、将来どこかでもっと厳しく切羽詰まる結果になるから、今のうちにどんどん切羽詰まった方がいい。

 今井君の中高生時代ということになると、文系と理系の間をいつまでも右往左往していた身として、定期テスト直前の物理と化学と数学に、これまた言語道断なほどに切羽詰まり続けていたものである。

 ほぼ全員が医系を志望するクラスにいて、高3の夏から文系志望に切り替える。そういう無謀なことをして、10月の中間テストや12月の期末テストが迫ってくる。

 東大文系志望で、まさか数学Ⅲだの有機化学だのにドップリ浸かるわけにはいかないから、数Ⅲの時間なんかはむしろ内職にドップリ浸かりつづけるわけで、数Ⅲ・物理・化学の授業中にこそ、最も効率的に日本史と世界史の受験勉強が進んだものである。

 すると諸君、10月中旬と12月上旬の今井君はもう顔面蒼白である。理系の諸君が2ヶ月も3ヶ月も勉強した中身を、文系アタマの今井君が2~3日で仕上げてしまわないと、「大学には合格したが、高校を卒業できない」という悲劇を現出しかねない。
黒雲が迫る1
(ナポリにも、暗雲が垂れ込める 1)

 それでも何とか事態を切り開いて「事なきを得る」に成功。留年の憂き目を見ずに今ここに至るわけである。しかし、人生については常に冷静に計画をたてること。「理系クラスで ☞ 夏に文転」などという無茶は、滅多なことではしてはいけない。

 だって諸君、今でも夢にみるのである。3ヶ月分の物理と化学と数Ⅲが空白のまま。それなのに、あと3日で期末テスト。頭蓋骨の中で「シーン」という音が反響して、「ま、いいや。1日1科目ずつで何とかなる」という投げ槍なコトバを絞り出す。

 夢はいきなり2日分とんで、「明日が期末テスト。初日が物理と化学と数Ⅲ」という事態が襲ってくる。帰宅するのが13時。「まあいいや、1科目4時間ずつ×3科目で12時間。楽勝だ楽勝だ」と考えるのであるが、そう思った段階でほぼ気絶する。

 だから中高生諸君、定期テストぐらいは常に準備万端整えて臨むこと。無理な理転や文転はつつしむこと。何十年も経過してからうなされるような事態は避けること。夏休みの宿題ぐらい、7月中にとっとと片付けてしまうこと。

 それでも困るのが「自由研究」の類いであるが、21世紀の日本にも、まだ「自由研究」などという困ったものが残存しているとしたら、大いに旅をしたまえ。たくさん旅をして、その旅行記を詳細に書けば、自由研究はそれで出来上がり。絵日記なんかにしなくても、写真たっぷりのブログみたいなので十分だ。
黒雲が迫る2
(ナポリにも、暗雲が垂れ込める 2)

 さて4月5日、ヨーロッパは一斉に「イースターのお祭り」であって、いやはや、マコトにおめでたい。日本でイースターを祝う人は珍しいだろうが、話がヨーロッパということになると、さすがにクリスマスには勝てなくても、お正月よりはずっと激しくおめでたい。

 ついでに、イースターの翌日は「イースター・マンデー」であって、下手をするとイースターそのものよりももっとおめでたいらしい。商店もレストランもみんな店を閉めてしまうので、お買い物もお食事も、いつものようにはカンタンにいかない。

 そのへんの事情は、クリスマスの翌日26日「ボクシングデー」と同じである。クリスマスイブやクリスマス本体よりも、商店の閉まり方がガッチリしていて、7年前のロンドンでは、アラブ系のレストランしか開いていなかった。おかげで「ロンドンでモロッコ料理」という珍しい体験をした。
荒波が迫る
(ナポリの海岸に大波が迫る)

 その顛末については、「ウワバミ文庫」から「ロンドン滞在記」を紐解いてくれたまえ。大音量のモロッコ音楽にダンス、そのありさまに隣りのテーブルのイギリス人カップルは、彼女の方が烈火のように怒りだし、どうやらせっかくのクリスマスデートは、そのまま破局へと向かった様子であった。

 こんなふうに、ヨーロッパのお祭りは後ろへ後ろへおめでたさがタナびくもののようであって、天然記念物・秋田比内鶏の長いシッポも顔負けである。日本の場合は、クリスマスに向かっておめでたさがジワジワ盛り上がり、終わった瞬間にピタッと全てがゼロになるわけだから、状況はマコトに対照的である。

 青森のねぶた祭なんかを見てみたまえ。祭りが終わった夜更けに響く名残の笛の物悲しさ。いきなり秋の小雨が降ってきて、道端でコオロギが鳴いていたりする。「祭りは終わった」という瞬間の潔さの美学は、日本人独特のもののようである。
泳ぐ
(それでも泳ぐナポリのおじさま 1)

 そういうナポリの激しいイースターであるが、それでも「午前8時から午後2時まで、私たちは店を開けます」と宣言していたスーパーがあって、今井君もビールやお水を仕入れに、午前10時にはもう店を訪れた。

 ところが諸君、店はガッチリとロックされて、中に電気もついていない。明らかに無人であって、今井君は見事にしてやられたのである。してやられたのは地元民も同じことで、店の前にはナポリっ子やらナポリおじさま&おばさまやらがワラワラ集まって、残念無念という表情で帰っていく。

 諸君、南イタリアでは、今もまだそういう事態を覚悟しなければならない。「開きます」と言っても開かない。「やります」と声高らかに宣言しても、結局何にも始まらない。それで怒り心頭に発しているようじゃ、まだまだ南イタリアに慣れていないだけのことである。

 開くと言って開かないスーパーに落胆したクマ助は、重い雲におおわれた海岸で茫然とするしかなかった。昨日からの強風で波は高く、凶悪な黒雲がたいへんな勢いで走っていく。

 そういう海岸で、猛然と泳ぎを披露しているオジサマがいらっしゃる。もう4月5日だから、「寒中水泳」というコトバは当たらないが、嵐、ドカンドカンと押し寄せる波、豪雨が襲ってくる予感、そういう中での見事なクロールは、まさにクマ助のドギモを抜くものであった。
それでも泳ぐ
(それでも泳ぐナポリのおじさま 2)

 そしてまさにその瞬間である。ホントに豪雨が襲ってきた。しかもそれは南イタリアの豪雨であって、東京あたりで経験する豪雨とは、スケールが1段も2段も違っている。

 500メートルの距離もない所で炸裂する稲妻と雷鳴。雨粒はオトナ男子のコブシほどの大きさが感じられ、一滴一滴がボクサーのパンチよろしく顔面左を襲う。強風の中の雨パンチは、ほぼ真横から襲ってくるので、ボデーにもジワジワきいてくる。

 ボクシングでは、「ボディ」「バディ」みたいなヤワなコトバはつかわない。あくまで「ボデー」。まあそんなことはどうでもいいし、クロールを披露していたオジサマの安否も、一気にどうでもよくなってしまう。人間とは、そのぐらい自己中心的なものである。

 そもそも諸君、今井君は猫パンチには慣れているが、雨パンチだの、雨粒のボデーブローは初めての経験だ。稲妻と雷鳴に追いまくられて、もうどうすればいいのか分からない。こうして諸君、昨日に続く「危機4パツ目」であって、クマ助は茫然と豪雨の中に立ち尽くすことになった。

1E(Cd) Harnoncourt:BACH/WEIHNACHTSORATORIUM 1/2
2E(Cd) Harnoncourt:BACH/WEIHNACHTSORATORIUM 2/2
3E(Cd) Eduardo Egüez:THE LUTE MUSIC OF J.S.BACH vol.1
4E(Cd) Brendel:BACH/ITALIENISCHES KONZERT
5E(Cd) Casals:BACH/6 SUITEN FÜR VIOLONCELLO 1/2
total m35 y1311 d16632