Tue 150609 なでしこ&ナデシコ 岩手の諸君に熱く語る わが秋田は周回遅れかも | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 150609 なでしこ&ナデシコ 岩手の諸君に熱く語る わが秋田は周回遅れかも

 昨日7月2日、朝からテレビがあんまり「なでしこ」「なでしこ」と連呼するものだから、シマシマネコのナデシコは黒い目をますますまん丸に、シマシマの顔をますますシマシマにして、そこいら中をソワソワ走り回っている。

 ナデシコは、臆病で内気で、それでいて野性味あふれるネコである。いつもは控えめだが、テレビ画面で天気予報士の指示棒がユラユラしたりすれば、マコトに果敢に飛びかかる。近くで小鳥がチーチー鳴いたりすると、野生の鋭い声で威嚇するのもまたナデシコである。

 一方のニャゴロワは、まさに泰然自若としたヤツである。ナデシコの体重約3.0kgに対して、純白のニャゴロワは5.5kg。ほとんど2倍近い肉体をドシッと横たえて、人間以上に人間らしい表情で梅雨の雨の鬱陶しさを憂えている。

 女子サッカー「なでしこ」vs イングランドの試合も、ナデシコ vs ニャゴロワの光景とソックリである。日本選手の中には、入場時に手をつないだカナダの子のお友達にしか見えないほど小柄な選手もいる。「おお、こりゃナデシコだ」と、思わず納得してしまうのである。

 純白ユニフォームのイングランドは、「おお、こりゃニャゴロワだ」であって、日本選手のママかお姉ちゃんか、とにかく体力勝負に持ち込まれたらひとたまりもなさそうだ。まさにニャゴとナデシコの戦いを見るようであった。
花巻
(花巻は続くよ、午後までも)

 しかしこんな小さなナデシコが、ニャゴに対して完全勝利を収めることもある。ナデシコの陣地を侵略しようとしたニャゴが、ナデの見事な猫パンチで撃退される瞬間をとらえた写真を、このブログに掲載したこともある。

 今井君はコドモの頃から「判官びいき」であって、負けちゃった方に常に同情を禁じ得ない。特に「アディショナルタイムにオウンゴール」というシチュエーションは、あまりにも不運。この際、できるなら延長戦を戦わせてあげたいぐらいであった。

 そして諸君、ボクチンは日本国民の優しい国民性にも思わず涙するのである。昔なら「勝った&勝った&勝った」の絶叫に声さえ裏返り、相手の心情なんか顧みずに、バンザイ&バンザイの提灯行列が始まったところである。

 しかしネットを眺めてみるに、21世紀日本のヒトビトには「遠慮会釈なしに勝ち馬に乗りまくる」という気持ちは見当たらない。あくまでイングランドDFをかばい、相手チームの悲嘆を察して、「ぜひもう1回やろうぜ」と手を握りあおうとするフェアプレー精神でいっぱいだ。
お弁当
(ダイエット中のポンポンに響く、岩手県花巻の豪華お弁当)

 さて6月28日、岩手県花巻の今井君も、ボンボン燃え上がるフェアプレー精神を発揮。発揮しすぎて午後には右手がつり、痛みにヒコヒコ痙攣する右手をブンブン振り回しながら、それでも音読の重要性を連呼し続けた。

 クマ助が最も嫌うのは「一過性」である。期末テスト目前の雨の日曜日、岩手県全域からトップ200名が花巻に集結した。しかしそこで難問を解き、その難しさに200名全員で呻き声を上げ、「でもホントにスゴかったね」と頷きあいながら帰宅する。それだけじゃ、それだけでポキッと終わってしまう。

 それじゃダメなのだ。中途半端なエリート意識だけ醸成し、「ボクは選ばれたんだ」「ワタシは特別よ」と鼻高々になって、それで全てが終わったら、返ってマイナス効果じゃないか。

 そこで今井君はまず「東北大とか、東北の中で自己完結してないで、今日の200人は東京大学を目指すこと」と語りかけた。東北大に現役合格できる実力があれば、あと+α+β+γぐらいの努力を積み重ねれば、東大合格は全然夢ではない。

 東北人は、江戸時代からずっと派手好きな秋田県人を除いて、堅実で控えめな性格の人が多い。「東京大学だなんて、そんな高望みはいたしません。東京で苦労するより、東北大を卒業して、地味に堅実に東北で生きていきます」という発想が支配的である。
新花巻駅
(新花巻から、何故か下りの新幹線に乗車)

 その発想自体は決して間違いではない。しかし諸君、2015年、「岩手県全体で東大合格者9名」となると、いくら何でも地味すぎ&堅実すぎないか。東進は、数ある塾の1つに過ぎないが、現役東大合格者が今年700名を軽く超えた。

 県全体で9名。1つの塾で700名。1つの塾が、1つの県の80倍近くの東大合格者を出している現実を直視した方がいい。「東大が全て」とは全く思わないが、せめて東大ぐらい突破できない状況で、若い諸君の目がグローバルに広がるものだろうか。

 1つの県に閉じこもり、1つの地域の中に閉じこもる。「学力はあるが、高望みはしない、近くの大学でいい」と狭く扉を閉ざした若者が、例えば「ハーバード」「スタンフォード」「ケンブリッジ」「カリフォルニアテック」など、ド派手な夢を語りだすとは、とても思えないのである。

 そこで今井君が熱く語ったのは、
「今日1日の経験を、ぜひ弟や妹にも語るべきだ」
「今日ここに呼んでもらえなかった友人たちや、まだ中3の後輩たちにも、音読の輪を広げるべきだ」
「諸君の中だけの狭いエリート意識にとどめておくべきではない」
ということである。

 今日の彼ら彼女らだけで終わってしまうのでは、ハッキリ「一過性」そのもの。今日の感激を友人&後輩、弟妹やパパ&ママに伝えてはじめて、「よっしゃ、岩手県全体どころか東北全域に、大きな夢と希望を広げようじゃないか」という流れの始まりになるはずなのだ。
秋田駅前
(夜8時、秋田駅前の閑散ぶりに唖然とする)

 ま、以上のような熱い感想と大きな満足感を反芻しながら、クマ助は帰りの電車に乗りこんだ。しかし諸君、クマ助が乗り込んだ新幹線は、何故か北に向かって動き出したのである。

 今日の数学を担当した先生と東進スタッフの皆さんは、もちろん東京に向かって上り「はやぶさ」に乗っていかれた。しかし諸君、今井君の故郷は秋田市である。

 せっかく岩手県まで来たんだから、ついでに故郷秋田に立ち寄って、大好きな「きりたんぽ鍋」「金萬」「丸〆鎌田の酒まんじゅう」を貪ってから帰りたい。スタッフの驚きの表情を眺めながら、クマ助は下り「こまち」のグリーン車に収まった。

 ところが諸君、この30年、秋田はかつての仲間の東北地方の中で、圧倒的な後進地域に後退したようである。明治維新では維新軍の一員として活躍。銀も銅も石油も豊かに産出し、米と木材も豊富。21世紀のドバイよろしく、戦前の東北で唯一「飢饉の経験がない」と胸を張っていた秋田であるが、この半世紀の油断の結果、一気に東北全県の後塵を拝することになった。

 今や自慢できるのは、「小中学生の学力全国一」ぐらい。その学力も、大学受験の段階になると一気に全国40位近くに沈む。だから本来、今日の岩手県のような催しは秋田県でこそ企画すべきものなのに、今のところピクリともそんな動きは感じられない。
秋田きりたんぽ
(何故かここだけは元気な「秋田きりたんぽ屋」。タネあかしは、明日の記事で)

 秋田新幹線に乗り込んだ瞬間、「半世紀近く後戻りしたみたい」と感じるのは、このクマ助だけではないはずだ。グリーン車内を酒のニオイが満たし、遠慮会釈のない激烈な秋田弁が乱舞する。

 今井君のすぐそば、スーパー秋田弁な中年男性4名は、「たったいま東京で競馬でシコタマ儲けて来たところ」であって、声高なその話し声を聞いたところでは、競馬のアブク銭を手にした男性4名は、昭和の男たちが遊び呆けた夜の街の帰りであるらしい。

 半世紀遅れとは言わない。まあ「30年遅れ」と言っておこう。陸上の10000メートルレースなら、周回遅れのランナーと言ったところ。力を振りしぼって努力を積み重ねることを何となく恥ずかしがる昔からの県民性が、この30年で決定的に作用してしまったのかもしれない。

 19時50分、新幹線は途中の大曲で進行方向が変わり、秋田市民は全員後ろ向きになって故郷に帰還する。大阪 ☞ 仙台と大都市を回ってきたクマ助にとって、秋田駅前の姿はあまりにも悲しい。まさに唖然、まさに茫然である。

 むかし宮崎県知事が「どげんかせんといかん」と叫んだことがあったが、秋田はまさにギリギリの状況。間に合うか、間に合わないか。後者の要素がハッキリ支配的であって、夜8時の県都の駅前は、30年前とは比較にもならないほど寂れきっているのであった。

1E(Cd) Akiko Suwanai:DVOŘÁK VIOLIN CONCERTO & SARASATE
2E(Cd) Tommy Flanagan Trio:SEA CHANGES
3E(Cd) Gladis Knight:JUST FOR YOU
4E(Cd) Anita Baker:RHYTHM OF LOVE
5E(Cd) Luther Vandross:SONGS
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