Sun 150607 「たこ梅」で江戸時代から続くおでんを満喫 「ほとんど中国」な道頓堀 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 150607 「たこ梅」で江戸時代から続くおでんを満喫 「ほとんど中国」な道頓堀

 6月27日、誕生日翌日のクマ助の予定は、午後5時のヒコーキに乗って大阪から仙台市に移動するだけである。他には何にもすることがない。夕方の伊丹空港に駆けつけ、ヒコーキに乗り込んで、あとはビューンと仙台まで1時間ちょい。それじゃ1日があんまりモッタイナイじゃないか。

 そこで諸君、「せめて昼ゴハンだけでも、食い道楽 ☞ 大阪で」と思いつく。ダイエット中の身の上であるから、「昨夜に続く鯛メシ」とか「コナモンに次ぐコナモン」みたいな不謹慎なことは出来ないが、肉ワシワシとか、お豆腐やコンニャクみたいな太りにくい物質で、ポンポンをいっぱいにすることなら許される。

 そこで一気に候補に浮上してきたのが、「おでん」である。おでんは関西では「関東煮」と呼ばれ、冬のおでん屋は「高うて旨いは当たり前」「安くて旨いやないとアカン」という気難しい関西の食通が長い列を作る。

 ただし、それはあくまで真冬の話。関西の冬は意外なほど寒いので、六甲おろしが骨身に沁みる冬には、おでんにうどんに温かい汁物を、冷えたカラダが要求する。
たこ梅
(大阪道頓堀「たこ梅」本店)

 しかし諸君、蒸し暑い6月末の大阪、しかも真っ昼間である。「おでん」という選択はマコトにバカげていて、おでん屋に入ること自体がすでに熱中症の危険性をグイッと高めてしまう。

 しかしそこはさすがにクマ助だ。熱中症の危険には、当然たくさん水分をとって対抗すればいいので、今日は仕事もないことだし、水分の摂り方も多種多様。アブクの出る黄金色の液体もあれば、米のエキスのタップリ入ったヤツも、麦や芋が発酵して素晴らしいカホリを放っているヤツもある。

 そこで今井君が選択したのは、道頓堀のウルトラ老舗「たこ梅」である。創業・弘化元年というのだから、西暦1844年からここでおでん屋を続けているのである。「注ぎ足し&注ぎ足し」の出汁は、ペリーの黒船が来航するより10年も古い。
たこ梅遠景
(大阪道頓堀「たこ梅」遠景)

 たくさんの文人墨客や芸術家も、ここのナジミだったらしい。池波正太郎・開高健・織田作之助・小津安二郎の名が並び、極めつけは吉田健一である。そもそも、若い頃の今井君の文体のお手本は吉田健一であった。

「旨いものは旨い」「何か理由があって旨いのではない。旨いから旨いのだ」「旨い酒があれば、他にほしいものは何もない」の類いの、いかにも気難しそうな書き方は、まさに内田百閒流の狷介であって、なかなかマネの出来るものではない。

 梅田のホテルから乗ったタクシーの運転手さんには、「国立文楽劇場」と告げた。インターコンチネンタルホテルに並んでいるタクシーは、客に対する丁寧さでは群を抜くMKタクシーばかりであるから、あんまり気を遣う必要はないのだが、ま、その辺はクマ助の気クバリである。
グリコ
(道頓堀。グリコ広告のすぐそばに、歯医者さんの看板もある)

 大阪日本橋の国立文楽劇場は、このところ1年に3回ずつ訪れて、学部生時代の旧交を温めている。日本橋と書いて「にほんばし」ではなく、大阪では「にっぽんばし」と読む。目指す「たこ梅」は、難波からでも歩いていけるが、ニッポンバシからマコトにヤバい店がズラリと並んだ道を歩いていった方が近い。

 諸君、日本橋から道頓堀への道は、韓国と中国のヒトビトに占拠されつつある。元はラブホ街であったらしいが、今はハングル文字が異様に目立ち、「羊肉串焼 故郷」とか「火鍋城」などの中国語の看板の近くに、中国語の大群衆がタムロしているのである。

 2015年6月現在、韓国のヒトビトはかなり形勢不利のようである。圧倒的に優勢なのは中国勢。テナントビルの占拠率も中国の圧勝、人口密度の点でもやっぱり中国の圧勝である。

 中国勢は、大型バスの団体ツアーでワアーッと道頓堀を占拠している。路上に停車した大型バスの大集団の迫力もスゴいが、路上で着替えに余念のない中年男女の大迫力には、口出しすることさえ憚られるぐらいである。
おでん
(歴史あるおでん、全体図)

 今井君の目指すおでんの老舗「たこ梅」は、中国人団体ツアーの陰に隠れて、なかなか発見できない。発見するまで、日本橋と道頓堀の間を2回も3回もグルグル回ったのであるが、中国人団体ツアーの人垣の向こうにようやく発見した時には、思わず快哉を叫んだものだった。

 吉田健一によれば、「旨い酒があれば他に何もいらない」であり、「あえて言うなら、おでんぐらいである」であって、そのおでんも「食べたければ豆腐でも頼めばいい」らしいのである。

 しかし何もそこまで食通を気取る必要はないのであって、カウンターに座って「定食がオススメです」と強力にプッシュされれば、弱気なクマは定食にせざるを得ない。

 この場合、本来なら「ダイエット中なのでゴハンはいりません」「だからアラカルトで」と言わなければならないはずであるが、他に客のいないカウンターで、「定食がいいですよ」と至近距離で熱くジッと瞳の奥を見つめられれば、クマ助なんかが「それでもアラカルトで」と意地を張る余地は残されていない。
おでん近景
(たこ梅おでん、拡大図)

 そういうわけで、梅雨のさなかの真昼のおでんは、不本意にも「おまかせ定食」ということになってしまった。厚揚げ・こんにゃく・巨大なダイコン・ゴボウ天・サトイモ。「こんなに食べたらもうポンポンがパンパンです」という5品に、さらにゴハンと味噌汁がついた。

 ところが諸君、イヤしい今井君を止めるのは困難なのである。生ビール2杯、冷たい日本酒300mlをグビグビやるうちに、メニューの中の「ひら天」「スジ」の2つにムラムラ興味が湧き、せっかくなので追加注文してみた。

 コラーゲンたっぷりのスジに感激、野菜&ショウガたっぷりの「ひら天」にはもっと感激。こうなると、弘化元年創業だろうと、中国団体ツアーの真っただ中だろうと、そんなことは一切おかまいなしである。

 要するに、午後5時発の仙台行きヒコーキに間に合いさえすれば、それでいい。このまま午後3時まででもカウンターに座り込んでいたかったのであるが、夜に向けての仕込みに忙しそうなオニーサンの様子に気兼ねして、1時半には席を立ったのであった。

1E(Cd) Anita Baker:RHYTHM OF LOVE
2E(Cd) Luther Vandross:SONGS
3E(Cd) Akiko Suwanai:DVOŘÁK VIOLIN CONCERTO & SARASATE
4E(Cd) Tommy Flanagan Trio:SEA CHANGES
5E(Cd) Böhm & Berlin:MOZART 46 SYMPHONIEN⑦
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