Thu 150507 帰れソレントへ 長期滞在向きの街 ソレントから帰る(ナポリ滞在記25)
南の島では火山が大噴火を起こし、海底はるかで巨大地震が発生して首都圏も大揺れ。こんなに天変地異が続いているさなか、暢気なクマどんは相変わらずナポリ滞在記を書いている。
いやはや暢気もいいところだが、今日のテーマは3月31日のソレント小旅行。エルコラーノで飛び乗った電車をポンペイの1つ手前で乗り換え、ソレントまではるばる1時間の旅であった。
マコトに穏やかなそよ風の吹くリゾート地で、ナポリの喧噪もなければ、ヴェネツィアのお祭り気分もない。オレンジがタワワに実った並木道を、いかにも落ち着き払ったオジサマとオバサマがゆったり散策しているばかりである。
駅の階段を降りたら、広場の手前で左に曲がる。真っ直ぐな道を5分ほど行くと、街の中心「タッソ広場」に出る。コジンマリした街であって、この広場周辺をしばらくウロウロすれば、もう特別に「観光しなきゃ!!」とハシャギ回る余地はない。
![月と太陽](https://stat.ameba.jp/user_images/20150531/12/imai-hiroshi/ef/37/j/o0300040013323088490.jpg?caw=800)
(ソレントのオミヤゲ屋さんで、月と太陽が並んで笑っていた)
由緒あるグランドホテル・ヴィットリアも、このタッソ広場にある。ソレントは、のんびりと静かな滞在を楽しむ街のようであって、ヴィットリアに長期滞在し、部屋のテラスで海を眺めて過ごすのがよさそうだ。
滞在するとしたら、2週間ぐらいか。分厚い文学全集でも数冊読みあげたらいいじゃないか。朝早く起きて、朝食と海辺の散歩。犬を連れてくるのもいい。ゆっくりテラスで読書して、ランチはタッソ広場の店に入る。
ランチは出来るだけ軽めの方がいい。寄ってくるネコを撫でつつ、「白ワインを2~3杯飲むだけ」というのも悪くない。もちろん午後はホテルに帰って「スヤーッ」がいい。ランチでも観光でも、ガツガツ貪るようなのはソレントに似合わない。
ソレントは半島の先端に突き出した街である。来る日も来る日も、海の夕陽を眺めて過ごせばいい。真西がイスキア島とプローチダ島。南西がカプリ島。真夏の夕陽なら、イスキアよりホンの少し右側の海に沈んでいくはずだ。
![靄](https://stat.ameba.jp/user_images/20150531/12/imai-hiroshi/48/09/j/o0400030013323088694.jpg?caw=800)
(ティレニア海からの風が山にぶつかって、濃密な靄がかかる)
すると諸君、クマ助は歌が大好きだから、当然のように「帰れソレントへ」を熱唱したくなってくる。時々カラオケに連れられていっても、カラオケなんか使用せずにアカペラで熱唱するのが今井君だ。
カラオケでのアカペラの場合、慶応義塾大学「若き血」が定番。その場にいる人全員に起立してもらって、1曲で5kgも痩せるぐらいの激しい熱唱を楽しむ。
しかしまさか、いきなりソレントの街で「帰れソレントへ」を絶唱するわけにもいかない。熱唱も絶唱もあくまで「心の中で」「お腹の中で」に収めておかなければならないから、歌のオジサン=クマ助としては、マコトに苦しいところである。
調べてみると、このウルトラ有名なカンツォーネは意外に新しい。1902年、イタリアの首相がソレントを訪れた時に、市長がプレゼントした曲なんだそうな。少なからず興醒めであるが、興醒めだと思った時は、その故事来歴を忘れてしまえばそれでいい。
![チキン](https://stat.ameba.jp/user_images/20150531/12/imai-hiroshi/26/54/j/o0400030013323088909.jpg?caw=800)
今井君は中3の時、音楽の授業でこれを習った。音楽の先生は「石川先生」という中年の男性で、一人一人歌わせては「うん、上手だ」と秋田弁でつぶやくだけの、マコトにシンプルな授業をした。
上手だろうが上手でなかろうが、とにかく投げやりに「うん、上手だ」とおっしゃる。それを皮肉ととってムカつくヤツもいたけれども、やたら明るく「音楽は楽しいよ!!」「さあ、みんなで歌おうよ!!」「恥ずかしがってちゃダメだぞ♡」みたいなタイプより、ずっとつきあいやすかった。
教科書に掲載されていたのは、確か「芙龍明子」という人の訳詞であった。
麗しのソレント 海原はるかに
夕靄たなびき 思い出誘う
オレンジの香り ほのかにただよい
森の緑にも 風はささやく
今はただひとり 過ぎし日 偲べば
くだける波音 寂しく響く
帰れ君 ふるさとの町
このソレントへ 帰れよ
もしかすると「帰れ君」のところが、「帰り来よや」になっていたかもしれない。いやはや激しい詞であるが、その部分、イタリア語では
Ma nun me lassa, Nun darme stu turmiento
Torna a Surriento, Famme campa
「帰る」「戻る」という動詞tornareの命令形がtorna。イタリア語の詞をごく素直に訳せば「行かないでください。これ以上、私を苦しめないで、ソレントへ戻って来てください」である。
![揚げパン](https://stat.ameba.jp/user_images/20150531/12/imai-hiroshi/78/5d/j/o0400030013323089095.jpg?caw=800)
(サービスの揚げパン。旨かった)
さて、3月31日の今井君の予定は「日帰り小旅行」。目の前のヴィットリアに2~3泊していきたい気持ちは山々だったが、まあとりあえず腹が減った。ランチを求めて街をうろつくことにした。
しかし諸君、この段階でもう時計は午後2時半。ランチには時間が遅すぎた。「イル・ブーコ」「ズィントニオ」「カルーゾ」など、メボしいレストランをいろいろ訪ねてみたのだが、どこのお店も2時半がランチのラストオーダー。どうやらこの街は、南欧の「シエスタ」をチャンとやるらしい。
コジンマリした街を3周も4周もした挙句、タッソ広場のありふれたカフェで、寂しいランチをとることになった。注文したのはグリーンペッパーの乗っかったチキンのグリル。いつもなら1本カラッポにするワインも、今日は「グラスでチビチビ」にとどめた。
ションボリしているところへ、メガネをかけた剽軽なウェイターが「サービスだよん」と言って持ってきてくれたのが、上の写真の揚げパン。千切ったパンにコロモをつけて揚げただけのシンプルなツマミだが、おお、こりゃ旨い。なんだ、こんなに旨いツマミがあるなら、やっぱりボトルで1本頼めばよかった。
![ガリバルディ](https://stat.ameba.jp/user_images/20150531/12/imai-hiroshi/7c/9c/j/o0400030013323089333.jpg?caw=800)
(ナポリ・ガリバルディ駅に帰る。激しいガリバルディである)
すっかりいい気分になって、もう1度ソレントの街に入り込んだ。シエスタのせいで何となく拒絶されたような気持ちになっていたが、そのシエスタが終わりさえすれば、まだまだクマ助の活躍の余地は残っている。
闖入したのは、リモンチェロのお店。南イタリア独特のたいへん甘いリキュールだが、アルコールは40度もあって、酒に弱い人なら1杯でバタンQだ。大昔のクマ助は手のつけられないドアホだったので、ミラノから帰るヒコーキの中で、これを瓶から直接ラッパ飲みしたことがある。
もちろん今はクマも大人しく賢く成長した。購入したのは、
① 普通のリモンチェロ
② クリーム状のリモンチェロ
③ メロンで作った「メロンチェロ」
の3本。賢くはなったが、分量は増えた。
これもみんなヤタラ商売の上手な店主がいけないのであって、勧められるまま試飲に試飲を重ねるうちに、したたか酔っぱらってサイフの紐がユルユルに緩んじゃったのである。
午後5時、ソレントからの快速電車でナポリに帰る。快速電車は1日に4~5本しか走っていないが、諸君、ここは意地でも快速がいいので、もしも各駅停車なんかに乗ったら、途中の停車駅は何と35にのぼる。もし小田急なら、新宿から厚木とか伊勢原まで各駅停車で行く計算になる。
運よく快速電車に間に合って、ナポリ・ガリバルディ駅には19時ごろ到着。ここからホテルまで、まだまだ難行苦行が続くが、いやはや、今日もまたマコトに充実した1日であった。
1E(Cd) COMPLETE MOZART/DIVERTIMENTI・SERENADES 8/11
2E(Cd) COMPLETE MOZART/DIVERTIMENTI・SERENADES 9/11
3E(Cd) COMPLETE MOZART/DIVERTIMENTI・SERENADES 10/11
4E(Cd) COMPLETE MOZART/DIVERTIMENTI・SERENADES 11/11
5E(Cd) Harnoncourt:BEETHOVEN/OVERTURES
total m36 y851 d16173
いやはや暢気もいいところだが、今日のテーマは3月31日のソレント小旅行。エルコラーノで飛び乗った電車をポンペイの1つ手前で乗り換え、ソレントまではるばる1時間の旅であった。
マコトに穏やかなそよ風の吹くリゾート地で、ナポリの喧噪もなければ、ヴェネツィアのお祭り気分もない。オレンジがタワワに実った並木道を、いかにも落ち着き払ったオジサマとオバサマがゆったり散策しているばかりである。
駅の階段を降りたら、広場の手前で左に曲がる。真っ直ぐな道を5分ほど行くと、街の中心「タッソ広場」に出る。コジンマリした街であって、この広場周辺をしばらくウロウロすれば、もう特別に「観光しなきゃ!!」とハシャギ回る余地はない。
![月と太陽](https://stat.ameba.jp/user_images/20150531/12/imai-hiroshi/ef/37/j/o0300040013323088490.jpg?caw=800)
(ソレントのオミヤゲ屋さんで、月と太陽が並んで笑っていた)
由緒あるグランドホテル・ヴィットリアも、このタッソ広場にある。ソレントは、のんびりと静かな滞在を楽しむ街のようであって、ヴィットリアに長期滞在し、部屋のテラスで海を眺めて過ごすのがよさそうだ。
滞在するとしたら、2週間ぐらいか。分厚い文学全集でも数冊読みあげたらいいじゃないか。朝早く起きて、朝食と海辺の散歩。犬を連れてくるのもいい。ゆっくりテラスで読書して、ランチはタッソ広場の店に入る。
ランチは出来るだけ軽めの方がいい。寄ってくるネコを撫でつつ、「白ワインを2~3杯飲むだけ」というのも悪くない。もちろん午後はホテルに帰って「スヤーッ」がいい。ランチでも観光でも、ガツガツ貪るようなのはソレントに似合わない。
ソレントは半島の先端に突き出した街である。来る日も来る日も、海の夕陽を眺めて過ごせばいい。真西がイスキア島とプローチダ島。南西がカプリ島。真夏の夕陽なら、イスキアよりホンの少し右側の海に沈んでいくはずだ。
![靄](https://stat.ameba.jp/user_images/20150531/12/imai-hiroshi/48/09/j/o0400030013323088694.jpg?caw=800)
(ティレニア海からの風が山にぶつかって、濃密な靄がかかる)
すると諸君、クマ助は歌が大好きだから、当然のように「帰れソレントへ」を熱唱したくなってくる。時々カラオケに連れられていっても、カラオケなんか使用せずにアカペラで熱唱するのが今井君だ。
カラオケでのアカペラの場合、慶応義塾大学「若き血」が定番。その場にいる人全員に起立してもらって、1曲で5kgも痩せるぐらいの激しい熱唱を楽しむ。
しかしまさか、いきなりソレントの街で「帰れソレントへ」を絶唱するわけにもいかない。熱唱も絶唱もあくまで「心の中で」「お腹の中で」に収めておかなければならないから、歌のオジサン=クマ助としては、マコトに苦しいところである。
調べてみると、このウルトラ有名なカンツォーネは意外に新しい。1902年、イタリアの首相がソレントを訪れた時に、市長がプレゼントした曲なんだそうな。少なからず興醒めであるが、興醒めだと思った時は、その故事来歴を忘れてしまえばそれでいい。
![チキン](https://stat.ameba.jp/user_images/20150531/12/imai-hiroshi/26/54/j/o0400030013323088909.jpg?caw=800)
(カフェでのランチにしては、なかなか充実していたチキンのグリル。おいしゅーございました)
今井君は中3の時、音楽の授業でこれを習った。音楽の先生は「石川先生」という中年の男性で、一人一人歌わせては「うん、上手だ」と秋田弁でつぶやくだけの、マコトにシンプルな授業をした。
上手だろうが上手でなかろうが、とにかく投げやりに「うん、上手だ」とおっしゃる。それを皮肉ととってムカつくヤツもいたけれども、やたら明るく「音楽は楽しいよ!!」「さあ、みんなで歌おうよ!!」「恥ずかしがってちゃダメだぞ♡」みたいなタイプより、ずっとつきあいやすかった。
教科書に掲載されていたのは、確か「芙龍明子」という人の訳詞であった。
麗しのソレント 海原はるかに
夕靄たなびき 思い出誘う
オレンジの香り ほのかにただよい
森の緑にも 風はささやく
今はただひとり 過ぎし日 偲べば
くだける波音 寂しく響く
帰れ君 ふるさとの町
このソレントへ 帰れよ
もしかすると「帰れ君」のところが、「帰り来よや」になっていたかもしれない。いやはや激しい詞であるが、その部分、イタリア語では
Ma nun me lassa, Nun darme stu turmiento
Torna a Surriento, Famme campa
「帰る」「戻る」という動詞tornareの命令形がtorna。イタリア語の詞をごく素直に訳せば「行かないでください。これ以上、私を苦しめないで、ソレントへ戻って来てください」である。
![揚げパン](https://stat.ameba.jp/user_images/20150531/12/imai-hiroshi/78/5d/j/o0400030013323089095.jpg?caw=800)
(サービスの揚げパン。旨かった)
さて、3月31日の今井君の予定は「日帰り小旅行」。目の前のヴィットリアに2~3泊していきたい気持ちは山々だったが、まあとりあえず腹が減った。ランチを求めて街をうろつくことにした。
しかし諸君、この段階でもう時計は午後2時半。ランチには時間が遅すぎた。「イル・ブーコ」「ズィントニオ」「カルーゾ」など、メボしいレストランをいろいろ訪ねてみたのだが、どこのお店も2時半がランチのラストオーダー。どうやらこの街は、南欧の「シエスタ」をチャンとやるらしい。
コジンマリした街を3周も4周もした挙句、タッソ広場のありふれたカフェで、寂しいランチをとることになった。注文したのはグリーンペッパーの乗っかったチキンのグリル。いつもなら1本カラッポにするワインも、今日は「グラスでチビチビ」にとどめた。
ションボリしているところへ、メガネをかけた剽軽なウェイターが「サービスだよん」と言って持ってきてくれたのが、上の写真の揚げパン。千切ったパンにコロモをつけて揚げただけのシンプルなツマミだが、おお、こりゃ旨い。なんだ、こんなに旨いツマミがあるなら、やっぱりボトルで1本頼めばよかった。
![ガリバルディ](https://stat.ameba.jp/user_images/20150531/12/imai-hiroshi/7c/9c/j/o0400030013323089333.jpg?caw=800)
(ナポリ・ガリバルディ駅に帰る。激しいガリバルディである)
すっかりいい気分になって、もう1度ソレントの街に入り込んだ。シエスタのせいで何となく拒絶されたような気持ちになっていたが、そのシエスタが終わりさえすれば、まだまだクマ助の活躍の余地は残っている。
闖入したのは、リモンチェロのお店。南イタリア独特のたいへん甘いリキュールだが、アルコールは40度もあって、酒に弱い人なら1杯でバタンQだ。大昔のクマ助は手のつけられないドアホだったので、ミラノから帰るヒコーキの中で、これを瓶から直接ラッパ飲みしたことがある。
もちろん今はクマも大人しく賢く成長した。購入したのは、
① 普通のリモンチェロ
② クリーム状のリモンチェロ
③ メロンで作った「メロンチェロ」
の3本。賢くはなったが、分量は増えた。
これもみんなヤタラ商売の上手な店主がいけないのであって、勧められるまま試飲に試飲を重ねるうちに、したたか酔っぱらってサイフの紐がユルユルに緩んじゃったのである。
午後5時、ソレントからの快速電車でナポリに帰る。快速電車は1日に4~5本しか走っていないが、諸君、ここは意地でも快速がいいので、もしも各駅停車なんかに乗ったら、途中の停車駅は何と35にのぼる。もし小田急なら、新宿から厚木とか伊勢原まで各駅停車で行く計算になる。
運よく快速電車に間に合って、ナポリ・ガリバルディ駅には19時ごろ到着。ここからホテルまで、まだまだ難行苦行が続くが、いやはや、今日もまたマコトに充実した1日であった。
1E(Cd) COMPLETE MOZART/DIVERTIMENTI・SERENADES 8/11
2E(Cd) COMPLETE MOZART/DIVERTIMENTI・SERENADES 9/11
3E(Cd) COMPLETE MOZART/DIVERTIMENTI・SERENADES 10/11
4E(Cd) COMPLETE MOZART/DIVERTIMENTI・SERENADES 11/11
5E(Cd) Harnoncourt:BEETHOVEN/OVERTURES
total m36 y851 d16173