Tue 150414 ポンペイに向かう アルテカード 出発地点があまりに遠い(ナポリ滞在記6) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 150414 ポンペイに向かう アルテカード 出発地点があまりに遠い(ナポリ滞在記6)

 ナポリやアマルフィ、カプリ島やポンペイを縦横無尽に回ろうと考えるなら、何と言っても最初に手に入れなければならないのは、「カンパニア・アルテカード・プラス」である。

 ナポリを州都とするカンパニア州は、何しろMUSTが目白押し。イタリアの旅のMUSTであるとか、ヨーロッパの旅のMUSTであるとか、そんなスケールの小さいMUSTではなくて、要するに「人生のMUST」と言っていい場所がズラリと並んでいるのである。

 高2の頃の英作文の教科書に「See Naples, and die」という章があった。担当は小松先生。教科書本文と全基本例文の暗記を生徒全員に厳命する先生であって、「こんなの、英作文じゃなくて英暗記じゃないか」と生徒たちの評判はあまりよくなかった。

 そろそろ中間テストが近づいてくる季節だから、今井君なんかもあの頃の苦しさを思い出す。高2の1学期の中間テスト、何しろ数学は「漸化式」であったし、化学はひたすらモル計算、これに英語科目が3つもあって、いやはやマコトにツラい日々であった。

 そんな中、せっかくの「楽しい英作文」を「重苦しい英暗記」に変えてしまった小松先生を多くの生徒が恨んだものだ。だって諸君、授業中も一切「英作文」はなくて、本文と例文の和訳をしていくだけ。生徒はひたすら英文を暗記し、それがそのまま定期テストで出題される。おお、つまらなかった。
ヴェスヴィオ
(ポンペイ。背後がヴェスヴィオ。紀元79年、この至近距離で、山頂が吹き飛ぶ大噴火が起こった。吹き飛んだのは、左と右の頂の間に存在した三角錐の全てである)

 「See Naples, and die」についても先生の訳は「ナポリを見て、死ね!!」。そうじゃなくて「ナポリを見たら、もう死んでもいいぐらいだ」なんじゃないか。ヴェスヴィオ山の挿絵を眺めながら、いつかこんな景色を間近に眺めることがあるのか、深いタメイキしか出なかった。

 まあそういうわけで、ヴェスヴィオ山を中心とするカンパニア州は、「1回見て回ったら、もう死んでもいい」とみんなが声を揃えるほど人生のMUST。今井君はもうとっくに1回見てしまっているが、もう3回か4回は訪れたい。今回も張り切って「アルテカード」の購入を決めた。

 ホテルから一番近いスーパーまで、徒歩25分。最寄りの地下鉄駅「トレド」までも徒歩25分。いやはや何とも不便であるが、この不便な道のりの中にタップリ観光名所が含まれているのだから、日々の散歩がそのまま最高の観光になる。

 ホテルを出ればまず目の前がタマゴ城とサンタルチア港。右手に穏やかなナポリ湾を眺め、海にはたくさんのお船が浮かび、海の向こうには青いヴェスヴィオ山がスックと立っている。ナポリ観光の白眉はこの風景であって、まさにホテルから徒歩1分のところに集中しているのだ。
プレビシート
(王宮前、プレビシート広場。10年前はここが大型の野良犬だらけだった)

 トレド通りに向かって10分ほど行くと、右手に「王宮」。ただし、イタリアは「王国」ではないし、ナポリにも「王」と言ふものは存在しない。17世紀、スペイン王を迎えるために着工され、その後ブルボン王宮として改築された。ナポリの数奇な歴史を示す建物だが、「ただいま全面改修中」であった。

 その向かいがプレビシート広場。10年前にナポリを訪れた時は、このあたりは大きな野良犬がたくさんお昼寝の最中で、それだけでも「うぉ、治安が悪いよん」とゾッとしたものだったが、今回は野犬を見かけることはほとんどなかった。

 同様にグッと減少したのが「フェイクバッグ売り」のオニーサンたち。10年前は、ナポリ中央駅から王宮まで、徒歩30分の道のりのほぼ全てを、バッグ売りオニーサンたちが占領していた。真っ直ぐ歩けないほどのバッグ売り密度だった。

「いったい何人いるんだろう」
「フェイクバッグの総数は、天文学的数字なんじゃないか」
「1日に、合計でいくつ売れるのかね?」
と、フシギな気持ちになったものだった。だって、バッグは並んでいても、その道を歩く人なんかちっともいなかったのである。

 しかし今回は、フェイクバッグの「フェ」の字も見かけない。ローマを占拠していたセルフィ売りもほとんどいない。ナポリの治安は、この10年でグングン改善したのである。今こそ恐れずナポリに向かいたまえ。
ヴォメロ
(改修中の王宮。その向こうにヴォメロの丘が見える)

 「王宮」に立ち寄って、さっそく窓口で「アルテカードください」と言ってみた。王宮そのものを見学するのはまた後日でいいが、ここでアルテカードを手に入れれば、この後の観光がググッとラクになる。

 ガイドブックによれば、アルテカードには数種類あるらしい。
① 7日&5カ所カード(34ユーロ):カンパニア州内のほぼ全ての交通機関が7日間無料。美術館や遺跡の入場料も、最初の5カ所が無料、その後もいろいろな割引を受けられる。
② 3日&2カ所カード(32ユーロ):①と同様に、交通機関は3日間無料、入場料も最初の2カ所が無料、割引もさまざま。

 その他「1日券」などもあるが、クマ助が購入を予定していたのは、①の「7日&5カ所カード」。これを2回購入すれば、ナポリ滞在13日間、キップを買いに長蛇の列に並ぶ必要はなくなる。

 諸君、ナポリとかローマとか、イタリアとかスペインとか、南欧の長蛇の列を侮ってはならない。日本と同じ感覚で毎回チケットの列なんかに並んでいたら、旅の半分は列に並んでイライラしているうちに終わってしまう。

 しかも、その列は窓口近くで崩壊。丸いお団子やおしくらまんじゅうに変わり、大人しい日本人なんかはどんどん後回しにされる。ストレスはたまり放題、正義感すらズタズタになりかねない。
チルクム
(ポンペイには、私鉄チルクム・ヴェスヴィアーナ線を利用する)

 だからチケットは、何とかどこかでまとめて購入しちゃうこと。7日のアルテカードを2回購入すれば、列に2回並んだだけで2週間カバーできるじゃないか。合計70ユーロはちょっと高いが、まあ「正義感ズタズタ」よりはマシである。

 しかし諸君、しょっちゅう制度の変更があるのも、またいかにもイタリアである。「王宮」の窓口のオネーサンによると、①のカードに変更があって、「7日券のほうは交通機関に利用できません」とおっしゃる。「3日券なら交通機関無料。しかし7日券のほうは、美術館と遺跡でしか使えません」というのだ。

 「えーっ、話が違うよー」であるが、オネーサンは譲らない。この場合、どこか別の窓口を試してもいいのだが、こんな親切なオネーサンがまさかウソを言うはずはない。

 「どのカードがお得か」「どの遺跡から回ればお得か」、こんなに丁寧に説明してくれるものを、「アナタは信用できません」とお断りするのも変である。「交通機関無料」がないんじゃ、7日券を買っても意味がないから、クマ助は急遽プランを変更。3日券を3回か4回繰り返して購入することにした。
ソレント行
(ソレントゆき。固いベンチの上で1時間。こりゃたいへんだ)

 こうして準備はいよいよ整った。3月28日、今日はこれからポンペイの遺跡に出かける。ティトゥス帝の紀元79年、ヴェスヴィオ山の大噴火でカタストロフィに陥った古代の街の遺跡で、丸1日を過ごしてくる予定である。

 しかし諸君。ポンペイへの道のりは長い。たどり着いた「トレド」の駅から地下鉄1号線に乗り、ムセオ駅で地下鉄2号線に乗り換え。1号線の清潔さと、2号線の暗さ&恐ろしさにビックリしながら、ナポリ中央駅に到着。ここで私鉄チルクム・ヴェスヴィアーナ線に乗り換える。

 中央駅でチルクム線に乗り換えることもできるが、それではポンペイまで1時間、ギューギューに混雑した電車にタチンボで行かなきゃいけない。イタリアの人々は「他の乗客への配慮」なんてのもあまり考えないから、タチンボで1時間などというのは、ほとんど拷問みたいなもんである。

 電車が混雑すれば、スリ被害の可能性も高まる。途中駅も20もあり、乗り降りのスッタモンダはまさにスリの独壇場。「ストップ・スリ被害、ワタシは盗まれない」ということなら、座っていくに越したことはない。ここは諸君、始発駅まで徒歩10分。安全優先ということに決めた。

1E(Cd) Corboz & Lausanne:MONTEVERDI/ORFEO 1/2
2E(Cd) Corboz & Lausanne:MONTEVERDI/ORFEO 2/2
3E(Cd) Festival International de Sofia:PROKOFIEV/IVAN LE TERRIBLE
4E(Cd) Solti & Wien:WAGNER/DAS RHEINGOLD②
5E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES⑤
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