Sun 150324 おかゆカレー クリスマスのローマ法王(イタリア冬紀行20・2486回) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 150324 おかゆカレー クリスマスのローマ法王(イタリア冬紀行20・2486回)

 メシは楽しければそれでいい。別にウットリするほど旨くなければいけないとも思っていないし、ウットリするほど旨いメシを前に誰かと激しい口論にでもなれば、それは人生最悪のメシのうちの1つに変わる。

 だから今井君が考えるメシ屋の第1条件は「楽しくしてくれること」。どんなに旨いものを作ってくれても、ウェイターやマスターが楽しさを台無しにするような人物だと、そんなメシ屋はもともとメシ屋の本質をちっとも分かっていないと判断する。

 「ウチは、コースしかやってません」なんてのは最低であって、食べる側の好みや体調やお腹のスキ具合を一切考慮せず、作りたいものを作りたい順番に自分のペースで作って「ほら食え!!」という態度で押し付けてくる料理人は、料理人の名に値しないのである。
パパ1
(12月25日、ローマ・サンピエトロ大聖堂のローマ法王 1)

 もっとハッキリ言えば、そういう店でヘーコラしているお客は、「お客の名に値しない」と言っていい。客として堂々と暖簾をくぐり、ニコニコ敷居をまたいだら、ヘーコラ&ニタニタ卑屈な態度をとるべきでは決してない。「コースしかやってません」というなら、すぐにその店を出て然るべきである。

 本来メシ屋というものは、入ってきたお客の顔を見ただけで
「お、この客が求めているのは○○だな」
「よし、満足させてやろうじゃないか」
「ウチのメシは、旨いよ、楽しいよ」
と、調理場でニンマリしてしまうぐらいが相応しい。

 今井君みたいなハイペースで世界中を旅していると、やっぱりメシに関するエピソードが一番多くなる。羽田を飛び立った瞬間から「機内食」の問題が発生するし、飛び立つ前のラウンジで食事が楽しいか楽しくないかは、その後2週間の旅が楽しいか楽しくないかの問題に直結しているのである。
ひとびと1
(クリスマスのサンピエトロ。数万の善男善女が押し寄せる 1)

 「機内食が爆笑するほどマズい」場合もある。4月X日、ナポリを出発した今井君はフランクフルトで乗り換え、羽田行きのANAに乗り込んだ。どういうわけか機内はガラガラ、300人は乗れる広さのヒコーキに、おそらく30人程度の乗客しかいなかった。

 こんなアリサマだと、CAさんたちだって気合いが入らないだろう。何しろ諸君、24席あるプレミアムエコノミーに合計4人。普通のエコノミーには5~6人。300人収容の予備校の大教室に、生徒が5~6人しかいないようなもんだ。これで気合いが入ったら、相当の武芸の達人と思わなければならない。

 そこで出てきた「機内食」が諸君、これはあくまで主観だから「そうは思わない」という人も存在したかもしれないが、まさに我が人生最低の機内食と言ってよかった。2種類あるメニューの中から「カレー」を注文したのであるが、うぉ、これがホントにカレーだろうか。

 まず、何と言っても「ゴハン」がゴハンの名に値しない。オカユと言って出されたら、きっと「おお。オカユか♡」と納得しそうなシロモノである。そういう状況だから、ゴハンに「カレー」をかけても、カレーがゴハンに染み込んでいく様子は一切見られない。
ひとびと2
(クリスマスのサンピエトロ。数万の善男善女が押し寄せる 2)

 諸君、まずオカユを作ってみたまえ。カレーはレトルトでかまわない。出来たオカユにカレーをかけて、どうしたらカレーとオカユが混ざるものか、いろいろ工夫を重ねてみたまえ。諸君はおそらく約1分後、その努力が絶望に直結していることを知るはずだ。

 機内の今井君はその絶望を大いに楽しんだのである。腹の底から湧き上がる絶望。しかし人間というものは、絶望を哄笑に変換することに長けている。何しろ今井君は、「メシは楽しければいい」「旨くなくてもかまわない」という信念の持ち主。こんなに笑うほどマズければ、楽しくて楽しくてたまらない。

 そこで、オカユメシと「カレー」をネチャネチャ存分に掻き回し、それが決して混じっていこうとしないのを確かめて爆笑したあとは、「オカズ」と称するもののほうに、おもむろに手を伸ばしてみた。

 カレーのオカズは、諸君、何と「うどん」である。カレーうどんなら大好物であるが、いまクマ助の目の前には「オカユカレー」が厳然として存在し、そのオカユカレーとは完全に別個の「うどん」と称する食物が、うどん独特のトグロを巻いてクマ助を見つめている。
パパ2
(12月25日、ローマ・サンピエトロ大聖堂のローマ法王 2)

 そこへ気合いの入らないCAのオネーサンが「ワインいかがですか?」と回ってきた。すでに1本飲み干して、「もう1本♡」と熱が入っていた矢先のクマである。しかし諸君、相手にしてもらえない。「そんな客、いるワケない」という勢いで、サッサと通り過ぎてしまった。

 うにゃ、機上のクマは、もう楽しくてたまらない。目の前には、オカユ。とても日本人の好みを考慮したとは思えない珍しい風味のカレー。オカユカレーの不思議な楽しさを、さらにグングン高めてくれるトグロうどん。結局マトモに食べられたのは、フルーツ3~4切れぐらいであった。

 こんなに楽しい機内食は、ホントに久しぶり。こうなると、「何で国内線プレミアムシートのお弁当はあんな凝り放題に凝ってるの?」と、改めて不思議でならない。

 国内線では、有名料理人とか有名店と「コラボ」して作り上げたご大層なお弁当。乗客がどんなに満腹でも、意地でも供されるおいしいお弁当だ。一方の国際線では、オカユカレーにトグロうどん。いやはや、あんまり楽しくて、苦情を言うのさえ忘れてしまった。
鐘が鳴る
(サンピエトロの鐘が鳴る)

 ま、今井君が苦情を言わない聖人君子になったのも、12月25日ローマの経験があったからに違いない。至近距離でローマ法王のお姿を拝し、直接ローマ法王のお言葉を耳にして、メシのことなんかでブツブツ文句を言う人間の愚劣さを痛感していたのである。

 クリスマス当日、ヴァチカンに向かう参道は世界中の善男善女でごった返していた。さすがにカトリック総本山。ジーザスさまから2000年、苦難の時代を耐え、アリウス派やドナティウス派との確執を勝ち抜き、ニケーア公会議の勝者・正統アタナシウス派は、ついにこうして世界中から信者を集めるに至った。

 クマ助が直接ローマ法王の姿を拝むのは、2009年のリスボン訪問以来である。リスボンの時はホントに偶然で、まさか法王と同じ日にリスボンに到着するとは思ってもいなかったのだが、リスボンは法王歓迎一色だった。

 夜にも法王シンパの若者集団に囲まれ、「ビボ!! パパ♡ ビボ!! パパ♡」の合唱に圧倒されたものだった。夕食後の法王さまがバルコニーに姿を見せると、若者集団の盛り上がりは頂点に達した。

 あれから6年、法王さまは前代のベネディクト16世からアルゼンチン出身のフランシスコさまに代わっている。何となく近づきにくかったベネディクトだが、今のフランシスコ法王はマコトに親しみやすい人柄。サンピエトロ広場の歓声も一段と大きかった。

1E(Cd) Yohichi Murata:SOLID BRASS Ⅱ
2E(Cd) CHET BAKER SINGS
3E(Cd) Art Pepper:SHOW TIME
4E(Cd) Maceo Parker:SOUTHERN EXPOSURE
5E(Cd) Max Roach:DRUMS UNLIMITED
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