Sun 150317 ローマ、足許はみんな文化財(イタリア冬紀行13・カウントアップ2479回) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 150317 ローマ、足許はみんな文化財(イタリア冬紀行13・カウントアップ2479回)

 京都や奈良の有名な神社仏閣に「油のようなもの」が撒きちらされる事件が相次いでいる。茨城の鹿島神宮や、香川の金刀比羅さんにまで被害が拡大して、うーん、半月ぶりに帰国した日本は、やっぱり何となく病んでいる。

 つい一昨日の記事の冒頭で、クリスマスのフィレンツェの乱痴気騒ぎに関して書いたばかりである。一昨日はまだナポリのホテルに滞在中だったから、日本の神社仏閣でのこの事件については全く知らなかった。

 フィレンツェみたいに「そこいら中がみんな文化財」という街で、あれほどの乱痴気騒ぎが続けば、美しい教会も路上の彫刻作品もペンキやスプレーの落書きでどんどん台無しにされてしまいそうな気がするのだが、ルネサンス以来600年、マコトに奇跡的にみんな無事である。
クラウンプラザ1
(ローマでの宿泊は「クラウンプラザ・サンピエトロ」を選んだ)

 今回の日本の事件の場合、「いやはや、よくご存知ですな」という感じ。奈良&京都のお寺や神社について、よほどよく分かっている人物でないと、こういう寺社の選択はできない気がする。

 マコトに残念な許しがたい行為であるが、これほど全国的に被害が及び、寺社の選択もきわめて巧妙であることを考えると、短期間のうちに広範囲を移動する財力と知識と便宜をもつ者の仕業を思わずにいられない。

 「油のようなもの」というあたりがまた、お寺や神社への強く歪んだ愛情を感じさせる。昔の暴走族みたいに、ペンキをぶちまけるとかスプレーで殴り書きをするとか、そこまで激烈な器物損壊を実行する気持ちになれない者の仕業なんじゃないか。

 「油のようなものなら、時間が経過すれば消えるだろう。だから決定的な破壊ではない。愛するお寺。大好きな神社。しかし『油のようなもの』を撒きちらして、ホンの少し、ごく一時的にだけ、美しいものを汚してやりたい」。そういうツマラナイ自己顕示欲の表出なんじゃないか。

 今井君みたいなシロートの無知に基づく犯人探しは、決してこのブログの目指すところではないから、これ以上この問題に深入りするのは控えなければならないが、まるで日本の有名社寺ツアーみたいな今回の犯罪が、これ以上拡大しないことを祈るばかりである。
スペイン階段
(ローマ、スペイン階段。クリスマス直前の雑踏)

 12月22日のクリスマスイブイブイブ、フィレンツェからローマに移動したクマ助は、ここでもまた至るところで乱痴気騒ぎが始まっているのを目撃することになる。

 ローマと言えば、文化財の出現頻度は京都&奈良をはるかに上回る。
「もし石を投げれば、確実に文化財にあたる」
「文化財でないものを探すほうが困難」
「足の踏み場もないほど文化財だらけ」
「もしも文化財を踏みつけるのがコワければ、空中を浮遊して移動するしかない」
「呼吸する空気までが文化財」
というレベルである。

 何しろ紀元前700年から476年の西ローマ帝国滅亡まで、1200年間も「世界の首都」=カプトゥ・ムンディだった街である。キリスト教の都としてのその後を加えれば、2700年の歴史がある。
階段上から
(スペイン階段上からのローマ夕景。サンピエトロの姿も見える)

 奈良1300年、京都1200年と比較すれば、時間だけでも2倍、規模の面でも日本の都 vs 西ヨーロッパ世界の都。文化財の上に文化財が何層にも積み重ねられて、地面を掘れば文化財が地層をなし、ほとんど地学の教材に使えそうなほどである。

 酔っぱらいたちが目いっぱい酔っぱらって、肩を組んで歌いまくり踊りまくれば、蹴つまずいた拍子に1つか2つぐらいの文化財ならカンタンに踏みつぶしかねない。寄りかかった壁や柱も文化財。水たまりも溝も文化財。拾った小石も文化財。いやはや、こりゃたいへんな街である。

 しかもクリスマス直前のローマは、歩いている人のほとんどが、昼間からもうある程度の酔っぱらい。夕暮れが近づき、やがて日が沈んで、人々が遠慮会釈もなしにビールやワインを飲みまくれば、文化財の危機はますます現実味を帯びる。しかしこの街もフィレンツェ同様、やっぱり何とか踏みとどまっている。
蜂の噴水
(ローマ・バルベリーニ「ハチの噴水」。すぐ目の前に「骸骨寺」がある。)

 今回のローマ宿泊は、都心から大きく離れたホテルを選んでしまった。「クラウンプラザホテル・サンピエトロ」であるが、「サンピエトロ」というサブタイトルにも関わらず、実際のサンピエトロからは、クルマで10分以上離れている。徒歩なら、1時間近くは覚悟しなければならない。

 ローマ・テルミニ駅からタクシーでホテルに向かった時は、
「あれれ、こんなに離れているのは反則なんジャン?」
「看板に偽りあり。これじゃ全然『サンピエトロ』なんかじゃないジャン?」
「こんなに都心から離れてんじゃ、観光に不便すぎるジャン?」
と、昭和ジャンジャン言葉を連発。ホテルのサブタイトルのイツワリについて、心からの不満を述べたてた。

 だって、そうジャンか。「徒歩で1時間」ということは、例えば池袋のホテルが「新宿」を名乗り、飯田橋のホテルが「渋谷」を名乗り、京都二条あたりのホテルが「京都駅前」を名乗るようなもの。そんなの、反則にきまってるジャンか。

 チェックイン当初は、確かに無料アップグレードでスイートルームに案内されはしたが、「こんなホテルのスイートじゃ、何の意味もない」と、クマ助は不満タラタラ。激しくプリプリしたものだった。
クラウンプラザ2
(間違いなく看板には「ROME ST PETER'S」の文字がある♨)

 しかし諸君、ホテルの住所を眺めながら、次第にプリプリは ☞ ホクホクに変わっていったのである。住所を見るに、このホテルは何と「アウレリア・アンティカ」に面している。

 世界史選択者なら誰でも分かるだろうが、「アウレリア街道」は、アッピア街道とかフラミニア街道と並んで、古代ローマ帝国の幹線道路のうちの一つ。紀元前3世紀に建設された街道は、ティレニア海に沿ってピサに向かう。「すべての道はローマに通ず」であって、アウレリアはその代表格である。

 しかもその「アウレリア」に「アンティカ」がくっついているんだから、もうこれは申しぶんない。「アンティカ」は、もちろん英語のアンティークであって、カルタゴの名将ハンニバルと激闘を演じたポエニ戦争当時の道なのである。

 こんな歴史ある街道に面したホテルに泊まって、まだ文句があるってぇのかい? そりゃ文句の言いすぎだろ、クマさん。考え直した今井君は、ローマ都心との往復には、贅沢だがタクシーを乗りこなすことにした。

 いま足許にある道が、古代ローマの人々が踏みしめたのと同じ道であることに感激し、いま浴びている日光が、2200年前の人々が振り仰いだのと同じものであることに感動しながら、ローマ滞在の4日間を満喫することに決めたわけである。

1E(Cd) Bobby Coldwell:AUGUST MOON
2E(Cd) Bobby Coldwell:CARRY ON
3E(Cd) Bobby Coldwell:COME RAIN OR COME SHINE
4E(Cd) Boz Scaggs:BOZ THE BALLADE
5E(Cd) The Doobie Brothers:MINUTE BY MINUTE
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