Sat 150228 石垣島 ☞ 西表島の旅へ やまねこタクシー 水牛の引く車で由布島にわたる | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 150228 石垣島 ☞ 西表島の旅へ やまねこタクシー 水牛の引く車で由布島にわたる

 出張ついでに「どこか行こうかな?」と舌なめずりする瞬間ほど楽しいものはない。釧路の時は「釧路湿原SLの旅」を思いついたし、一昨年の夏に沖縄を訪れた時は「久高島に船で渡り、自転車で一周してこよう」と決めた。どちらも「ウワバミ文庫」から旅行記が読めるようにしておいた。

 2015年3月のクマ助としては、「また久高島も悪くないな」とも思ったけれども、同じ離島に何度も何度も渡るのは、何となく芸のない話じゃないか。「他の離島で、目ぼしい所はどこだんべ?」と地図を眺めるうちに、「ここはいっそ大胆に、ヒコーキ利用でビューンと行くべ」という結論になった。

 目指すは、まずヒコーキで石垣島。招いてくれた塾の塾長が石垣島出身のオカタなんだから、ここはどうしても石垣島を訪ねてみるのが礼儀である。時間さえ許せば、ついでに石垣島から高速船に乗って、イリオモテヤマネコの西表島にアタックするのも悪くない。
ゆく牛
(西表島 ⇔ 由布島間を往復する水牛の車に乗る 1)

 というわけで、近来マレにみる勤勉なクマどんは、5時起床、朝6時半にホテルを出て那覇空港に向かった。那覇発7時55分のヒコーキに乗れば、石垣島には8時45分に到着する。那覇空港に出来たばかりのダイアモンドラウンジで「ボルシチ風スープ」を2杯すすり、それで朝食を済ませたことにした。

 石垣島は、快晴。何しろもうすぐそこは台湾だ。ヒコーキの窓から見える珊瑚礁が美しい。すぐにタクシーに飛び乗って「離島フェリー乗り場」に向かう。

 ざわわ&ざわわ&ざわわなサトウキビ畑が地平線まで続き、ところどころで黒い牛たちが草を食んでいる姿が、マコトにのどかである。「おお、思い切って旅に出てよかった」と実感する風景であった。

 離島フェリー乗り場には、9時10分に到着。大きなターミナルであって、小浜島・竹富島・西表島などに向かう船の会社が、ズラリとカウンターを並べてツアー客の対応を行っている。

 しかし諸君、今日出発のツアーはもうとっくに出発してしまった。石垣島からさらに遠くに向かうツアーは、どうしても石垣島に一泊しなければ無理な時間帯に設定されているようである。

 それでも、旅のベテラン♡今井クマ蔵はちっとも慌てない。とりあえず西表島にわたってしまって、その後はタクシーでも何でも手配すればいい。「安永観光」という船会社の往復チケットを購入し、9時40分の出航を待ち受けた。
くる牛
(西表島 ⇔ 由布島間を往復する水牛の車に乗る 2)

 15分遅れて港を出た船は、乗客が恐怖を感じるほどのスピードで猛然と飛ばしていく。乗客は約20人。すれ違う船の後ろに激しく噴き上がる白い海水の様子を見るに、ほとんど「ヤケになって」と表現してもよさそうな猛スピードですっとばしているらしい。

 薄緑色の海水の底には、たくさんの黒い暗礁が透けて見えている。もちろん「透明度が極めて高いから」ではあるのだが、同時に「水深がかなり浅いから」でもあって、もう少し慎重に船を進めた方がいいような気がする。しかしそんなシロートの恐怖なんか、船の超ベテランはまったく意に介さない。爽快と言えば、マコトに爽快である。

 進行方向右に、大小様々な離島の姿が展開する。まず竹富島、続いて小浜島。ともに星野リゾートの高級リゾート施設で有名になった島である。15分ほど行くと、小さく平坦な小浜島の背景に、高い山地のそそりたつ西表島が青く見えてくる。

 西表島に到着、10時30分。船着き場には、観光案内所と土産物屋が一軒ずつあるだけで、他の観光施設は一切見当たらない。さすが秘境であって、こんなに静かな島ならば、ヤマネコ君たちもきっと快適に過ごせるだろう。
やすむ牛
(ゆっくり休憩をとる水牛の諸君)

 乗客のほとんどは観光バスを予約してあって、島の担当者に導かれて大型バスに吸い込まれていく。クマ助は、もちろんタクシー。船着き場に2台のタクシーが待っていて、一方は「イリオモテ観光」、もう一方は「やまねこタクシー」である。

 ニャゴロワ&ナデシコと12年も暮らしてきた今井君としては、「ねこ」の文字を見た瞬間に「やまねこタクシー」を本能的に選択。野生動物の保護を優先して、タクシーはきわめてゆっくり走る。

 ヤマネコ以外に、カンムリワシなんかも「いつ飛び出してくるか分からない」と運転手のオネーサマがおっしゃる。
「だからタクシーも少ないんです」
「うちの『やまねこタクシー』は、プリウス2台でやってます」
「帰りのクルマは、必ず今のうちに予約してください」
という状況のようである。

 快晴の中、行き会うクルマもほとんどない。目指したのは、「由布島ゆき 水牛車のりば」。西表島から数百メートルの砂の浅瀬を隔てて、「由布島」という小島が浮かんでいる。周囲2km、総面積0.15㎢、定住者は十数人、海抜1.5メートル。マコトにコジンマリしたこの島は、海流で堆積した砂だけで出来ている。
やまねこ
(やまねこタクシー)

 島までの浅瀬は、満潮時でも水深1メートル程度。干潮時には海水がほぼ完全に引いて潮干狩り状態になる。その浅瀬を、水牛君たちが車をひいて行き来する。移動手段でもあるのだろうが、徒歩や自転車でも渡れる浅瀬。水牛君たちの引く車は、今では大切な観光資源になっている。

 思い切って西表島に来てみたのは、この水牛車に乗りたかったから。観光バスのツアー客ばかりで、個人客は数えるほどしかいない。カップルが2~3組、福岡からやってきた若い男子3人組ぐらいである。こういう場所でツアー客優先なのは致し方ないことなので、15分ほど大人しく順番を待った。

 今井君担当の水牛君は「梅吉」。痩せた背中がちょっと可哀そうだが、これはあくまで水牛独特の体型なので、決して「酷使されて痩せ細った」というのではない。みんな優しそうな目をして、気持ちよさそうに車を引いていく。
梅吉
(水牛・梅吉クンの勇姿)

 浅瀬の上を穏やかに渡っていく八重山の海風がマコトに心地よい。水牛をあやつるオネーサマが三線を片手に歌う「安里屋ユンタ」を聞くうちに、見る見る由布島が近づいてくる。水牛君の牛歩ですらこんなにすぐなんだから、浅瀬の距離は数百メートルというより、百数十メートル程度だったのかもしれない。

 水牛君は、時折立ち止まって大小の用を足す。何しろ日常的に草をモリモリ食べているわけから、「大」のほうは豪快なほど大量であって、まさに「大」の名に恥じない大きさのものが浅瀬にコンモリ盛り上がる。もちろん後始末は海の波がしてくれるので、その辺のことに頓着する必要は一切ない。

 島には亜熱帯植物園があり、学食みたいなレストランも併設されている。ここで一休みして帰りの水牛車までの時間をすごす。植物園の中にも浅瀬があって、大きな黒い巻貝がゴロゴロ無数に転がっている光景は、「さすが南国」というより、若干不気味に感じるぐらいであった。

 帰りは女子の水牛さんで、歩みも往路の梅吉君より心持ち穏やか。盛んに可愛い声で鳴いてみせる。牛だから何でもかんでも「もー♨」「もー♨」と鳴くものだと思うのは間違い。大きなネコが甘えるような甲高い声で繰り返し何かを訴えながら、ゆっくりゆっくりと対岸に戻っていったのだった。(明日に続く)

1E(Cd) George Benson:LOVE REMEMBERS
2E(Cd) George Benson:STANDING TOGETHER
3E(Cd) Chicago:CHICAGO
4E(Cd) Take 6:BEAUTIFUL WORLD
5E(Cd) Kazuhiko Komatsu & Saint Petersburg:貴志康一/SYMPHONY ”BUDDHA”
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