Sun 150201 魚スープの余韻 再びバロン・デ・ゾフ 夕景と夜景(夏マルセイユ滞在記37) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 150201 魚スープの余韻 再びバロン・デ・ゾフ 夕景と夜景(夏マルセイユ滞在記37)

 9月11日、FONFONで魚スープを3回も意地汚くオカワリして、ウェイターはじめお店の人々には、なかなか評判がよかったようだ。

「日本人は少食。あんまり食べてくれない」
「日本人は味にうるさい。おいしい魚を食べ慣れているせいか、せっかくのブイヤベースにちっとも感激してくれない」
など、むずかしい日本人は少なからず警戒と敬遠の対象になっている。

 しかしこの今井君は、ブエノスアイレスやアムステルダムのステーキ屋でも「350グラムのステーキをオカワリ」をやってきたし、このマルセイユの名店FONFONでもオカワリ3回をやってみせる。豪胆な日本人だってビシッと存在することを、世界にアピールしなきゃいけない。

 ただし、お店の人々の評判はよくても、周囲のお客さんたちの目がどうだったかは分からない。いきなり山盛りの牡蠣を1皿ベロベロッと高速で平らげる。続いてお魚のスープもジュルジュル高速で貪ってしまう。ロゼワインも高速、30分で1本がカラッポだ。どんなことでも高速が好きなのである。
ゾフネコ
(バロン・デ・ゾフで出会った雄ネコ君。耳が切れてしまっているが、おそらく勇敢に戦い続けた名誉の負傷である)

 ドイツのアイスバインや、オーストリアのウィーナー・シュニッツェル、フランスの「海の幸盛り合わせ」など、ヨーロッパにはビジュアルでビックリさせる大盛り料理がいろいろあって、運んできたウェイターが「どうだ、こんなに食べられるかい?」とニヤッと笑ってみせるのがクライマックスである。

「オレたちみたいにカラダのデカい欧米人でも、食べきれるかどうか分からない」
「ましてや日本人じゃ、まあどう見たって無理だろ?」
「ははは、やられたな。半分以上残すしかないな!!」
ウェイターと周囲のお客が一緒になって、こちらの困った顔をニヤニヤ覗き込む。

 ところが諸君、今井君はそういう場合に限って、驚くほどの超高速で平らげてみせる。苦手なのは、①酸っぱいものと、②アブラの多い高級肉。それ以外なら、ヒトもイヌもネコもビックリしてひっくり返るほど超高速でワシワシやってしまう。

 すると、「何だ、アイツは?」「何だ、ホントに日本人か?」というオドロキの視線が飛んでくる。そりゃそうだ。こういう場面では、今井君は自分を人間とは認識していない。酒を前にすればクジラ、肉を前にすればクマ、そういう存在になりきれば、「高速ワシワシ」はちっとも難しいことではない。
ファロからの眺め
(もう1度ファロ公園からマルセイユ旧港の風景を眺める)

 オドロキの視線に送られて店を出た時の爽快感は格別だ。「うっぷ、食った食った」であり「うっぷ、飲んだ飲んだ」であって、もしもボクが牛ならば、これから半日かけて丹念に反芻するところである。

 しかし、うーん、「私は、牛♡」という意識にはなかなかなれない。そもそもボクチンは、草を食べない。草どころか、美味しいはずの野菜も大の苦手。野菜を食べさせられそうになると、「私は小鳥サンでも虫クンでもありません」とウソぶく、マコトに怪しからん生き物である。

 だから決して牛みたいに反芻はしないが、大量に魚スープをジュルジュルやり、ロゼワインも高速で鯨飲したあとであるから、吐く息はお魚くさく&酒くさく、そこに生牡蠣のカホリも混じって、いやはやマコトにダラしない。何故か地元のネコたちが寄ってくるが、口元に手を当てて考えてみれば「ムベなるかな」なのであった。
332
(Hotel Dieuの332号室。2週間、お世話になった)

 ゆっくり散歩しながらホテルまで帰ることにする。左手には、イフ島の絶景。2週間楽しんだ青い地中海の眺めもいい。海水浴場はまだ十分に繁盛していて、夏はまだまだ終わりそうにない。

 途中「ファロ公園」に立ち寄った。滞在2日目にここを訪れ、マルセイユ旧港を盛んに出たり入ったりする船の列を眺めた。あの日に比べると、日差しの熱さは変わらないが、風の温度は確実に下がって、全身マコトに爽快。食後の散歩にここを選んでホントによかった。

 丘の上のHotel Dieu、お世話になった332号室に戻って、思わずスヤーッと意識を失い、そのまま夕暮れまで昼寝する。暴飲暴食の直後、昼寝が夕暮れまで続いたんじゃ、「怠け者!!」の罵声を免れることは出来そうにないが、実はこれが当初の計画通りの行動。夕暮れの今井君は「さて、では出かけるか」と自らを励ました。
夕景
(夕暮れのバロン・デ・ゾフ。空のグラデーションが美しい)

 向かうのは、再びバロン・デ・ゾフ。目当ての店は「シェ・ジャノー」。
「だってキミ、ついさっきまでバロン・デ・ゾフで魚くさくなってたじゃないですか」
「だってアナタ、シェ・ジャノーだって、一昨日行ったばかりじゃないですか」
など、常識的で堅苦しい人々の批判なり非難なりはもちろん十分に心得ているが、諸君、常識なんてのは、ツマランのだよ。

 経験したかったのは、夕暮れから夜にかけてのバロン・デ・ゾフ。3重アーチの石の橋の向こうに夕陽が沈む光景、夕暮れの空がオレンジからピンク、ピンクから深紅、深紅から紫に、刻一刻と色を変えていく美しさを、じっくり満喫したいじゃないか。

 夕暮れの海風に吹かれながら、人なつこいネコたちに囲まれて熱いピザを貪る。もちろんマルセイユの旅もラストの夜だから、カシスワインもまた1本カラッポにするだろうが、「飲み過ぎですよ」などと言うなかれ。こういう時に自重していると、世の中はちっとも面白くなくなる。
夕焼け
(マルセイユ旧港、夕暮れの風景)

 ホテルから港に出て、まず港の夕暮れを満喫する。ネコのオモチャを1日中頑張って売っているヒト。お茶のポットを前に置いて、散策中の人々にお茶を売っているのだが、全く売れないので自分で自分にあきれ果ててしまっているオジーチャンもいる。

 アラビア語で激しく歌い続ける、チュニジアかアルジェリア人のグループもいる。多くのアフリカ移民が集まって、彼らの演奏に合わせて歌い、踊り、熱く手拍子を打つ。彼ら彼女らの歌は明らかにホンモノであって、確かに目の海を渡れば、そこはチュニジアであり、アルジェリアなのだ。

 もちろん、シェ・ジャノーの予約は済ませてきた。何しろ、地元の人気店だ。マルセイユ観光コースから外れているし、マルセイユ自体が日本や中国の人々の観光コースに入っていないようだから、ガイドブックには店の影も形も見えないが、一昨日のランチでも、今日のディナーでも、「予約なしではまず無理」の大混雑ぶりであった。

 橋と海の姿が目の前に迫る最高のテーブルに案内され、さっそく牡蠣の山盛り一皿、デカいシーフードのピザと、安いロゼワインを1本注文。それがどのようなものだったかは、明日の記事と写真を楽しみにしていていただきたい。

1E(Cd) Avner Arad:THE PIANO WORKS OF LEOŠ JANÁĈEK
2E(Cd) Akiko Suwanai:BRUCH/CONCERTO No.1 SCOTTISH FANTASY
3E(Cd) Akiko Suwanai:SOUVENIR
6D(DPl) 梅若六郎 宝生弥一:観世流 隅田川
total m6 y179 d15503