Thu 150129 ムクれる 大江戸捜査網と豚汁 2つの苦行者礼拝堂(夏マルセイユ滞在記34) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 150129 ムクれる 大江戸捜査網と豚汁 2つの苦行者礼拝堂(夏マルセイユ滞在記34)

 ふてくされ&絶望的なほどムクれた状況で、いったいどうやってその泥沼を脱するか。処世術の中でも一番重要なのに、なかなか論じられることのないテーマである。

 2月22日と2が3つ並び、それが「ニャン♡ニャン♡ニャン」の発音と似ているから無理やり「ネコの日」。ネコたちもその無理矢理ぶりに呆れてしまい、呆れ放題に呆れているうちに欲求不満がたまっているようだ。

 どうやら「春一番」であるらしい南岸の低気圧から温かい南風が流れ込み、ニャゴロワもナデシコも「中途半端にあったかくてイヤでござるよ」とムクレ顔。ニャゴは朝からニャゴニャゴうるさいし、ナデシコはシマシマのお顔をもっとシマシマにして、大好物 ☞ カツオの缶詰を強硬に要求している。

 無意味にムクれ&ふてくされて青年期を過ごした今井君は、そういう状況を乗り切る名人である。諸君、人生のウルトラベテラン ☞ 今井クマ蔵のアドバイスに耳を傾けたまえ。

 2月25日の本番に向け、本来「滑り止め」みたいに考えていた私立大になかなか合格できず、ますますムクれている受験生諸君。彼女(ないし彼氏)に2股かけられてイジけているヒト。「内定!!」のヒトコトがかからずにムクれ放題ムクれているアナタ。是非よく聞いてくんろ。
城壁
(南フランス、エグ・モルト。13世紀の城壁は今も健在だ)

 無意味に焦ったあげくに、粗暴で自暴自棄な飛翔を企てるのは、絶対にヤメること。世の中のオトナたちは、「飛翔せよ♨」「はばたけ!!」と諸君を煽り立て、しかしイカロスのように翼を融かされて堕ちてくる青年に、決してセーフティーネットなんか広げてくれないのだ。

 諸君、ワタクシがどんなにツマランことを言いはじめても、許してくれたまえ。クマ助ももう年齢796歳。ということは、生まれたのは12世紀であって、日本なら北条時宗、アラビアならサラディン、フランスなら聖王ルイ9世より先輩である。

 中でも今井君はサラディンの大ファン。アラビア語にできるだけ忠実に発音すれば、「サルフハッディーン」であるが、サルフハッディーンは欧米の世界史でも人気者。一方的にアラビアの砂漠に攻め込んだヨーロッパ軍を、マコトに理性的&論理的な戦い方で圧倒した。

 今井君がサルフハッディーン並みに冷静かつ理性的に、いまムクれかけている諸君にアドバイスできるのは、
 ① TV時代劇でも眺めて、心に笑いを取り戻したまえ
 ② 家族の夕食に、豚汁でも作ってみたまえ
 ③ 半日ぐらいの小さな旅をして、アンヨを動かしたまえ
の3点である。

 ①については、「水戸黄門」でも「大岡越前」でも「銭形平次」でもかまわない。テレビ番組表を見て、まずクイズとバラエティ、グルメ番組と韓流を全て排除。BSを見られる環境にあれば、昭和の時代劇を発見することは容易である。
ピンク
(エグ・モルトの大湿地帯は、微生物のピンクに染まっている)

 今井君なら、何と言っても「大江戸捜査網」。ついこの間も、名古屋のホテルで「大江戸捜査網」に1時間じっくり熱中した。「死してシカバネ拾うものなし」と宣告された主役の「隠密同心」は、
  左文字右京(サモンジ ウキョウ:松方弘樹)
  十文字小弥太(ジュウモンジ コヤタ:杉良太郎)
  伝法寺隼人(デンポウジ ハヤト:里見浩太朗)
など。こういう昭和スターの大魔神的な活躍を眺めるうちに、ムクれた気分は宇宙のカナタに消えていく。瑳川哲朗の演じる脇役・井坂十蔵の活躍も爽快だ。

 30歳代女子の活躍にも、胸のつかえが下りる。
  稲妻 お龍(土田早苗)
  漁火 お紺(山口いづみ)
  不知火 お吉(江崎由梨)
  山猫 お七(岡田可愛)
  隼 お銀(安西マリア)
  流れ星 おりん(かたせ梨乃)
  風車 お菊(夏樹陽子)
  疾風 お仙(山田由紀子)
おお、素晴らしい。稲妻・漁火・不知火・隼・山猫・流れ星、どれもコワそうな名前なのに、いちいち「お」の字がつくあたり、日本文化のカワイイ世界は、30歳代にも40歳代にも深く深く浸透しているのである。
白色
(エグ・モルト、《白色》苦行者礼拝堂)

 こうして時代劇にニタニタ出来たら、すでに半分はムクレ状態から脱出できている。次にやるべきことは②「豚汁つくり」である。関西や九州では「ブタジル」、首都圏では「トンジル」、不器用な男子でもカンタンに作れる栄養満点のお料理である。

 中でも今井君がオススメしているのは、エリンギの輪切り。「は?エリンギの輪切りですか?」とビックリするヒトがほとんどだが、クマ助としてはみんながエリンギを縦切りにしていることの方が不思議でならない。そんな切り方じゃ、噛みしめても噛みしめても、キノコの繊維が切れなくてモドかしいじゃないか。

 ダマされたと思って、一度エリンギを輪切りにしてみたまえ。あら不思議、日陰に育つ菌類の仲間だったエリンギ君は、見た目も食感もホタテ貝ソックリ。ダマされやすいヒトなら「おお、ホタテが山盛りですね♡」「珍しいですね、ホタテ入りの豚汁!!」と絶叫するかもしれない。

 豚肉も、ちょっと奮発して「豚しゃぶ用」とか「豚スキヤキ用」を買ってきたまえ。1回分なら、豚バラとそんなに値段は変わらない。ゴボウも油揚げも贅沢にタップリ入れて、調味料がわりにお酒もドブドブ入れてみたまえ。

 もちろんお酒のアルコールはキチンと飛ばさなきゃイケナイが、最後にザク切りのネギをタップリ入れれば、風邪予防にも効果あり。豚汁で家族がみんな笑顔に変わる瞬間を満喫したら、作った本人だって、ムクレやフテクサレから一気に脱出できるに違いない。
灰色1
(エグ・モルト、《灰色》苦行者礼拝堂 1)

 ③の「ぶらり旅」については、このブログに書き続けている今井君の外国旅行がお手本だ。ブエノスアイレスでは「ぶらり旅」でウルグアイまで行ってきたが、パリから ☞ オルレアンだとか、マルセイユから ☞ ヴェネツィアだとか、サンパウロから ☞ リオデジャネイロだとか、クダラン常識さえ脱ぎ捨てれば、ぶらり旅はたっぷりエキサイティングになる。

 9月10日の「マルセイユから ☞ エグ・モルト」だって、十分にエキサイティングなぶらり旅だったと言える。午後2時、「ホントにマルセイユに帰れるのかね?」と不安が渦巻く中、ガイド役・聖王ルイの幽霊クンに導かれるまま、①「白色苦行者礼拝堂」と、②「灰色苦行者礼拝堂」を巡り歩いた。

 南北500メートル、東西300メートル。長方形の堅固な城壁に囲まれた13世紀の町。十字軍の大軍船団がエルサレムに向かって出航した記憶が、濃密な赤紫色に澱む「死んだ水」の真っただ中にユラユラ&トロトロ漂っている。

 ブルゴーニュ兵の死体が数千、塔の中で塩漬けにされた町。浅瀬に遮られた港に立ち尽くした船が、数十年、数百年、大湿原の潮風にさらされて朽ち果てていっただろう。
灰色2
(エグ・モルト、《灰色》苦行者礼拝堂 2)

 その死んだ町の真ん中に、「白色」と「灰色」にどんな区別や対立があったのか知る由もないが、ホンの数十メートルの距離で2つの「苦行者礼拝堂」が今に残っている。ガイドブックにも故事来歴の説明はないし、ネットで調べようとしても、ヒットする詳細情報はほとんど存在しない。

 しかし諸君、残り2日となったマルセイユ滞在を、あえてエグモルトに費やす気にさせてくれたのは、地図に小さく記された「白色苦行者」「灰色苦行者」の文字だったのである。

 「禁欲によって神に近づきたい」という修道士の発想は、聖アウグスティヌスに始まるもの。西暦5世紀、カルタゴに生きた古代ローマの聖アウグスティヌスであるが、カルタゴからシチリア、シチリアからサルデーニャ、さらにコルシカと、苦行の思想は地中海を着々と北上したのだろう。

 苦行への憧れと実践がマルセイユやエグ・モルトに至るのに、約1000年。5世紀の聖アウグスティヌスに始まった苦行が、10世紀を経て死んだ水の城壁の中に伝わったわけである。

 まあ諸君、ムクれたり、慌てたり、フクレツラをしたり、そんなツマランことはヤメにしときたまえ。世界は、1000年単位でゆっくりと回り、ゆっくりと動いているのである。

1E(Cd) Bruns & Ishay:FAURÉ/L’ŒUVRE POUR VIOLONCELLE
2E(Cd) Collard:FAURÉ/NOCTURNES, THEME ET VARIATIONS, etc. 1/2
3E(Cd) Collard:FAURÉ/NOCTURNES, THEME ET VARIATIONS, etc. 2/2
4E(Cd) Cluytens & Société des Concerts du Conservatoire:BERLIOZ/SYMPHONIE FANTASTIQUE
5E(Cd) Lenius:DIE WALCKER - ORGEL IN DER WIENER VOTIVKIRCHE
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