Tue 141230 牛になる 坊さん飛んでくアヴィニョン 美男王♡(夏マルセイユ滞在記28) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 141230 牛になる 坊さん飛んでくアヴィニョン 美男王♡(夏マルセイユ滞在記28)

 9月8日、バロン・デ・ゾフの灼熱ランチでヘトヘトに疲れたクマ助は、「とにかくいったんホテルに戻って、クーラーで部屋をガンガンに冷やして涼もう」と、そのことばかり考えて地球を7回り半する勢いだった。

 バロン・デ・ゾフからマルセイユ旧港までは、もちろんバスに乗ってもいいのだが、とにかく早くギューンと涼みたい。この灼熱の中で暢気にバスなんか待っていたら、それだけで煮えてしまう。

 煮えるというか、頭から真っ赤な炎を上げて燃え上がってもおかしくない状況。自分がボーボー燃え盛るアリサマを想像して恐ろしくなり、バスを待たずに海岸の道をテクテク歩きはじめた。

 諸君、昔の日本の家庭には「食べてすぐ寝ると牛になるよ」と互いに諌めあう良俗や美風があった。ポンポンがパンパンになると、ヒトはつい「よっこらしょ」と声を放って横になりたがるものだが、その瞬間スカさず、パパやママ、ジーチャンやバーチャンが「牛になるよ」と声をかけた。

 「牛になるよ」についての一般的解釈は、「牛みたいな怠け者になるよ」であって、おそらくそれが正しい解釈なのだろう。しかし最近の今井君は、「牛みたいにゲップばかりするようになるよ」ということなんじゃないかとニラんでいる。
法王庁
(アヴィニョン、旧教皇庁宮殿。今日は午後からアヴィニョンだ)

 横たわっている牛を観察してみたまえ。牡牛クンも雌牛ちゃんも、盛んにゲップを繰り返しては胃の内容物を口に戻し、それを反芻することによって、4つある胃袋のラスト胃袋に送り届けるまで、日がな一日反芻を繰り返す。

 もっとも、「牛を観察してみたまえ、と言われても困ります」「身近に牛なんかいるものですかね?」と反論してくる御仁もいるだろう。確かに、昭和初期まではどこの村でも町でも、手を伸ばせばそこに牛や馬やタヌキがいたけれど、21世紀の日本で「牛を見てみろ」と言われたって、そりゃ閉口するしかない。

 ならば諸君、ちょっとイングランドかスコットランドの田舎に出かけてみたまえ。ロンドンから3~4時間電車に乗って北上すれば、そこは牛とヒツジと八木サンの天下。おっと間違えた、牛とヒツジとヤギさんの天下。牧場には赤や黒やブチ柄の牛がたくさん横たわって、そこはまさに「反芻天国」なのである。

 もちろん反芻天国は長くは続かない。やがて「ドナドナ」の世界が待っていて、「ドナドナドナ&ドーナ、子牛を載せて、荷馬車が揺れる」という悲しいシーンがやってくる。Mac君が「講師を載せて、荷馬車が揺れる」という変換でドキッとさせてくれるから、クマ助の筆はますます滑らかになるじゃないか。
駅ホーム
(到着。マルセイユから1時間ちょいである)

 さて「閑話休題」であるが、そもそも今日は話の本筋も閑話そのものであるから、いくら閑話を休題にしても、どこまでも閑話が続いていく。牛をしっかり観察して、「ははあ、なるほど、ゲップと反芻ってのはこういうことね」と、まずしっかり認識してくれたまえ。

 そこで「食べてすぐ横になると牛になるよ」の一言に戻ろう。諸君、ニンゲンでもクマでも、ポンポンがパンパンの状態で横になると、胃の内容物が重力に負けて上昇してくると思わないかね。飲み下されて強酸性の胃液と混じった食物が上昇してくれば、牛さんと同じようにゲップを繰り返すようになる。

 「食べてすぐ横になると牛になる」とは、「礼儀正しくしなさい」「ダラしない行動は控えなさい」という醇風美俗である以上に、「ゲップばかりして、胃液で食道を傷めることになりますよ」という世俗医学だったんじゃないか。このごろの今井君はそう考えているのでごじゃる。
駅舎
(アヴィニョンは交通の要衝。駅舎もご立派だ)

 しかし諸君、「食べてすぐ横になる」も身体によくないゲップの元になるが、「食べてすぐ運動する」のもほとんど同じ結果をもたらす。マルセイユの美しい海岸を左手に眺めながら、涼を求めてテクテク歩いていった今井君を、激しいゲップの連続が襲ってきた。

 しかもこのゲップ、マコトにイヤなゲップであって、元はと言えば「イワシのペースト」なのである。たった今バロン・デ・ゾフで胃袋にたらふく詰込んだのは、ひたすら缶詰のサーディンのペースト(昨日の記事参照)。それが今や、灼熱の海岸を早足で歩いていく運動に促され、ゲップとなって上昇してくるのだ。

 それでも15分ほどは「歩く」という方針を変えず、とうとう海岸線を離れてマルセイユの中心部に入った。しかしここでクマ助は、方針転換を余儀なくされる。
 ① 南フランスの夏の灼熱
 ② 激しいのどの渇き
 ③ ダラダラ流れ落ちる汗
 ④ イワシの強烈なカホリを含むゲップの連続
以上の4要素が絡み合えば、「歩く」というクマの固い決意を崩壊させるのは、マコトに容易である。ちょうど来あわせたバスに乗り込んで、クマ助は危うく熱中症を免れた。
城門
(アヴィニョンはグルリと城壁に囲まれている)

 ホテルで1時間ほど休憩した後、今井君は勤勉にも「では計画通りアヴィニョンに行ってこよう」と決意。うぉ、勤勉である。アヴィニョンまでは、サントシャルル駅まで地下鉄で2駅、☞そこから国鉄で1時間強の道のり。しかしまだ午後2時だ。日没は7時半だから、5時間タップリ残っている。

 アビニョンと言えば、まず何と言っても1309年の「ローマ教皇のアヴィニョン捕囚」である。昔の予備校には、1309を記憶するのに「ボーサン飛んでくアヴィニョン」という合言葉があった。1(ボー)3(サン)0(とんで)9(く)であるが、いやはや、予備校ってホントに楽しい世界でごじゃるね。

 いきなり教皇庁が移動してきた当時のアヴィニョンは、城壁で囲まれた小さな町にいきなり世界の首都がドシンと降りてきて、てんやわんやの大騒ぎだったらしい。

 「秋田に東京がやってきた」みたいなもんですな。カネ、文化、芸術、腐敗、いろんな物や現象が、突如として田舎町を覆い尽くした。約70年、教皇庁をフランスに奪われたイタリア人は、この時代を「教皇のバビロン捕囚」と呼ぶのである。

 「バビロン捕囚って、なあに?」であるが、諸君、旧約聖書「列王記」を呼んでみたまえ。その前の「サムエル記」からでもいいね。ダビデ ☞ ソロモンの栄光の時代から一転、神を激怒させる行為を重ねる王たちが延々と続き、とうとう神は民を見捨てて、人々は根こそぎネブカドネザルによってバビロンに拉致される。
中世の町
(教皇庁は、巨大な岩の上に建てられている)

 もっとも、栄光のダビデもソロモンもそれなりに感心できない行為に手を染めている。人妻を略奪するために、彼女のダンナを最も危険な戦地に送り込んだのがダビデ。栄光から堕落へのキッカケになることをいろいろやっちゃったのがソロモン。ま、サムエルから列王記まで、じっくり読んでみてくれたまえ。

 一方の「アヴィニョン捕囚」のほうは、フランス王による教皇庁の移動に過ぎないから、大した悲劇の物語でもない。フランス王♡フィリップ4世というオカタが、フランス人教皇のクレメンス5世をアヴィニョンに連れてきちゃった。

 この「フィリップ4世」というカタ、「美男王」とか「端麗王」とか、なかなか濃ゆいニックネームがついている。美男王には他にもポルトガルのフェルディナンド1世がいるけれども、やったことの激しさから言えば、「やっぱりフィリップっしょ♨」である。

 テンプル騎士団の弾圧 ☞ 拷問による異端審問 ☞ 解体なんてのも、この美男王どん。テンプル騎士団は、ハリウッド製の映画ではすっかり定番の悪役だから(R.スコット「キングダム・オブ・ヘブン」2005などに顕著♨)、その意味では「おお、さすが端麗王!!」「いよっ、美男王!!」ではある。

 ただしそう呼ばれてご本人が嬉しかったかどうかは定かではない。もちろん「禿頭王」(シャルル2世)よりマシなことは間違いないが、うーん、それにしても、美男王ねえ。

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