Tue 141216 は?ヴェネツィア? ピ♡ カモメも驚くノロノロ(夏マルセイユ滞在記14) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 141216 は?ヴェネツィア? ピ♡ カモメも驚くノロノロ(夏マルセイユ滞在記14)

 というわけで、9月4日の今井君が目覚めたのはフランスのマルセイユ。しかし諸君、フランスにいるから1日中フランスとか、マルセイユで目覚めたから1日中マルセイユとか、そういうふうに自らの行動を制約するようでは、まだまだ人生を楽しくする工夫が欠けている。

 フランスで目覚めたのに、ベッドに入ったのはイタリア。マルセイユで朝日を拝んだのに、夕陽を眺めたのはヴェネツィア。そのぐらいのことが出来ないうちは、旅のベテランを名乗ってはいけないのだ。

 朝6時半、マルセイユ旧港の水はまだ眠っているようであって、何だかトロリと濃く甘く、ふと丘の上を見上げれば、ノートルダム大聖堂も朝日に赤く染まっている。

「は? 朝6時半?」
「普段はもっと朝寝坊なはずなのに」
「どうして今朝のクマどんは、そんなに早く散歩を始めたの?」
であるが、諸君、クマ助はこれから1泊の予定で国境線をヒトまたぎ、イタリアのヴェネツィアに旅してこようと考えている。
朝の港
(マルセイユ港の風景も、朝日にすっかりピンクに染まった)

 旧港(ヴューポール)から地下鉄で2駅、国鉄サン・シャルル駅からはバスに乗って、マルセイユ空港まで30分ほど。ヴェネツィアの空港まではエールフランスで1時間ちょっとの飛行。東京から大阪、大阪から福岡、その程度の距離であって、2週間のマルセイユ滞在に、ちょうどいいスパイスになるじゃないか。

 スーツケースはマルセイユのホテルに置きっぱなし。1泊のヴェネツィア小旅行に必要なのは、リュックが1つだけである。というか、ホントはリュックもナシの手ぶらでも構わないのだが、何しろこの物騒な世の中だ。手ぶらで国境を横切ったりすれば、
「怪しいクマ助じゃないか」
「危険なクマ蔵じゃないか」
と、あらぬ疑いをかけられかねない。

 確かに、日本人でこんな果敢な小旅行を敢行するヒトはほとんど考えられないから、ヨロイのような猜疑心で武装した係官に、厳しく問いつめられる可能性がグッと高まってくる。そんな不愉快な目に遭ってしまっては、せっかくの小旅行が台無しだ。リュックは猜疑心を撃退するオマモリみたいなものである。
空撮
(ヒコーキからのマルセイユ旧港の風景)

 今日も快晴、空港を飛び立ったヒコーキからは、マルセイユの町がマコトによく眺められる。旧港もファロ公園も大聖堂の位置も分かるし、宿泊中のインターコンチネンタルホテル(正式名称Hotel Dieu)も、「おお、空から見るとこんな塩梅なんだ♡」と、感動的なほどハッキリと見える。日本の若者風に言えば、まさに「ヤバくない?」である。

 飛んでいくヒコーキの左側はアルプス、その向こうはドイツ。右側は地中海、その向こうはアルジェリアとチュニジア。いやはや、古代ローマ時代から中世 ☞ 近代 ☞現代まで、常に世界史の中心舞台だった光景が眼下に広がっているのである。

 ヴェネツィアの空港に到着したのが、午前10時。「ヴェネツィア・マルコポーロ国際空港」が正式名称であるが、明日昼12時のマルセイユ便に乗り込むまで、約26時間のヴェネツィア滞在が始まった。

 ヴェネツィアの地理ならもうほとんど暗記しているから、ガイドブックも不要。「ちょっと奈良まで」「そうだ、京都行こう」みたいなものである。空港から徒歩1分、お船の乗り場に急いで、ヴァポレット24時間チケットを購入。ヴァポレットとは、ヴェネツィアを縦横無尽に走りまわる水上バスのことである。
ベネチア
(ヴェネツィア24時間券。「ピ♡」タイプになって、船着き場すべてに「ピ」の機械が設置されている。何となくヴェネツィアらしくない)

 伝統を重んずるヨーロッパも、この10年はまさに日進月歩であって、ついにヴェネツィアですら乗り物は「電子決済」になった。マルセイユでもリスボンでもバルセロナでも、地下鉄・バスともに紙製の「ピ♡」。意地でも伝統を守りつづけると思っていたイタリアも、ついに「ピ♡」を導入してしまった。

 今井君も早速「ピ♡」をやって、空港からムラーノ島ゆきのお船に乗った。しかし諸君、このヴァポレットは「冗談ですか?」「ワザとやってますか?」「意地にでもなっているんですか?」というぐらいのノロノロ運転である。

 「コチトラ、たった26時間しかねえんだ。もう少しスピードを出してくれねえとイライラするんでえ」
「江戸っ子は気が短けえんだ」
と、腰を浮かして絶叫したくなるが、何しろ相手はイタリア人だ。「そんなに急ぎなさんな」「そもそも『コチトラ』って、何のことどすえ?」と、異様なほど開けっぴろげな表情でニカニカされるのが関の山である。
マルセイユ
(マルセイユの「ピ♡」。チャージもできる)

 ところで諸君、落語や芝居や時代劇でよく耳にする「コチトラ」って、調べてみたことありますかね。「コチトラ☞江戸っ子で気が短けえんだ!!」であるが、トラなわりに江戸っ子とは、阪神ファンが黙っていないんじゃないか。

 いいかね諸君、コチトラにはキチンと漢字があって、「此方人等」というのである。此方人(こちと)が1人称の代名詞で「私」の意。それに等(ら)がくっついて、「私たち」「オレら」「ウチら」「We」の意味になるが、もともと複数形だったのが転じて単数代名詞としても使用されるようになった。

 いやはや、さすがに今井ブログであって、マコトに深い勉強になること「コチトラもビックリ」であるが、そのせいで話が先に進まないのが玉にキズ。もっとも、先に進まないことでは空港からのヴァポレットも同じことで、たった1日の予定でヴェネツィア小旅行を決めた今井君の焦りを見透かしたように、ホントにちっとも進まない。

 同じ船着き場を出発した「水上タクシー」たちは、ビュンビュン猛スピードで飛ばしていく。だから何か安全上の理由でスピードを出せないというわけではないのだ。ノロノロ運転には何か他にわけがあるので、あえて勘ぐれば「水上タクシー業界との棲み分けのため」なのかもしれない。
ムラーノ
(イヤがらせみたいにゆっくり走って、ようやくMurano Faroに到着)

 確かに、水上タクシーを雇えば「あっという間に80ユーロ」である。ヴァポレット24時間チケットなんか買って、暢気に「ピ♡」とかやってるヤツらに、何もそんなにスピードを出して大サービスする必要はないじゃないか。そういう話である可能性だって否定できない。

 しかし諸君、ヒドいじゃないか。コチトラにはたった24時間しかないのに、空港からムラーノ島まで行くだけで1時間も経過。船の上をユラユラ羽ばたいていたカモメさんたちも、とうとう呆れてお船の屋根で翼を休めはじめた。「お前ら、何そんなにマヌケな顔でボーッとしてんの?」と、ヌケヌケと首を傾げてみせる。

 「イラ菅」と呼ばれた民主党の某モト首相みたいに、イラつけるだけイラつき、ムカつけるだけムカついて、ようやくムラーノ島に到着したのが12時。まあいいか。マルセイユを出てから3時間足らずで、クマ助はベネチアンガラスで有名なこの小さな島に到着した。

 ここからブラーノ島を経由して本島に上陸、今夜はサンマルコ広場のカフェ・フローリアンやカフェ・クワドリで、真夜中までプチコンサートを満喫する予定。もちろん「リアルト橋」に「嘆きの橋」に「カ・ドーロ」に、そういう定番への挨拶も忘れるわけにはいかない。

1E(Cd) Ashkenazy(p) Müller & Berlin:SCRIABIN SYMPHONIES 2/3
2E(Cd) Ashkenazy(p) Müller & Berlin:SCRIABIN SYMPHONIES 3/3
3E(Cd) Cluytens & Société des Concerts du Conservatoire:RAVEL/DAPHNIS ET CHLOÉ
4E(Cd) COMPLETE MOZART/DIVERTIMENTI・SERENADES 7/11
5E(Cd) COMPLETE MOZART/DIVERTIMENTI・SERENADES 8/11
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