Fri 141212 直前期の諸君へ 悲壮感よりガハガハ カランクへ(夏マルセイユ滞在記10) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 141212 直前期の諸君へ 悲壮感よりガハガハ カランクへ(夏マルセイユ滞在記10)

 2015年のセンター試験は来週の週末だから、まあ「いよいよ」というか「押し迫った」というか、今ごろ受験生諸君の中には「心臓がハチ切れそう♨」「くじけそう♨」とか、細い声を出して青くなっているヒトも少なくないと思う。

 しかし諸君、こういう時こそ笑いが大切なので、笑いだけは決して忘れてはいけない。笑いは、できれば爆笑がいいので、爆笑が大爆笑ならもっといい。笑いを忘れたところに、勝利の女神はやってこない。

 絵画や彫刻で勝利の女神の表情を見るに、古代ギリシャでもローマでも彼女はいつも笑いを湛えていて、要するに勝利と笑いとは切っても切れない深い縁で結ばれているのだ。

 ふとそれを忘れ、思わずみんなで悲壮な顔を並べている教室にいると、何となく「敗色濃厚」という気配が漂ってくる。敗色濃厚だからますます悲壮感でいっぱいになるので、いったんそういう悪循環に陥れば、脱出しがたいダウンスパイラルに巻き込まれる。

 受験生諸君も、彼ら彼女らの周囲で生きているオトナ諸君も、だから本番が迫れば迫るほど爆笑を繰り返して、女神どんが大好きな雰囲気作りに努めるべきなのだ。どうしても爆笑がダメなら、せめてみんなでニッコリする場を、1日に数回もちたまえ。
カランクツアー1
(カランクへ向かう船が、マルセイユ旧港を出航する)

 今井君の小学生時代は、最も苦手な先生が担任になって、ずいぶん苦労した。常に悲壮感でいっぱいのオバサマで、運動会でも文化祭でも、クラスにはどういうわけか重苦しい気分が横溢。みんな難しい渋面を並べ、ひたすら危機が去るのを待った。

 今井君は「クラスのリーダー」ということになっていたが、勉強ばかりできて体育とか音楽とかではサッパリ目立たないイヤなタイプ。悲壮感の中で生きている担任の先生にとっては、「可愛げのない子」もいいところだったかもしれない。

 文化祭とか球技大会とかでクラスの敗色が濃厚になったり、文化祭を前にクラスのまとまりが発揮されなかったりすると、「リーダーがダメなんだ」ということになった。

 「もっと明るくニコニコしなさい」が先生の口癖だったが、「ニコニコしなさい」と言われてニコニコできるコドモなんか存在しない。やっとのことでニコニコしたつもりが、「今井のその笑いはニコニコではなくてニヤニヤだ。ダラしない笑い方はヤメなさい」と指摘され、グーの音も出なくなる。

 すると、あら不思議、ニヤニヤさえ出来なくなってしまう。ニヤニヤは「ニタニタ」に変じ、口の周囲の筋肉がダラしなく弛緩すると、「デレデレ」「ニカーッ」の類いの取り返しのつかない表情になる。思わず口の端からヨダレが糸を引きそうになる瞬間だ。

 不思議はまだ続くので、ヨダレをガマンしていると、やがて目の縁に涙が滲んでくる。涙は止まらず、口はダラしなニカーッと耳まで避けたようになり、ヨダレと鼻水と涙に濡れた顔がいっそう悲壮を煽るようになると、もう取り返しがつかない。
カランクツアー2
(船からノートルダム大聖堂を望む)

 だから諸君、前にも書いたことがあるような気がするが、悲壮や緊張は最初の段階でグッと押しとどめ、笑いに変えてしまいたまえ。「くじけそう」と思ったら、実際に「くじけそう♡」と声に出し、くじけそうな自分自身を笑い飛ばしてしまえばいい。

 「この10日で全てが決するんだ」「天下分け目の決戦だ」「日々是決戦!!」「全力を尽くせ」みたいなコワーい一喝が一番困るのだ。「実力」とか「全力」というものは、「出そう」「尽くそう」と思えば思うほど、思うように前面に出てこなくなる。

 「全力」とは内気なヤツであって、天岩戸に隠れちゃった天照大神みたいなもの。青筋を立てて岩戸を押し開こうと頑張れば頑張るほど、岩戸はますますキツく閉ざされて、アマテラス様は出てきてくれないのである。

 そこへ行くと諸君、「外で宴会をやって、みんなでガハガハ笑い、どんなに不真面目に見えてもいいから、とにかくガハガハ笑い転げていよう」と提案した神様は、オデュッセウスも敵わない知恵の神だったと言える。

 あんまりガハガハやっているから、アマテラス様も「何やってんの? ちょっと見てやろう」と、チョイとお外に出ていらっしゃる。天にも地にも太陽の力強い光が漲ったのは、まさにその時だ。「全力」「実力」は、笑いとともにやってくる。日本の神話には、そういう見事な知恵が示されている。
がはがはオジサン
(断崖絶壁の海を行く船の前に、ガハガハ♨オジサマが出現)

 高校ラグビーも高校サッカーも、いよいよクライマックス。準決勝☞決勝を見ているヒマなんか、受験生諸君にはないだろうが、彼らの中にも受験生が存在する。昨年は埼玉の名門・浦和高校が出ていて話題になったが、受験のウルトラ直前まで激しいスポーツに熱中する姿は、マコトにたくましい。

 苦戦するチームの多くが悲壮感に満たされ、面白いほどズンズン勝ち進んでいくチームに笑いが溢れているのを、読者諸君は感じたことがないだろうか。

 例えば、早々に敗退が決まった今年の早稲田ラグビーには、ちっとも笑いが感じられなかった。多くの選手が1つ1つの失敗に表情を歪め、悲壮感が漲るころからズルズルと後退が始まり、普段できていることさえできなくなってしまった。

 そこが、準優勝した昨年のチームとの違い。昨年はどんなピンチに立たされてもプロップもフランカーも陽気に笑い、ボールをもらったバックスが縦横無尽に駆け回る時、獲物を発見した猛獣や猛禽類よろしく、楽しく吠えるように笑っていた。

 今年の早稲田ラグビーでそういう笑顔を見せていたのは、ウィングの4年生、14番の荻野ぐらいだったんじゃないか。彼は、神奈川県の名門・柏陽高校の出身。理工学部の秀才である。

 巧みに緩急をつけた走りには、いかにもラグビーIQの高さを感じるが、諸君、彼がボールを持ったときの「楽しくてたまらない」という満面の笑顔を、一度でいいから目撃してほしかった。
イフ島
(マルセイユ出港後、間もなくイフ島の横を通過する)

 荻野選手の場合は「ラグビーIQ」であるが、受験生を始めとする若い諸君にも、「人生IQ」みたいなものがあっていいんじゃないかと思う。試験とか難関とか試練とかを前に、ブルブル震えて手に冷たい汗を握っているようじゃ、うーん、今井君はちょっと心配だ。

 むしろ、ニタニタ☞ニカーッと笑い、「くじけそう」と呟いてはガハガハやり、家族もクラスも先生もみんなガハガハ笑いながら、ラスト10日間を「一生で一番楽しい10日間かもしれない」と呟きつつ、最後の仕上げに邁進したまえ。

 かくいう今井君こそ、ニヤニヤとニカーッとガハガハの権化。海外でピンチに立っても、ガハガハしていれば必ず救いの女神やアマテラス様が現れて、ピンチなんか「どこ吹く風?」という程度にカンタンに解決しているのである。

 つい10日前、クマ助は深夜のミラノ駅で苦境に立たされた。次第に人影もマバラになっていく深夜の駅で、アルプス降ろしの寒風に苛まれ、気温は氷点下3℃。ベンチの周囲には、アフリカからの移民の大家族10名ほどと、ミラノ駅付近で寝泊まりしているらしい男たち。いやはやな世界であったよ。

 しかし諸君、そこでクマ助がカバンから取り出したのは、「うす焼」と「あたりめ」。小さな薄焼きセンベイを30枚パリパリ、「あたりめ」のほうは袋のままポケットに突っ込んで、約2時間にわたって1本ずつ「取り出しては食べ、取り出しては食べ」を繰り返すうちに、すぐにニタニタとガハガハが復活した。
カランクツアー3
(緑のカランクと白い絶壁の対照が美しい)

 おやおや。今日は「夏マルセイユ滞在記10」を書くつもりだったのに、もう3枚も書いちゃった。9月2日午後、大聖堂のある山から降りてきたクマさんは、マルセイユから南の断崖絶壁を回る観光クルーズ船に乗り込んだ。しかし、今日はさすがにもう長く書きすぎた、クルーズの模様は明日にして、今日は写真を示すにとどめたい。

 美しい青い海と、太陽に照らされて白く光る石灰質の奇岩怪石、その間に挟まれてエメラルド色に輝く「カランク=入り江」を、走る船から眺めようという趣向であって、マルセイユを訪れるヒトビトのウルトラ♨マストの一つ。京都なら金閣&銀閣、奈良なら大仏さま、広島なら厳島神社、マルセイユならカランクであって、このクルーズこそ旅のクライマックスと言っていい。

 旧港を出航した船は、真夏の太陽に焼かれながら、間もなく右側にイフ島を眺め、その先からがいよいよカランクの連続になる。この船に乗ってしまうと、「イフ島観光なんか、もうどうでもいいや」と思うほどの絶景の連続なのであった。

1E(Cd) Joe Sample & Lalah Hathaway:THE SONG LIVES ON
2E(Cd) Lee Ritenour:WES BOUND
3E(Cd) Marc Antoine:MADRID
6D(Pl) 1月文楽公演:花競四季寿 彦山権現誓助剣 義経千本桜:大阪・国立文楽劇場
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